ふらふらと、覚束ない足取りで歩く。すれ違う人が心配そうな目で見てしまうほど憔悴して。
脚を踏み出す度に、くちくち、ぬちぬち、とショートパンツの中で溢れ滴る蜜が擦れ合う。
ゆっくりと歩を進める間にも、シオンのいやらしい雌の身体は狂いそうなほど熱く火照って、そのシルエットを隠すことすら出来ないほど強く勃起した乳首が服と擦れてはシオンを快楽で撃ち抜く。
ガクガクと震える脚。今にも崩れそうな歩みを、歯を食いしばりながら耐え、進む。すれ違う人々はただならぬ様子のシオンに訝しみ、だがその鬼気迫る表情にただ早足ですれ違っていく。
歩かなければならない。憎き淫魔が待っている。殺しに行かなければならない。最早ボロボロにほつれた縫い糸のようになった、淫魔ハンターとしてのプライドに引きずられて。
見えてきた。このミールでの滞在の間の楽しみであった、『うたたね』の扉が。
「っ……あ……あぁ……そんな……」
シオンは落胆のため息を漏らす。
メアの言葉は、夢の中の戯言だったんじゃないか。『うたたね』を気に入っていたシオンを揶揄うための嘘だったんじゃないか。言葉に誘われるまま『うたたね』に行ったら、普通に営業していて、いつものようにマリーが無邪気に笑って出迎えてくれる。そう願っていた。
だが、無情にもその扉には、臨時休業を示す張り紙が掲げられていた。
それは即ち、メアからのメッセージということ。他の客を遠ざけ、そしてシオンだけを出迎える用意がある、ということだった。
ドアノブに手をかけると、臨時休業であるにもかかわらずその扉はいつものようにシオンを中に招くために開き、ドアベルが陽気に音を奏でる。
「あ。いらっしゃい、シオンさん! 待ってました!」
まだ高い太陽の光が柔らかに差し込む窓際の席で真剣な顔で帳簿と睨めっこしていたマリーが嬉しそうに立ちあがった。
「っち、近づかないでください!!!」
そして、マリーがシオンの方に歩み寄ろうと脚を踏み出した瞬間、シオンは震える手で腿の鞘から抜いたナイフの切っ先を向けた。
マリーを威嚇するシオンの声は滑稽なほど震え、自分が弱いことを必死に隠そうとする子犬のように甲高い。
マリーは銀色に輝く刃に怯むことなく笑いながら、歩み寄る。どうして今まで気付かなかったのだろう。その屈託のない無邪気な笑みは、メアそのものだった。色こそ違えど顔つきも同じ。そして、声も同じ。
それなのに気づけず、親交を深めてしまった。憎き淫魔の一族と。
「貴女に殺せるのかしら? 私を」
腕を後ろで組んで、軽く身体を仰け反らせ、首をシオンに晒しながら、歩いてくる。殺せるものなら殺せ。お前にそれが出来るなら。淫魔ハンターとしての誇りがあるなら。ここを掻き切れば、終わるぞ。口よりも雄弁に、マリーの瞳がそうせせら笑う。
「近づかないでください! と、止まってください!」
だが、そのナイフの切っ先が、マリーの首に届きかける。あと一歩、少しでもマリーが顔を近づけた瞬間に突き刺さる。そんな距離で――マリーは立ち止まらない。何の躊躇もなく、マリーはシオンに近づいた。そして、その簡単に折れてしまいそうなほど細い首にナイフの先が食い込んだ瞬間。
「っ……!!!!!!!」
シオンはナイフを取り落とす。木製の床材に、その切っ先が突き刺さって鈍い音が響く。それは、淫魔ハンターとしてのシオンが死んだ音。
「あ……」
それを見た瞬間、シオンはへなへなと脱力し、腰を抜かした。マリーの楽し気な笑みを見上げながら、どさりと床にへたり込む。
「いい子、シオン」
マリーがシオンの頬を両手で包み込む。愛しげに、優しく、ゆっくりと。マリーの笑みが近づいてくる。分厚いレンズの丸メガネの奥の瞳が、メアのように嗜虐的な色に染まっている。
距離がゼロになる。
「んっ! んんんっ!」
マリーの小さな唇が、シオンの唇を奪う。甘たるい少女の味と共に入り込んできた熱い舌が、シオンの中を犯す。シオンは背筋を走り抜けた快楽に身を震わせた。
噛み切ればいい。それだけでマリーは、メアは、死ぬ。
勿論、そんなことはしない。そんなことをしたら、シオンのいやらしい雌穴を愛してくれる人がいなくなってしまう。
マリーの舌がシオンの舌を好きなように舐るのを受け入れる。そればかりか、積極的に舌を絡め、愛し合う。
殺すべき対象と。夢の中でシオンを苛烈に責め立てた悪しき淫魔と交わす、濃密で淫蕩なディープキスの快楽が頭を満たす。
「んっ、んんんぅうぅ!」
マリーの舌が大きく強く動いて口腔内を撫であげる度、びくっ、びくっ、と身体が震え、ショートパンツの中で新たな蜜が溢れ出て、甘たるい匂いの満ちる『うたたね』の中に、淫らな女の臭いが混ざっていく。
