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製作を断念した人妻ゲー1

【貴志】 「ふう……さあ、もうひとがんばりだ」  ずしりと重い段ボール箱を両手に抱え、首筋を垂れ流れる汗にうんざりしながら、そう気合いを入れる。  俺の名前は――色島貴志。  現在絶賛大学浪人中で、来る日も来る日も猛勉強の毎日を送る、寂しい19歳だ。  そんな俺が今何をしているのかといえば、ついさっき独り暮らしのアパートに越してきたところ。  一人で集中して勉強に専念したいからと実家を飛び出し、引っ越し屋のお兄さんたちと手分けをして、自宅から持ってきた荷物の数々を自分の部屋へと運びこんでいた。  トラックと部屋との何度にも渡る往復のせいで、いくら若いとは言ったって、さすがに汗が噴き出してきている。  しかし、今日から自分だけの城を持ち、意気込みも新たにさらなる猛勉強の日々が送れるかと思うと、やはり昂揚感の方が疲れを上回るのだった。  浪人生に必要なのは、気合いと根性と、勉強に集中できる適切な環境。  自分のわがままで望みうる限り最高の環境を手に入れることができたのだから、来年こそは、念願の志望校に必ず合格してやるぞと、俺は今までにも増して闘志を燃やしていた。  自分で言うのも何だけれど、元々頭は悪い方ではない。  第一志望の大学だって、まず問題なくパスするだろうと、誰もが思っていた。  もちろん当の本人であるこの俺も。  ところが、肝心の試験当日、よりによって俺はお腹を壊してしまい、結局最後まで実力を出し切れないまま、あえなく不合格。  このままでは悔しすぎて納得ができないからと、第二志望や第三志望の大学より潔く浪人の道を選択し、猛勉強の日々に身を投じた。  そんな俺に、来年度の合格のためには絶対に必要なことなんだと強い希望とともに訴えられた両親は、当然のように戸惑いこそしたものの……  父の弟が住んでいたアパートに丁度空きが出たため、そこなら安心だろうということで、ようやく俺に、許可を与えたのだった。 【貴志】 「さあ、急げ急げ。荷物の梱包を解いて、早く部屋を使えるようにしないといけないし、ぼうっとしてる暇は……うん?」  俺は自分に檄を飛ばし、廊下を小走りに急ごうとした。  しかしそんな俺の視界に、思わぬものが飛び込んでくる。 【貴志】 「あ……」 【貴志】 (う……うう! ……綺麗な人っ!)  思いがけず廊下で出会ったその女性に、俺は思わず脚を止め、不覚にもうっとりと見入ってしまう。  年の頃は、26、7、といったところ。  エレガントなウェーブのかかったロングヘアは、明るい栗色をしている。  切れ長の印象的な瞳はやや垂れ目がちで、肉厚朱唇の色っぽさにも、目を見張らされた。 【貴志】 (それに……この服……けっこう露出度、高い!)  自分の容姿によほど自信があるのか、色白のきめ細やかな美肌を、その人は惜しげもなく晒している。  非常に男好きのする、色気抜群のタイプ。  胸元をダイナミックに盛り上げる双子の膨らみの迫力なんか、いっそ犯罪的とでも言いたくなるほどだった。 【貴志】 (ううっ……!? 腰回りの肉づきも、たまらない……) 【貴志】 (それに、それなりにくびれているくせに、下っ腹のあたりがちょっとだけぽっちゃりしているのも、い、いい感じだなぁ……) 【???麻衣子】 「……あら」 【貴志】 「あ……」 【貴志】 (しまった……! ついガン見してたら、思いっきり気づかれちゃったぞ……!) 【???麻衣子】 「ンフフ、こんにちは。もしかして……新しいお隣さんって、あなた?」 【貴志】 「……え?」  俺の存在に気づいたその色っぽい女の人は、掃除の手を止めると、積極的に話しかけてくる。 【貴志】 「あ……は、はい……そうです!」 【貴志】 (それじゃこの人……隣の部屋に住んでるんだ。結婚、してるんだよな? 人妻さんかな……?)  突然話しかけられた俺は緊張のせいで硬直し、満足な返事もできずにわたわたする。  しっかりしろよ俺と思いはするものの、艶やかかつ豪奢な笑みで見つめられると、身体も心も金縛りにあったようにぎくしゃくとした。 