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公園を出るころには、靴底から桜餅がはがれ落ちていることを歩きながら感じ取っていたのだが、信号を待っている時にさりげなく靴の裏を見ると、そこには一本の虫の足のようなものだけがついていた。慌てて地面を踏み躙り、虫の足を地面になすりつけ、横断歩道を渡って店に入るが、買い物をしている間も虫のことで頭がいっぱいになっていた。そして、公園に戻る時には、今まで視界にも入っていなかったハズのアリの行列を見つけてしまうセイラ。一瞬立ち止まるが、近くに誰もいないことを確認すると、気づいてないフリをしながら、アリの行列を踏み潰して家族のところへ向かったのだった。
セイラは自分が食べ物や虫を踏み潰すたびに気持ちよくなっていくヒドイ子であることをすこしずつ自覚していくと、それからはもっと貪欲に標的を探すようになっていった。夏には公園に寄り道をして帰るようになり、地面でひっくり返っているセミを見つけては、容赦なく1匹残らず踏み潰していくのである。中にはまだ生きていたセミもいて、潰れる瞬間に「ジジッ…!!!」と最後の力を振り絞って出された鳴き声が、靴底と地面の隙間から虚しく響き渡ることもあった。ベンチの脇に誰かが落としたアイスを見つけた時は大当たりである。目を輝かせて駆け寄って、アイスの上に両足を揃えて飛び乗り、群がっている虫ごとまとめて踏み潰すのだ。もうこのころには、小さな命が自分の足の下でグチャグチャに潰れていく感触を全身で感じるのが、最高に気持ちよくなっていた。季節が過ぎて寒くなってくると、虫が落ち葉の下で集まっているということを知り、落ち葉を蹴っ飛ばしながら歩いて大量の虫を見つけては、グシャッとまとめて踏み潰していく。100匹近くのテントウ虫を一瞬でブチブチブチッ!!!と踏み潰す感触は素晴らしく、両足でもおさまらないほどの量を見つけた時は、興奮し過ぎて人目を気にするのがやっとだった。
しかし、完全に冬になってしまうと、街中ではそう簡単に虫が見つけられなくなるのでとても退屈である。落ち葉を踏んで歩くだけでは、醜く汚らしい汁を飛び出させて潰れる虫と比べると、満足感はほど遠いのだ。
退屈な冬を過ごしたまま中等部の卒業式になった。後輩からも慕われていたセイラは抱えきれない量のプレゼントをもらったが、うれしい反面、このころには欲求を満たしたくてしょうがなくなっていた。みんなで話したり写真を撮ったりしていると、我慢ができなくなったセイラはトイレに行ってくると嘘をつき、教室を出て校舎裏に向かった。校舎から出てからも何か落ちてないかと地面を探しながら歩いていると、手には卒業証書と後輩たちから渡された寄せ書きを持ったままであることに気づく。そして、誰もいない校舎裏に着くと、息を飲んで寄せ書きの色紙に目を向けるセイラ。後輩たちの温かい言葉が端から端までいっぱいに書き込まれていて、うれしくて思わず涙を浮かべた。しかし、しばらくして自分の欲求をジワジワと思い出し、一瞬の気の迷いで両手からフッと力を抜くと、当然のことながら色紙は足元に落ちた。じんわりと汗をかきながら、深く息を吸いこみ、ゆっくりと吐き切った次の瞬間、抑えられない欲望に任せて、セイラは靴を履いたまま色紙の上に飛び乗った。
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2024-03-19 14:46:14 +0000 UTCmumum
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