シオンが目を覚ましたとき、そこにあったのは知らない天井だった。頭はまだぼんやりとしていて、思考が上手くまとまらない。習慣的に起き上がろうとして――強烈な違和感に襲われる。
「え!? これは……!!」
火照りの残る身体に上手く力が入らない、どころか、そもそも、手足は金属製の枷でガッチリと拘束され、動かすことができなかった。
無防備に四肢を広げた、X字を描くかのような体勢に羞恥を覚えたのも束の間、頬が燃え立つほどの事実に気付く。
身に着けていたはずの衣服や装備が全て剥ぎ取られ、一糸纏わぬ姿にされてしまっているではないか。
いつものマフラーや下着さえどこにもなかった。拘束台に触れている背中やお尻にむず痒さを覚え、それがジワジワと熱を帯びたことで、確認するまでもなく不感の指輪まで奪われていることを知る。
なのに、あの指輪だけは残っていた。露天商から購入し、宿屋でシオンを狂わせた、憎らしいくらい紅く、美しい指輪。
「あふぅぅ……っっ、はぁっ、あっ、んんあぁ……っっ」
返ってきたのは意識ばかりではなく、身体の感度もだ。むしろ、不感の指輪という抑えを外されている分、昂りは酷くなっているかもしれない。
身震いに合わせて仰向けの爆乳が波打ち、豊満すぎる量感をあられもなく主張した。乳房のサイズに見合った乳暈に脂汗が滲む。
しかし、隆起の先端はツンと勃ち起こるどころか、あるはずの肉豆を埋めて隠し、窪んだ横線の内側にしまい込んでいた。
乳先の突起は未だ姿を見せていない。淫呪の籠もった指輪に苛まれて、空気にしか触れられていない乳肌にたっぷりと汗を掻き、本能からくる寂寥に胸を締めつけられているにもかかわらず、だ。
女として完璧に近い肉体を持つシオンの唯一の弱みとでも言おうか、本人にとってもコンプレックスであるそれは、肉厚であり、まるで厚ぼったい唇が二つ付いているような見事なまでの陥没乳首であった。
清楚な少女の恥じらい。あるいは、淫魔に躾けられた快楽への怯えの象徴。淫魔の施す苛烈な調教に耐えきれなかったシオンの乳首はいつからか自らの姿を隠すことを選んだのだった。その醜い陥没は美しいシオンの容姿の代償が全て集約されているかのようだ。
よほど高い適性があったのだろう。太く強靭な快楽神経の根が異様な密度で形を作っているシオンの乳首の感度は、本来女にとって最も弱いGスポット、クリトリス等の性感帯をも遥かに凌駕する淫らな宝玉であった。
そして醜悪な見た目のその部位は、仮に顔を覗かせればこれ以上ない弱点になってしまう。彼女にとってのトラウマ、過去に受けた淫魔の教育の賜物、シオンという女に付与された淫靡な屈辱の象徴だ。
日常生活ではニップレスによって乳頭部を厳重に保護しているのだが、今やそれも剥がされている。
どんな刺激にも耐えられない肌表皮、使い込まれた縦割れアナル、あっさりと濡れる膣口、その上部に鎮座するのはクリコキを繰り返されてきたせいで被虐的な形へと変貌を遂げた大粒包茎クリトリス。
一目見ただけでどこも淫魔によって丹念に遊ばれてきたことが分かる。シオンはそんな弱点の全てを無防備に曝け出していた。
心臓部を剥き出しにされているような異様な心細さにシオンは起伏に富んだその身を竦ませる。
「だ、誰か……っっ、いませんか……!」
細い喉を絞った弱々しい声音で呟く。見知らぬ場所で拘束されたまま、指輪に蝕まれてオカシクされる。そんな想像がよぎり、ジクリと子宮が疼いた矢先、
「はい。いますよ。もちろんです」
「……ッッうぁ!?」
まさか返答を期待して、ではなかったために、平坦な調子で応じられて、シオンは驚きのあまり素っ頓狂な声を漏らしてしまったほどだ。
「あの……、あなたは……? い、いえ、まず、ここはどこなんですか……? 私は……っっ……!!」
ビッシリと何かが書き込まれた紙を持った、白衣の、研究者風の女性が側に立っていた。いつからそこにいたのだろうか。あるいは、初めから?
