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202301_RitsukaFujimaru(JapaneseShortStory)

「あの…やはり先輩に今の状況を客観視して頂いた方がいいのでは…」

「うん~…だけどねマシュ、立香ちゃんもれっきとした一人の女の子だ。伝え方を配慮しないとショックでバタンキューもあり得る……けども…」

「「はぁ…」」

西暦2019年、件の人理焼却事件を乗り越えたカルデア一行は約2年間、異なる年代異なる場所に発生した微小特異点の修復業務に追われつつも、一時期に比べれば平穏そのもののような日々を送っていた。

だいたいの特異点はマスターのレイシフトから2,3時間もあれば解消される。そして元の歴史に修復されるまでのちょっとした時間に、マスターは「んじゃ、ちょっとそこらへんブラついてくるね~」と緊張感もまるでなくレイシフト先の散策をした後に帰還。

これがここ数年のカルデアの日常だ。

というのに、この日もまた前日、前々日と続いて、管制室では「人類最後のマスター・藤丸立香のファースト・サーヴァントであり、普段は真面目で可愛い“後輩”」のマシュと「カルデアの技術顧問であり召還英霊第三号」のダヴィンチちゃんの溜め息が溢れていた。

その溜め息の原因はというと…

「ぷはぁ…!ただいまぁマシュ、ダヴィンチちゃん!まさかインドにレイシフトしたら本場のカレーを食べれる日が来るなんて思ってもみなかったよ~。流石の私も五杯目でお腹いっぱいでさ~」

カルデアの制服ごしにカレーがたんまりと蓄えられたお腹を擦りながら管制室に歩み入るその人、藤丸立香だった。

ポンポンっとお腹を叩きながら今日の旅の出来事を愉快に語る彼女に反して、マシュとダヴィンチは互いに目配せをしながら「アハハ…」と苦笑い。

二人の内ではまさにどっちが話題を切り出すかで「人生経験豊富なダヴィンチちゃんにお任せします」「いやいやそこは立香ちゃんのパートナーとしてマシュが…」という視線討論が行われていた。

「~でさぁ、…ところで二人とも何かあった?なんか真剣そうにしてるけど…?」

ギクッ

立香を前に彼女の話を流すように聞いていた二人は背筋を伸ばす。テキトーに聞いてた、なんて言おうものなら「あのマシュとダヴィンチちゃんが!?」と余計に心配されかねない。数秒考えた末、無言の圧に負けたマシュが口を開くこととなった。

「あの…先輩。大変言いにくいことなんですが…」

「何々?私でよければ話聞くよ?」

立香の目を見ることができずモジモジとしているマシュに、立香は自分が原因だと知るよしもなく更に歩み寄る。

「その…」

「ん…?」

「…先輩、少しだけ…ふっくらしました、よね?」

「えっ…」

思いきって言ったマシュの一言に場の雰囲気が一瞬凍てつく。「ついに言った!」と言わんばかりに目を見開くダヴィンチちゃんに、「言ってしまいました、私…」とじっとしていられなくなりつつあるマシュ。

だがその微妙な空気感もすぐに元通りになる。

「…あぁ!そうそう!最近はよく寝られるし肌艶も良くなってきてね~、うるおいマシマシ…みたいな感じかな?やっぱり分かっちゃうか~!」

もちっとした自分の頬をツンツンと指で触れ、肌の弾力をアピールする立香だが、残念ながらマシュが言おうとしたのはそういうことではない。

「立香ちゃん、悪いんだけど…最近体重計は乗ってるか聞かせてもらってもいいかな?」

的外れな反応をするマスターに耐えかね、今度はダヴィンチちゃんが言葉を発する。

「ぇ、体重計?んーそうだなぁ、最後に乗ったのいつだかすら覚えてないかも……なんで?」

「ん、あぁやっぱりか…立香ちゃん、君、だいぶ太ったよね?」

……「太った」の一言に今度は完全な静寂が三人を包み込む。管制室にはまるで人などいないかのような、機械音だけが反響していた。

「い、いやいやいや!そ、そんなわけ…!私毎日運動だってしてるしそんな…」

「うん、間違いなく太った。誰が見ても分かるくらいにはね」

「誰が、見ても…私…」

狼狽える立香に天才が冷静に一太刀入れる。それは何の問題もなく立香の精神に致命傷を与えるに足るものだった。

「ダ、ダヴィンチちゃん!それ以上は先輩が…!!」

「マシュ。ここはやっぱりちゃんと伝えないとダメだ。今の立香ちゃんは平和慣れしすぎて知能指数が下がってる。オブラートに包んだ言い方じゃ、この先更にマスターがブクブク太ってしまうよ」

