WEB版の21話が公開されました。
とうとうペットが出てきてしまいましたね。
実をいうと遺棄動物を拾うというストーリーアイデア自体は描き初めの頃からあったんです。憂鬱な生活を抜け出すならどこかで自分が生きつづけるべき責任を得る必要があると思っていたので。
とはいえ初期の美夜子さんはそもそも外に出ないし、捨て猫を見つけても気をやる余裕があったかどうか怪しいので、そこそこ周囲の環境にも恵まれ始めてからのエピソードにする予定でした。
要約:「もっと上手に生きろ」
これはコンビニバイトは責任の軽いポジションだから気にするな……というだけの話じゃなくて、たとえば道端のゴミを見つけた時に
「自分一人が良いことしたって何も変わらない」
「そもそも自分の責任じゃない」
とか考えてそのまま放置したりしますよね。
もっと拡大したら、遠い国の戦争や貧困を情報として見知っても同じことをみなさん思うんじゃないでしょうか。
私もそうです。現実に問題があると知りながらどこかで諦めないと目の前の人生を生きていけませんからね。
それでも人によっては、美夜子さんみたいに上手く割り切れなくてモヤモヤしてしまうものです。
ところが目の前に「明らかに弱っている存在」が現れてしまったら、やっぱり美夜子さんは無視できなくなるわけです。自分にできることがあると思った瞬間、「できたのになにもしなかった」という罪悪感が生まれてしまうから。
とはいえ世の中そんな個人感情で解決する問題なんてありません。
この獣医さんもそういうことを日常的に体感してると思います。
それでもスパッと言ってくれる人は逆に優しいですよね。
(にしてもメシ食わねぇなこの漫画)
なんにも悪くないのに悪いことをしたような気分になる「生真面目さ」が彼女の大きな構成要素だと思って描いています。
この世界を上手に生き抜いてる人たちは上2コマのように視点を切り替える器用さを持っていますが、
彼女は不器用なのでそれが苦手です。
どんな問題も「自分事」として捉えてしまいます。
この愚かなまでの責任感が生きづらさの元凶でもあり、彼女の抱える1番の悩みでもあり、
柊美夜子という人間をみんなが信頼してくれる理由でもあります。
きっと読者のみなさんも、世間の辛さを割り切って斜に構えたコンビニ店長より、この真面目で哀れでどうしようもなく生きるのがしんどい女性と一緒にいたいと思うんじゃないでしょうか。(おっぱいの引力は別問題として)
今回のお話は美夜子さんの根本的な人間性を濃く描けたのと、遺棄動物の扱いについて自然と伝えることができたのでよかったです。
それと獣医さんによる手続き説明のくだりで「殺処分」という言葉がありましたが、実は打ち合わせ段階で当時の担当さんから「もう少し表現をマイルドにした方が……」という打診がありました。
普段わたしは編集さんの方針には割と素直に従う方で、こうした細かい表現温度も柔軟に変えているのですが、この時だけは初めて
「絶対にダメです。きちんと現実を伝える表現にしたいです」
と譲りませんでした。
ここを変にボカしてしまったら、それこそ保健所にある動物処理用のガス室を「ドリームボックス」と呼ぶような馬鹿げたプロパガンダと同じだと考えているからです。
そもそもネガティブな情報の演出も最低限のセリフだけにとどめてるし。
(もし遺棄動物系の詳しい話をした漫画が読みたい方はPixivに過去作があるので読んでみてね。ちょっと辛い話なのでご注意ください)
→「ドリームボックス」 https://www.pixiv.net/artworks/68758516
さて来月のWEB版ですが、年末に病気で臥せていた影響で更新がお休みです。
単行本もおそらく5月ごろ発売とかなり遅いです。すまん。
限定Discordの作業配信でもここで書いたようなこぼれ話をちょくちょくしてるので、興味のある方は遊びに来てくださると嬉しいです。
瑞穂 仁
2025-03-01 06:06:56 +0000 UTC