頬を覆っていたマリーの手が、下りていく。両手の指が、首に回る。シオンはそっと、首を反らした。夢の中で何度も何度も味わった、指で作られた首輪を、シオンは自分から望んで、受け入れる。マリーのペットになった証。
S級淫魔ハンターが、憎むべき淫魔の愛玩動物に堕ちる最大級の屈辱が、どうしようもない喜悦となって身体の中に満ち満ちる。
(ごめん……ごめんなさい……お姉ちゃん、敵討ち、もう出来なくなっちゃった……)
心の中で亡き妹に詫びると、シオンは愛しいご主人様の身体を抱きしめた。
◇ ◇ ◇
真夏のジメジメした湿っぽい暑さが去り、秋の気配が顔を覗かせ、涼しい朝を迎えた港湾都市ミールの中心街の一角。大通りから一本隠れた路地で、今日も喫茶店『うたたね』はひっそりと営業していた。
まだ開店したばかり。客はおらず、厨房で二人の女性従業員、カレンとアマリエと共に、店主のマリーはコックコートと眼鏡を粉まみれにしてケーキやお菓子を作りながら談笑している。
「最近ますます楽しそうだね、マリー」
「えー? 分かっちゃう? ねえねえ、カレンさんも分かる?」
鼻歌混じりで生地を捏ねていたマリーは、アマリエに機嫌よく少しからかうような口調で指摘され、かまどの火を見ていたカレンに話を振る。カレンは紅の瞳の真剣な光をフッとやわらげてコクリと小さく頷くと、再び火に向かった。
「何があったの?」
「最近ペットを飼い始めたんだ!」
アマリエに問われ、マリーはペットの存在を誇るように胸を張る。
「へぇ、珍しい。ケーキこそ我が人生とか言ってたマリーがね」
「たまにはこういうのもいいって、久々に気づいちゃった!」
「アタシも昔、犬飼ってたよ」
「あー、あの黒い子ね。懐かしい!」
「覚えてるんだ。三十年くらい前だったかな?」
「うんうん。そういえば彼がいなくなってから何も飼ってないんだね」
「丁度その頃に結婚して、子供も出来ちゃってバタバタしてたからね。子供の情操教育に飼おうかって話はしたんだけど、何もなかったらまた十年くらいで見送らないといけないわけ。またあんなに悲しいのかなって思って躊躇しちゃってるうちに、今度は旦那が病気で倒れちまってそれどころじゃないわけさ!」
「あー、なるほどね……アマリエさん優しすぎるしね。私は、ペットとかあんまり興味なかったんだけど、一目惚れしちゃって! 今はあの子にゾッコンだよ! 鳴き声とかとっても可愛いの!」
「へえ、今度よかったら見せてよ」
「えへへ、きちんと躾して、お粗相しなくなったら連れてきてあげるよ! あ、お客さん。はーい、いらっしゃいジュリさん! 例のデート、どうだった!?」
やってきた常連と楽しく会話を始めるマリー。
今日も喫茶店『うたたね』は、その店名の通りのような柔らかくゆったりとした時間が流れている。
マリーの魔力に反応する転移魔法でしか出入りできない、マリーこと、夢魔『メア』の隠れ家が『うたたね』の地下に存在していることなど、誰も知りもしないまま。
◇ ◇ ◇
マリーのペットになって、一体何日経ったのだろう。今が現実世界のなのか、メアによって作り出された夢の世界なのか、それすらもシオンは理解していない。いや、理解する必要すらない。寝ても覚めても、シオンの世界は変わらない。この昏く冷たい石造りの地下室だけが、今のシオンの世界の全て。淫魔への復讐に塗れた人生の終着点なのだから。
「んっ♥ んぉっ♥ んんぉおおっ♥♥♥」
地下室の最奥。シオンは部屋の天井付近からから伸びる鎖に両手を、床から伸びる鎖によって、両足を大きく開いた状態で固定されている。全身でXを描くような姿勢を強制されたシオンの女体は、かつてハンターとして活躍し鍛えられた筋肉がすっかり落ちて、非力な女性らしい柔らかな肉で僅かに丸みを帯びている。
おおよそ服と呼べるものは、もう随分と身に着けていない。ただ、黒光りする布地で編まれたハイレグショーツとオーバーニーソックス、そして、敏感な乳首を貫くピアスが、シオンに与えられた装身具の全てだ。
ますます目を引くほど脂肪が付いて大きくなった尻にギリギリと食い込むショーツには、前後の穴で咥え込んだディルドが孕む赤い魔力の輝きが透け、薄暗い地下室の中で一層存在感を放っている。その光が明滅する度に、シオンは自由にならない身体を、膣内と直腸のイイところに当たるように必死にくねらせている。