「そ、それは…そうですが…」

ダヴィンチの猛攻を止めに入ったマシュがいつの間にか言いくるめられ、その様子により一層立香は衝撃を受ける。

「ブクブク、太っ…そんな!」

「じゃあ立香ちゃん、体重計、乗ってみようか?マシュ、すまないが持ってきてくれるかい?」

はい、と応答したマシュがすぐさま体重計を用意すると、まるで最恐のお化け屋敷に入るような足取りでマスターは板の上に素足を乗せた。

ギシッ…

「や、やっぱり大丈夫だよ…!もう降りても…」

「ダーメ、まだ計測中だ。君も自分の現状をしっかり目に焼き付けないとね」

いざ現実を見るとなると物怖じし離れようとする立香をダヴィンチは制止する。もう数秒の辛抱だ。

ピピッ

「は、はちじゅ…に…!?」

平均体重より数十キロと重くなった身体がそこにはあった。少なくとも自身はまだ50キロ台だと思っていた立香にとって予想外も予想外。

人によってはぽっちゃりの範囲だと言うだろうが、概ねデブと形容されてもおかしくない図体になってしまったのだと自覚し、目の前が真っ白となっていた。

「先輩…!先輩…!!」

もちっと膨らんだ肩から二の腕にかけての部位をマシュが触れて心配しても、しばらく応答がなかった。

「さてと…すまない、立香ちゃん、君がレイシフト先で消費カロリー以上に現地の美味しい食べ物をたらふく摂取していたのを私たちは知っていた。もっと早く君に伝えるべきだったよ…

っと、丁度いいところに、呼んでいたサーヴァントが来てくれたみたいだ」

申し訳なさそうに悔いつつも現状の打開を試みたダヴィンチが、管制室の外に迫る気配に気付き立香に告げる。マシュの呼び掛けの甲斐もあって我に返った彼女は「万能の才人」が呼んだというサーヴァントの面々を見て、その後の展開を察することとなった。

「とぅ!!マスターの窮地と聞き馳せ参じましたとも!!我が盾、ここぞとばかりに輝いておりますぞ!!」

「ハーイ!!またマスターに手を貸せる時が来たと聞いて私、飛んできました!サンバの時間デース!!」

「全く、女神としての品が足りませんわね。ですがそれはそれとして。マスター、あなたのそのたるんだ身体、私が鍛え直して差し上げますわ!!」

管制室の扉を勢いよく開けたかと思えばサーモグラフィカメラで見なくとも分かるくらいの熱気を纏ったレオニダス一世がズカズカと踏み込む。その後ろにはいつぞやのクリスマスを思い出させる装飾に溢れた衣装に身を包んだケツァル・コアトルと、その彼女の豪快さに呆れつつも凛とした中に熱気を含んだアストライアがいた。

「ほぅ…なるほどなるほど!これは確かに窮地!!減量は必須でしょうなぁ!!」

「あらあら、暫く見ない間にこんなに肥え太っていたなんて、私知らなかったデース!」

「なんですの?この柔らかく膨らんだ腹は?どこを触っても贅肉贅肉ではありませんか!」

ジロジロと立香の身体を見回してはまるで透視したかのようにマスターの状態に頷くレオニダス。

ぶにゅ、ぶにゅん。

もっとも人体で大きな筋肉がついている脚を中心に揉み、その二回り以上は以前から太くなった太ももに激太りの事実を確認するケツァル・コアトルと、更にはでっぷりと膨らんだ立香の腹を鷲掴みしたかと思えば、次は背肉を掴むアストライアなど、三人による入念なボディチェックが始まる。

82キロのワガママボディを包む制服は前が締まりきらずチラチラと腹が衆目に晒される。元から他人よりは大きかった胸が更に膨らんだのは、カルデアの男性職員や一部のサーヴァントにとって眼福に映っただろうが、その急成長に付随して、ストッキングが食い込んだ太ももはパンパン。二の腕は着実に脂肪を蓄えはじめており、輪郭の丸くなった立香の身体はまさに「でっぷり」な状態にあった。

ぶにゅ、ぶにゅん!

