20220611_飲み会とそのあとの話
Added 2022-06-11 02:28:49 +0000 UTC大学生になってから無理矢理ルームシェアをさせられているマンションの部屋のドアの鍵がガチャガチャと音を立てた。
今は金曜日の夜だが、屋敷はサークルで飲み会の予定があるから朝まで帰らないと告げられていた聡司は、早々に夕食と風呂を済ませたあと、久々にリビングでゆったりとした時間を過ごしていた。ウトウトとしてしまい、そろそろ寝室へ行かなければと思っていたところだった。だから静寂を破った唐突な音に、肩をビクリと震わせる。
ソファから立ち上がりかけて中腰になったとき、鍵がカチリと外される音がしてドアが開いた。
「聡司ぃ」
酔っ払っている、しかし普段と変わらない高圧的な声が聡司を呼ぶ。
「は、はい」
その瞬間、聡司は先ほどまでとは種類の異なる怯えの表情を顔に浮かべ、裸足のまま急いで玄関へと向かった。
玄関へと続く廊下への扉を開ける。
その音に顔を上げた屋敷は、聡司の顔を見るなりニヤニヤと嫌な笑いを顔に浮かべた。
「お、おかえり」
「ああ」
朝まで帰らないのでは、と聞きたいところだが、言葉を飲み込む。目当ての女の子がいなかったか、いてもつまらなかったのか、そのどちらかなのだろうが現状に変わりはない。朝までの予定だった飲み会を切り上げて屋敷は帰ってきた。それだけが重要なことなのだ。恐らく機嫌が悪くなりやすいだろうから、いつもより言動に気を遣わねばならない。
屋敷は靴を脱ぎ、廊下へ一歩踏み出すと同時に聡司の肩を抱き寄せる。そして酒臭い息をまとわせた唇で、聡司のそれを上から塞いだ。
「ん、んぅ……」
咄嗟のことだったが聡司は抵抗しなかった。抱きしめられたまま従順に唇を開き、屋敷の舌を受け入れる。アルコールの匂いに咽せそうになりながら、必死に唾液を飲み込んだ。抵抗しても良いことなど一つもないのだ。それは聡司が身につけた、屋敷と共に暮らす上で知恵だった。
抵抗しなければ彼の征服欲や嗜虐欲を刺激することなく、彼が性欲を満たした時点で聡司は解放される。酒の入ったこの状態なら射精後の倦怠感も相まって、運が良ければ眠りに落ちてくれるかもしれない。
体を密着させられ、盛り上がった股間をグリグリと押しつけられながら、聡司はそんな風に考えていた。
◆
「…………」
ため息をついてバスルームの扉を開ける。廊下の向こうのリビングへと続くガラス戸からソファで寛ぐ屋敷の足だけが見えた。足を組み直すその動きに聡司は落胆を覚える。酒に酔っているのだから、もしかすると寝てくれているのでは、という聡司の微かな願いは儚く破れた。
玄関から続く廊下でそのまま押し倒されそうになった聡司は、後ろの準備をしてくるから、と何とか屋敷を押しとどめ、バスルームへと入った。それから数十分。中を洗ってある程度指で馴らした聡司は、屋敷に言われた通り何も身につけずにリビングへと向かう。そっと扉を開けると、気付いた屋敷と目があった。
「待ちくたびれた」
「ご、ごめんなさい」
怒らせたくない、と聡司は急いで屋敷の足元へ跪く。いつものように口でしようと彼のベルトに手をかけようとしたが、その手はあっさりと阻まれた。
「上、乗れよ。すぐ挿れたい」
「え、あ、う、うん……」
掴まれた手首を引っ張られる形で、聡司は屋敷の膝の上へ乗せられる。彼が自分でベルトを外し、パンツを太腿までずり下ろすタイミングで、聡司は腰を上げた。息の合ったその行為に、屋敷は上機嫌に笑う。
「すっげ、挿れて欲しそう」
「そ、そんな」
「ん?」
「あ、い、挿れて欲し……」
「ハハ」
咄嗟に返してしまった否定の言葉を咎められそうになり、聡司は慌てて取り繕う。酒のせいで鈍くなっているのか、屋敷は上機嫌なままだ。聡司はホッと息をつくと、屋敷のペニスに手を添えて自分の後ろへと導いた。自分は彼に挿れて欲しいのだから、こうして自分から受け入れなければならない。それはとても嫌なことだったが、慣れてしまったことも事実だった。
「……あ、あ……」
