夕刻。水平線の向こうへと太陽が沈み始め、雲一つない快晴の空が赤く染まり始めた頃、シオンは予定通り港湾都市ミールに到着した。
ハンター協会の支部へと到着の報告の後、ほど近い路地裏にひっそりと軒を構える喫茶店を見つけ、少し遅い夕食をとることにした。
『うたたね』という名前の喫茶店で、店内に入ると、氷の魔石の冷気が満ちる透明なガラスカバーの取り付けられた棚が鎮座していた。そこには切り売りのケーキやお菓子が並んでいた形跡があるが、掲げられている閉店時間少し前なせいか、そのほとんどが売り切れのようだった。
座席はカウンター席が三席、二人掛けのテーブルが三組だけ。喫茶店というよりは、店内で食事もできるケーキ屋、といった規模感だ。
「……えっと」
店舗側には誰もいない。大きく奥の厨房を覗き込むと、飾り気のない白いコックコートを着た少女が、分厚いレンズの眼鏡の向こうのパッチリとして可愛らしい青い目を爛々と輝かせながら、大きな生地を、その軽そうな体重をかけて精一杯捏ねている最中だった。作業に夢中になっているあまり、ドアベルの音に気付いていないのだろう。
「ごめんくださーい!」
シオンが大声で呼んでやっと、その栗色の三つ編みおさげを揺らして、眼鏡を粉まみれにしたままカウンターまで出てきた。
「はい! はいはい! いらっしゃいませ!」
店主、にしては少し幼すぎるように見えた。身長の高めなシオンの正面に立つと、まるで親子。身長は130cm代、年齢もどう多く見積もっても十代前半といったところか。カウンターの向こうに置いてあるのであろう踏み台に乗ってようやく、シオンと目線が合う。
「えっと、食事、ってできますか?」
ちら、と、誰も客がいないテーブルの方を一瞥しながら聞くと、少女は元気に頷いた。
「勿論! ケーキはここに残ってるだけなんですが、メニューに書いてある軽食もお出し出来ますよ!」
そう言って差し出されたメニューの中から、シオンはトーストと売れ残っているケーキ、小さな焼き菓子、それにコーヒーを注文した。
そしてカウンターに座ったシオンの注文をテキパキと慣れた手つきでさばくと、少女はすぐにまた厨房に引っ込んでケーキ作りを再開してしまった。よほどケーキ作りが楽しいらしく、カウンター越しにその姿を見ているだけでも、一緒になってシオンもなんだかワクワクしてしまう。
そして、そんな少女が楽しそうに作ったであろうケーキは、絶品の一言であった。注文したのはシンプルな果物のケーキであるが、生地とクリームの甘さが果物の旨味のある苦みと調和し、大人らしいビターな風味が口の中に広がった。思わず、今日はよく歩いたから、と自分に言い訳しながらもう一つ追加注文してしまうほど。
「ありがとうございました! また来てくださいね!」
食事を終えたシオンを店先まで出て手を振る少女へ小さく手を振り返してから、協会に紹介された宿屋へと移動した。シオンがSランクということを考慮して、ミールの中ではそれなりに高いグレードの宿を紹介してくれたようだ。少なくとも隣の部屋の音が漏れ聞こえるような壁の厚さではないことを確認し、シオンは布団を被って、今朝無理矢理に押さえつけた分と、今日一日で蓄積してしまった淫熱を冷ました。そしてシャワーで汗を流してから、下着姿のままデスクについた。
協会から借りてきたミールの地図を広げる。地方都市とはいえ、造船と交易で栄えている。この中から淫魔の隠れ家を見つけ出すと考えるだけで溜息が漏れそうになる程度には広く、人口も多い。
「順当に調べるなら……まずは色街なのですが」
パッと街を俯瞰してみて、色街らしき地区を確認する。淫魔と人間の性欲は切り離せないほど関連が強い。野生にも存在しているが、人間と見分けのつかない姿で街に紛れ込んでいることも多々ある。
ミールはその風土的にも色街の需要は高く、淫魔が根付く可能性が高いため、人間に危害が加わらないよう、ハンターによる『掃除』は定期的に行われているはず。だが、今回のターゲットは夢魔だ。主な活動場所は人間の夢であり、わざわざ色街に隠れる必要性は低いといえる。