【???麻衣子】 「学生さん?」 【貴志】 「は、はい。あ、いや……学生って言うか……浪人生ですけど」 【???麻衣子】 「まあ、そうなの? お勉強、大変ね」 【貴志】 「そんな……」 【麻衣子】 「夏見って言います。夏見麻衣子。今日からよろしくね」 【貴志】 「ま、麻衣子、さん……あ、俺は……色島貴志です。こちらこそ、よろしくお願いします!」  濡れたような瞳に優しく見つめられた俺は、段ボール箱を抱えたまま直立不動の姿勢になり、ペコリと頭を下げる。 【麻衣子】 「貴志くんね。お勉強、がんばってね。私たち夫婦にできることなら、喜んでするから、何でも言ってちょうだい」 【貴志】 (あ……)  麻衣子は親しげな笑みとともにこくりと小首を傾げ、男心をくすぐられずにはいられないセクシーな挙措で俺に言う。  俺は麻里にかけてもらった優しい言葉より、その胸元でダイナミックに揺れ躍る悶絶ものの超絶巨乳に、もう身も心も釘付けだ。 【貴志】 (……うおおおっ! ああ、揺れてる……こんなにたゆんたゆんって、いやらしく……! なんて大きなおっぱい! ああ、見ちゃだめだ!!) 【貴志】 「あ、ああ、ありがとうございます! それじゃ、また……」 【麻衣子】 「はい。お疲れ様ー」 【貴志】 「ううっ……!?」  俺はもう一度ぎくしゃくと頭を下げ、麻衣子の前を離れた。  心臓がドキドキと勢いよく弾み、今までと違う種類の汗が、滝のように背筋を流れる。 【貴志】 (麻衣子さん……麻衣子さん! ああ、なんて色っぽい女の人なんだ! あのおっぱい、最高すぎる……!)  一人になった俺は、なおも浮き足だったまま、ゴージャス極まりない麻衣子の美貌と迫力たっぷりの巨乳を思い出して、嘆声を零した。 【貴志】 (私たち夫婦って言ってたな……やっぱり人妻さんなんだ。あんな奥さんと毎日暮らせるなんて、旦那さんは幸せな人だよな……) 【貴志】 「あ……! いかん、いかん! 俺ってば……何をいつまでもあの色っぽい人のことを。まだ引っ越し作業の最中だった……」  ついぼうっとしてしまった俺は、慌てて自分に発破をかける。  どんなに綺麗で巨乳な人妻が隣人だったとしても、浪人生には関係のないこと。  あくまでも禁欲と猛勉強をモットーに、粉骨砕身してがんばらなければならないのだ。 【貴志】 「とは言っても……とんでもないブスとかが身近にいることに比べたら、やっぱり幸せな気分なんだけどさ。さあ、作業、作業!」  麻衣子との出逢いに浮き足だつ気分になる我と我が身を鞭打って、俺は再び強引に、引っ越し作業の慌ただしさの中に戻っていった。  ――こうして、引っ越し初日の俺は、いろいろな意味でバタバタとしながら、とにもかくにもすべての荷物を部屋に入れ、荷ほどきも住ませてようやくすっきりしたのだった……。  …………………… 【貴志】 「……それにしても……さっきの俺……やっぱりちょっと不様すぎたな」  繁雑を極めた引っ越しと荷物整理の作業からようやく解放され、一段落した俺は、ペットボトルの緑茶を飲みながら、今さらのように独りごちる。 【貴志】 「いきなり、あんな綺麗な人とバッタリ出会っちゃったから、ついぎくしゃくと挨拶しただけで引っ越し作業に戻っちゃった……」 【貴志】 「これから毎日、ご近所さんとして付き合う仲になるわけだし、もっとちゃんと挨拶をしておけばよかったかな……」  思い返せば思い返すほど、苦い思いに囚われる。  それなりの歳をしているのに、失礼に思われたかもと悔いが増した。 【貴志】 「……よし! やっぱりちゃんと挨拶し直しておこう」 【貴志】 「それにどうせなら、麻衣子さんのところだけじゃなくて、他の部屋にも挨拶しておくとするか」  ――さあ、そうと決まれば善は急げだ。  しかもよくよく考えたら、挨拶をする時はこれを持っていきなさいと母親からは簡単な品も用意してもらっていた。  俺は身繕いをただすと、それらの品物を用意して、ちょっと緊張しながら再び廊下に出た。  ……………………  …………  …… 【麻衣子】 「まあ……ンフフ。