淫魔ハンターとして磨いてきた肌感覚があれば簡単に気付けたはずなのに、こんなあからさまな気配を察知できないほど快感に夢中になっていたのかと、羞恥がこみ上げてくる。 半ば、恥ずかしい思いを誤魔化すために質問を重ねたシオンに対し、女性は表情ひとつ変えることなく、冷静に。
「ここは様々な呪いの研究を目的とした解呪の専門機関です。あなたはその指輪に呪われたために、我々の研究対象として運び込まれました」
もうとっくに察していたいたことではあったが、第三者の、それも、専門機関とまで名乗る人物から改めて突きつけられる衝撃は大きかった。
アクセサリーとして買った指輪が、まさか呪いのアイテムだったとは……。シオンからしてみれば、不運と言う他ない。そして、気がつけば全裸で拘束されている、理不尽な現実。
戸惑いを押し退けて、歴戦の淫魔ハンターとしての警戒が顔を出す。今のところ、悪意は感じられない。だが、研究者の女性に向ける紫の瞳に、鋭い光が宿ってしまうのも仕方のないことだろう。
「私たちの目的はその呪具を研究、解析することにあります」
「そ、それなら、なぜ……ぅあっ!? こ、こんな格好、を……! ああっ!」
「現状、その指輪は外せませんので。嵌めたまま研究を進めますが、暴れられると困りますから」
「…………っ!」
「それとも、指を切り落としますか? 私は構いませんが、あなたにとっては不都合でしょう。S級淫魔ハンターのシオンさん?」
「そ、それは…………はい……っ、その通り、です……っ」
しぶしぶ、といった具合で納得するシオン。淫魔との激しい戦闘のことを考えれば、武器を持つ手に不自由があるのは確かに大きなハンデだった。
しかも、依頼で戦う中級以下の淫魔たちならともかく、S級として立ち向かわなければいけない上級の淫魔や、復讐対象である女王級の淫魔が相手では、それが致命的な障害となるであろうことは目に見えている。
(ゆ、指輪が外れなくて困るのは……私の、方……っい、今は、この方たちに頼るしか……なさそう、です……っ)
こうしている今ですら、身体の感度は上がり続けていた。開かされている股座に愛蜜が滲む。
今後のためにも、指輪を解呪することは必須。いくら状況が呑み込み辛かろうが、初めからシオンには選択肢が存在していない。凶悪な媚悦に侵されながら自力で解呪方法を探るなどと、とてもではないが不可能なのだから。
「わ、分かり、ました。なるべく、私、も、協力します」
「ご理解頂けて恐縮です。あなたのことはある程度、データとして知っていますのでご安心を」
「データ……?」
「ええ。あなたの治療を担当したことがある、という治療院から譲り受けました」
手元の資料を捲る女研究員。淫魔ハンターという職業上、治療院に頼ることは珍しくないが、まさかそんなデータが共有されているとは思いもしなかった。
「シオン。職業S級淫魔ハンター。数々の上級淫魔を討伐しており、教会からは最高位の淫魔ハンターとして表彰されている」
経歴を改めて読み上げられるのは、どこかむず痒い心地だ。地位や名声を求めて淫魔ハンターを志したわけではないが、ここまでの道のりが評価されているのは悪い気分ではない。
「特記事項:肉体の発育が異常に良く、特に乳房などは見た目通り爆乳とさえ呼べるレベル。その他、太股、尻房と肉感には非情に恵まれている。ただし、身体全体としては引き締まっており、女体としての完成度は至高の域」
「え? えぇ? あぁ、は、はい……?」
まさか容姿にまで言及されるとは思っていなかったため、困惑の声を漏らすシオン。だが、治療院から譲り受けたデータとやらはそれで終わりではなかった。
