久しぶりにこのシリーズの話を更新できました( *´艸`) 公開している同シリーズの小説の後の話になっておりますので、それらも楽しんでいただけたら幸いです。
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「あ~、うまかった~♪」
豪太の家。
休日。豪太の手製による食事を終えた蓮は上機嫌にバタバタと足を揺らす。豪太はそれを嘆息交じりに眺めていた。
「たまには自分ちでメシ食ったらどうだ? つーか、最後にいつ帰った? お前」
「別にいいっしょ? 職場は一緒だし、それなりに金は渡してるし?」
最近、蓮は豪太の家に泊りっきりだった。職場やジムへの行き来もここからで、それこそ自宅で過ごす時間のほうが少ないほど。格闘技を再開した蓮はそうでなくとも多忙なはずなのだが。
「……ま、別にいいけどよ。後輩なんだからしおらしくしてほしいもんだが」
小生意気な部分はあるが、手がかかるゆえに、元来面倒見のいい性分の豪太もそこまで悪い気はしていなかった。
実際に、蓮は軽薄さを気取っていても、同じ屋根の下で寝泊まりしていれば、時折年下相応の甘えを見せることもある。
「……ま、無理か」
「ははは、無理っすね~」
期待するだけ馬鹿を見るだろう。頑固でプライドの高い蓮が譲るはずはない。徹底的に先輩であるはずの豪太を見下しており、逆に何か一つでも豪太に優位さを奪われることを恐れているのが蓮だった。
「俺みたいな若いのが相手してやってるだけでも感謝してほしいっすね」
「ざけんな。まだんな年じゃねぇよ」
蓮の軽口に豪太は吐き捨てるように答えると、飲み残しのビールを一気に飲み干した。
「豪太さーん、そういやもうすぐ試合なんでしたっけ?」
ふと、蓮が思い出したように豪太の背後から迫り、その肩に顎を乗せる。
「あん? あぁ、そうだ」
「スパー相手は決まってるんすかぁ? 暇だから、俺が練習つきあってやってもいいっすよ?」
仕事を掛け持ちしつつ格闘技を再開した豪太だったが、近々試合が決まっていた。相手は豪太の過去に興味を持ったランカーで、豪太にとっては本格的な再起の起点となる試合だった。
蓮は豪太から聞いてそれを知っており……、格上の相手だからこそ、結局は自分を頼るだろうと思っていた。
「仕方ねぇな~、んじゃ、さっそく今晩いきましょっか?」
「おい待てよ。勝手に話進めんな?」
「はぁ? 俺しかいないでしょ?」
豪太が練習相手を欲しているのは聞いている。首をかしげる蓮に、豪太は肩に乗った蓮の首を押しのけて言う。
「練習相手なら事足りてる」
「はぁ?」
「地元の後輩。格闘技の経験あってな。俺に弟子入り志願してくれたからよ、練習つきあってもらおうと思ってな」
「……豪太さんなんかに弟子入りしたって、強くならないっしょ?」
「テメェ……、まぁいい」
どこか機嫌を悪くした蓮の言葉に豪太はカチンときながらも、いつものことかと適当に聞き流す。
「つーわけで、明日はお前につきあってる暇はねぇんだわ。お前より可愛げのある後輩が待ってるからな」
「…………」
せめてもの反撃とばかりに皮肉たっぷりに言い、横目に小さく笑みを浮かべて見せる。
蓮はすこし押し黙り、したり顔の豪太をじっと見つめた。
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……明日、と。前もって告げたのが失敗だったかもしれない。
「なぁっ!?」
「遅かったっすね~」
スパーリングに付き合ってくれると名乗りを上げてくれた地元の後輩……「原田 アツホ(はらだ あつほ)」と待ち合わせをしていた豪太だったが、その当日、あろうことか蓮から連絡を受けた。
……その瞬間から、何か悪い予感はしていた……。案の定、かつて何度も蓮と衝突した件のリングに、蓮と、アツホはいた。
「う、ぅぅ……、豪太さん、すんません……!」
何度も足を運んだ、ボクシングジムの廃墟。
部屋の中央にあるリングの上。切羽詰まった顔でやってきた豪太を見つけた傷だらけのアツホは、蓮に伸しかかられながら、助けを求めるように手を伸ばす。
……蓮と勝負をしたのだろう。そして負けた。
紛いなりにも戦ったアツホへのリスペクトも何もなく、その打倒した肉体をソファ代わりにして大あくびをしている蓮をみれば、推察はたやすかった。