しかし、手がかりが何も無い以上、セオリー通りの場所でとりあえず探ってみるしかないのが現状である。
シオンの軽装と悩ましいほど魅力的なボディラインが役に立つ場面であり、面倒な場面でもある。きっと幾多の人間にも声をかけられるはず。Sランクハンターの証を提示すれば誰もが尻尾を巻いて逃げるのだが、そこに至るまでに向けられる性欲に満ちた下衆な目線を想像すると、二度目の溜息が漏れてしまう。
とりあえず、この広げたら馬鹿みたいに大きい地図を歩きながら広げるわけにはいかないから、大まかな街の構造と地区の名前、区分を手帳にメモして、今日は寝ることにした。ミールへの移動でヘトヘトに疲れ果てているし、早朝から起きているせいで睡眠不足だった。
光の魔石のスタンドライトを操作して灯りを消すと、下着姿のまま、フカフカのマットが敷かれたベッドに身を沈める。旅は疲れたが、美味しいケーキを食べて幸せな気分になれた。今日くらいは無事に、なんでもない日常の夢を見て、明日は早めに探索を切り上げて、『うたたね』で別のケーキを堪能しよう。そんなささやかな願いを抱きながら、シオンはすぐに眠りの世界へと落ちていく。
―――――
だが、淫魔によって歪められた運命は、シオンを捉え続けている。
「な……こ、これはっ……!」
ふと目を覚ましたシオンは、四肢を動かすことが出来ないことにすぐに気づき、自らが陥った最悪の状況を認識して声を上げた。
干したてだったであろう太陽の匂いに満ちた掛け布団の心地よい柔らかさは消え失せ、マットは石の硬い感触に変わり、シックでセンスのいい調度品が置かれ、暖かな印象を与える木の内壁が張られていた部屋は、寒々しい色の石牢のような部屋に変わっている。壁に取り付けられた蝋燭の炎が怪しく輝き、既にその全てが晒されたシオンの白い肌を暗闇に怪しく浮かび上がらせている。
勿論、動かせない四肢に抗って起き上がろうとしたが、両手を上、両脚は左右の下にピンと伸ばされ、身体で逆Y字を描くような姿勢を強いる様に、手首、足首と腿に取り付けられた金属の枷で石のベッドに縫い付けられている。
全く身動きが取れない。精々、首を振ることと、胴体を僅かに捩らせる程度だった。
かつん、かつん、と、シオンに威嚇するようにヒールを鳴らして、何者かが近づいてくる。足元方向。顔を動かして伺うことは出来ず、ただ足音の主が視界に入ってくるのを待つしかない状態は、本能的な恐怖をシオンに与える。
「こんばんわ、お姉さん」
聞こえてくるのは、声変わりなど遥か彼方の未来であると確信できるほど幼い、少し舌足らずな少女の声。だが、視界に入ってきた人物の姿を見て、シオンはその表情に憎悪をむき出しにする。
青みの強い、人間とはかけ離れた肌。癖の強いセミロングの白銀の髪を掻き分けるように生えた、二本の巻き角。漆黒の闇に染まった白目と、虚空に浮かぶように輝く赤い瞳孔。その幼い声の印象通りの幼い顔つきに、白いボンデージスーツに身を包んだ体は、成長期直前の少女のような僅かな丸みを孕んでいる。
淫魔の一種。それも、他人の夢の中に侵入する、夢魔の類のそれ。つまりは今回のシオンの旅の目的とも言うべき存在だった。探す手間が省けた、などと喜ぶことなど出来ない。いくらSランクの淫魔ハンターであったとしても、シオンはただの人間。片や夢の世界を自由に操ることができる夢魔。シオンが淫魔ハンターとして活躍できるのはひとえに現実の世界であるからであって、言わば陸上で生きるシオンが陸上で陸上の動物を狩る能力が高いという証。そして夢の世界で夢魔を相手にするというのは、陸上で生きるシオンが水中で両生類の動物を相手にするということである。まさに手をひねられる赤子のように、今から行われるのは一方的な蹂躙であることは想像に容易い。
だが、憎き淫魔の一族を相手に、決して弱みを見せる訳にはいかない。シオンは動かせない四肢の代わりに、視線で刺し殺さんと、精一杯の殺気を放った。
「怖い顔しないで?」
