「参ったなあ」
どす黒い雲の下、薄緑色のモヤがかかる廃墟を、戦術人形グリズリーはひとり寂しく歩いていた。
ビルが倒れ、潰れ、瓦礫の山を築いている。道の太さや建物のサイズから、そこそこ大きい町であったことが伺えた。もっとも、あちこちで高濃度コーラップス粒子が結晶化し、濁ったグリーンの水晶体が生えている。知らぬ者が見れば感嘆したであろう幻想的な光景だが、人間など一時間も保たない死の環境、レッドエリアに、彼女はいた。
強い放射能の影響でGPS信号を受信できなくなっていた。当然仲間たちとの通信も途絶えて久しい。
自身の素体の動作記録から歩いてきた道程をシミュレートしてみても、激しい戦闘があった場所から記録が滅茶苦茶になっている。無我夢中で駆け回り、跳ね回り、撃ちまくったのだ。シミュレートできなくもないが、グリズリーは、それよりは放射線濃度の低い方角へ歩き続けたほうが早い気がした。
つまりグリズリーは、迷子になっていた。
「弾薬はまだあるけど、一人じゃねえ」
ゾンビども──人がE.L.I.Dに感染した成れの果て──が見当たらないのは幸いだった。太ももに提げた彼女の半身とも言えるオートマチック拳銃は、大威力だが所詮はハンドガンで、多勢に無勢だった。
指定区域内のE.L.I.Dを一掃すること。それが今回の小隊の任務で、グリズリーは軽快な機動力を活かした偵察要員だった。戦闘は重装甲のSG人形、重火力のMG人形が担当する。
そのはずだったが、犬型E.L.I.Dに遭遇したのが運の尽き。犬なんか蹴飛ばせばと思ってみれば、感染の影響で熊サイズに大型化していた。逃げ回っているうちにこのザマだ。グリズリーはちろりと舌を出して己の軽率さを後悔する。
「犬と交戦するのは初めてだったなあ、高機動目標への射撃訓練をやっとくんだった」
それから延々と放射線濃度の低い方角へ歩いているのだが、どうも道を間違っている気がしてならない。濃度は微量ながら下がっていて、いずれは通信回線が復帰する場所へ出られるのだろうが、このペースでは自身のバッテリーが先に切れる計算だった。廃墟の町で捨てられたバッテリーを探しておくか、運を天に任せ突き進むか、考えながら歩いていると、グリズリーのマイクは鈍い音を聞き取った。
歩みを止めて耳を澄ます。元より広範囲の索敵モードにしていたが、それに反応した。低い、鈍い音。低周波。車の振動ではない……何かが規則正しく震える音? 冷蔵庫やエアコンの駆動音に近いが、冷蔵庫やエアコンは自走して近付いてくることなどない。音は徐々に大きくなっており、つまり、接近してくる。
腰の銃へ手を伸ばす。いつでも走り出せるよう、膝を曲げ、重心を落とす。準戦闘態勢。
ギョロギョロと周囲を見渡す。建物は潰れているとはいえ、瓦礫はグリズリーの背丈と同程度かそれより大きい。音源は自身の頭より高そうだ。ドローンの飛行音? しかしプロペラの音とは違う気がする……もっと大きく遅いペラの音……
グリズリーは愛銃を完全に抜き、FCSをオン。視界に射撃用GUIが展開される。大きめの瓦礫に身を隠し、隙間から頭だけを出して音を伺う。瓦礫の凹凸で音が乱反射して聴き取りにくい。高い位置へ登ればマシになりそうだが、身体を晒すことになる。
音はどんどん接近していた。ここまで近付かれると人形でなくてもはっきりと聴き取れるだろう。IFFの呼びかけには無反応。同様に先方からの通信もない。電波も感じない。無線操縦のドローンではない。
いつ来る、どう来る。グリズリーは緊張していた。音の正体が敵かどうかも分からないが、自身のライブラリに存在する種類の音ではない。未知の敵である可能性大。勝てるか。飛行物体への射撃は難しい。逃げるか。しかし、どこへ。
次の瞬間、グリズリーの視界が一瞬だけ暗くなった。太陽が遮られた。一瞬だ。しかし彼女のセンサ群は見逃さない。音源は真後ろ。
猛烈な勢いで振り返ると、彼女の見上げた先5メートルほどの距離に、巨大な昆虫が浮かんでいた。大きな羽を震わせて滞空している。
見たこともない化け物だった。いや、見たことはある。蜂の類いだ。見たこともないのはそのサイズで、縦に1メートルはあろうかという巨体で空を飛んでいる。上に小さめの頭──凶悪な顎が見える──、3対の足が生えた丸い胴、そして全体の半分以上を占める長大な腹。