「ぐずっ…、俺、完敗しちまって…!! 豪太さん、ナメられんの、悔しくって……っ!!」
「テメェ、蓮っ! どういうつもりだ!!」
「別に? 豪太さんがスパー相手に選ぶ奴がどんだけ強いか、確かめてあげただけっすよ? なぁ?」
豪太は詰め寄るも、蓮は素知らぬ顔で答える。
元々、興味が向けば何でもするような性格のやつだったが……、まさか、アツホを襲撃するとは思わなかった。いや、場所を鑑みるに、アツホに連絡して呼び出したのだろう。
連絡先は……いつのまにか自分の携帯から控えたのだろうか? アツホは素行は悪いが純粋な性格だ、自分や地元のことを侮辱されればまず喧嘩を買うだろう。
「ぐ、ぅぅ…………」
「俺、一応豪太さんには期待してるんすけどね~、少しでも俺に追い付いてほしかったけど。こんな奴スパー相手に選んでる時点で先は見えたっすね」
「テメェ!! もういっぺんいってみろ!!」
倒された後輩の姿の上からの、蓮の挑発に、怒りのまま豪太は牙をむく。
「ま、雑魚同士なれあってつるんでればいいんじゃないっすか?」
「ま、て……っ!! この、金髪野郎…! まだ、勝負は……」
「はっ、まだやるきかよ? おもしれぇ」
あきれた様子で蓮が立ち上がる。と、痛めつけられた対抗心か、アツホが枯れた声で蓮の足首を掴む。
蓮は首を傾けて見下すと、足を持ち上げる。顔面を踏み潰す気だろう。蓮の陰に入ったが反射的にぎゅっと目を閉じる。
「蓮っ!!」
「豪太さん、男同士の戦いに手出ししないでくださいよー?」
豪太が叫ぶ。蓮は寸前で足を止め、わざとらしく困ったような笑みを見せつける。
「それとも。今度はあんたが俺の相手になります? 俺は二人がかりでもかまわないっすよ? あんたらと違って、俺、天才的に強いんで♪」
「がっ……!」
アツホの横腹を軽く蹴り、豪太の怒りを煽るように中指を振る。これまで何度も戦った二人、とりわけ蓮にとっては格下の豪太をリングに誘うのに何の躊躇いもなかった。
「……思えばテメェは。最初っから俺の機嫌を逆撫ですんのが得意だったよなぁ…!? わーったよ、の代わりに俺がお前の相手してやる」
「…………」
顔をしかめた豪太が、服を脱ぎ捨てる。
相変わらず、格闘技と作業員の業務で鍛え抜かれた肉体が露になる。そのたくましい見栄えは蓮にも劣らなかった。
「……やる気っすかぁ? 俺との実力の差はアンタが一番わかってるでしょ? 可愛い後輩とやらの前でボコられたいんすか?」
「同じ後輩でも全然違うなぁ、オイ。……俺が躾け直してやるぜ」
晒された豪太の肉体に興味が移ってか、蓮はロープに肘を預けて豪太に笑みを向ける。豪太は脱ぎ捨てた服を部屋の壁近くに投げ捨て、蓮が勝者の雰囲気で支配しているリングへと飛び乗った。
「……へぇ~、俺の給水所兼ペット同然のくせに。そんなにこいつが可愛いんすかぁ?」
「アツホは俺のかわいい後輩だ。敵を討たせてもらうぜ」
「ま、でも。こいつもなんか豪太さんに夢抱いてるみたいなんで。現実を見せてやってもいいかもっすね~」
蓮はやれやれといった様子でちらとだけアツホを見やる。と、目を細め、拳を握って身構える。
「オラ、来いよ」
整った顔をしていても、その本質は人間ではない。散々殴り合ってきた豪太はもう知っている。闘争心を漲らせた顔つきには血走った本性が垣間見え、その正体は隠しきれていなかった。
「俺の怖さを忘れたんなら、体で思い出させてやるよ。食用人間の豪太さん?」
「クソ生意気な吸血鬼野郎が。また拳骨で退治してやるよ」
蓮は、吸血鬼だ。そして自分はその怪物と何度もやりあってきた。今更、その恵まれた頑丈な肉体美、尖った瞳孔や牙におびえることなどない。
この後輩を人質にすれば、豪太は必ず怒ってやってくると確信していた。……久しぶりにコイツの生き血が吸える。手に掴んだ「玩具」に、蓮は楽しげに舌なめずりした。
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yukibou
2021-02-27 01:15:09 +0000 UTC具志川葛巳Kuzumin
2021-02-26 22:42:37 +0000 UTCyukibou
2021-02-25 04:06:18 +0000 UTCyshbs177
2021-02-25 01:15:31 +0000 UTC