「さらに、その感度は軽く触れられただけでも発情を催すほどで、全身が乳首、陰核と遜色ない感度を持つ……と」
「なっ!? そんなことまで……!?」
「原因は過去に女王級の淫魔から性奴隷として調教を受けたため。文字通りの全身性感帯であり、乳首は陥没乳首。クリトリスは包茎大粒と恥ずかしい形状に躾け済み。これも淫魔による調教の影響と思われる」
「~~~~~~ッッ!!?」
秘めていた身体のコンプレックスまで読み上げられて、羞恥が燃え上がった。経歴や容姿を言語化されるのとは訳が違う。改めて自身の身体のいやらしさを突きつけられるなどと、年頃の乙女としてあまりにも耐えがたい恥辱だった。
「ふぅん」
「な、なんですか……?」
女研究員の視線が両胸を這い回っていることが、シオンの羞恥心をますます敏感に刺激する。
ジッと凝視されている乳肌に、汗の粒が浮き始めた。甘い疼きが乳房の内側をジワジワと満たしてゆく。これは、偶然にも読み上げられなかったデータだったか。豊満すぎるほどに実ったシオンの双爆乳は、いやらしい視線を注がれてすら感じてしまう有様なのだ。
「確かにこれは、見事なまでに――埋もれていますね」
「……ッッ!!」
電流じみた恥悦に貫かれ、シオンはゾクゾクと背筋を震わせた。軽い絶頂さえ予感してしまったほどである。
女膣の内側が濡れうねって、奧から蜜液が溢れ出た。
冷淡、かつ嘲りを含んだ女研究者の視線は、快楽に怯え窪んだその一点だけに注がれていて、そここそが完璧な女体における絶対的な瑕疵なのだと見下している。いくら絶世の美女であれど、この女は乳首を埋もれさせた女なのだと、そう見ている。
「感度についても詳細な記述がありますね。各部位の感覚データ……うわ、すごい数値ですね。こんなの、服を着替えるだけでも一苦労でしょう」
「も、もう良いですから……! 私のことはもう……!」
言いながらも、シオンは熱く吐息を濡らし、瞳を潤ませるようになっていた。拘束の最中、出来うる限り身を捩り、甘やかな牝香を匂い立たせる。
研究員の女性にはしたない反応を見られていることすら、気にする余裕がない。強烈な羞恥に後押しされるかのように、淫呪の侵食が急速に進行してゆく。このままでは、宿屋で気を失った時の二の舞だ。
そう思っていたのも束の間、女性の掌がそっと脇腹に触れてきて、大きく腰を跳ねさせてしまった。
「んぁッ……! あ、あぁぁッ……!」
「まずは判明しているところからお伝えします。この指輪は少なくとも数百年は前のもので、着用者の魔力と強く結びつきます。そうして一度身に着けると、外れなくなる訳ですね」
「あ、あの……っっ、んくぅぅっ! どうして、撫でて……っっ、あああっ!!」
「シオンさんの魔力は、特に指輪と相性が良いようです。指輪の効果は強制的な発情と感度の上昇。継続的な性感刺激の発生。まあ、典型的な淫呪ですね」
ほっそりとした指先による愛撫はどこか無感情で、何か特別に上手い、というわけではなかった。それでも、今のシオンにしてみれば十分すぎる刺激だ。むず痒いくすぐったさに全身が総毛立つ。
他人に触れられ、見られているのだと意識するだけでも、身体の奥底に被虐の熾火が灯る。
「ちなみに、シオンさんの反応データはその拘束台から採取させて頂いています。別室からモニタリングもしていますので、そのつもりで」
「えっ!? そ、そんな……っっ、せめてカメラだけでも止められませんか……?」
「ダメです。映像も貴重なデータですので。余すことなく録画させて頂きます」
両手両足を広げた無防備な裸体を、内部で進行する淫らな反応ごと記録されてしまっている。