「あっ、あぁ…!!ちょっと!二人とも強く、揉みすぎっ…!ぁあ!レオニダス王もあんまり、見ないでぇ…!」

筋肉と肉体美が全面に押し出た三人による無意識の羞恥プレイにマスターの息はどんどんと上がっていき、みすぼらしく肥えた身体に汗が浮かぶ。

「マ、マシュ…!見てないで三人を止めてよぉ~!」

サーヴァントたちの来訪により一歩引いていたマシュにとうとう立香のヘルプ信号が向けられる。

汗だくになりながら全身を揉み調べられ、息を荒くしているマスターを見てマシュはなぜか紅潮する。

「ダ、ダヴィンチちゃん…これは先輩が流石に…」

「まぁ30キロも太った立香ちゃんには、これくらいの体験をしてもらわないと痩せるキッカケにはならないからね~。これまでニューヨークやらルルハワやら、夏の海やリゾート地で暴食に耽ってきた分のツケ、ってね」

小悪魔的に笑うダヴィンチちゃんに策士の側面を垣間見ながら、マシュも思い当たる節があるようで脳裏にその情景を思い浮かべ納得する。

<figure></figure>

件の焼却事件の頃は自身の身を犠牲にするほどの働きをしていた立香が、近頃は自分のために生きているという様子を間近で見ていたマシュにとってはどうも複雑な心境だったが。

「わ、分かった!痩せる!私、痩せるから~!だからマシュ、助けてぇ~」

「ほら、マシュ。君のマスターが呼んでるよっ」

「は、はい!先輩…マスター!大丈夫ですか!?」

80キロを超えた重量級ボディから発せられた助けを求める声に、ダヴィンチがマシュの背中を押し向かわせる。

内心、平和な日々のありがたさを感じ取っていたダヴィンチであった。

---これが今から半年前の話。

藤丸立香

身長:158.4cm

体重:82.1kg

スリーサイズ:B108.9  W94.4  H96.2

§§§

午前7時、食堂の厨房では早朝にも関わらず、にんにくの効いた揚げ物の香ばしい匂いと、大きな中華鍋を振るうブーディカの姿があった。

「ふぅ~!はい、おまちどーさま。唐揚げと…よいしょっ…!特盛チャーハンだよ。冷めないうちに召し上がれ」

油から上げられ余熱でしっかりと中まで火の通った唐揚げが、照明の光でキラキラと輝きながら卓上に到着すると、今度は丼状の器いっぱいに盛られたチャーハン、がシェフの掛け声で持ち上げられテーブルに着く。一見するとパーティー用の食事のようだが、これを毎朝のように平らげて去っていくのは一人だった。

「ブーディカお疲れ様~!今日もおいしそー!早速…いただきまぁ~あむっ!!ん~!!おいひぃ~!やっぱ、ぶぅでぃかのりょうり、たべるてが、とまらないよぉ~!」

ガツガツ、モギュモギュ…!!

ハムッ、むぐむぐ…ごっくん!

そこそこの長さの暖色の髪をシュシュで横に留めたその人は、スプーンを口に運ぶとものの数回咀嚼してチャーハンを飲み込む。少し食べるペースが落ちたかと思うと、前もって準備していたと思われる「焼肉のたれ甘口」をチャーハンの上にドバッとかけて混ぜる。推定5キロ近くある特大の山をそうして毎朝胃袋に叩き込むのだ。

大きく膨らんだ背中にカルデアの制服がギリギリ耐えているようでいて、いつ縫い目から裂けて服が破れてもおかしくない。更にそれ以上大変なことになっているのは正面の姿だった。ベルトで前を固定するタイプの制服のはずが、肝心のベルトがちぎれそうなほど腹が出ているせいで、服全体がせりあがり、まるで胸下・腹部の上を覆っているだけにしか見えない。おまけに肥満体でなければ爆乳と評されたであろう胸に耐えきれず、胸元は制服がはだけていた。

「ぶふぅ…むぐっ…ごくっ!

