「…まったく、なぜ俺がこんなことをせねばならん…」
俺が溜息をつくと、感覚を共有しているエルフナインからテレパスが送られてくる。
(ごめんなさいキャロル。どうしても外せない仕事で…」
「そっちの仕事が優先なら このバイトとかいうやつを休めばよかったんじゃないのか?」
(駄目なんです。今日のお客さんは大事なお得意様で…ボクがお相手しないと…)
「だからお前のフリをして接客しろと…ふん。この俺を使うなんてお前も偉くなったものだな」
(ごめんなさい…)
仕方ない。コイツには借りがたくさんある…。今日のところはしたがってやるか…
プレイルームと呼ばれる小さく薄暗い部屋には一人の男がいた。目の周りを覆う変なマスクをつけて床に仰向けになっている。
「お…おいエルフナイン!こいつ自分の顔に…!俺の尻を乗せろと…!」
(はい、その方は顔面騎乗が大好きなんです!思いっきり乗ってあげてください!)
…なんだこの客は…奴隷にでもなりたいのか!?人類は奴隷制を廃止したんじゃなかったのか??
(キャロル…嫌なんですか…?その…もしどうしてもイヤなら…)
「こ…この俺がこの程度のことを嫌がるわけないだろう!…楽勝だな…!」
俺は覚悟を決めてゆっくりと腰を下ろしていく……
(その人は本人のご希望で全身を拘束されてるので顔だけしか動かせません。安心してくださいね)
…頭がおかしいとしか思えない。こんなのが大事な客なのか……
男の顔に尻が触れる。
インナー越しに感じる男の鼻息とくちびるが心底気持ちわるい。
俺の尻の下で男は異常に興奮している。…まったくわけがわからない。
…まぁ気持ちは悪いが男がこれで満足するならよい。しばらく我慢すればいいだけだ…
「おいエルフナイン!今度はこの男…生で俺の股間の感触を味わいたいって…!」
(あーはいはい、だいたいいつもそのパターンです。キャロルはパンツ脱いじゃってください)
…いや…よくもそんなにあっさりと…コイツいつもこんなことしてるのか…!?
(やっぱりイヤですか?どうしても嫌なら…)
「わかったわかった!やればいいんだろう…!」
俺はインナーの股間部分を外し、ふたたびゆっくりと男の顔に腰を下ろしていく…
「…ひゃっ!」
直接俺の股間に張り付いた男の顔の感触に思わず声を上げてしまった。
さっきより輪をかけて気持ちわるい…異常に荒い鼻息…直接触れる唇の感触…魔女狩りの拷問もかくやと思えるほどだ…
「ほ、ほらもうこれで満足だろう…!」
あまりの不快さに立ち上がろうとしたそのときだった。
男が舌を這わせている…!
ぐちょっ…ぐちょっ…と不快な音を響かせながら俺の股間を舐めまわしている…!
「あっ…はぁ…っ…何をするやめろ…!」
男はやめない。興奮で何も聞こえていないようだ。ただひたすらに舌を動かしている。うねうねと…まるで蛇のように…
ついに舌が性器に達し 膣内を蹂躙しはじめた。
頭が朦朧として腰の力が抜ける…身体の奥から何かがあふれ出てくる…
(はぁ…はぁ…キャロル…感じているんですね…ボクにも伝わってきます…)
…感じている…?俺が…!?こんな人間風情に…!?
いや俺も研究の上で人間の生理機能には詳しいが…それはあくまで生殖行為に伴って生じるものであって…
こんな不快な蛆虫みたいな行為で…そんな…
(…いいんですよ…感じちゃっても…キャロルだって…女の子なんですから…)
舌が性器や菊門、内もものあたりまで這いまわり
俺の体が侵されていく…不快さは極限に達しているはずなのに…身体は動かせない…
(キャロル…ボクうれしいです。こうやって気持ちよさまで共有できるなんて…」
「く…やめろ馬鹿…おまえなんかと…いっしょに…するな……はぁ…っ…ひぃっ…んっ…」
身体がびくんと跳ねる。身体の奥底から波のように何かが押し寄せてくる。
こ…これが快感であってたまるものか…俺は…お前といっしょにいたときの方が…ずっと…
(ボクたちずっと繋がっているんです…いつまでも…ずっと…)
「馬鹿…ぁ…ああああああああ!」
(あっ…ボクもうダメです…いっしょに…いっしょに…キャロル…!)
「(あっ…あああああぁああああああああ!)」
…後日。エルフナインがどうしても礼をしたいというので会うことになった。
「ありがとうございましたキャロル。お客さん大満足でしたね」
「クソが…もう二度とあんなことしないからな!」
「えーでもキャロルも気持ちよくなってましたよね」
「なってない」「なってました」「なってない」
「でもあのお客さん、国連の要人なんですよ?何かあったら世界のバランスが崩壊してしまうレベルの」
「……。せっかく救ってやった世界がこれだとは…世も末だな…」
目の前でニコニコしているエルフナインを見ながら
まぁしかしそんなポンコツな世界でも悪くはない気がした。
世界を再び解剖するのはもうしばらく待ってやるとするか…