●
二人の激突から、およそ十分。
早くも流れは一方的に傾き始めていた……。
「はぁ……はぁ……く、そぉ……」
「口ほどにもねぇな。テメェ」
腹を殴られ、膝を折って悶絶するダツヤを見下し、ナオユキが冷徹に吐き捨てる。
眼鏡をかけた風貌を「ガリ勉」と揶揄して嘲笑していたダツヤだったが……、激しい打撃の応酬に打ち負けて、今ではナオユキの前で膝を折ることを余儀なくされていた。
展開は拳を繰り出し合うまさに喧嘩だったが、だからこそ、自分が陰鬱そうだと散々馬鹿にしていた相手にまさかその実力の差を見せつけられて、ダツヤは例えようもない屈辱に呻いていた。
「こんな程度でイきってたのかよ。喧嘩しか取り柄なさそうなわりに、喧嘩も弱ぇのな、お前」
「っ! この、野郎……っ」
「さぁて。んじゃ、続けっか?」
「っ!? ……テ、メェ……!」
ドボオオオォォォ!!
ナオユキは言うと、ダツヤの肩を掴んで無理やりに引き起こし、勢いよく膝蹴りを打ち込む。
ダツヤが自分の認識の間違いを正す間もなかった。散々にコケにされた憤りのままに、総合格闘技にて磨いた技術によってダツヤの肉体を甚振っていく。
「が、はぁ……っ!」
ドボオオオォォォ!!
グボオオオォォォ!!
「がぁぁぁ……ぁっ! ……ご、はぁっ!!」
元々見目には程遠い苛烈さもむき出しにして、これまで受けた屈辱を晴らすかのように……、勢いにのまれて反撃できないダツヤにも容赦はなかった。
……こんな、ハズでは。脱衣所で偶然となりで見かけた大人しそうなやつをからかって遊んで、泣かして犯すまでを考えていただけだった。
こんな見るからに弱そうなやつ、自分が少しちょっかいを出せば、最強ヤンキー学園としても知られる軍立の名でビビるに違いない。半泣きの顔をボコボコになるまで殴り飛ばし、自分に懇願する姿すら想像していた。
したがって、ダツヤはこの事態に理解すら及ばず、ひたすらナオユキの怒りをその全身で受け止めるしかなかった。
「なぁ、オイ。今でも俺は、テメェの中でいじめられるだけの陰キャ扱いか、あぁ?」
グボオオオォォォ!!
「ごはぁ……っ!」
「だったら。そんな俺に逆にリンチされてるテメェは何なんだよ?」
ドボオオオォォォ!!
「がはぁっ!!」
「普段イきってるくせに、無様に反撃されて何もできないいじめっ子か? 使い捨てのドラマの悪役かよ、笑えるなぁオイ?」
ドゴオオオォォォ!!
グ、ボオオオォォォ!!
ナオユキはいっそすがすがしいほどの笑みで、拳をふるう程度の反撃しかできないダツヤを翻弄し、好き放題に甚振っていく。
連続して鳩尾やわき腹に膝がめり込んで、怒涛の責め苦が終わったころには、ダツヤは腹に己の腕を巻き付けるようにして庇い、床を転がっていた。
「オラ、まだ終わってねぇぞ……?」
「ひ、ぐ……っ!」
自分が顎を突き出して恫喝すれば、きっと何もできないだろう……。ダツヤの当初の狙いとはまるで正反対の状況だった。
ナオユキは嗜虐的な笑みをひき、ダツヤの横腹を蹴って転がす。その面持ちは、たとえ眼鏡をかけていたとしても怒り任せに暴力をふるう強面不良が浮かべるそれだろう。眼鏡をかけていないだけで……、いや、そもそもその真面目そうな風体すら、コイツの本の一面でしかなかったということだろう。
「どうする? ここのルールじゃ、俺がリストバンドを奪わない限り、勝負は終わらねぇってことだよなぁ? つまりお前は俺が満足するまでこのままだ。
……人の外見、散々おちょくってくれたよなぁ……? 土下座でもするか? あぁ?」
ナオユキは指の骨を鳴らし、いかめしい顔で睨みつけて威圧する。ダツヤは下唇を噛み、当初からかなり弱まった目つきでナオユキを下から睨み返す。
「…………わ、わかった……俺の、負け、だから……」
「あぁ!?」
「っ…………!」
自分から相手を見下しながら喧嘩をけしかけた以上、ダツヤも最後の最後でプライドを折り切ることができなかったのだろう。その顔を見て、ナオユキが睨みつける。
それでも、自分からの加虐におののいている様子のダツヤの顔を見て、少しは胸がすいたのか、ナオユキは嘆息を吐いた。
「だったら。テメェからリストバンドとケツ差し出せ」
「ぐっ…………」
「ここのルールだろ? 負け犬」
悪辣として笑みを浮かべるナオユキに詰め寄られ、ダツヤはマットの壁に背を押し付け、肩を縮こませた。
「自分が散々見下してたガリ勉陰キャとやらに、逆にボコられて犯されるなんざ、噂が付いたらおもしれぇだろうな……?」
「はぁ……はぁ……、く、そぉぉ……っ!!」
「やんのか。……それとも、まだ勝負を続けっか?」
勝負の結果はすでに明瞭だった。まだ痛い目を見たいのかと、ナオユキは拳をちらつかせて選択を迫る。
どちらにしたって行く末は同じ、そう告げんばかりのナオユキの言葉に、ダツヤはすっかり意気消沈したように顔を落とす。
……少しした後、ダツヤは覚悟を決めたようにこくこくと頷いた。
「わ、わかった……俺が悪かったって……、だから、もう殴んのは……!」
「へっ、ざまぁねぇ。見せかけの不良もどきが」
「…………。自分で、脱ぐから……ちょっと向こうを向いててくれよ……」
そして……ようやく、観念したらしい。ナオユキは鼻を鳴らすと、ダツヤから背を向ける。
……その、一秒後。ダツヤの目の中に鈍い光がともった。
……ドガァッ!!