グリズリーは考える暇もなく、即座に腕を跳ね上げた。発砲。距離は近すぎるほどだったが、その虫は避けた。驚くべきスピードで水平移動すると、グリズリーを中心とした円状に飛び始める。羽の猛烈な振動音が響く。先程までとは比ではない音量だった。
こいつは音を抑えるために瓦礫の合間を縫って低空飛行してきやがったんだ──グリズリーはそう直感した瞬間、脱兎の如く駆け出した。わざわざそんな飛び方をするということは、あたしに悟られたくなかったということだ。こいつの獲物は、あたしだ。
「冗談じゃない!」
逃げる先の当てなどなかったが、グリズリーは走った。猛烈な音は当然のように付いてくる。後ろを見なくとも音の位置は分かる。今度は移動先のシミュレートを実行してから、振り返り、即座に射撃。命中。だが効果が見られない。こいつはE.L.I.Dだ。硬質化している。一発程度の命中弾ではだめだ。同じ場所に何発か撃ち込まなくては。
しかしE.L.I.D蜂はそんな猶予を与えるつもりはないようだった。グリズリーは強烈な衝撃を感じて転倒する。蜂が突っ込んできたのだ。セルフモニタリングシステムによると、T5からT8、つまり胸椎部に幾つかのエラーが生じている。車に撥ねられたような衝撃だ。
急いで起き上がり、片足立ちになりながら、グリズリーは蜂を探す。側面から突っ込んでくる。頭部へ向け射撃。命中するも効果なし。横転して回避するが、またしても強烈な衝撃を受けてグリズリーは吹っ飛んだ。今度は重量があり、遠心力に振り回される感覚がある。違う、蜂は飛び去っていない。グリズリーの腰に引っかかっている。直前で衝突コースを回避して、すれ違いざまに足を引っ掛けやがった。
「何よこいつ!」
グリズリーは慌てて銃を向ける。ちょうど左の脇の下に蜂の頭が来ている。凶悪な造形だ。この距離なら撃ち抜ける。
しかし発砲する寸前に、頭が引っ込んだ。蜂が背中に回ったのだ。グリズリーにおぶさるように、蜂は縦長の身体をグリズリーに重ね、3対の足で思い切り組み付いた。足には棘が並んでおり、グリズリーの服と柔肌に食い込む。ちょうど彼女の肩甲骨の辺りに頭がある。ガチガチと牙を鳴らしている。
グリズリーは左脇の下へ向けていた銃を引っ込め、右上を背面へ回す。蜂の頭と腹の間、胴体を側面から撃ち抜ける位置だ。
しかし今度は、蜂が大きな羽を震わせて飛び上がった。グリズリーは鷲掴みにされたまま、蜂と共にふわりと浮かぶ。ほんの一瞬、銃口の狙いがブレた。その瞬間に、蜂は羽ばたきを止め落下。グリズリーは蜂に潰されるようにして地面へ叩きつけられた。短い嗚咽とともに肺の空気が漏れる。右手が空を切る。銃が吹っ飛ぶ。
蜂がまた飛び上がる。今度はグリズリーを立たせるように仰け反ると、そのまま両足を接地させる。グリズリーは何が起こっているのか把握できないまま、崩れるように膝をついた。
「いったい……何が。こいつは何を」
背面からは牙を鳴らす音が一段と大きく聞こえてきた。まるで勝利を祝うかのようだ。蜂はグリズリーの腰に密着したまま、細長い腹部を猛烈に前後させている。グリズリーが見下ろすと、太ももと太ももの間から出たり入ったりと見えている。
とりあえず引き剥がさなくてはと、グリズリーは己をしっかりホールドしている蜂の足を剥がしにかかった。強烈な力だ。棘が食い込み、痛い。剥がそうとすれば手にも棘が刺さる。痛いが、外さなくてはどうにもならない。銃を取りにいこうにも、また飛ばれては敵わない。
全部で6本もある3対の足を、たった2本の腕で剥がせるか、冷静に考えると困難だったが、グリズリーは諦めなかった。痛みから吐息が漏れる。少しずつ地道に、一番上の1対を剥がしてゆく。
と、突然、最も下の1対が腰から離れた。その2本は腰よりもさらに下がり、グリズリーの下腹部にかぎ爪を引っ掛けた。何をする気だと思う一瞬の間に、かぎ爪はグリズリーのショートパンツを容易に引き裂いた。ブルーのジーンズが紙のように裂かれてゆく。
「ちょ──ちょっと!」
2本の足は乱暴に暴れ回り、グリズリーの腰回りを覆う布切れを次々と剥がしてゆく。頑丈なジーンズは見る影もなくなり、その下のショーツなど言わずもがな、グリズリーの恥部があっという間に露わになった。
「何すんのよ! この虫!」
背面から響く牙の音はまた一段と大きくなる。