あむっ…おいひぃ…もぐもぐぅ…げぷっ

…ごっくん!ぶはぁ~、ごちそうさまぁ~!おなか、いっぱぁい!」

大食いと早食いを同時に行われていたその巨体には滝のような汗が流れており、制服が肌にくっついている。口元のご飯粒をブーディカに取ってもらうと、彼女は内心デザートも頼みたいという気持ちを抑えて、席を立つ。

「んしょ…っと!ふぅ…満腹満腹ぅ!ブーディカ、また料理の腕上げたよね~」

「そう?ありがとマスター!でも…マスター、流石にその身体は……ねぇ?毎日私の御飯を食べてくれるのは嬉しいけど、太りすぎには気をつけて…ね?」

席を立ち食事前より一段と膨れた腹を撫でては、大きな二段腹の間、すなわち横に潰れたへそのラインに履いた(?)スカートのズレを直す彼女を見て、ブーディカは苦笑いしながら言った。

腹を撫でる手には見慣れたマスターの証、令呪が刻まれていた。そう、藤丸立香はあれから更に太ったのだ。

「ん?あ~大丈夫大丈夫!毎日食後にレオニダス王たちと厳し~いトレーニングしてるし、むしろ前より筋肉がついて身体がおっきくなったかも!」

そう言い自慢げに力こぶを見せようとする立香だが、ブーディカにはそれがただの二の腕についた皮下脂肪の山にしか見えなかった。

「あ~えっと…うん、とにかく頑張って!お姉さん応援してるよっ…!(あとでマシュに相談しようかな……)」

終始苦笑いのブーディカに違和感を覚えつつ、マスターは食堂を後にする。幸いまだ時刻は午前7時半と、いくらカルデアとは言えどこの時間に廊下へ出ている者は少なく、この日も誰ともすれ違うことなく、王たちと約束のトレーニング場所へ向かう。といっても、午前中のトレーニングは階段を4階分登り下りするだけなのだが。

「ぶふぅ…あっつい…最近暖房キツすぎないかな…歩くだけでも暑くて息が上がる…」

<figure></figure>

赤ん坊の手のようにむちむちとした肉付きの手で額に浮かんだ汗を拭う。べとっとした油汗だが臭くはない。食堂を出ていくらか経った頃、前にせり出た腹肉をたぷんたぷんと揺らしながら立香が歩くと前方に人影が見えた。

「先輩!!こちらに来てください…!もう見逃しませんからね…!」

立香にとって便りになるパートナー、マシュだ。だがかなり怒っている。そして立香にはその怒りの理由が分からなかった。

「ちょ!?ちょっと待ってマシュ!げぷっ、歩くの速すぎ…!!」

「うっ…!にんにくの匂い…!!も、もう!私が速いのではありません!先輩が遅いんです!」

弾力満点の手を握り前を歩くマシュに、立香はついていくのでやっとだったがその最中、不意に溢れたげっぷに反応してマシュの表情が曇る。「マシュのこんな表情、ランスロットに向ける時くらいしか見ないのに」とマスターは不思議に思っていた。

「着きましたマスター!どうぞ!!」

「着きました、って…ここダヴィンチちゃんの工房だよね?私、この後レオニダス王たちと運動の予定が…」

パートナーに連れられ着いた場所は、カルデアの一室として普段ダヴィンチちゃんが研究や実験を行っているラボ、すなわち魔術工房だった。時刻は8時前。もうすぐ約束の時間だと立香は告げるが、その予定は棄却されることとなる。