「っ…………? っぁ……」
振り返った、その直後だった。
ナオユキが短い悲鳴をこぼす。そして、同時に下腹部に熱がこみあげるのを感じる。
この、感触は……、試合や練習でも何度か味わったこの忌むべき痛みは……! そしてナオユキは、背後の男に自身が一瞬でも隙を見せたことを後悔する羽目になった。
「が……っ、がぁぁ……っぁ、ああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「はっ、ははははっ!! バカかよテメェ、ぎゃはははっ!!」
甘かった……。拳により金的を受けたのだと自覚した後には……、ナオユキはすぐにジワリと疼くように広がっていく激痛に股間を押さえ、苦しげにうずくまる。
その様子をしかと見て、ダツヤは小ばかにするように繰り出した拳を振って高笑いしていた。
「ははははっ、さっきまではよくもやってくれたよなぁ、クソ陰キャの分際でよぉ?」
「ぐぁ……がぁ……はぁ……はぁ……。……薄、汚ねぇ……クソ、野郎が……っ!」
「へっ、テメェみてぇななよっちい真面目君には喧嘩なんざ百年早ぇ! 大人しく教室の隅っこでヤンキーにビビって暮らしてりゃいいんだよ、無駄にイきりやがって、バーカ!」
金的の衝撃は簡単には抜けず、攻勢は瞬く間に一変し、今度はナオユキが無防備を晒す。
格闘技能での実力差のあまり一方的に攻められていたダツヤはここぞとばかりに嘲笑し、ナオユキの足首を掴む。
ひるむナオユキの股を無理やりに開かせると……、もはや金的を隠さず、再び股間目掛けて膝を落とした。
ドゴ!
「んがっ!? ぐあああああぁっ!!」
「オラ! 二度と俺には向かえないように、徹底的に責めてやんよ!!」
グボォッ!
「ご、あぁっ! ぐあぁ……っ!」
「どうだ、チンポごと潰される気分はよぉ? いい面だぜ、はははっ!!」
続けて金的を食らい、ナオユキは意識が飛びかけるような痛みに耐え続ける。もはや殺意にも似た感情を乗せ、ダツヤを睨みつける。
……自分への侮辱を許したまま、しかもこんな真似まで……。ナオユキの中でどす黒く燃える激怒に気づいてか否か、ダツヤは悶絶するナオユキの顔を見て嬉々として笑っていた。
「さぁて……、オラ立てやっ!」
「ぐ……っ……」
「へっ、さすがのテメェもここまで金的もらったら動けねぇよなぁ? テメェみてぇなイモいメガネ野郎がこの俺に勝つなんざ、絶対にありえねぇんだよ!」
ダツヤは小刻みに震えるナオユキの肩を掴むと、無理やりに引き起こす。
「まだまだ、イきって俺を散々なぶってくれた借りを返さねぇとなぁ……?」
「はぁ……はぁ……。クソ、がぁ……っ!」
「へっ、その強気もいつまで持つか……見ものだぜっ!!」
……ギュッ!
「っぁ!? ぐぁあああああああっ!!」
背後から、ナオユキの股に手を突き入れ、力の限り握りこむ。
実力の差はあれど、軍立の学園生徒の握力は並み以上に鍛えられており……ナオユキは歯を食いしばり、自身の性器が丸ごと握りつぶされていく感覚に悲鳴を上げた。
「ぎっ、がぁあ……、はぁ……はぁ……、どこまで、腐ってやがる……っ、テメェ……っ!」
「へっ、うっせぇなぁ! 一度吹っ掛けちまったらもうどうでもいいし。ムカつくテメェをブチのめせりゃ、なんだってなぁ……?」
痛みに顔をゆがめるナオユキに苦言を吐かれても、ダツヤはどこ吹く風と意に介せず。さらに握りこむ手に力を籠める。
指が食い込み、次第に薄手の布地の表面に、押し出されるようにナオユキの性器の形が浮かんでくる。ダツヤはそれを握りつぶし、そのたびに押し殺された悲鳴が響く。
「へっ、言っとくが降参したって俺は聞かねぇぜ。徹底的にテメェを甚振って、そっからじっくりとそのガタイを犯してやるよ……!」
「はぁ……はぁ……、クソ、が……、頼まれたって、テメェみてぇな野郎に、降参なんざすっか……、
……大人しく死んどけば……見逃してやろうと思ったのによぉ……、卑怯者のカス野郎がっ!」
「……あぁ!? まだ立場分かってねぇのか、オラァッ!!」
「がっ、ああああぁぁぁぁあっ! ……クソ、負け……、る、かよ……っ!!」
互いに見下し合う不遜な態度は変わらず。ダツヤは自分に屈しようとしない苛立ちから、さらに握力を強める。
典型的ないじめっ子気質であるダツヤにとって、自分がそうだと見染めた「いじめられっ子」からの反撃や劣勢は、それだけでこれ以上ないほどの屈辱を感じてならなかった。
(……コイツ……、ただじゃおかねぇ……、そっちがその気なら、俺も付き合ってやるよ……!!)
……コイツ、絶対に殺す……。ナオユキは怒りのままに決意を秘めて拳を握りこみ、ダツヤの残虐な責めに必死に抗い続けた。
yukibou
2019-09-05 16:18:11 +0000 UTCnensei
2019-09-05 12:28:36 +0000 UTCyukibou
2019-09-05 06:44:13 +0000 UTCDARK SAVER
2019-09-05 05:55:42 +0000 UTC