ここでもまた新たに、詳細なデータを記録されていってしまうのか。言いようのない羞恥に、ジクジクと下腹が疼いた。求めた妥協案もばっさりと斬り捨てられてしまう。この場にはいない、何人いるのかも分からない研究者たちの視線が突き刺さるような気がして、無数の掌が這い回る錯覚に陥った。
「傾向から言って、古い呪いとここまで相性が良いことはほとんどあり得ません。ですので、我々は何か他の原因があるのではないかと疑っています」
「あぁぁッ……!! あッ、や、やめてください……! そんなところっ、触っては……あああッ!!?」
細い指先が爪を立てて、腋下の窪みをカリカリと引っ掻いてくる。大きすぎるがゆえに、仰向けになったシオンの乳房は身体の側面にはみ出ていた。腋をくすぐられるついでに横乳も刺激されて、得も言われぬ恍惚が広がる。
「あぁひッ、ひぁあぁッ!! くひぃぃッ!!?」
繊細な掻痒感すら、敏感すぎるシオンの肉体は凶悪な快感へと変換してしまう。腋肉を痺れさせるフェティッシュな刺激に、神経が混乱した。
女研究者の細指はねちこく動き、単調な説明の声色とは裏腹に、サディスティックな感情を多分に含む指遣いだった。
「ひぃっ、ひ、あぁあぁっ……! 指輪……ッッ、せめて指輪を……!!」
「ふむ。もう一度初めから説明が必要ですか? 指輪は外せないと言っていたはずですが」
「ちがっ――もうひとつの――――あああッッ!?」
不感の指輪を返して欲しい、と言おうとしていることは分かっているはずなのに、意地悪なくすぐりに阻害され、途切れた言葉は都合良く解釈される。
「不感の指輪、でしたか。ダメですよあれは。実験のデータが正しく採れなくなってしまいます」
「そんな……ッッ、私、あれがない、と……ふくぅぅ~~~!!」
力を込めて訴えかけるが、これもあっさりと聞き流されて、腋肉に食い込んだ指の腹をブルブルと震わせられてしまった。
昂り、愛蜜を噴きこぼしたシオンの指で淫呪の指輪が妖しく輝く。軽い絶頂程度ならば、ここまでにいくつも積まれていた。
何度も甘イキを繰り返し、時折急所を探られた刺激によって深めの絶頂を味合わされる。
その度に、シオンの脳裏は白く染まり、聡明な思考さえも淫靡な快楽に侵され始めていた。
「淫呪に関する指輪を研究するのですから、感度を抑える魔道具なんて論外ですよ」
「あぁああッ!! でもぉ……お願い、します……っ、もう身体が、敏感すぎて……!!」
「はい。そのようですね。軽くくすぐっているだけなのに、良いデータが採れてますから」
執拗な腋窩へのくすぐりに相好を崩すシオンとは対照的に、女性はあくまで無表情なままだた。しかし、研究者らしい鉄面皮の裏側にはシオンを嘲り、もっと苛めたいと望む昏い欲望が見え隠れしていた。
これも言わば、女王級淫魔に躾けられた後遺症のひとつだ。淫らに改造されたシオンの肉体は無意識に作用する魅了を振り撒いており、淫魔だけでなく人間の欲望も惹き付け、見る者にサディズムと劣情を与える。
本来ならば、仮に魔が差して凶行に及んだとしても、シオンはS級の淫魔ハンター。その欲望が遂げられることはない、のだが、発情に侵され、拘束されている状況では話が別だった。
今のシオンは最強の淫魔ハンターなどではなく、研究対象として差し出された淫猥な肉贄に過ぎない。無力な研究員の擽指だけで、惨めったらしく悶えてしまうほど。
「これも解呪方法を見つけるための手段です。快楽に反応して指輪は活性化する。そこから様々なことが解析できます。分かりましたか?」
「はひぃぃぃッ!! は、あッ……イクぅーーーッッ!!」
低く冷たい声を耳内へ直接流し込まれたのがトドメとなった。凜々しく整った美貌をふやかして絶頂を口にするシオン。
