【ss/FGO アルトリア】賭け
Added 2020-06-21 14:16:37 +0000 UTC某特異点。 非日常感漂う美しいリゾート地に、優雅にそびえ立つカジノ・キャメロット。 一攫千金という淡い夢を見て、毎日多くの客がその門をくぐっている。 その中には、オーナーにして無敗のギャンブラーと噂されるアルトリア・ペンドラゴンとの直接対決を望む者もいた。 アルトリアとの勝負で賭けられる額は、数千万から数十億にもなり、勝つ事が出来ればまさに一攫千金。 …が、それを成し得た者は1人としていない。 アルトリア・ペンドラゴンが強過ぎるからだ。 死角がなく、高度な読みもイカサマも強運すらも、アルトリアには通用しない。 どんなプレッシャーにも眉ひとつ動かさないポーカーフェイスを前に、破れたギャンブラーは数知れず。 今夜の客もその一人であった。 "ここまでは"。 「まだ勝負を続けますか?」 高額勝負はVIPルームで行われ、高級感ある室内にはバニー服に身を包んだアルトリアと対戦相手。 対戦相手は高級品に身を包んだ美女で、身なりからその背景が伺える。 今夜のアルトリアとの勝負で彼女が失った額は500万。 だが、彼女にとってははした金なのだろう。 500万もの大金を失っても、余裕の笑みを崩さない。 「本当にお強いのね。お美しい上にギャンブルまで強いなんて素敵❤︎」 女はアルトリアを見つめる。 「ありがとうございます」 アルトリアは賛辞の言葉にすら、眉一つ動かなさい。 「…それで、続行されますか?」 「勿論よ。ただ…趣向と場所を変えましょうか」 「場を…?」 「ここは貴方のホームでしょう?貴方の思いのままに出来るじゃない」 「…何が言いたいのです?」 「いや…ねぇ、貴方が負け知らずのギャンブラーなのは、ホームで戦っているからに他ならないと思うの」 「…成る程。私が…カジノ・キャメロットがイカサマをしていると?」 「いやぁ〜、そうは言ってないわ。ただ、用意するトランプも貴方の物。場所も貴方の物じゃ疑われるのも無理ないんじゃない?道理でしょ?ん?」 見え見えの挑発。 自分の有利な場にアルトリアを引きづり出そうとする魂胆が透けて見える。 お帰り願おう。そう言おうとしたが、女が妙な事を言い出した。 「私、美人でしょ?」 「は?」 「だから、私美人でしょ?」 「……」 突拍子もない言葉。 何の脈絡も無く、自分が如何に美人か問う女。 アルトリアは表情こそ崩さないが困惑する。 「私ね、ある勝負で負け無しなのよ。無敗の美女な訳」 女は続ける。 「面白いゲームが開催されている裏カジノがあってね。あぁ、貴方のカジノみたいに立派なものじゃないわ。ただ、私にとっては夢の様な場所❤︎」 「…裏カジノ?」 「えぇ。そこで勝負をして、沢山の女の美貌を頂戴してきた訳❤︎」 「!美貌を…?」 「そうよぉ。…ねぇ、街にデブやブスが増えたと思わない?世俗に疎そうな貴方は分からないかしら?あれの大半は、私に美貌を吸い取られた元美人。笑っちゃうくらい惨めになってw」 「……。成る程」 アルトリアはくすりと笑った。 「…確かに貴方は美しい」 「あ、でしょでしょ?w」 「しかし、美しい容姿に反して品性の欠けた女だと思っていましたが、そういう事でしたか」 「……は?」 「見た目ばかり美しくなっても仕方ないでしょう。貴方に相応しい容姿に戻して差し上げます」 この女が言っている事が妄言ではなく本当なら、許される事じゃない。 アルトリアが、勝負に応じた。 *** 女に単独で着いて行くアルトリア。 