このディルドは、おしゃぶりだった。マリーが喫茶店の店主としての仕事を全うする間、シオンが寂しくないように挿入されている。だが、それはまさしくおしゃぶり、代替品に相応しいサイズだ。女王クロハによって、そしてメアによって度重なって調教され尽くしたシオンの身体はそれでも快楽を紡ぐ。しかし、決して満足することは出来ない。これとは比にならないほど凶悪なサイズと造詣をした人外のディルドの味を、毎晩のように味わってしまっているから。シオンはただ、夜になってマリーに愛される瞬間を夢見て、咥え込んだボールギャグの穴から涎を吹き散らしながら悶え続けている。
地上でマリーが動く度に僅かに反応して振動するディルドから愛しいご主人様の存在を感じ、シオンは拘束されたまま、淫らに踊る。腰を振り、身を捩らせる度、愛しのご主人様に愛され続けているせいでいやらしくバストアップし続けている爆乳がゆっさゆっさと重苦しそうに揺れる。ハンターとしての誇りも、人間としての理性も何もかも失ったシオンは、ただ淫らに腰をくねらせて快楽を貪る雌牛に過ぎない。
ただ、待ち続ける。うたたねの営業時間が過ぎるのを。マリーがやってきて、このディルドよりも遥かに大きなモノで犯してくれる瞬間を。細いディルドをしゃぶり続ける空虚な二つの穴を満たしてくれる瞬間を。
一人、シオンの力では絶対に出ることが出来ない牢獄で、シオンは一人、踊り続ける。汗でヌメる女体を、いやらしく、うねらせながら。
快楽で満たされない飢餓感、渇望感が、シオンの脳内を満たしている。絶頂を求めて、二つの穴をぎゅうぎゅうと締め上げ、ねばついた愛液を垂らしながら淫らに舞い続けても、エクスタシーの瞬間は訪れない。
そして、今日も無限のように感じた時間が過ぎ。離れたところにある階段の方からマリーの魔力の輝きが迸った瞬間。
ヴィ……ヴィイイイイイイイイイイイ!!!!
その時が訪れた瞬間をシオンに知らせるように、前後の穴で咥え込むディルドが激しく振動を始める。
「ん゛おおおおっっ♥ んんぅおおおおおおおおおおおおおおおおっっ♥♥♥」
シオンは咥え込んだディルドをきゅぅううっと食い締める。かつん、かつん、と、今日も渇望し続けたマリーの靴の音。
「んぉお゛っ♥ お゛ぉっ、んぉぉおおっっ♥」
シオンは歓喜に身体を震わせる。待ちわびた瞬間に。マリーが地下室の扉を開けて中に入ってきても、シオンは腰を振るのをやめない。それどころかより激しく振り乱し、ディルドをより深く飲み込むように膣がうねる。
「いい子にしてた? シオン?」
マリーが部屋に入ってくる。その瞳に、サディストの炎を宿して。その小さな口を、まるで三日月のように吊り上げて。
「ん゛おおっ♥ おぉぉおおおっ♥♥♥」
シオンは歓喜に身体を震わせ、がくがくと脚を笑わせながら何度も頷く。口の端から涎を垂れ流して悦ぶその顔は、人間らしい知性など欠片もないペットのものだった。
「今日もたっぷり可愛がってあげる……ほら、約束した通り、今日から夜のお散歩に出かけようね」
そして、マリーはその右手に持った鎖をジャラリと鳴らしシオンに見せつける。
「ん゛おっ♥ ぉぉおおっ♥」
シオンの瞳に甘い絶望の光が満ちる。それは、『お散歩』への期待。こんな姿のまま、首輪を付けられ、鎖を引かれ、暗い地下室を出て深夜のミールの街を歩くことを想像する。
色街でもないこの地区の夜には、おそらく警備の衛兵しかいないだろう。だが、それでも、何かの拍子に誰かに見られるかもしれない。
「んっ……んぅうっ! んぉっ♥ お゛っ♥」
シオンは、いや、マリーのペットのマゾ雌牛は、その光景を想像して、より激しく腰を振る。
「悦んでるの?」
カチン、と。やけに大きく響いた首輪と鎖がつながる音を聞いて、マゾ雌牛の興奮がさらに高まる。
「んぉおっ♥ お゛っ、ぉぉおおっっ♥」
マゾ雌牛の淫らで激しい腰の動きに連動し、鎖がジャラジャラと音を立てる。
「ふふ……可愛い」
マリーはそんなマゾ雌牛の無様なダンスを愛おしそうに見つめて笑う。そして、その笑顔のまま、マゾ雌牛に告げた。
「それじゃあお散歩に行こうか、シオン? まずは広場の外灯の下でおしっこしようね」
「お゛ぉっ♥ んぉぉおおっ♥♥♥」
もうすっかり快楽に蕩けたマゾ雌牛の脳は、ご主人様の言葉に応えるように真っ白に弾け、絶頂する。
淫魔への復讐心も、S級ハンターとしてプライドも、あまつさえ大切な妹の存在すらも忘れ、今日も、幼夢魔に堕とされたマゾ雌牛として、幸せに生き続ける。
完
猫又小町
2025-10-02 01:39:41 +0000 UTCはたけ
2025-10-02 00:33:23 +0000 UTC