「いえ、今日はみっちり!私とダヴィンチちゃんで先輩に指導させていただきます!!なのでどうぞ!!」

指導という言葉に馴染みがなく、きょとんとする。

「どうぞって…?それに指導…」

未だに状況を飲み込めないでいる彼女をよそに、マシュは工房のドアを開ける。

「おっと、ずいぶんと速い連行ご苦労だったね、マシュ」

「いえ、ダヴィンチちゃんこそ急な連絡に応えて下さりありがとうございます」

ズイッと回転式のチェアを工房の入口に向けると、そこに腰かけていたダヴィンチが興味深そうに立香の方に目をやる。「久しぶりに見たと思えばこんなにも…」という目だ。

そして、部屋の中で話す二人の手前にはご丁寧に体重計が既に用意されていた。

「さっ、立香ちゃん、乗ってくれたまえ」

「先輩!どうぞ!!」

そう、先ほどからマシュが言っていた「どうぞ」とは体重計に乗ることだったのだ。だが未だになぜその必要があるのか立香には分からなかった。とはいえ逆らう理由も思い当たらないので土足のまま板に乗ることとなった。

ギシッ、バキバキッ!!

悲鳴を上げる体重計。一方、それに乗っている彼女の方は事態の深刻さにまだ気づいてない。

ギギッ…ピピッ

か弱い電子音が測定終了をその場にいる者に教える。

「ん…終わった。どれどれ…あれっ見え、ない…」

足元の数値を見るために視線を下に向けるがこの先にあるのは立香自身の大きく膨らんだ胸と脂肪の蓄えられた腹。

そうしている内にマシュが正面に立ち、先に驚異の数値を読み上げた。

「171キロ…先輩…これは流石に……」

耳を疑う。そんなわけ。

だがマシュは若干引きぎみで、そんな彼女の様子を見ると立香にも現実と向き合わねばならない気が起こる。

「いやいやそんな…」

バキッ…!

体重計から乗りて一歩退いた状態から自身の重さは確認する。だが真実はマシュのいう通りだった。

「ひゃくなな…じゅう…!?」

その瞬間、立香の中で全てが繋がる。自身の食べた料理やブーディカの不思議な反応、怒っていたマシュに興味深そうにこちらを見ていたダヴィンチ。それに異様なほどの暑さと体表を流れる油汗。そして自分の身体への違和感。

「私…太ってる…?」

ブーディカに力こぶを見せていたつもりで実はただたるんだ二の腕を露にしていたのだと知り、穴があったら入りたい気持ちになる。そう、自分は以前にもまして太ったのだ。それもかなり。

「はい…先輩はその……太っています」

「ああやっと気づいたかい?立香ちゃんは太りすぎだね…」

二人の言葉にダブルパンチされ、自分がデブなのだという確信が更に強くなる。だが…

「で、でも…私ちゃんと運動してるし、レオニダス王とケツァル・コアトルとアストライアとだってトレーニングを…」

「でもそれ以上に食べてるだろ?それにトレーニングもどういうわけか今の君に合わせて簡単なものになってるみたいだ…」

運動の事実を伝えると、それ以上に食べて食べて食べまくっていた自分の現実に直面する。

「……皆、運動の前にはがっつり食べていいって…」

「その…先輩?ものには限度というものが…」

言い返すものも、現実を覆す術もなく、彼女は自身がしてきたことがダイエットとは真逆の「デブエット」だったと知り唖然とする。

171キロで全身くまなく贅肉をつけてきた立香の身体が地に崩れる。ドスンッという着地音と共に、ウエストに巻かれていたスカートはホックが飛び、制服においてかろうじて腹部の上ではだけないように繋ぎ止められていたベルトが2本、バチンと鳴って千切れた。それによって全ての拘束から解き放たれた腹肉が、無惨にも大きく前にぼよんと突き出て衆目に晒された。

その場のなんともいえぬマスターとマシュの悲壮感と、ギャグのような展開に笑いを堪えるダヴィンチの様子が混ざった異様な雰囲気は詳しく述べる必要もないだろう。

そう、ただただ、藤丸立香は痩せられないのだ。

藤丸立香(半年経過)

身長:158.5cm

体重:171.3kg

スリーサイズ:B170.7  W176.3  H182.1

§§§

それからまた1年。この頃にはほぼ特異点の発生もなく、カルデアは平穏な日々を送っていた。まるで人理焼却事件など元からなかったかのよう。ただ件の事件の前後で違っていたのは幾らかの面々が帰還していないこととカルデア内にサーヴァントが増えに増えたこと。そして…