部下達には少し留守にすると言い残し、護衛も付けない。 武力という点から見ても圧倒的な強者であるアルトリアに、護衛は不要。 彼女やその部下達には、"万が一がない"という慢心があった。 女に連れられた場所は、華やかなアルトリアのカジノと対をなすような地味な外装。 目立たない場所にあり、知らなければカジノと分からない。 しかし、その内装は赤を基調とした派手なデザイン。 思いの外広く、人が多い。 敵地に足を踏み入れたアルトリアは、ある1室に通された。 中心に卓と椅子があり、両サイドがガラス張りになっている部屋。 ガラスの向こうには大勢のギャラリー。 誰も彼もが嫌な目の輝きを放っていた。 「…」 アルトリアは壁を背にして座る。 女はこの場は中立的だと言う。 もし敗れたら、自分は美貌を失うと。 第三者が支配しているカジノだから、あくまで公平だと。 …そんな言葉は毛程も信じていない。 女は、ここへ何度も足を踏み入れているのだろう? ここで何人も陥れているのだろう? 怒りがふつふつと湧いてくる。 「さて、この部屋を美しい姿のまま出られるのは1人だけよ。始めましょう。ポーカーを」 「…ポーカーですか」 「えぇ、ドローポーカーでいきましょう。通常のポーカーとやり方は同じよ。親を決め、シャッフルし、手札を整えて勝負する。ただ、賭けるものが特殊なの」 「美貌、ですね」 「えぇ。具体的に言えば、体重を賭けて貰う。『レイズ、10kg上乗せする』みたいに宣言して賭けていくの。負けたら双方が上乗せした分太る」 「…失うのではなく、負債が蓄積されるという事ならば、どれだけ負けても勝負を降りない限り終わらないという事ですか」 「そう…かもね。その上乗せする体重だけど、青天井でいきましょう。それと、1ターンの持ち時間は1分よ」 「…分かりました」 「それと、もう一つ大事な事を話しとく」 「?」 「負けて惨めに姿を変えられた方も勝ってより美しくなった方も、元々そういう姿だったって事になる。現実が書き換えられるって訳。上手い具合にね」 「…そんな事が…」 「あり得るのよ。ま、やれば分かるわ。ここにいる一部の人間はそれを認識出来るけど、この建物の外の貴方の部下は認識出来ない。貴方が負けたら、アルトリア・ペンドラゴンは元々デブだったって事になるの」 ……万が一にも負けられない勝負という事か。 アルトリアは意を決して、「良いでしょう」と答えた。 「それじゃ、始めましょう。運命の1ゲーム!負ければ実質人生終了ねw」 女はそう言うと、新品のトランプの封を切る。 ドローポーカーに必勝はない。 読みや運もあるが、何よりタイミングのゲーム。 自分に良い手が入っても、相手が降りては意味がない。 自分に良い手が入り、相手も勝負に乗る。 タイミングが鍵を握るゲームだ。 そんな不確定要素を多分に含むドローポーカーで、無敗を誇る女。 まず間違いなくイカサマをしている。 …まぁ、それについてはアルトリアはとやかく言わない。 「(面白い)…1つ、ルールを加えていただけますか?」 「?」 「1勝負事にリシャッフルしましょう」 その発言の意図を、女は理解した。 「……えぇ、良いわ」 ポーカーにおけるイカサマは3通り。 すり替え、透視(傷を付ける等で印を付け、カードを把握する)、そしてシャッフル時にカードをコントロールするイカサマ。 毎度交互にリシャッフルする事で、どちらか一方が場をコントロールする事が出来なくなる。 「親は私ね」 互いに手にしたカードを開示し、数字の大きな女が先にシャッフルする。 続いてアルトリアがシャッフルし、女はそれを受け取ってカードを配り始めた。 