背徳と屈辱を孕んだ恍惚が子宮を直撃し、愛蜜を直に搾り取る。心地よい快美に耽溺しきったイキ姿からは、討伐者としての矜持など微塵も感じられない。
「ふむ? 時折されている絶頂宣言はシオンさんの普段からの癖なのでしょうか? 一般的な大多数の人には見られないものですが、研究する側としては分かりやすくて助かりますので、その調子でお願いします」
これは淫魔の女王に調教された際に刷り込まれた被虐の悪癖のうちの一つであった。
絶頂の時には意識していなくても自らの恥辱を、屈辱を叫んでしまう。
それを指摘されたことで、シオンは羞恥から強烈な身震いを起こした。
「では、そろそろ本格的な実験を始めていきましょうか。シオンさんの緊張も解れてきたみたいですし」
「ん、ぉおぉ……!? らぇぇ……ッッ、あはぁぁ……!!」
細指が離れる前に、腋肉をグリグリと押し込んで苛めてきた。それはまるでこの華奢な指先だけで絶頂したのだと、その気になれば、微弱なくすぐりだけでも支配されかねないのだと突きつけてくるかのようで、裡に眠るマゾヒズムが刺激される。
屈辱的なくすぐり責めから解放された瞬間、シオンの胸は切なさに疼き、研究員の指先を名残惜しくすら感じていた。
もっとも、そんな寂しさに浸る必要は初めからなかったのかもしれない。すぐさま始まった触診によって、間を置かずして蕩かされることは決定事項だったのだから。
すり……さわさわ……すりり…………。
「んはぁあぁぁあぁ…………。はぁふぅぅぅ…………」
ソフトタッチに触れられた肌に電流が走り、細くくびれた艶腰が跳ね起こる。風がそよぐだけでも感じてしまうであろう敏感な肉体は、触れるか触れないかギリギリのラインを保つ愛撫にすら耐えることができない。
二の腕や膝裏、背中、お腹、と、本来ならば性感帯でない部位も悦びの細波を発し、淫らな熱を帯びる。肉感的なプロポーションがくねると、汗の雫が弾け飛んだ。
「はぁぅッ、あ、あああッ!! んあああッッ!!」
「まずは感度を高め、指輪の活性限界を探るところからでしたが……。やれやれこれでは、元から淫乱なのか指輪の効力なのか、見分けるのが大変そうです」
「イグぅッッ!!」
軽く撫でられて絶頂の牝飛沫を上げたシオンを見下ろし、女研究員が呆れたように呟く。詰る言葉に脳を揺さぶられるシオンだったが、研究員の言葉は陰湿な嘘であった。
仮にも、ここは解呪を専門としている研究機関なのだ。シオンの一挙一動、身体の反応や発情具合まで細かに観察している彼らが、その程度のことを解析するのに苦戦するはずもない。
「聞いていますか? あなたの身体がいやらしすぎるせいで、実験の進捗に遅れが出るかもしれない、と言っているのです」
「そんな……っっ、そ、そんなこと、言われても……あぁぁ……っっ、い、言わないでください……っっ、恥ずかしい……です……!」
異常に敏感な肉体はシオンが望んだものではない。淫呪の指輪を嵌めてしまったことに関しても、シオンの落ち度ではなかった。
なのに、責めるような言葉をぶつけられると、生真面目なシオンは自責の念を抱いてしまう。弱々しく身悶える自分の姿が、どれほど見る者の嗜虐心を掻き立てているか、ということにだけは無自覚なままに。
「ええ本当に。見ているこちらが恥ずかしくなってくるくらいの乱れ様ですよ。どこを触れられても感じるのですか? 逆に、ここは大丈夫、ってところ、あったりします?」
「あぁうぅぅッ、あああッ、あああッ!! やあぁあぁぁ……ッッ……!!」
恥じらう思考が塗り潰されて、狂おしい倒錯が胸に去来する。拘束がなければ、エビ反りに身体を反らせていたかもしれない。ただ、愛蜜を垂れ流して爆乳を撓ませる媚乙女もそれはそれで煽情的だ。
