流れ的には、こちら(https://yukibou.booth.pm/items/2318512)の創作物の続きとなっております! 本編ではなるべく子供時代の話しか掘り下げられなかったので、こちらで続けさせていただきます( *´艸`)
「わんぱくプロレス」にて、かつて王座を奪い取り、凌辱の限りを尽くしたライバル、「BLACK」と、紛争学園でまさかの再会を果たして……。
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基本的に、軍立の学園において下級年と中級年の物理的な隔たりは小さくない。闘争心の強い生徒間で縄張り争いが勃発しかねないために校舎も別になっており、試合も経験の差を考慮されてあまり組まれない。
だが、先輩後輩の関係で、いろいろあれど繋がりが太い生徒も多い。単純に後輩を可愛がる中級年や、強い先輩を慕う下級年もいる。
紛争学園の下級年、「前畑 アラト」にとっても、「その人物」は喧嘩が強く、慕うべき先輩の一人だった。同時に、逆らってはどんな目にあわされるかわからない恐怖も覚えていた。
……まさか……、同じ学園に通っていただなんて……。
「よぉ、アラト……なんで呼ばれたか、もう理解してるよな?」
リングのある、中級年専用の練習部屋。
アラトはその人物、「飯島 クロキ」と二人きりで、ぎこちなく固まっていた。呼び出したクロキは、胸の内の嗜虐性がにじみ出たような垂れた目でじとりと睨んでいる。
アラトが職員室に成果を提出した時……、その成果物によって、クロキとアラトは、それぞれかつて活躍したわんぱくプロレスでの「BLACK」と「RAD」であることを理解した。
……以降、今現在がクロキとの対面となる。いつもなら後輩にノリよく接するクロキも、今日ばかりは笑みの底に狂気めいた魂胆を仕込んでいる。
アラトは、自分が「BLACK」にしたことを忘れておらず、無論ながらそれは向こうも同じ。クロキにとって、自分の子供時代にいろいろなものを奪った憎むべき宿敵が目の前にいることになる。
……つまりは……、それ以上は考えたくもなかった。
「にしても、だ。まさか「RAD」がお前だったとはな……、軍立に通ってりゃ、いつかは見つけられると思ってたぜ……んだが、まさか後輩になるとは驚きだ」
「う、ぐぐ……」
今すぐにでも、床に頭を擦り付けて謝れば、許してくれるだろうか? だが、いかに学園の先輩相手でも、アラトのプライドがそれを許さなかった。
クロキもそれを見越しているのだろう。わざとらしく悩ましげに首を傾け、拳をぱすと叩きつける。
「お前は生意気だが、かわいい後輩だったよ。……何も知らなけりゃなぁ」
「…………」
値踏みするような横目で、低い声色で、固まって動けないアラトの肩に腕を回す。
「お前、忘れたわけじゃねぇだろ? 何にも知らねぇー初心で可愛かった俺に……お前、何した?」
「…………」
「この俺を倒して、犯しやがったよなぁ? 俺の初めてだったんだぜ? ガキのお前なんぞに、この俺が」
「…………」
「何よりも、やっぱさぁ……、わんぱくプロレスで俺に恥をかかせやがったことだよな?
お前のせいで、俺の尊厳は地に落ちたんだわ……年下にいいようにやられてよぉ? あのメダルは、当時の連中には憧れだったからな」
「…………、復讐、する気、っすか…………」
青少年は、やはり刻み込まれた力関係には敏感で、弱い。それはここ、紛争学園でも変わらない。
完全に子犬のように怯えてしまっているアラトは強気には言い返せなくて、それだけ聞き返す。
クロキはアラトの胸を軽く叩く。アラトはそれだけで肩をびくつかせた。
「はっ、ビビってんのか? そりゃそうだよなぁ……今の状況を理解できないほど馬鹿じゃねぇだろ?」
「……お、お互い、ガキだったし……俺だって、そういうのは……」
「あ、口答えすんのか? この俺に」
「…………」
明らかに喧嘩を売られて、そのうえで、誤魔化すような笑みをこぼして空気を濁す、なんて、普段のアラトでは考えられないことだった。
それだけ、後輩、特にクロキに対する畏怖は強く、同時に、幼少期とはいえクロキにしてしまった様々なことに、自分自身でも目を覆いたくなってしまっていたからだった。
「昔のノリで絡んでくる気じゃねぇよな、先輩様に、口答えする気か、つってんだ、あ?」
「…………!!」
(ぐ、ぐぐぐぐ……、「BLACK」のくせに……!