腹に少し力を入れ、屋敷のペニスを体内へと飲み込んでゆく。酔うと勃ちにくくなると何かで読んだような気もするが、彼のそれはいつもと変わらず勃起していた。手でも口でもシていないのに、と白く靄がかかり始めた頭で聡司は考える。
「あー、やっぱお前が良いわ」
屋敷はそう呟くと聡司の腰を掴み、強引に腰を打ち付けた。
「ひぁッ」
鋭い悲鳴をあげた聡司に構わず、屋敷は動きを激しくする。
「すば、昴くん、あ、あっ」
バランスを崩した聡司は制止の言葉も上手く言えず、ただ屋敷の体にしがみつくことしかできない。体の奥を容赦なく穿つ屋敷の動きに自重が加わって、聡司の体はそれを勝手に快感だと捉え始める。嫌でたまらないのに口からは喘ぎ声が漏れ続け、聡司の目から涙がこぼれ落ちた。
屋敷は目を細めてそれを見ると、聡司の唇に自分のそれを重ねる。そうして口付けたまま、腰の動きを緩慢にした。
緩慢にはなったが、聡司が感じる快感は強くなる。ずっぽりと奥まで挿れられたそれを、行き止まりへ押し付けるようにグリグリと動かされるのだ。そうされながら舌を絡められ、口の中を丹念に舐め回されると、聡司の体はブルブルと痙攣を始めた。
射精はしないものの、それと同等かそれ以上の快感が聡司の体を駆け抜ける。それにはとても抗えない。
そしてそんな自分を見て喉で笑い、さらに口づけを深くする屋敷に聡司は絶望した。
◆
飲み会で自分の腕へしなだれかかる女に目をやったとき、屋敷昴の頭に浮かんだのは恋人の顔だった。
酔ったふりでの行動であろうそれをやんわりと振り解き、その女を挟んで反対側へ座っていた男に押し付ける。美人だと呼べる範疇の彼女を押しつけられてまんざらそうでもない男は、甲斐甲斐しく彼女の世話を焼き始めた。
同じ抱くなら恋人のほうが良い。
そんな感覚を持てていることに、昴は少々驚いていた。
飲み会に出ているサークルのメンバーには、見目の良い男女がそこそこ揃っている。学内でも派手な部類に入るサークルだということもあるだろう。しかしそのうちの誰にも昴の食指は動かなかった。誰を見ても、やはり自分の恋人のほうが可愛い、抱きたい、と思うのだ。
こういう感覚が恐らく、世間の常識なのだろう。
恋人と同棲するまで覚えることのなかった感覚に、昴の口元には笑みが浮かんだ。
「屋敷くん、楽しそう」
「ん?」
「笑ってるから」
「ああ、恋人のこと考えてたからかな」
先ほどの女とは違う女が話しかけてくる。鬱陶しいなと思いながらも、牽制の意味を込めて昴は愛しい存在を明らかにした。え、と驚きの色を見せる周囲は少しの沈黙のあと、昴の相手についての質問を投げ始める。内心に生まれ始めた苛立ちをひた隠しにしながら、昴は笑顔でそれとなく話題を他所へ向ける流れを作った。
飲み会を切り上げ、家へ帰れば恋人が出迎えてくれる。
幸せだ。
飲み会だと伝えていたのに早く帰ってきたせいか、驚きと戸惑いを見せる恋人の様子さえも愛おしい。愛おしいから、抱きたい。性欲なんて無さそうな彼の中へペニスを突っ込んでよがらせ、自分との行為に没頭させたいという欲がむくむくと頭をもたげる。そして昴はそれを自制するつもりはなかった。
◆
聡司が背筋を仰け反らせて息も絶え絶えに喘ぐ。露わになった首筋に舌を這わせて強く吸ってやると、それさえも快感と捉えたのか、彼は激しく腹を震わせた。内側の直腸があやしく蠢き、キュウッと昴のペニスを不規則な動きで締め付けてくる。
「……イッた?」
「…………ん……」
痙攣が収まったのを見計らって問いかけてみると、虚な目で聡司はそう答えた。満足した昴は彼の腰を両手で掴み、下から腰を突き上げる。
「ひ、い、あっ、あっ」
不安定に彷徨う両腕を己の首に回してやると、聡司は昴の体へ縋り付く。耳元で可愛く喘ぐ恋人の体を抱きしめながら、昴は愛したいという心と酷く激しく犯してやりたいという欲望のせめぎ合いを感じていた。
Comments
短いのに細かいところまで読んでくださってありがとうございます。
煉瓦
2022-06-15 13:24:27 +0000 UTCありがとうございます。オメガバースの二人も続きを書きたいと思います。
煉瓦
2022-06-15 13:23:56 +0000 UTC