新品のトランプの並びは規則的。 上手くシャッフルすれば、意中のカードの場所を把握する事も容易い。 女は意のままにカードを並べ、此方のシャッフルを観察し、多くのカードの位置を把握する事が出来るのだろう。 それくらいの能力がなくては、必勝という概念がないポーカーで無敗を誇る事は出来ない。 凄まじい技ではあるが、アルトリアはその上をいく。 経験値、記憶力、動体視力、直感。 全てが人間のそれを超えていた。 当然、イカサマも容易く見抜く。 「(…セカンドディール)」 親である女はカードを配る際に、一番上ではなく2番目をアルトリアに配った。 ギャラリーは気付いていないが、アルトリアの目はそれを捉えている。 「イカサマをしている」と言うのは簡単だ。 だが、黙認してしまっても良い。 これは"そういう勝負"だと、アルトリアは考えた。 「場代は1kgよ」 勝負に降りても、最低でも1kgは太る。 セカンドディールにより強いカードを手にしている女は「1kg乗せる」と当然降りる気はない。 「…受けましょう。2kg」 1回目の宣言を終え、カードを捨てた分交換する。 カードを交換した後は、互いにレイズ(相手より多く数字を乗せる。今回は青天井で上限無し)をし続ける限り上乗せが続く。 「3kg」 「4kg」 「…5kg」 「6kg」 女は困惑した。 シャッフル時にカードをコントロールし、セカンドディールで意中のカードを手にした。 それに、カードの配置も記憶している。 アルトリアの手札はワンペア。 女の手札はフォーカード。 「(…成る程、引かずに此方が臆して降りるのを待つ気ね。ふん、悪いけどブラフは通用しないわ。初回から20kg以上も太るなんて幸先悪い女w)」 女が上乗せをやめてコールし、2人はカードを開示する。 女は9のフォーカード。 アルトリアは… 11のフォーカード。 「は⁉︎」 「まずは1勝ですね」 「…⁉︎いや…おかしい、アンタのカードは…」 「何がおかしいんですか?まるで私のカードを知っているような口振りですね」 「!いや……それは…」 戸惑う女を、アルトリアは冷たく睨む。 「これは"そういう勝負"なのでしょう?貴方が始めた事です」 アルトリアがイカサマをしたのは明白。 …が、訴えようにも方法が分からない。 不自然な動きはしていなかった。 サーヴァントとしての尋常じゃない素早さ、ディーラーとして鍛えた熟達した動きは、凄腕と言っても人間の範疇に収まる女の目には映らなかった。 何より、イカサマをしたのは女も同じ事。 ここで騒ぎ散らすのはみっともないと、その程度の羞恥心は持ち合わせているようだ。 「(流石はアルトリア・ペンドラゴン…って事ね。上等じゃない…)」 これはアルトリアによる抑止。 貴様がイカサマをするなら、此方もイカサマを使う…という。 女は不敵に笑った。 すると、女の身体が… ぶぐんっ‼︎ 勢いよく膨らむ。 衣服が悲鳴を上げ、裂けたと思えば次の瞬間には太った身体にあったサイズに。 成る程、現実改変とはこの事かとアルトリアは女が太る様子を見る。 まるで風船が膨らむように、面白い程膨らんだ。 美しく、シャープな輪郭が丸くなり、女は僅か10秒程で90kg近い豊満な身体に。 うっすらと二重顎だが、まだ美人と言えば美人。 「…っ、次よ」 女は思いの外動揺していない。 肥満化に慣れているのが分かる。 …が、先程までの余裕が消えた事から、このゲームが中立的だという言葉に信憑性が出てきた。 彼女も、負けたらタダでは済まないのだろう。 同じ土俵にいるなら心理を測りやすい。 