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「このまま終わるか? 自力で立てるうちにさっさと降参しろよ、あぁ?」
「うぐ、ぐぐぐ……!!」
既に三度、同じ体制で射精を強いられたアラトはすっかり体力を奪われていた。
ここまでくれば、どれだけ凶暴な獣だろうとも手玉に取ったも同然。これまで屈強な喧嘩相手を、その腰が立たなくなるほどまで責め抜いて負かしてきたシロウにとってもこれは慣れた展開であり、事実上の勝利は目前だった。
(……さっさとこのガキ抱きながら……、たばこ吸いてぇ)
……だが、シロウも疲労の表情を見せる。その瞬間、アラトは足を持ち上げた。
ガッ!
「ぐおっ!?」
アラトは震え上体をかろうじて起こし、シロウの首を蹴り飛ばした。不意を突かれたシロウはアラトの性器を放してしまう。
シロウの膝から転げ落ちたアラトは、非情な責め苦で敏感になった性器をかばうように背を丸めながらキャンバスを転がり、まもなくして立ち上がる。
「はぁ……はぁ……、クソ、まだんな力が……」
「はぁ……はぁ……、……うおらぁぁぁぁぁっ!!」
シロウが疎ましそうに目を細めている間に、アラトは威勢のいい声とともにとびかかった。構えも何もなく、負けまいとする勢いばかりが先走る。
もはや余裕はない、一瞬の隙でもあれば覆いかぶさって責め立てる。屈辱と闘争心で沸騰しきったアラトには、かろうじて「打撃なし」を維持することが精いっぱいだった。
シロウの首を掴み、自身の腕の中に巻き込むようにしてとらえる。唸り声とともにアラトの二頭筋が大きく隆起し、骨の線が際立って血管が浮き上がる。
そこでふと……、アラトはシロウの変化に気づいた。
(……やっぱ、弱ってきてる……! 今日も仕事だ、つってたよなぁ……?)
「はぁ……はぁ……、オラ、さっきよりも数段疲れてんじゃねぇのか? オッサン」
「はぁ……はぁ……!!」
シロウからの抵抗が、想像していたよりも、弱い。喧嘩の最中には嗅ぎつくことも難しいほどの微かな違和感だったが、打倒シロウに燃えていたアラトは見逃さなかった。
ヘッドロックの隙間には、疲弊の表情。暴れるでもなく、されるがままになって肩で息をしているシロウをしり目に、アラトはしてやったりの笑みを浮かべる。
「へっ、わかったぜ……、素手で十分強ぇアンタが、今日に限って打撃なしだって言いだした理由をよぉ……?」
「はぁ……はぁ……、……あぁ?」
「俺とやりあう前から、もう体力なんざ残ってなかったんだろ?」
アラトの言葉に、図星を貫かれたシロウは何も答えなかった。
事実、シロウは遠方に出勤しての、徹夜明けの現場終わり。
シロウに挑戦するべく学園での試合の予定を空け、トレーニングしながら無用な喧嘩を避けてコンディションを整えていたアラトとは雲泥の差があった。
それでも。前回と同じ場所、同じリングにやってきたのは……、アラトからの呼び出しを無視できなかったからだ。
「……売られた喧嘩から逃げるなんて、男が廃るからなぁ?」
「へっ、尻尾巻いて逃げなかったこと……後悔させてやるよ……!」
勝ち逃げはしない。喧嘩屋の「大先輩」の覚悟をその表情から読み取ったアラトは、だからといって加減はなく、シロウを捕らえ続けた。
「おらぁっ!! さっきはよくもやってくれたなっ!! あぁ!?」
「ぐ、ぉぉ……!!」
アラトはもはや性器を隠すこともせず、ただ腕や胸の筋肉に力を籠めることのみに集中した。ヘッドロックを強め続け、万力に挟まれたような状態に陥ったシロウの表情が苦悶に歪む。
「どうせもう限界なんだろうが、ギブしねぇと、頭かちわんぞコラァ!!」
(ぐっ……、クソガキ……! 俺の調子の問題だけじゃねぇな、強くなってやがる……!)
ただ復讐を念頭に置いたトレーニングに励んだだけではなく、気持ちの問題も大いにあるのだろう。
アラトにとって最初の一戦では、ただの偶然出会った行きずりの年上との喧嘩。だが今は、絶対に負けられないリベンジマッチ。
相手に絶対に負けたくない、因縁を生んだ相手との喧嘩で普段以上に力がみなぎる感覚は、シロウ自身にも確かな覚えがあった。
(ぐっ……、年上の顔面、エロい胸に押し当てやがって……、こんな若ぇのにイきがらせとくなんざ……、俺もヤキが回ったな……)
……やはり、「どんな状態だろうと圧倒」とまではいかなかったか。
せめて自分が十年前なら……、今や喧嘩において、若い勢いにされるがままになっている現状を少し自嘲し、シロウは熱い嘆息を吐いた。
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jin
2021-02-13 08:55:05 +0000 UTCnensei
2020-06-18 11:05:45 +0000 UTC