「…………」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、あああ……!! あっ、嘘……です……っ、私、そんなところでまで……!!」
手首から1本線を引きながら、嫋やかな指が掌へ這い上がってきた。そして、恋人繋ぎに手を握られて、指の股をスリスリと擦られる。
愛撫とすら言えないような指遣いにすっかり両手が腑抜けてしまい、握り返す力は最強を謳われる淫魔ハンターとは思えないほどか弱い……。
「んぁぁ……っっ、ひびれ……っ、痺れますぅ……! っふぁあぁぁ……!」
「嘘や冗談はこちらの台詞ですよ。手を繋いでイクなんて聞いたことがありません。どれだけクソ雑魚ボディならそうなるのですか?」
嗜虐的な言葉選びがシオンの矜持を貶める。耳の縁をなぞられ、吐息を塗されたあとに耳内を繊細に引っ掻かれて、シオンはイッた。あまりにも容易く絶頂へと導かれた。
何の誇張でもなく、少しでも責められればイッてしまう。あるいは、何もしなくとも勝手に――? 相性最悪の淫呪に蝕まれたS級ハンターは、とうに汗みずくで、しとどに濡れた媚肉塊と化していた。
「あああ……。許してぇ……。指輪……指輪を…………っっ」
「はぁ。あんな指輪があったところで、どうにかなるザマじゃないでしょう。イキ死なないように最適な手加減はしてあげますから、あまりワガママを言わないでください」
女研究員の言葉は嘘ではなかった。これまでも優しく、丁寧だった愛撫の手つきがさらに深度を増す。丹念ではあるものの、指先を掠めさせるだけの仄やかな刺激。
それが『最適』だった。彼女らが集めたデータから導かれる、シオンを過剰に狂わせないだけの責め手だった。
児戯のレベルにまで落とした手加減の分、であるのか、シオンに向けられた声音はより冷たく、やや乱暴な言い草まで含んでいる。だが――染みる。よくよく染みてしまう。上手く撫で付けられたマゾ心が沸騰し、発情の焔が煌々と燃え広がった。
「おや? 今、触れていないのに数値が急激に変動しましたね……。もしかして、言葉でなじられても感じているのですか? 知ってます? そんな『変態』をなんて呼ぶか」
「ち、違う……っ、違います……っっ、私は、変態なんかじゃ……!」
「本当ですか? 信じて良いんですか? だって、それ以外に考えられませんよ? あなたがどう苛められても感じる、とびっきりの”マゾ”だって」
「はあぁあぁぁぁ……ッッ…………!!」
最後の、『マゾ』の部分だけをわざとゆっくり、低く、囁きかけて、退廃的な響きを孕むその単語を脳髄へ刻みつけるかのように。
そんな思惑に、シオンはまんまと嵌まってしまっていた。
だらしなく開いた口から幾筋も唾液を垂れこぼし、マゾと罵られる甘露を噛み締めながら、これでもかと媚肉を揺すり立てる。声にならない絶叫が、白い喉から溢れ出した。
『マゾ』の二文字がトドメとなりシオンは深い絶頂を極めてしまっていた。魔性を秘めた言葉だけで恥辱の極みへと到達させられた事実にシオンの身体は倒錯感によって更に熱く焦がされていく。
「接触のない状態でのオーガズム……脳イキを確認しました。どうやら、私の仮説が正しかったようですね。……聞こえていますか。モニター室。重要事項に追加してください。今回の研究協力者は、とんでもない”ドマゾ”だと」
倒錯の愉悦を味わわされたばかりだ。わざとらしく為された研究員の報告に抗議するだけの気力が残っているはずもなく、その資格も失っていた。
指も使わずにイかされた以上、シオンがマゾであることは反論の余地なく証明された真実なのだから。