2ラウンド。 リシャッフルし、カードを手にする2人。 互いに山札を記憶しているが、2回目となると精度が落ちる。 繰り返すごとに、純粋な心理戦へと変わっていくだろう。 山札が分からなければ、セカンドディールなどは意味がない。 警戒すべきは透視。 あからさまな印を付けないとは思うが、油断はしない。 アルトリアは女の表情を観察し、勝ちを重ねた。 ーー6ラウンド。 アルトリアの体重は変わらない。 対して、女の体重増加は180kgを超えた。 「ふぅ…ふぅ…」 「まだ続けますか?」 「と、当然よ…!」 女は直情的で堅実さに欠ける。 全てにおいてアルトリアが上。 女のカードを持つ手は、どんどん丸くなっていった。 額に脂汗を浮かべて息を乱す姿に余裕など見られない。 7ラウンド。 勝ちが積もったアルトリアに、更なる強運が。 アルトリアの手に、フルハウスが完成していた。 青天井のポーカーは、勝ちを積み重ねる事はそれ程重要ではない。 勝てる可能性が高い時に多額を賭けて大勝し、相手を潰す事が重要。 一発逆転という危険な芽を潰す。 フルハウスは1時間に1回入れば良い手だ。 勝率は高い。 「(…しかし)」 ギャンブルにおいて、その思考が最も危険な事はアルトリアは分かっている。 …だが、これまでのゲームで相手がどういうタイプで、強いカードが入った際に出る癖等をおおよそ見抜いている。 僅かな口角の動きや視線の揺らぎ、上体の倒し具合、発汗…。 彼女の身体は、アルトリアに手札の中身を語りかけてしまう。 勿論、それは100%ではない。 それすらがブラフの可能性もある。 相手を知った気になり、強く出るのは危険。 だが… 「(……ここで終わらせましょう)」 悪戯に長引かせると何が起きるか分からないのがギャンブル。 今ここで潰す。 「50kg」 「…!…受けるわ55kg」 「60kg」 「…コール」 賭ける数字を落とした。 降りる程弱いカードではないが、自信がない表れか。 カジノ・キャメロット、そして、ここでのやり取りで、慎重さに欠け楽観的に考えるタイプだというのは分かった。 「…」 ……恐らくは、スリーカード……? 勝てる。 アルトリアは自信を持ってカードを開示する。 8が2枚、9が3枚のフルハウス。 女が止まった。 200kg以上の増量。 今180kgの女が200kgも増量したら…。 絶望的な結果に止まっているのかと、そう思った。 女がカードを開示する。 Aが3枚、13が2枚のフルハウス。 「…っ!」 「ふ…ふふ、私が何故勝ってこれたか分かる?演技派女優だからよ❤︎あはははは」 アルトリアが見抜いたとした女の癖は撒き餌。 アルトリアの読みは殆ど当たっているが、女はアルトリアが考える程軽薄ではない。 運、洞察力、決断力。 あらゆる面で女の上をいくアルトリアだが、演技力、狡猾さという点で上をいかれた。 ぶくっ、ぶくぶくぶくっ…! その差は紙一重。 されど、一敗。 一敗の現実を突きつけるように、膨れ上がる身体。 霊衣を引き裂く贅肉。 アルトリアのすらりとした美しい身体に、駄肉が蓄積されていく。 ほんの僅かな時間で…たった一敗で、僅かに勝負を焦った為に、アルトリアはずんぐりとした肥満体に。 ビリビリに破れた筈の霊衣は、まるでアルトリアが初めから200kgの肥満体だったと言わんばかりにぴったりと身体を包む。 肥満体にミスマッチな際どいバニー姿がギャラリーの笑いを誘う。 シャープな顔が丸くなり、ポーカーフェイスまで歪む。 「…っ、こんな…」 「あははは、ショックかしら?