午後のショーのため、更衣室で俺はまたピュアピーチ兼粋木ももの素体となり、将吾と寛治とともに準備をしていた。 だが、俺の頭の中は理央ちゃんのことでいっぱいだった。 それもそのはず、俺の被る美少女マスクの中には理央ちゃんの香りが溢れていた。 敵役である恐竜の着ぐるみの中身があんなに可愛い理央ちゃんだなんて想像もしていかなった。 思い出すだけでも興奮してくる。 そんな理央ちゃんをこれから殴ったり蹴ったりするのかと考えると心が痛んだ。 幸いだったのは関節以外はしっかり守られていることを知ったことくらいだろうか。 もうすっかり慣れたはずのショーのステージが妙に緊張したものに変わったのは俺だけだろう。 将吾も寛治もいつもと変わらず、俺の理央ちゃんを殴ったり蹴ったりするのかと思うと、非常に腹立たしくなり、気づけば2人を睨みつけていた。 幸い2人に気づかれることはなかったが、ショーの最中も敵役の恐竜への攻撃ができなくなりそうで俺は不安を覚えずにはいられなかった。 粋木ももとして、セーラー服に着替えながら思うことは、こんな姿を理央ちゃんに見られたら恥ずかしいということ。 これまで何度も舞台裏でセーラー服姿を恐竜に見られてきたのに変な感覚だ。 セーラー服に着替え、美少女マスクを被った将吾、寛治とともに仲良し3人組の女子高生としてステージへと向かう。 その途中でいつもの様に舞台裏で、首輪とリードをつけられスタンバイしている恐竜と出会った。 俺が手を振ると、恐竜も短く小さな手を振って応えてくれた。 理央ちゃんから元気をもらった俺は元気いっぱいでステージへと飛び出していった。 女子高生3人が楽しそうに会話をしている音声が流れ、それに合わせて演技する。 そこへ禍々しい音楽と共に玄野 七瀬演じるダーティーが登場する。 ダーティーを見た俺たち3人は顔を見合わせた後、1つ頷くとピュアフルーツへの変身の音楽が流れるとともにスモークが焚かれ、3人の変身の声だけが流れる。 スモークに隠れてステージのすぐ裏手に隠れ、急いで衣装チェンジするのだが。 俺の衣装チェンジする目の前には首輪とリードを付けられ待機中の恐竜の着ぐるみを着た理央ちゃんがいた。 これはいつもの光景、そして午前の部でもやったことなのだが、恐竜の着ぐるみの中身が理央ちゃんということを知り、急展開過ぎるが付き合うことになった俺としては恥ずかしくて仕方がなかった。 だが、スタッフは待ってはくれない。 スモークが晴れる前にステージに戻らなければならない。 俺はスタッフに黒髪を外され、ピンク色の髪を付けられた後、セーラー服を脱がされピュアピーチの衣装に着替える。 スタッフが確認して、サッと着ぐるみの衣装を直す頃にはピュアフルーツのテーマが流れ出す。 俺がステージへ戻る前に恐竜の着ぐるみの方を振り返ると、理央ちゃんは恐竜の手でグーを作って応えてくれた。 それは俺に【頑張れ!】と伝えてくれているようだった。 俺もまた理央ちゃんに【ステージでお互い頑張ろうという思いを込めて】向けてグーを作って応えた。 「ピュアストロベリー!」 「ピュアオレンジ!」 「ピュアピーチ!」 「「「3人合わせてピュアフルーツ!」」」 音声が流れて俺たちはそれに合わせてポーズを取った。 決めポーズが決まったところで子供たちの歓声が上がった。 ピュアフルーツの前にはダーティーが対峙している。 「ピュアフルーツ、今日こそお前たちを倒してやる!」 「ダーティー、そうさせない!」 「これを見てもそう言えるかな?」 そう言うといつの間にかダーティーの手に握られていたリードが引かれ時空の裂け目から肉食恐竜が現れる。 凶悪そうに見える恐竜と今の俺には可愛い理央ちゃんの顔か浮かんで来ない。 理央ちゃんはノッペラボウになるラバーマスクを被り、クッション、発泡ゴム、ウレタンの中へ閉じ込められ、1人では絶対に脱ぐことのできない恐竜の中いるのだと思うと可哀想でもある反面、興奮する自分がいた。 そんな理央ちゃんのリードが外され、ピュアフルーツたちと恐竜の戦いが始まった。 ピュアストロベリー、ピュアオレンジ、ピュアピーチの順に連続攻撃を恐竜に浴びせていく。 以前そして午前中も恐竜にキックやパンチの攻撃を加えていく。 ピュアストロベリーとピュアオレンジはいつも通りの攻撃を繰り出すが、ピュアピーチの攻撃は精彩を欠いていた。 恐竜の中身が可愛い自分と付き合うことになった理央ちゃんだと思うといつものように攻撃ができなかった。 とはいえ、ステージのショーは進行していく。 連続攻撃でやられる恐竜はどんどん弱っていく。 弱った演技を見せる恐竜をトドメとばかりにピュアオレンジとピュアピーチの2人掛かりで持ち上げ投げ飛ばした。 投げ飛ばされ背中から落ちた恐竜はステージ上で痛そうにのたうち回る。 