夢魔は、シオンが動けないことをいいことに、まるで嘲るように笑いながら、シオンの身体の横に腰掛ける。
「黙ってください。少しでも隙を見せた瞬間に殺しんっ、んんっ!」
夢魔のその長い爪を持つ指先が無遠慮に脇腹を擽ると返ってきたシオンの敏感な反応に、彼女は無邪気な笑みを浮かべた。新しい玩具を買ってもらった幼児のようなそれは即ち、シオン自身を玩具にして遊ぶという意志の表れ。
「殺すの? どうやって?」
思わず夢魔を殴りつけようと強く握り拳を作って腕に力を込めてみるが、鉄枷によってベッドに縫い付けられた腕に浮かび上がった筋肉のラインを夢魔が愛しげに指先でなぞるのを振り払うことすら出来ない。むしろ、そんな微細な刺激ですら、擽ったさの極致のような感覚が伝わって、背筋に走るゾクゾクとした快楽と怖気に情けなく声が震えてしまう。
「例えばこうやって?」
夢魔が無邪気に言葉尻を跳ねさせながら、どすん、と体重をかけるように尻をシオンの腹の上に置くようにして跨る。精神的な幼さを表しているかのような粗暴な所作を持ってしても、その矮躯から伝わる重さは軽い。
シオンの身体に覆いかぶさるように前屈し、長い爪を持つ両手がシオンの首に絡みつくと、ヒンヤリとした冷たい指先が食い込んでいく。
「んっ! んぐっ! く、かはぁっ!」
気道を圧迫されて息ができず、あえぐようにうめきながらも、シオンは殺意の光を消さず、淫魔を睨みつけた。酸素不足で頭の中が真っ白に消えてしまいそうになる直前まで。
「……なーんて。怖かった?」
首に絡みつく指の力がフッと抜け、夢魔の無邪気な嘲り声が続く。
「こほっ……ごほっ……こ、怖いわけ……ありませんっ!」
相手は憎き淫魔の一族。憎悪こそあれ、恐怖などない。その言葉は強がりでもなんでもなかった。
「えへへ。殺さずにいてほしかったら、私のペットになって、っていうお願いは、通用しないかー」
夢魔はそう言うと、シオンの身体の上に寝そべるようにして密着しながら左側の豊満な乳房を下からすくい上げ、その小さな手を柔らかな媚肉に食い込ませ、グニグニと揉みしだいた。ただそれだけなのに、開発され尽くされている身体はシオンの淫魔への憎悪心を無視して、ただ歓喜してしまう。
「うっ……くっ……あぁ……ああぁっ!」
「じゃあやっぱり淫魔らしく、ペットにしてください、っておねだりするまでたっぷりと、このおっぱいとお尻の大きないやらしい身体をイジメてあげることにするね」
シオンの耳に息を吹きかけるように、幼い外見に似つかわしくない、蠱惑的で淫らな色に染まった声色で、夢魔は告げる。
「私の名前はメア。貴女の将来の飼い主の名前だよ」
「っ、くぅううんっ! だ、だれがっ! んんぅっ! ペットなんかにっ! あぁっ!」
乳房を弄ばれながら生ぬるい吐息に耳を犯されて背筋を駆け巡った快楽と共に、脳髄にメアの名が刻まれる吐き気を催すような感覚。首を振り、抵抗するように身体をくねらせる様を見た夢魔、メアは声を上げて笑う。
「あはははは! そんな気持ちよさそうにヨがりながら強がって……かわいい!」
柔肉をグニグニと揉みしだいていたメアの指から力が抜け、まるでその爆乳が描く悩ましい曲線をなぞる様にゆっくりと掌全体が這い回り始める。そんな僅かな振動と摩擦にすら、シオンの身体はフルルっと震えた。
「まだ、女の子の弱ーいところ、触ってないはずなのになー?」
「っ、そ、そんないやらしい手つきで触るからっ!」
憎き淫魔の矮小な指先が這い回る快感を受け取って震える身体で必死に抵抗しながらも、情けない言い訳を垂れ流す姿が、いかに滑稽にメアの目に映るだろう。シオンはそれに気づいて頬を染め、ふてくされる様に視線を逸らす。
「へぇ。そうなんだ? じゃ、エッチじゃないところ、触ってあげるね」
そう言って離れたメアの指先が、再び脇腹をなぞる。まるで羽先で擽るように、当たっているか当たってないか分からないくらい繊細なタッチで。
「ひっ! やっ、やっ! あ、ぁああっ!」
普通なら、擽ったくて笑ってしまうだろう刺激に対してシオンの口から溢れる声は艶っぽく濡れていて、すぐに頰は紅潮し、息は荒くなってしまう。