やぁっと人間らしいリアクションをしてくれた❤︎」 2000万、いや、2億の負けだろうとアルトリアは揺らがない。 それは性格的にプレッシャーに強い事も勿論だが、失っても大きな痛手にならない金額だからだ。 …だが、200kgの増量はアルトリアの心理を揺さぶった。 自分のプロポーションには自信があっただけにショックだ。 身を捩ればたぽたぽっと肉が踊る、みっともない肥満体に…。 「!」 ふと視線を戻せば、女の身体の贅肉が削ぎ落とされ、美しい姿に戻っていた。 「賭けた体重はね、負けた方に蓄積され、勝った方はその分痩せるの。元の体重を0として。だから、0に戻ったって訳」 「…それを聞いて安心しました」 「安心?ふふ、元に戻れると?ここからは一方的よ」 「いえ、もう見誤りません…」 「どうかしらw」 このゲームにおいて無敗を誇っていた女は分かっている。 才気溢れる者、負け知らずの者程一度崩れると脆い。 ましてや、女にとって何よりも大切な美貌が奪われるのだ。 これに動揺しない女はいないだろう。 金で揺らがないアルトリアも、失うものが美貌だと…。 無敗のディーラー、美しき水着獅子王。 アルトリアの動揺は揺らぎを増していく。 ぶるぶると揺れる肉の様に。 8ラウンド。 アルトリアの手はワンペア。 弱い手が入ろうと決して表情を崩さなかったアルトリアが、ほんの僅かに表情を強張らせた。 それを女は見逃さない。 「(ようやく鉄仮面が剥がれてきたわね)」 僅かな隙が露呈していく。 ギャンブルでは、それが致命傷にすらなり得る。 この女、引きの強さも読みもアルトリア以下ではあるが、弱さを見せた人間に対する嗅覚はかなりのもの。 まるでハイエナ。 そうして無敗伝説を築いた。 …そして、カードを交換後にアルトリアは勝負を降りた。 降りた際には、場代と自分が賭けた分の体重が増える。 10kg程度増加。 9、10、11ラウンド。 女の言葉通り、アルトリアは負け続ける。 冷や汗一つかかなかったアルトリアが汗を流し、山札に伸びる手は丸くなり、腹が卓につっかえ始め、頑強な椅子が軋み始める。 負けて太り、太れば動揺し、勝機を逃す。 いつのまにか、体重は転がるように増えて300kgの壁を突破した。 誰がどう見ても異常な肥満体。 杖無しで歩行出来るだろうか? そんな疑問が湧く程に、アルトリアは太らされていた。 「く…ふぅ…」 どんな時もポーカフェイスを守っていたアルトリアが、息苦しさに眉を寄せる。 勝たなければ。 まずは1勝。 体制を立て直す。 そんな焦りに付け込まれて負け、動揺が大きくなる。 13ラウンド。 「⁉︎」 来た。 逆転の兆し。 ストレートフラッシュ。 強い手が入った時も、アルトリアは気を緩めずに相手にそれを悟らせない。 だが、今は焦っている。 有るか無しかの一瞬の気の緩みが表情に出て、アルトリアに強いカードが入った事を女に伝えてしまった。 「…ふ、悪いけど、降りるわ❤︎」 「!(そ、そんな…!)」 「あ、やっぱり強いカードだった?その顔傑作ねww」 「…っ‼︎」 ーー15ラウンド。 「はぁ…ふひぃ……」 「辛そうね、おデブちゃん」 女は、憎い台詞を吐きながらカードをリシャッフルする。 そして、カードを配る際に… 「!」 カードを巧みにすり替えた。 「…今、イカサマを…」 「?何?イカサマ…?どんな?」 「とぼけないで下さい!今明らかに…」 「ちょっと、やめてよ、ギャラリーは何も言ってないわよ」 「衆目を欺けても、私の目は……」 「よしなさいって。これは"そういう勝負"でしょう?」 「!」 