ドスンッ…ドスンッ…

「ぶふぅ…ふぅ…も、もうづがれだぁ……げ、げんがいぃ~」

決して広くはない廊下だが、その半分を占めるほどの巨体でのそのそと、全身の肉を揺らしまくりながら歩く影がひとつ。

目鼻立ちは可愛らしいが、一般人から見ればその巨大さと全身に付いた脂肪の多さからまず普通の人間とは思われないだろう。だが彼女こそが件の事件における功労者の1人であり、人類最後のマスター・藤丸立香だ。

<figure></figure>

「ぶふぅ…マシュ…あとどれくらい…?」

「はい、もう少しの辛抱です、先輩」

200キロ手前にしてギリギリ着れていた制服やスカートは今や飾りのようでその身体はほぼ半裸に近くなっていた。長袖だった制服は、まるで枕のように膨らみ力こぶはおろか、筋肉の存在が感じられないほど太く肥えた二の腕があるせいで半袖のよう。更には前を留めることもできず、インナーを着ていなければ、何なら合うサイズがないという理由でブラジャーをつけていない現状を鑑みると、危うく胸が丸見えになっていてもおかしくない。

そして、以前は二段腹の谷間に履くというよりも巻いていたスカートは、急激に腹部に脂肪が蓄えられた影響で巻くことすら難しく、もはや片足にだけしかも太ももと尻の肉を溢れさせながら辛うじて履くことしかできていない。無論、タイツは肉と肉の摩擦で穴だらけとなっていた。

「クンクン…いい匂い…!ふぅ…ぜぇぜぇ…」

「もう少しです!あと50メートルですよ!」

のそのそと波打つ全身の肉をかばいながら亀のように歩く立香とその前で先導するマシュ。彼女たちの向かう先は立香の嗅覚が捉えた匂いの元だった。

豚骨ラーメン、肉団子、カルボナーラに皿うどん

ちゃんぽん、唐揚げ、ドリアにフライドチキン

和洋中、様々な種類の料理が物凄いスピードで調理され、広々としたテーブルを瞬く間に埋めていく。

凶悪なまでの濃い味付けの香り。常人が食べれば間違いなく身体を壊すだろう。だがこの人にはそうはいかなかった。

「ぶふぅ…どうちゃーく!ふぅ~づがれだぁ…」

滝のような汗で肌に光沢が見えながらも、マスターはようやく着いた食堂で、その料理が並んだテーブルの前に行くと雪崩のように席に座る。

バキバキバキッ…!!

200センチを優に超える肉の塊のような尻が横並びに2つ揃えられたプラスチックの椅子に着弾すると、当然ながら椅子たちは悲鳴を上げる。座れたとしても1脚あたり150キロが限度だろう椅子に対して、立香の体重は重すぎるのだ。二つの椅子に腰を下ろすのでなければまず椅子が耐えられない。

この一年で、170キロだった彼女の体重はおよそ更に100キロ増加し279キロにまで至っていたのだから。そしてその増加分はほぼ全て贅肉である。

「お疲れ様です、先輩。お身体拭きますね」

ズシンと席に座って呼吸を整える立香の横からマシュの腕が伸び、その手に握られたタオルが彼女の肌に触れる。

ぶにゅん、ぼゆん!

肉の付きすぎで厚い二重あごと頬肉で包まれた丸顔から、胸下、お腹の段やじっとりとしたへそ回り、下腹部まで、マシュの握ったタオルがここぞとばかりに汗を吸いとっていく。その過程の中で、触れられた身体は柔らかいボールのような弾力で触れる力と等しい力でタオルを押し返す。若さ故の肌のハリだろう。

「はーい、お待たせ~ハンバーグカレーだよ、これで全部かな…じゃあ冷めないうちに召し上がれ!」

この日も厨房の担当は変わらずブーディカだった。変わったところといえば、これだけの量の料理をしているためが、元々グラマラスだった彼女の体型が少し引き締まったことくらいだろう。