「んふっ♥ 信じられないくらい敏感な身体……やっぱりお姉さん、淫魔に調教されたことあるでしょ」
そう言って、メアは脇腹を撫でる動きを止めぬまま、薄らと浮かび上がるシオンの腹筋のラインに舌を這わせた。
「うぁあっ! な、ないっ! ないですっ!」
びくっ、びくっ、と腹筋が収縮して、そのシルエットが波打つように鮮明になっては消えていく。誰にもバレてはいけない過去。だが、シオンの身体は口よりも雄弁にそれが事実であると叫ぶように震え、悶える様に腰がくねる。
「嘘ばっかり……れろっ……お腹を舐められるだけでこんなにエッチな声を出して……しかも、臭うんだよね」
メアの身体が伸び上がると、逆Y字に拘束されているが故にあけっぴろげにさせられている脇の下へと顔を埋めた。そして、シオンに聞かせる様にわざとらしく鼻を鳴らして、深呼吸してみせる。
「あっ、い、いやああっ! 臭わないでっ!」
とてもではないが看過できない場所の臭いを嗅がれる羞恥心がシオンを襲う。だが、そんな羞恥心すら、過去の調教によって歪んでしまった心を蝕んで、ゾクゾクとした寒気のような快感となって背筋を這い回る。
「はぁ……お姉さんのエッチな臭いに……同族の臭いが混じってるんだよね♥」
「やっ、やっ! ち、違うっ! そんなことっ」
「違くないよー? ほら……」
埋めていた顔を上げたメアが、今度は反対側の脇へと顔を埋めた。
「くぅっ! や、やぁっ! やめてっ!」
「こっちも……すぅっ……はぁ♥ ほら、淫魔にたっぷりイジメられて、いやらしいことを教え込まれた性奴隷じゃないと出せないくらい濃密なフェロモン……味は……」
そうしてメアは、その熱く滑った舌を這わせ、シオンに聞かせる様にわざとらしくじゅるりと音を立てて舐め上げた。
「んひぃいいいっ♥♥♥」
シオンの身体が痙攣して石のベッドの上で仰け反り、枷をはめられた両脚がピンと伸びた。
「甘じょっぱくて……とってもエッチな味……あむっ」
「うぁあああっ♥ あっあっあぁああっ♥」
肩甲骨と鎖骨のライン、そして首筋へと舌がスライドし、唾液で湿った熱い唇で甘噛みされて吸い上げられると、ゾクゾクとせり上がってくる擽ったさと紙一重の快楽が脳髄を揺らし、暴れる様にくねる身体に合わせて、二つの乳房がゆさゆさと揺れる。
「こんな場所舐められると、普通の人は、気持ち悪いか、擽ったいだけなんだよ? それなのにお姉さんはどう? 私、お姉さんの心が欲しいから、身体の感度を弄るなんて無粋なことはしてないんだよ? んじゅ、るっ」
「うぁあっ♥ やぁっ! き、気持ちよくなんかっ!」
「そうなんだ。じゃあ、キモチイイって認めるまで、普通はキモチよくない場所を舐めてあげるね……全身……この誰か知らないけどお姉さんに先にお手つきした淫魔の臭いを、私の臭いで上書きしてあげる。れろ、ちゅっ、ちゅぅうっ」
「あぁああっ! やっ! ふあぁぁああっ!」
その宣言通り、メアの舌遣いは執拗極まりないものだった。首筋から脇の下、肩、二の腕。指先。ばかりか、お腹、太腿、ふくらはぎ、そして足の指の谷間まで。それと同時に尖った爪が輝く指先で唾液を塗り広げる様に、普通は性感帯でも何でもない場所を優しく引っ掻く。
「うぁあっ! あっ、あぁっ……♥」
それでもゾクゾクと背筋を駆け巡る快楽を必死に耐えようとするシオンの顔を、メアがすっかり興奮して蕩けた目で覗き込んでくる。その唇には、今まさにしゃぶっていた右の脇の下へと続く粘液の橋がかかっている。
「ほら、どう? 気持ちよくない? ねぇ?」
「っ、き、きもち、よくなんかぁぁっ♥」
抵抗するように身を捩ると、ぬちり、と水音が響く。ベッドに零れたメアの唾液とシオンの汗の水たまりが、弾けるように瑞々しく大きい尻肉で攪拌される音。そして、その水たまりに、むき出しの肉厚な陰唇の割れ目からトプトプと溢れる蜜が加わって、粘着質でいやらしい音へと変化していくのを、気付かないふりをし続ける。
