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夏ゞ2号
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悪魔クラゲ後日談

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発電所で悪魔クラゲを倒し基地に帰還後、ピンクは目を覚ました途端にレズを求めて暴れた。

それを落ち着かせようとしたブルーが重傷を負った。

満身創痍のグリーンとレッドと自分の三人でピンクを制圧し基地から解放されたのは翌日の夜になってからだった。

ようやく自宅に戻ることができた。

時計を見ると時刻は深夜3時。

やっと2日ぶりに睡眠がとれる。

さっさと寝よう、と寝室の扉に手をかけた瞬間だった。


ピンポーン


玄関のチャイムが鳴った。


こんな夜中に誰か、と思いつつ玄関のドアを開けると女の子が飛び込んできた。


「た、たすけて…お、おねがい!クラゲ、追われてるの!」


水色の髪、見覚えのある露出度の高い衣装、水色の角が側頭部に見えている。

サンキュバス怪人だ!!あの発電所に現れた悪魔クラゲだ!!

思わず変身の構えを取る。


「ひぃっ…やめて!やめ…クラゲを殴らないで!!」


悪魔クラゲはその場にしゃがみ込んでしまった。

敵意はないのか…?

とりあえず同じ目線になるようにこちらもしゃがむ。

『そ、その…クラゲさん?』

困惑しつつ、できるだけ優しい声で言うと悪魔クラゲは顔を上げた。

「………ぅぅ…だずげて…」

悪魔クラゲは泣いていた。

その顔を見るとこんな表情をする子を殴って倒してしまったのか…という罪悪感と、ピンクや自分を襲っている時の雰囲気とのギャップに驚く。


「……こ、殺さない?」


『え、えぇ…そんなつもりはないですが…』


少し冷静になり様々な疑問が浮かぶ。

なぜ生き返ってる?何から逃げてる?なぜ自分に助けを求めるの?…そもそもどうやってここを知ったの?ひょっとして罠か?