イカサマ勝負に応じたのはアルトリア。 アルトリアもイカサマをし、勝利を手にした。 今更相手のイカサマを責められないだろう。 「うぅ……」 「(ふふふ、貴方もイカサマをやれるならやると良い。その太いソーセージの様な指でやれるならw)」 イカサマを使う女に対し、アルトリアは愚直に勝負を仕掛ける。 結果は、当然負け。 16ラウンド。 アルトリアがリシャッフルする番だ。 「(貴方が再びイカサマをするのなら…私も……!)」 冷静さを欠いたアルトリア。 バニー服の付け袖に仕込んだカードを、自分の手札に加えようとしたが… バラバラッ 「!あ…!」 付け袖からカードが落ちる。 ぱんぱんに膨らんだ太い指。 手汗でびしゃびしゃな手の平。 巧みにやれた筈のイカサマが出来ない。 ガラス越しのギャラリーから、「あ?カードが落ちたぞ」「仕込みだ」「おい、イカサマしてんじゃねーぞ、デブ!」「ペナルティだ、ペナルティ‼︎」と声が上がる。 「だって❤︎ペナルティーよ」 「ぺ、ペナルティー?…っぶ…!」 アルトリアはペナルティとして50kg太らされる事に…。 身体が一層肉を蓄積し、もがくアルトリアに身体の肉がぶるぶると揺れる。 「っ、うぐぅ…‼︎」 「分かる?"バレなきゃ"イカサマじゃないのよ?」 ……そこからは、本当に一方的な勝負だった。 イカサマを使えないアルトリアに対し、女は自在にイカサマを使える。 透視、すり替え、シャッフル、思いのまま。 アルトリアは負け続け、冷静さを失い続ける。 簡単なブラフにも引っかかり、易々とイカサマをされ、読みも外し続けた。 獅子王アルトリア・ペンドラゴンも、一度崩れればこうも脆い。 良い手が入れば焦って「100kg…‼︎」と負け分を取り戻そうとして大きく賭け、負ける。 ほんの10数分前までは美しく、余裕の表情を崩さなかったアルトリア。 今のアルトリアは、端正な顔はたっぷりと肉を付け、表情は歪み、惨めにも泣きそうになっていた。 体重600、700…そして、800kg。 最早椅子から立ち上がる事すら叶いそうにない肉の塊。 獅子王として戦場に勇ましく立つ? いやいや、日常生活をまともに送れるかも怪しい。 余す事なくブヨブヨな身体を優雅なバニー服で包む姿が、何だか惨めさに拍車をかけた。 「ぶひゅうぅぅ…ぶひいぃぃ……!」 女の説明では、このまま無様に負ければアルトリアは元々体重800kgの肥満体という事になってしまう。 負けられない、負けられない、こんな姿は嫌だ…‼︎ アルトリアは自身の突き出た巨腹に阻まれながらも、卓上の山札に手を伸ばす。 パンパンに膨れ上がった手に、ゆっくりと1枚、また1枚。 必死に身体中の肉を揺らし、汗をポタポタと足らしながらカードを取る。 ぶるっ、ぶるるんっ だぷんっ、ぶよんっ 「ふぎっ、ぶひいぃ…ひいぃぃ…‼︎」 「あははは、山札からカードを取るのも一苦労ねw大丈夫?取ってあげようかw」 卓のカードを取る。 それだけの事に、アルトリアは滝の様に汗を流す。 ガラスがアルトリアの発する熱に曇り、ギャラリーはそんな状態を作り出すアルトリアを馬鹿にして笑っていた。 美しい獅子王が無様に歪んでいく姿を見るのが、楽しくて堪らないと言わんばかりに。 「ねぇ、獅子王さん?そろそろ降りた方が良いわよ?現実改変って怖くてね、余りにも変わり過ぎると立場やら何やら全てが変わっちゃうの」 女は憎らしい程優しい口調で続ける。 「例えば…そう、宮本武蔵って…知らないわよね?」 「みや…もと…?」 「そう。大剣豪宮本武蔵。彼女もここでゲームをして大敗してね。