だが、メアの執拗なマーキングの快楽に既に屈服しつつあることの証明であるかのように、下腹部は熱く燃え上がっている。
「じゃあ、とっておきの場所、舐めてあげる」
そういって、メアの舌が乳房の側面を這い下り、お腹の中央へと向かう。既に数時間に及んでいる全身口唇愛撫で舐められていないのは、性感帯である乳首と女性器。そして、今まさにメアが狙いを定めた、普通ならば性感帯でも何でもない場所。
「やっ、あっ、あぁっ! そ、そんなとこぉっ!」
それを察したシオンが上げる悲鳴を無視したメアの舌が、お腹に穿たれた、かつて母親と繋がっていた証である神聖な穴をなぞる。
「あっ、ああああっ♥」
シオンの身体が雷に打たれたように淫らに跳ねた。
「あれぇ、おかしいなぁ? ここは普通、気持ちよくない場所だよ?」
わざとらしい疑問をシオンに投げつけながら、メアの舌先が穴の周囲の柔肌を撫でる。
本来性感帯でも何でもない場所。だが、その穴にも、かつてのクロハによる徹底的な調教が施されている。かつてクロハの舌や、部下の淫魔の触手に穿られ、媚毒の粘液で満たされていた臍を、今度はメアの幼く熱い舌が、ぐちゅりと音を立てて貫いた。
「うぁ、ああああああああっ♥♥♥」
シオンの肉体が、心が、フラッシュバックする調教の記憶に打ち震える。
「れろっ、れりゅっ……ほら、キモチいい?」
「き、気持ちよくなんかぁっ! あぁっ♥」
「嘘。おまんここんなに濡らして、エッチな臭いをむんむんさせてるのに……悪い子にはお仕置きしないとね!」
メアの指先が、敏感な鼠径部のラインをなぞる。
「あぁっ♥」
そんな僅かな刺激にも、シオンの喉からは甘く媚びるような吐息が溢れてしまう。
「あれぇ? 今の声、なぁに? お仕置きされるのが嬉しいってこと?」
「ち、違うっ! そんなわけ……あぁあっ♥」
否定の言葉を遮るように、メアの舌がより一層臍の奥へと、螺旋を描くようにねじ込まれた。その美術品のように整った身体の中心で慎ましやかに咲く臍の中でキュッと小さく寄り合わさった柔肉を、メアの舌が蹂躙するように解し、開いていく。
「うぁっ♥ あっ、ああぁっ♥」
内臓に近い場所へと熱いモノに強引に侵入されるのは、本能的な悍ましい恐怖をシオンに感じさせた。そして同時に、まるで性器のように敏感に開発済みの穴が奏でるアブノーマルな快感は、シオンの声を一層蕩けさせた。
「ほら……認めようよ? キモチイイって叫んじゃお? 素直になったら、きっともっともっとキモチイイよ」
メアが舌を抜いて顔を上げる。充血して少し腫れた臍の中に唾液が溜まって、怪しくヌラヌラと光っている。勿論、シオンは首を左右に振って否定する。淫魔ハンターのシオンは、メアの全てを否定しなければならない。それが例え、誰の目にもバレバレの嘘であったとしても。
「強情だね。とっても可愛い♥」
そう言って、メアは唾液まみれのシオンのお腹に頬ずりしてから、ちゅっ、と可愛らしいリップ音を立ててお臍にキスをした。そして再び、見せつける様に舌を出し、その先端から唾液を臍へと垂らしながら、ゆっくりと近づける。粘液を纏って滑る赤い舌は焦らすように、小さく震える臍の周囲で円を描くように蠢くだけで、決して穴の中へと侵入しようとしない。
「うぁあっ……な、なんでっ♥」
予想し、身構えていた刺激が与えられないことに肩透かしを食らったシオンの口から漏れたのは、まるでそれを求めているかのような声色だった。
焦らすようにチロチロと蠢く舌先が、臍の周りの肉を掠め、時折、ふぅ、っと熱い息が吹きかけられるじれったさに、シオンはうねうねといやらしく腰をくねらせてしまう。
「ねえ、したい? お臍セックス」
そう言いながら、メアはシオンの臍をクパッと両手の人差し指で広げた。粘液塗れの肉穴の奥底まで露になって、快感に震える腹筋に合わせてブルブルと震えている。
「したいって一言言ってくれたら、おへそマンコ、たっぷりと犯してあげるよ? 口で穴全体をチュー、って吸い込みながら、ベロでぐりぐり、ぐちゅぐちゅしてあげる」