落ち着いて話を聞くためにあがって居間に行くように促す。




悪魔クラゲは居間に入ってしばらく警戒して机の下に潜りこんでいたが、こちらに敵意がないことを確認したのか机の下から徐々に顔を出して周囲を見回し始めた。

なんてことのない和風の居間だ。

6畳ほどの広さに低い机が一つ、それを挟むように一組の座椅子が向かい合って置かれているだけの。


『落ち着きました?』


「他には…誰も居ないよね?」


『ええ、自分一人暮らしなんで』


「…」

悪魔クラゲは少し安心したのか、机の下から出てきて座椅子に腰かけた。

俯いているが恐らく話す準備ができたという事だろう。


インスタントのコーヒーをカップに注いで2つテーブルの上に置く。

『これ…よければ飲んでください。変なのは入ってないですから。』

自分も飲んで毒は入ってないことを示そう…としたその時。


「おかわり、欲しいの」


悪魔クラゲは一瞬で飲み干していた。

苦笑いしつつ用意する。


「クラゲ…の触手ってやっぱり痛い?」


『そうですね…めちゃくちゃ痛かったです』

なんでそんな事を聞くんだろう。

気持ちよかったなんて言えない…。


「クラゲ怖い?」


なんて返そう…正直、殺めてしまったと思っていた相手が生きていてホッとしたというのが今の感情である。



『そんなに怖くはないです…クラゲさんはどうやってここを?』

2杯目を渡し座椅子に腰かける。


「…え、えっと…クラゲ、触手でわかるの…」

よくわからない。

「ほ、ほら…触手で…その…お兄さんの首に巻き付いたままの」

悪魔クラゲは首を指し示してきた。自分の首を触って確かめると確かに巻き付いたままになっていた。ちょっと乾燥している。

『……な、なるほど』

ペリペリと剝がしつつ…やっぱりわからない。

とりあえず触手が追跡装置になるのなら他のメンバーも危ない。

どうしたものか…


「クラゲ、逃げたの…サンキュバスから…。気がついたら悪魔実験場の水槽の中で…体が治ってて…で、でも幹部様が処刑だって…」


考えを遮るように悪魔クラゲは語りだした。


「幹部様に見つかったら殺されちゃうし…でも行き場もないし…バクサンジャーに見つかっても……」


「こ、攻撃する気はないの!でも、毒の効く人間たちははきっと…クラゲを殺すの。怖いもんね…クラゲの毒、神経毒だから…ちょっと触るだけで泡吹いて倒れちゃうの…」


コイツは発電所を壊した…被害は甚大で何人もが賢者タイムの悪夢に飲み込まれた。

レッド、グリーンとブルーは回復したが、ピンクはレズを求める廃人みたいになっている…。死者が出てないのが幸いだが。


「お兄さんならきっと、痛いだろうけど毒効かないし…一回倒したからクラゲ怖くないよね?…ね?クラゲがもうサンキュバスじゃないってなったら…ど、どうかな?」


確かに毒は効かないかもしれない、だがスーツなしで太刀打ちできる相手ではない。

悪魔クラゲからは見えないだろうが、いつでも変身できるように変身ブレスレッドを机の下で構えている。

―—だが、本当に殺してしまっていいのだろうか。


「クラゲ…そ、その、も、もう人サンキュバスとかどうでもよくて…頑張って家事?とか覚えるから…な、なんでもするから…」


ずっと自分が黙っているせいか悪魔クラゲの口調がだんだん命乞いになってきている。

その命乞いがイエローの罪悪感を増長していく。


「あ、あの、もう……知ってるとは思うけど、クラゲは弱いの…強化されてないし…」

ササッとこちらの隣に回り込んで手を握られた。見た目も肌触りも生きた人間だが…水のように冷たい。

緊張のせいか震えているのが伝わる。


悪魔クラゲはこちらの顔を覗き込んできた。


「だから…そ、その…クラゲを匿って…欲しいの」


まっすぐにこちらを上目遣いで…うるうるした目で見てくる。

震えた声でクラゲは続ける。


「も、もう行くところないし…クラゲはただ死にたくないの。お兄さんのしてほしい事なんでも頑張ってやるから…闘ったりはできないけど…役に立てるように頑張るから…」


「が、頑張るから!!た、助けて…お願い…」


シスターの時、レッドは容赦しなかった。ギャルの時ブルーは油断して死んだ…はずだが何故か生きていた。グリーンも…とにかくサンキュバスは危ない。


『クラゲさん…』


匿うのはだめだ、と言おうと口を開いたその時だった。

こちらの表情から答えを察したのかポロリと大粒の涙が冷たい肌を滑り落ちた。


「おねがい…た、たすけて…しにたくない…しにたくないの…」


なんて卑怯な手を使うんだろう…。


『わかりました、匿いますよ。』


言ってしまった。

誰であっても助けを求める声には応じるのがバクサンジャーの使命だが、相手はサンキュバス怪人だ。

何を企んでいるのかわからない、信用できない相手だ。

全ては嘘で何かの策略かもしれない。

だが、悪魔クラゲへの罪悪感が守るのは義務だと言っているようにも感じられる。


そもそも敵意がないとして、サンキュバスやピンクから守り切れるものなのか。


他のメンバーに何と言われるか…。


頭の中でグルグルと不安が渦巻いていく。

頭がとても重くなってきた気がした。

そうだ、2日も寝てなかったんだ…。

瞼が重くなり気が遠くなっていく―———







『あ、あれ?』


気がつくと自分は仰向けに倒れていた。

カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。


「起き…たの?」


悪魔クラゲが添い寝して…赤面した顔をこちらに向けている。

耳まで真っ赤にしながら…。


「お兄さん、急に寝ちゃって」


『そ、そう…ですか…顔が赤いですけど…』


「こ、これは…そ、その」


少し腰をピクつかせながら悪魔クラゲは手を握ってきた。


『お手洗いは…そこのドアを出て右に…』


「そ、そうじゃなくて、しちゃ…ダメ?…やっぱりクラゲのサンキュバスの本能っていうか…頑張って我慢してるんだけど…もう…」


『?』


なんだかハッキリしない物言いの悪魔クラゲに困惑する。

何をする?…サンキュバスの本能…?