そんなこと、気にしなくてもよかったのに」  改めて挨拶に訪れると、出てきた麻衣子は来訪の理由を聞いて、色っぽく微笑んだ。 【貴志】 (うわあ……やっぱり麻衣子さん、素敵だな……!)  そんな隣の美人妻に顔が火照り、今にも鼻の下を伸ばしてしまいそうになりながら、俺は懸命によそ行きの態度をキープする。 【麻衣子】 「でもありがとう。せっかくだから遠慮なくいただいておくわね。お母様にくれぐれもよろしくね」 【貴志】 「あ、はい……ど、ど、どうぞ、よろしくお願いします!」 【麻衣子】 「フフ、緊張しない、緊張しない。お隣さんなんですもの、リラックスしていきましょ? ほら……」 【貴志】 「あ……」  慣れない挨拶についどもりまくってしまうと、麻衣子は見かねたようにクスッと笑い、おもむろに近づくや、両手で肩を揉んでくれる。 【貴志】 (うわ……うわあ♪) 【貴志】 (超至近距離……! 綺麗な顔が、こんなに近くに……! み、見ちゃダメだ! ああ、それにしても……いい匂い!)  こんなに近づいてもいいのかと思うほど大胆な距離まで近づかれ、面食らった俺は、不様なまでにガチガチになる。 【麻衣子】 「あら、よけい固くなっちゃった? フフフ、可愛い……」 【貴志】 「あ……」  そんな俺に、麻衣子はますます面白そうに妖しく笑んだ。  濃密色香を鱗粉のように振りまくその魅惑の笑顔に、俺は脳髄の芯をうっとりと麻痺させる。 【貴志】 (か、可愛いとか言われちゃった! うわあ、緊張するなあ……) 【貴志】 (なにか、話した方がいいのかな。えっと……ああくそ! 緊張しちゃって何も出てこない!) 【貴志】 「あ、あの……!?」 【麻衣子】 「うん? なに?」 【貴志】 「えっと……その――」 【???慎一郎】 「どうした、麻衣子ー? お客さんかあ?」  すると、開け放たれたままだった夏見家の玄関の奥から、快活そうな男の声が聞こえた。 【貴志】 「あっ……!」 【麻衣子】 「大丈夫、夫よ……ええ、新しく引っ越してきたお隣さんがご挨拶に見えてるの」  動揺する俺に優しく微笑むと、麻衣子は肩から手を離し、奥に向かって声を大きくした。 【???慎一郎】 「……やあ、どうもどうも」  すると奥から、麻衣子の夫だという男の人が姿を現す。 【貴志】 (……この人が……麻衣子さんの……)  温和で気さくそうなその容貌を目の当たりにした俺は、本当に結婚してる人だったんだなぁと今さらのように思いながら、初対面の麻衣子の夫に頭を下げた。 【貴志】 「初めまして。色島と言います」 【慎一郎】 「夏見です。よろしく。学生さん?」 【貴志】 「あ、えと……」 【麻衣子】 「それはもうさっき私が聞いたわ。あとで話すから。えっとね、こちらは貴志くん。でもって、こっちは私の夫の慎一郎です」  答えに窮した俺に助け船を出すようにすかさず間に入り、麻衣子は手際よく、俺と旦那の双方に、それぞれのファーストネームを紹介する。 【貴志】 「慎一郎さん……よ、よろしくお願いします」 【慎一郎】 「こちらこそ。よろしくね、貴志くん。困ったことがあったら、何でも言ってきて」 【貴志】 「はい、ありがとうございます。それじゃまた……」 【麻衣子】 「ゆっくり休んで。わざわざありがとう」 【慎一郎】 「おやすみなさい」 【貴志】 「は、はい。お休みなさい……」  にこやかに麻衣子に手まで振られ、俺は夏見家の二人と笑顔で別れた。 【貴志】 「……旦那さん、気の良さそうな人だったな。そうか、あの人が毎晩、麻衣子さんとセックス――」 【貴志】 「ていかんいかん! 俺ってば、何をいやらしいこと考えてるんだ。あー、それにしても羨ましいなぁ……」  綺麗で色っぽくて、気立ても良さそうな隣の美人妻に改めてため息を零し、俺は自分と慎一郎との彼我の差に、ちょっぴりやるせなさを覚える。 【貴志】 「……さて、ブルーになってる場合じゃないぞ。まだまだ、3軒も挨拶をして回らないと」  肩の力を落としかけた自分に発破をかけ、俺は次の家に挨拶に向かった。 次回に続きます。

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