……けど、クロキ先輩には普通にやったら勝てるわけねぇ……! くそ、くそ……!!)
……「BLACK」のくせに。昔なら、裸の付き合いが叶うほど気心の知れた相手だった。なんだかんだプロレスが絡まなければ、普通に仲が良かった、気がする。
だが、会えない時間が、心の距離感と、力の差を生んでしまったようだった。
時間の流れが、すべてを変えた。昔は数年の年の差など全く気にならなかったのに。今となっては、特にこの紛争学園では、下級年と中級年の差は大きい。
下級年最強のユウキでさえ、クロキにはなかなか敵わない。アラトも何度もクロキたち中級年に喧嘩を挑んでは、屈辱的なトラウマを作って逃げかえっている。
……ただ、嫌いなだけの後輩なら、むしろ好き好んで襲い掛かっているだろう。それがまた、もどかしい部分でもある。
「俺ももうガキじゃねぇ、チャンスをやるよ。これから俺が卒業するまで俺の下僕になるか、ここで死ぬか。選べや」
「うぐ、ぐぐぐ…………、……昔は、俺より弱かったくせによぉ……」
だが、アラトはここで謀反を覚悟した。
しかと聞き逃さなかったクロキの顔が一変する。
「……あ?」
「…………ぁぁぁぁっ! もう知るかぁっ!!」
肩にまとわりついていたクロキの腕を払う。クロキは目を見開き……、そして、口元だけに笑みをこぼした。
「……へっ! そうこなくっちゃなぁ!? アラト!」
「こうなったらなぁ! ここでアンタをぶっ倒してやるよ! 今更リベンジなんてさせっかよ!!」
バサッ……。
逃げ場などない、プライドも捨てられない。極限まで追い詰められたアラトは……Tシャツを脱ぎ捨てた。
日ごろの試合、生傷の絶えない喧嘩、筋トレにより、その肉体たるや、下級年でも完成している者がほとんどだ。
アラトもまた、せめてもの威嚇とばかりに鍛え上げた己が肉体を突き出す。拳を握る度に、ひしめき合った筋肉が動く。
もとより、口先だけの謝罪で事を収めさせる気などなかったクロキは、素直にそれを挑発と受け取った。
「はっ、俺に勝てると思ってんのか? 下級年ごときが」
バサッ。
「……っ……」
そしてアラトは、自身の肉体を晒したところで、ここでは威嚇にもならないことを実感する。
クロキが同じようにシャツを脱ぎ捨てる。アラト同様、身長で言えば上回っているクロキの肉体は、やはりその差だけ迫力が違う。
喧嘩では、相手に威圧されれば負けだ。それはアラトも重々理解していたが……流石に引け越しになってしまう。
「る、るっせぇっ!! 先輩だからってあんまなめてんじゃねぇぞっ! 昔はそんな変わんなかっただろうがよ!!」
「……あ?」
「っ…………!!」
アラトはぽきと骨を鳴らし、クロキに迫っていく。悠然と迫るクロキに、胸を突き出して真正面から睨みつける。
「俺、だってなぁ……、ガキの頃とは違ぇんだよ……! 昔みたいに泣かしてやるぜ……「BLACK」よぉ!?」
「やっぱテメェはバカだったらしいな。……じゃあ、あの時のリベンジといかせてもらおうか?」
「~~~~っ……!!」
あぁ、やっぱり謝っておけばよかったか。アラトの胸には後悔が引き擦られるが、それでも事態は進み続ける。
「……お前にやられたこと、俺は忘れてねぇぞ? その舐めた態度、自殺志願と受け取るぜ」
「うっ……う、……っぁあああああああああっ! かかってこいおらぁぁっ!!!」
「上等だ!! ぶっ殺してやんぞ、クソガキがぁっ!!」
ふっきれたアラトが拳を握り、唸って躍りかかる。クロキも同じように声を荒げ、それを迎え撃った……。
つづきはこちら
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