現実が大きく変わってしまったの」 「な、何を…?」 「確かに身動き出来ない程太ってるのに剣豪もないでしょう?彼女が剣豪だった現実は綺麗さっぱり無くなり、今はうちのカジノの見世物になってるわ」 「……??」 「やっぱり分からないわよね。面識はあると思うんだけど。……この事実を認識出来るのは私とこの空間にいる人間だけ。貴方も武蔵の様になるのかしら?w」 何を言っている? "ミヤモトムサシ"なんて者は知らない。 兎に角、この女に負けてこの姿のまま戻れないという最悪の結末は避けなくては…。 そして、19ラウンド。 アルトリアの負け。 体重が1tを超えた。 ぶぐんっ、ブグブグブグッ…‼︎‼︎ ミシッ…ミシミシッ… 「はひぃぃ…うぶうぅぅ…!」 最早原型を忘れてしまう程の肉の塊。 もう、限界が近い。 ここで勝たねば…。 アルトリアは激しく全身を揺らしながら、手札に手を伸ばした。 腹肉にぶよんと弾かれ、その度に上体を戻して手を伸ばし、振袖の様な二の腕を揺らす。 その姿に、優雅さは欠片もない。 だが、無様でも構わない…! どれだけ恥を晒そうと、ここで勝てれば…‼︎ そんなアルトリアの念に引き寄せられたか、引いたのはJ、Q、K、A。 10さえ引ければ、ロイヤルフラッシュ。 強運。 無敗と言われたギャンブラーに、最後の勝機が…。 勝てる。 勝てる手だ。 絶対に勝つ。 元に戻る。 アルトリアは1枚捨て、山札に手を伸ばした。 「んぶふううぅぅ…‼︎‼︎んぎいいいいぃぃ……‼︎‼︎」 力を込め、肉を押しのけ、手を… …キッ…! 「⁉︎」 メキッ…メキメキメキッ…‼︎ 「‼︎⁉︎」 メギャッ‼︎ズドンッ‼︎‼︎‼︎ アルトリアの座っていた椅子が曲がり、潰れ、アルトリアの巨体が投げ出された。 ぼよよんっ、ぶるるんっ 体重1tの超肥満体。 仰向けに倒れれば、自力で起き上がる事は、もう…。 「あーあ、ゲームの内容が内容だから特別頑丈に作ってるんだけど、とうとう壊れたか」 終わりを確信した女が笑う。 「最初に説明したけど、持ち時間は1分。それを過ぎたらゲーム終了よ」 「‼︎‼︎んぎっ…ぶぐううぅ…‼︎‼︎」 必死にもがくも、肉が激しく波打つだけ。 そして………1分。 「あははは、ゲームオーバー❤︎」 女はアルトリアが倒れた側に立つ。 無様に地に堕ちた獅子王。 彼女の横には、先程手にしていたカード。 「あぁ、中々良い手だったわね。ただ、どんなに良い手も形にならなきゃブタ。貴方にぴったりな最期ね❤︎ねぇ、豚ちゃんw」 カジノ・キャメロットのオーナーであり、無敗のギャンブラーであったアルトリア・ペンドラゴンは敗れた。 優雅に彩られた彼女の半生が、音を立てて改変されていく。 *** 数日後。 アルトリアが敗れた裏カジノ。 そのエントランス。 少し開けた空間に、歪なオブジェが並んでいた。 「ぐふうぅ…ぶふぅぅ…」 肉のオブジェと化したアルトリア・ペンドラゴンだ。 まるで初めからそこにいたように、"元"カジノ・キャメロットのオーナーである獅子王は鎮座していた。 体重1tを超える贅肉の塊。 肉の塊となった裸体を晒し、大きな腹を突き出している。 その腹には、『私は負けた哀れな肉豚です』という稚拙な文章が刻まれていた。 アルトリアは、何故そんな文を刻まれて、自分がここにいるのか、よく理解出来ていない様子。 現実改変による影響か、大敗のショックからか、凛々しさが消え去っただらしない顔を浮かべ、ただ座り込んでいる。 でろんと舌を出し、虚空を眺め…。 隣に並ぶ、宮本武蔵も同様だ。 彼女達に何が起こったのか、このカジノに出入りしている人間は認識している。 