恐竜はいつものように演技をしているのに、俺は理央ちゃんが本当に背中から落とされた呼吸もできず着ぐるみの中でのたうち回っているように見えた。 すぐにでも駆け寄って声を掛けたいが、それはできない。 そんな恐竜にさらに攻撃を加えるピュアストロベリー、そして恐竜は動かなくなってしまった。 ステージ上に横たわる恐竜をよく見ると、細かく体が上下している。 暑くて動くのも大変な恐竜の着ぐるみの中で、男が演じるピュアフルーツの連続攻撃を受け、投げ飛ばされた後も攻撃に耐えるしかないという理央ちゃんの状況を想像しただけで俺はグッとくるものがあった。 そんな動かなくなった恐竜を見たダーティーは舌打ちをした後、呪文を唱え始めた。 ステージの裏側から黒子のような格好をしたスタッフ2人が黒い布を持って現れ、恐竜を観客席から見えないように隠すと、恐竜の着ぐるみを着た理央ちゃんは立ち上がり、スタッフとともにステージ裏へと移動していった。 いつも見ている光景なのに、理央ちゃんのことを心配し、大丈夫だったことに俺は胸を撫で下ろした。 尚も呪文を唱え続けるダーティーと対峙するピュアフルーツたち。 ピュアフルーツ側からは姫野 由那が演じるピュアクイーンが待機しているのが見えている。 対峙するダーティーからはきっとこの後に出てくる紫と黒でドス黒い雰囲気と凶悪な尖った歯と爪を備えた一回り大きな恐竜の着ぐるみを着ぐるみの上から重ね着させられている理央ちゃんの姿が見えているのだろう。 先ほどまでピュアフルーツと激闘を演じ、息も上がっている理央ちゃんに拷問のような恐竜の着ぐるみの重ね着を想像するだけで俺は妙な興奮と勃起する自分にドSの気質があることに気づき始めていた。 同時に、理央ちゃんはあんな過酷な状況でもそれを受け入れ、この仕事を続けていることから俺とは対照的にドMではないかと考え始めていた。 ダーティーが呪文を唱え終わると黒子姿のスタッフに隠された恐竜の着ぐるみを重ね着した理央ちゃんがステージ上に戻ってきた。 ピュアフルーツはパワーアップした恐竜に身構える。 見た目はパワーアップしているが、中身である理央ちゃんの体力は残り少ないと思われる。 ピュアフルーツに攻撃をしてくるパワーアップした凶悪な恐竜のはずなのだが、俺には残り少ない体力で精一杯体を動かしている理央ちゃんにしか見えなかった。 パワーアップした凶悪な恐竜の攻撃をかわし、ピュアフルーツが反撃するが全く効かない。 そう、ここは手を抜かないといけないのだ。 パワーアップした凶悪な恐竜に1人ずつ倒されるピュアフルーツ。 そんな絶対絶命のピンチに何処からか声が響く。 「そこまでよ!」 そんな音声とともにピュアクイーンが現れ、パワーアップした凶悪な恐竜に一撃を喰らわせた。 攻撃を受けて倒れる恐竜。 恐竜が倒れている間にピュアクイーンはピュアフルーツたちに手を貸して立ち上がらせると、そのまま必殺技の体勢に入る。 「貴女たちの力も貸して!行くわよ!」 「「「はい!」」」 「「「「ピュアクロス!」」」」 4人で理央ちゃんの入る恐竜を囲み、赤色のラップを巻きつけていく。 理央ちゃんのことを心配しつつもラップでグルグル巻きにし動けなくしていくことに興奮する俺がいた。 理央ちゃんは恐竜の着ぐるみの重ね着だけでも暑くて仕方ないのに、さらにラップを巻かれて赤い塊にされていく。 さらに暑くギチギチに拘束されてどんな気分なのだろう。 そんなことを考えながら同時に理央ちゃんにラップを巻きつけていることに興奮する自分がいた。 4方向から赤いラップを巻きつけ身動きできなくなった恐竜は赤い塊となった。 「今よ!」 ピュアクイーンの合図に4人が声を合わせる。 「「「「ピュアミックスアタック!」」」」 大きな音と光が恐竜を襲い、同時に理央ちゃんは自らの足でステージの端に準備された水槽に落ちる。 水飛沫が上がり、身動きが取れないながらも恐竜は水槽の中でもがいている姿を見て思う。 【怖いよ!早く助けて!】 そんな理央ちゃんの声が聞こえるようだった。 必死に抵抗し暴れながら恐竜は水槽に沈んでいく。 “すぐにでも飛び込んで引き上げたい!” そう思うがそれはできない。 動かなくなっていく恐竜を見ながら俺は理央ちゃんの心配をすることしかできなかった。 今まで何度も目の前で見てきたショーのシーンなのに、今の俺の目には全く違うものとして映っていた。 「クソっ!覚えてろ!」 捨て台詞を吐いてダーティーがステージから姿を消すのと同時に恐竜の入った水槽も片付けられた。 「今日も街の平和が守られたわ、みんな応援ありがとう!またね!」 そんな音声が流れ、俺たちピュアフルーツの3人とピュアクイーンが手を振りながらステージを去ると司会のお姉さんが現れて、すぐにこの後の握手会の案内説明する声が聞こえてきた。 つづく