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ごむらば
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stage2:華やかなステージショーの裏側〜着ぐるみの中身〜

恐竜の着ぐるみから引っ張り出した女性の姿を見て俺はさらに驚くことになった。 引っ張り出した女性の姿は全身黒光りしたマネキン人形のような姿だった。 先ほどまで確かに指先に柔らかな感触があったのに、出てきたのは顔がノッペラボウで目も鼻も口もないマネキン人形にしか見えない。 驚きのあまりポカンと口を開けている俺を見て、恐竜の着ぐるみから出てきたスーツアクトレスは慌てて黒光りするマスクを取った。 「ごめんなさい!驚かせてしまって!」 そう言うスーツアクトレスの顔を見て俺はまだ固まっていた。 なぜなら、ノッペラボウのマスクを外した彼女の顔があまりにも可愛い、いや可愛すぎたから。 それに俺の好みのどストライクだった。 「ありがとうございます、着ぐるみから出して頂いて」 そう言って俺を見る彼女に俺の口から自然と言葉が口をついて出た。 「可愛いですね」 そう言われた彼女は急に顔を真っ赤にして、乱れた髪を整え始めて言った。 「今、いっぱい汗かいてるし、それに可愛くないですよ」 そんな彼女とお互い顔を真っ赤にして俺は向い合っていた。 「あのー俺、百瀬 颯斗っていいます」 「私は京野 理央(きょうのりお)です、よろしくお願いします」 それを聞いて俺はあることを思い出していた。 それはこのショーのチームでスーツアクターの名前一覧を見た時だった。 恐竜のアクターがキョウノリオとカタカナ表記になっていたので、ノリオというおじさんだと勝手に思い込んでしまっていた。 恐竜がゴツいこともあり、操演者がこんな可愛い女の子だなんて想像もしていなかった。 だから、今までステージ上で思いっきり恐竜を攻撃できた。 それにこのチームのスーツアクターは大学生ばかり、しかも同じ年であり、おじさんだけが1人浮いてしまうので着替える時間も出退勤時間もズラしているのだと思っていた。 「百瀬さんって素敵ですね」 そう言うと、京野さんはさらに顔を赤らめた。 そう言ってくれる京野さんとの距離を縮めたいと思った俺は言った。 「颯斗でいいよ!それに俺まだ大学生だから」 「えっ!私も大学生なんですよ!それと私も理央って呼んで下さい」 「分かった、でも年も近そうだし敬語はやめよう理央ちゃん!」 俺の言葉に理央ちゃんはモジモジしながらも返す。 「うん!颯斗くん」 名前を呼び合っているだけで俺は理央ちゃんとの距離が一気に縮まった気がした。 黒光りするラバースーツの理央ちゃんと体はピュアピーチの衣装のままの俺は並んで話を始めたのだが、理央ちゃんの黒光りするラバースーツの体が気になり目のやり場に困った。 それに理央ちゃんの前でこの衣装を着ているのもなんだか恥ずかしい。 普段、この衣装を着てステージで戦っているのに。 「ねぇ理央ちゃん、良かったらピュアピーチの衣装着てみる?」 「えっ!いいんですか?」 理央ちゃんの顔がパッと明るくなった。 「私、ピュアフルーツが好きで、特にピュアピーチが大好きでこの仕事に応募したんですが、応募したのが遅くて応募は締め切られたと断られたんです」 「えっ、じゃあどうして?」 「翌日、欠員が出たのでと声を掛けられて… 、希望していたピュアピーチでもピュアフルーツでもなく、ダーティーに操られる恐竜だったんです、でも可愛いピュアピーチの近くで仕事がしたくて」 そんな理央ちゃんの話を聞いて、俺は立ち上がり衣装を脱ぐと理央ちゃんも立たせてピュアピーチの衣装を着せるのを手伝った。 黒光りしたラバーの肌にピュアピーチの衣装は違和感はあったが、可愛い理央ちゃんが着るとそんな違和感も吹き飛ばしてしまった。 「ブーツも履いてみる?サイズ大きいと思うけど」 「はい、ぜひ!」 嬉しそうにそう答える理央ちゃん。 ピュアピーチの衣装を身に纏い、ブーツを履いた理央ちゃんを見て思った。 “実写版、いやそれ以上じゃないかと” 嬉しそうにピュアピーチの衣装を着て自分の体を見ている理央ちゃんに言った。 「良かったら美少女マスクも被ってみる?」 「えっいいの?」 「うん、でも俺が被ってるから汗臭いけど… 」 俺がそう言い掛けると、理央ちゃんは首を横に振って言った。 「颯斗くんのなら全然いいよ!」 そう言った後、顔を赤らめる理央ちゃん。 そして、黒光りしたノッペラボウのラバーマスクを被ろうとする。 「えっ、そのまま被らないの?今は休憩中だし」 俺がそう言うと理央ちゃんが返す。 「だって、私の汗がついたら颯斗くんが嫌かなって」 「いいよ、理央ちゃんのだったら」 俺がそう言うと理央ちゃんはますます顔を赤らめて、ラバーマスクを置くと美少女マスクを直接被り始めた。 美少女マスクを被りながら理央ちゃんが言った。 「美少女マスクって被るの大変なんだね」 理央ちゃんはすっぽりと美少女マスクを被って俺の方を見てくぐもった声で言った。 「マスクの中も狭くて顔に密着してくる、それに… 」 「それに… なに?」 