「見事な負けっぷりだったなw」と煽る者、「醜い肉の塊」と馬鹿にする者もいるが、2つの肉塊は虚ろな目で「ぶふぅ…」と息を漏らすのみ。 心無い声にも反応を示さない、まさにオブジェ。 自分が何者か忘れてしまう日も、そう遠い話ではないのかもしれない…。 ーー同特異点。 煌びやかなラスベガスを闊歩する、葛飾北斎。 「ベガスっつっても大したもんでもないなぁ。面白い遊びでもないもんかね」 彼女は退屈していた。 アルトリア・ペンドラゴンと宮本武蔵という好敵手を失った特異点で。 彼女を含むこの世界の人間は、2人を失った事にすら気付いていないが…。 そんな北斎に、歩み寄る美女が1人。 「ねぇ、よろしいかしら?」 「あん?」 「面白いゲームがあるんですが」 「げぇむだ?」 その日、裏カジノのエントランスに新たなオブジェが加えられた。 (了)
Comments
ありがとうございます! 劣勢に立たされて身も心も崩れる美人って良いですよね!
NK
2020-06-27 01:44:24 +0000 UTCありがとうございます! 嬉しいです😆
NK
2020-06-27 01:43:49 +0000 UTCありがとうございます! 無敗で劣勢に立たされた事がなく、財力に余裕があったからこそのポーカーフェイスで、一度崩れたらもろかったですね…!
NK
2020-06-27 01:43:14 +0000 UTC完膚なきまでに倒され乳上最高ですね 展開自体手に汗握るもので、勝負の駆け引きから緊張感が伝わってきて話に没入することができました そのおかけで 最初に勝ちをおさめていた乳上の余裕とただ一度太ったことで心を揺らがせ、やることなすこと裏目に出る様子から乳上の心情がビシバシと伝わってきてめっちゃ良かったです! 太ったことで勝負を焦り相手に手を読まれる、最初に出来たイカサマが太ったことで出来なくなる、遂にはカードを出すことさえも出来なくなる…という展開構成が肥満化の段階をより細かに想像することができて滅茶苦茶堪能できました 容赦のない肥満化シチュでめっちゃ良かったです!
2020-06-21 15:52:58 +0000 UTC読みました、とても素晴らしかったです!! 優雅で気品漂う美女が大きく取り乱しながら贅肉を身に纏い堕ちていく…自分の好みの肥満化シチュにドンピシャだったのもありますが、文字のみでバニ上の脂肪と絶望に包まれていく様子を想像させる、たしかな文章力と文章量(たっぷり描写あるの本当に好きです)もとても良かったです。 終盤の武蔵ちゃんへの言及は作品以前に起きた悲劇への想像が刺激されましたし、〆の一文で以後起きる"だろう"ことではなく確定の結果を示したのは、エントランスホールに行ってみたいという思いをより強くさせられてしまうものでした。 最初から最後まですごく良い作品でした。ありがとうございました。
ふくふく
2020-06-21 14:53:16 +0000 UTC文章でこれほど 肥満体を想像掻き立てられる その文書力凄いです! 真面目な読み合いとか 見ていて肥満要素以外も 対戦の先を見たくなる 書き方でしたよ! 敵の演技で 逆転されるのも 展開が良かったです そこからの堕ち方や 慌てちゃって カードを落とすドジをしたりと 太った動作が可愛かったです 更に他にも 太らされた被害者と 並べられたり 負けた時椅子が 壊れて座ることすら 許されない所とか 完敗表現してて興奮しました
メタリアン
2020-06-21 14:28:28 +0000 UTC