「クラゲいい子にするし頑張るから、…その、欲しいなってその…で、でも勝手に…はダメだと思ったから…でもタイプの人が居ると…本能が抑えられなくなるの。も、もう我慢の限界なの…」


あぁ、そういうことか。

サンキュバスの本能って性的な…。

慌てて自分の着衣を見るが脱がされた形跡はない。

本当に我慢したのか…。


「…その…気持ちよかったから…初めてだったから…クラゲだけのものにしたいというか…頑張って触手が触れないように…気持ちよくだけするように…するから…」


ここで気づいた。悪魔クラゲは触手がこちらに触れないように意識を払っていることに。

昨日からずっとそうしていた。

きっと敵意がないことを精一杯示しているつもりなんだろう。

それに無理やり襲わずに我慢したサンキュバスは見たことがない。

悪魔クラゲは嘘を言っていないのかもしれない。



だが同時に思い出してしまった。



あの激痛の気持ちよさを…。



ふよふよとこちらを避けるように舞う悪魔クラゲの触手を手で優しく握り寄せる。

掌に落雷が落ちたような鋭い痛み。

痛くて…冷たくて…気持ちいい…。

そしてその痛みを受けることが贖罪につながる気がして仕方ない。


「えっ…!だ、ダメだよ!触ったら痛いよ!」

慌てて触手から手を退けようとする悪魔クラゲを制止する。


「…え?…だ、大丈夫なの…?…あれ?おっきくなって…る…」


悪魔クラゲの下着の紐に手を伸ばしスッと引き、解く。


「して、、いいんだ♡」








―2ヶ月後


帰宅すると微かに焦げ臭い。

臭いのもとを辿ると台所で、そこにはエプロン姿のクラゲの姿があった。

付箋だらけの料理本を慌てて隠す…のが見えたが気づいてないふりをする。

「あ、お帰り!」

頬を若干染めつつ笑顔をこちらに向ける。

最近やっと炊飯器を壊さずに米が炊けるようになったので料理の練習を始めたのだろう。


この2ヶ月の合間にクラゲは掃除や洗濯を覚えた。

最初は不安だったが、最近はもうすっかり外出しないでできる事は任せている。


『頑張ってるクラゲさんに餃子買ってきましたよ。好きでしょう?』

帰路で買っておいた総菜を机の上に置く。


「えへへ…」


エプロンを脱ぎTシャツに短パン姿になりつつ”褒めて褒めて”と駆け寄ってくる。


だが近づくにつれてクラゲは徐々に表情を曇らせた。


「またクラゲじゃない匂いがする…」

クラゲの冷たい指が頬をつねる。


『最近そういうの多くて…』

今回のサンキュバス怪人も相変わらず色香の強い女だった。


「やだ。クラゲのだもん。他のに惚れてザコくなったらクラゲ怒るよ?」

そう頬を膨らませて言いながら触手が痛みを与えつつ服を脱がしてくる。


「…怪我…増えてる。」

クラゲは触手で脱がすのをやめて冷たい掌で優しくなでてきた。

「今回のは…クラゲより魅力的だった?」

クラゲは手で服を脱がしつつ不安げに目を伏せた。

『どんな奴だってクラゲさんには敵わないですよ』

そう言って細い体をを抱きしめる。

クラゲの心音が伝わる。

人間とは違うゆっくりとしたテンポで、それは浜辺に押し寄せるさざ波の様で。


それを感じているとクラゲが生きているのを実感できて安心する。



「お風呂でクラゲの匂いに戻しちゃうもんね♡」

そう言いながら腕の中でクラゲは舌なめずりをした。



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