「うぁっ……くぅっ♥ し、したく、したくないっ!!!」
だが、その様を想像したシオンの脳は蕩けるような甘さに支配された。催淫効果もある淫魔の体液の溜まった臍の中がジンジンと疼いて、内臓の中まで浸透していくような錯覚がシオンを嬲った。今にも千切れてしまいそうな理性の糸の上で綱渡りをしながら、髪を振り乱して首を振って強がって見せるシオンに、メアは一層楽し気にニンマリと笑った。
「こんな弱点だらけのエッチな身体で、何を強がっているのかな」
呆れたように嘲りながら、シオンの身体を撫で上げるように密着しながら伸び上がる。右手の指で臍の周囲をなぞりながら、シオンのトロトロに蕩けかけている表情を見下ろす。
「ほら、お臍は物欲しそうにひくひくしてるよ?」
二本の指で臍肉の中を曝け出す。さんざん舐められて唾液に塗れた孔の中に流れ込む空気の冷たさにゾクゾクと背筋が凍る。言葉通り、シオンの鍛えられた腹筋は断続的に痙攣し、その中央に穿たれている淫孔は満たされるのを待ち望んでいる女性器のようにひくついている。
「うっ、あ、あああっ♥」
メアの指がカリカリと臍の中の肉をそっと引っ掻く。一層強烈に腹筋が収縮して、中に溜まったメアの唾液がまるで愛液のように溢れ、腹筋のラインに沿って石のベッドに垂れ堕ちていく。
「ほら、言っちゃいなよ。お臍セックスしたいです、って。お臍おまんこ、ぐちゅぐちゅに犯してください、って」
「はひっ、ぁああああああっ♥♥♥」
その言葉と共に、臍を擽る指の動きが激しくなる。中から外へ、中身をほじくり出す様に何度も何度も爪を立てて引っ掻き、穴の中から漏れ出る水音とシオンの甘い嬌声のハーモニーをもっと引き出すように。
シオンは腰を振り乱し、背を仰け反らせて快楽に悶えた。メアの誘惑に抵抗する理性を崩すように臍孔は熱く燃え続けている。意識は朦朧として、頭の中が痺れて、蕩けていく。
唾液が乾き始めたことを指先で確認したメアは再び身体を下へとスライドさせる。そして、シオンの見せつけるようにチロリと舌を出した。
「んっ、ぢゅ、ぢゅるるるるぅっ!」
「うあぁっ♥ あっ♥ んぉううううっ♥♥」
臍を強烈に吸い上げられたシオンの身体がビクッと大きく痙攣し、白い喉が仰け反って、大きく開いた唇から悲鳴のような喘ぎ声と共に涎が飛び散り、頭の中で白い快楽の閃光が走った。既に調教され尽くし、性器と化している臍による絶頂が近いことを感じ、そしてそれはメアにも看過されていた。じゅるじゅると音を立てて臍をしゃぶり、しかしシオンの腹筋が絶頂に向けて痙攣するように震え始めるとその力を緩めた。そして、絶頂の波が引いた瞬間に、再びジュルルルッ!と激しく吸い上げる。
「うぁっ♥ くぅっ、ああっ♥ んぉっ♥ おぉおっ♥ んんぉおおおっ♥♥♥」
何度も何度も、アブノーマルな性感帯を吸引されて絶頂の一歩手前でお預けされるまま、嬌声を上げながら、身体をくねらせる。だが、メアの舌は、決して穴の中へと侵入しようとしない。
「ちゅぷっ……そういえばさぁ、お姉さん……こーんな、弄られるだけでイッちゃう穴を出して歩いてたよね? オマンコ剥き出しにしてるようなものだよ? 露出狂なの? 変態さんなの?」
「そ、そんなわけっ♥ アナタたちのような色に狂った間抜けたちを、誘い出すためのっ!」
息も絶え絶えになりながら絞り出したシオンの言い分を聞きながら、メアは真っ赤に腫れあがった臍の周囲の肉を指先で弄ぶ。
「へえ、じゃあやっぱり、ココがエッチな穴だって自覚してるんだ? エッチな穴だから、私のような間抜けが釣れるって」
「うぁっ♥ そ、それはっ……んぉおっ♥」
「ほら、素直になろう? ココはおヘソじゃなくておマンコだって認めようよ。おマンコむき出しで歩いてる変態ですって。そしたら、お望み通り、私の舌でジュプジュプ犯して、チューチュー吸ってぐちゅぐちゅにしてあげるよ」
メアの舌の先端が臍の肉に軽く突き立って、ゆっくりと擽る。そのもどかしい刺激にシオンの腰が跳ねて、メアの身体を下から突き上げながら目の前で淫らに揺れる。