「颯斗くんの匂いがして、颯斗くんを近くに感じられるよ!」 そう言うとシリコンスーツで覆われた俺の体に抱きついてきた。 俺も自然と理央ちゃんを抱きしめた。 しばらくそのまま抱き合っていたのだが、理央ちゃんが声を上げた。 「ごめんなさい!颯斗くん、私嬉しくてつい… 」 そう言って俺から離れようとする理央ちゃんを引き戻して俺は抱きしめた。 「颯斗くんに彼女さんがいたら怒られちゃうから」 そう言う理央ちゃんに俺は言った。 「彼女なんていない、俺はフリーだよ!理央ちゃんは?」 「私はずっとフリーなんだ、だから… 」 そう言い掛けた理央ちゃんの言葉を切って俺は言った。 「俺、理央ちゃんを見て一目で好きになったんだ、一目惚れってヤツ、よかったら俺と付き合ってくれないか?」 「えっ… !」 言葉を失う理央ちゃんだったが、抱きしめる俺をギュッと抱きしめ返して理央ちゃんは美少女マスクでくぐもった声で言った。 「お願いします」 思わぬ出会いからあまりにも短い時間で俺は理央ちゃんと付き合うことになった。 とはいえ、着ぐるみを着ているので直接は会ったことはなかったが今まで一緒にショーをやってきた仲間なので意気投合できるだろう。 お互いの気持ちを伝え合って、しばらく抱き合った。 「理央ちゃん、そろそろ美少女マスク脱いだら?暑くないの?」 「うん、そうする」 そう言って顔を出した理央は美少女マスクより可愛かった。 俺がじっと見つめると理央ちゃんは恥ずかしそうに言った。 「いっぱい汗かいてるからあんまり見ないでよ」 それでも俺は理央ちゃんから目が離せない。 そんな理央ちゃんをグッと引き寄せると、理央ちゃんは目を瞑った。 そして俺は理央ちゃんと唇を重ねた。 いつの間にかステージ裏で、慌ただしくしていたスタッフもいなくなり静かになっていた。 あまりにも静かになっていることに気づいた俺は周りを確認してみた。 だが誰もいなかった。 一度、理央ちゃんと離れたらこのままいるのはなんだか落ち着かない。 そんな時目に入ったのが、大きな恐竜の着ぐるみ。 「ねぇ理央ちゃん、あそこ!」 そう言って、俺が指差すと理央ちゃんはウンと1つ頷いた。 何も言わずに俺も1つ頷くとパックリと開いた大きな恐竜のところへ移動し、俺が先に中へ入り、続けて理央ちゃんも大きな着ぐるみの中へと入った。 大きな恐竜の着ぐるみは俺と理央ちゃんが入るとギリギリのサイズだが密着できる。 「ねぇ、続き… 」 そう言い掛けた俺に理央ちゃんは情熱的なキスをしてきた。 そんな理央ちゃんに俺も応える。 理央ちゃんと抱き合いキスをしながら、俺は右手で大きな恐竜のファスナーを探してゆっくりと閉めていく。 顔のところだけ開けたまま、2人の体を包み込むように大きな恐竜の背中のファスナーを閉めた。 2人がより密着する。 「暑い?」 俺がそう聞くと理央ちゃんは首を横に振って言った。 「颯斗くんと一緒にいられて落ち着く」 そう言った後、俺と理央ちゃんは再びキスをした。 互いにショーのためのインナーを着ているが、それでも互いを求めるように体に触れ合った。 少し落ち着いたところで俺は理央ちゃんに疑問に思っていたことを聞いてみた。 「恐竜の着ぐるみの操演って大変じゃないの?」 「うん、初めは大変だったかな、でも見た目よりも軽くて動きやすいんだよ」 「へぇ、そうなんだ、ピュアフルーツとの戦いで殴られたり蹴られたりするけど痛くないの?」 「うーん、痛い時もあるかな、関節のところって動きやすくするために薄いんだよね」 「そうなんだ」 「でも、関節以外は守られているから大丈夫だよ」 「ごめんね… 」 俺がそう言うと理央ちゃんが言った。 「私ね、ピュアピーチに憧れてこの仕事をしてるから、可愛いピュアピーチが攻撃してくるのは大歓迎だよ!だって間近で見られるから」 そう言って可愛く笑った。 「もう1つ聞いていい?」 「うん、なに?」 「最後のシーンで水槽に落ちるの怖くないの?それに大丈夫なの?」 「うーん、初めての時は怖くて水槽に飛べ込めなかったし、飛び込んで泣いちゃったけど今は大丈夫だよ!」 「着ぐるみの中にも水が入ってくるけど意外とすぐには水没しないんだ、でも助け出されるまで時間が掛かるから、少しは息止めていないといけないけどね」 そう言って理央ちゃんは笑ってみせたが、最後の言葉には少し嘘が混じっている気がした。 「いつも頑張っていたんだね、理央ちゃん」 そう言って俺が抱きしめると理央ちゃんは少し涙ぐんでいるようだった。 「でも、こうして私、颯斗くんに会えたからこれからも頑張れるよ!」 「ねぇ理央ちゃん、ショーが終わったら一緒に帰らない?」 「えっ、でも私、帰るまですっごく時間掛かるよ!いつも私が帰る頃には誰もいないから」 「じゃあ、理央ちゃんが出てくるまで駅前のファストフード店で待っているよ、どうかなぁ?」 「うん、嬉しい!」 理央ちゃんは満面の笑みで俺に抱きついた。 そして、ショーが始まる前まで2人で大きな恐竜の中で抱き合っていた。 つづく

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