「お疲れ様です。いつも先輩の為にありがとうございます、ブーディカさん」

「あぁ良いの良いの!私のことは気にしないで!私の作ったご飯を美味しそうに食べてくれればそれで十分!…にしても、マシュもマスターも大変だね~」

厨房担当の苦労を表情から読み取ったマシュはブーディカに深くお辞儀をする。というのも立香のこの食事はこの日だけの特別なものではなく毎日の習慣となっていたのだから。

一年前、本人は痩せているつもりだったが結果的に激太りをマスターが遂げていたあの後、ダヴィンチの手によって改めて立香の身体がくまなく検査された。170キロもあったら何かしら健康を損なっていてもおかしくなかったからだ。

だが、結局のところ、彼女の身体に一切の不調や病の兆しはなく、むしろ全ての数値が(体重とスリーサイズ以外)正常値を示していた。そしてそれは今も続いている。

すなわち、よく「100キロを超えるのは才能」と言われるように、藤丸立香は天性の太る才能に恵まれていたのである。

ともなれば、食欲を抑えきれない彼女を止める理由もなく、マシュとダヴィンチは協議の末、適度に身体を動かしながら立香の好きなように食べさせることとした。

その結果がこれである。

「やったぁ~!んじゃ、いただきまぁ~ふっ…んぐんぐっ…うまっ!今日の料理もっ、あむっ、しゃいこうに、おいひぃ…!!はむっ!ごくりっ…あむっがぶっ!」

山盛りの料理を大皿ごと手前に寄せると、利き手に箸を持ちつつ、空いた片方の手で油の乗ったフライドチキンなどを掴み口へ運ぶ。まさに間髪入れることなく、彼女の頬は食べ物でパンパンに膨らんでおり、それらは肉で埋まった首から喉を通ると、人並み外れた胃袋へ流し込まれ腹部を満たしていく。

ガブッ!じゅるじゅるじゅるぅぅう!!

はむっ!むぎゅむぎゅ…あむあむっ!

ごっくん!……げぶふぅ…!!!

うっ、げっぷでちゃったぁ…

若干汗臭い身体で必死に食べ物に食らいつきながら、時に盛大なおくびをする。フードファイターも顔負けの勢いで食を貪るその様子からは彼女が人理を救ったものだという印象は受けられない。

だが、そんなことは今の立香にとってどうでもよかった。

あむっ!じゅぼぼぼぼ!!

ガブッ!じゅるっ…もぎゅもぎゅ!ごっくん!

げぷっ、ぶふぅ~!ごちそーさまぁぁ!

もう食べられないよぉ~

ぼゆん!ぼよんっ!

元から圧倒的な存在感を発していた二段重ねの腹が、完食に至る頃には丸々とし、バランスボールのようにパンパンに膨らんで詰まっていた。それにも関わらず、立香が自身の手で腹を叩いたり撫でたりすると、波打つくらいには皮下脂肪が付いているのだから、固さと柔らかさが両立していて不思議だ。

「ぶふぅ…!お腹重っ…!また太っちゃうかもね~…まっ、いっかぁ」

悪びれる様子もなく、ふぅ~っと脱力する。

彼女が痩せる日はいつ訪れることやら。あるいは、藤丸立香は痩せられないのかも、しれない。

藤丸立香(約一年半後)

身長:158.9cm

体重:273.9kg

スリーサイズ:B222.3  W246.9  H227.1

――――――――――――――――――

今回は特別に、過去絵リメイクを超えて増量バージョンを描き下ろしてみました!

2021年夏→2022年初頭→2023年初頭と、約一年ずつのイラストでまるでシークエンスのような出来に…!

3年弱絵を描いていると、同じキャラを描いたときにこういう楽しみも味わえるんですねw

皆様もお楽しみ頂けていましたら幸いです!

ではまた来月のSSで…!

【リマインド】

※SNSでのトレスや模写等の公開はお控えください。

※二次配布・他人譲渡・無断転載は有償・無償問わず禁止しています。AI学習やAI画像生成への利用もお控えください。

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202301_RitsukaFujimaru(JapaneseShortStory)

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