グリズリーの問いかけに蜂が答えるわけもなく、蜂はその腹部を不気味に揺すり始めた。振動がグリズリーの腰へ伝わる。股の下から覗く蜂の腹部の先から、透明の液体が流れ始めた。粘性の高いそれは重量感を伴った雫を作り、垂れてゆく。液体というよりもゼラチンにすら見えるほどの粘度だ。無色透明で光を反射し、てらてらと輝いている。
グリズリーは猛烈に嫌な予感がした。
この虫は、なんだ。
感染して巨大化したのはいい。理解できる。
だが、蜂の腹には針があるはずだ。ところがこいつのこの腹は何だ。これは何だ。
蜂は蜂でも、聞いたことがある、他の虫や動物に卵を産みつける種類の蜂がいると。
寄生バチという種類の蜂がいると。
「や」
昆虫型E.L.I.Dなど聞いたことも見たこともなかったが、その寄生バチがE.L.I.D化したのだとしたら、こいつがやろうとしていることは、まさか。
「やめて」
グリズリーは股の下へ両手を伸ばす。蜂の腹はするりと逃れるように位置を下げた。指が触れるか触れないかという場所で、小刻みに震え続けている。
それから目を離せないでいると、徐々にゼラチンの形が変わり始めた。いや違う。何かが出てきているのだ。細長い腹部は「それ」を収納する鞘でしかなかったのであって、中身が出てこようとしているのだ。
大量のゼラチンに包まれながら、ソレは姿を現した。50センチはあろうかという、おぞましい肉の棒。およそ昆虫の見た目からは想像できない、生々しい肉の棒だった。先端のみやや尖り、あとは均一の太さで、しかし小さな凹凸がある。全体がゼラチンに覆われ、太さはよく分からない。キラキラと美しいほどの光を反射していた。
グリズリーは言葉を失った。これが、己が想像していたものだとは思いたくない。だいたい、人形に寄生する虫など聞いたことがない。そんなことはあり得ない。これは悪い想像で、助かるかどうかは別にしても、もっとマシな展開になるはずだ──
蜂は腹部を、その巨大な産卵管を持ち上げると、中程をグリズリーの股間に押し当てた。ヒヤリとした冷たさがグリズリーの人工肺を縮ませる。声が出なくなる。
蜂は腹を引き、押す。産卵管がグリズリーの恥部を擦って、前後する。それまでとは違い、今度はゆっくりと。ぬるりとゼラチンが滑る。一回、二回、往復するたびに、グリズリーの恥部は滑りが良くなってゆく。ぬるり、ぬるり。
「……くそっ」
グリズリーが嫌悪の嗚咽を抑えながら、どうすべきか考えを出せないでいると、蜂は死刑宣告のごとき動きをし始めた。腹を大きく引いて、産卵管の先端を徐々に背面へ下げてゆく。湿った音を立てながらグリズリーの股を滑ってゆき、その先端が、恥部に到達する。
「やめて……」
人形の声など蜂には届かない。聴覚があるのかすらグリズリーは知らない。それでも声は出る。
ゼラチンの膜越しに、産卵管の先端がグリズリーの恥部へ強く押し当てられる。恥部を開くものはない。ゆえに巨大な肉棒は、強引に肉の谷を押し広げようとしている。尖った先端部が入口を探している。
「やめて」
先端は入口を見つけた。小陰唇に潜り込み、膣口へ辿り着く。グリズリーの素体は人工愛液など分泌していなかったが、大量のゼラチンはその代わりになるようだった。グリズリーに侵入する潤滑剤は十分だった。
「やめて!」
挿入。絶叫。
長大な産卵管が一気に突き刺さる。グリズリーは背中に蜂などいないかのように思い切り仰け反った。極太の異物が内臓を押し除けて、空気を肺から追い出した。濁点の付いた嗚咽が吐き出される。
蜂は猛烈に牙を鳴らして、さながら歓喜の音色を奏でているようだった。今度は一気に産卵管を引き抜くと、ゼラチンがグリズリーの膣内を抵抗なく滑らせる。
蜂はそれを繰り返し、産卵管の出し入れを始めた。それが蜂にとってどのような意味があるのか分からなかったが、グリズリーはまるで人間の性行為のように思え、ゾッとする。無機質なピストンに快楽などない。しかしゼラチンのおかげか痛みもない。ただただ内臓を抉られる凄まじい不快感があるだけだ。
虫に犯されている。虫なんかに。悔しい。殺してやる。
グリズリーは幾許かの余裕を取り戻すと、自身の銃を探した。少し離れたところに落ちている。
蜂が行為に夢中の今なら、銃を取り戻すことができるかもしれない。グリズリーは膝立ちのまま少しずつ、銃へ向けて進み始めた。股へ繰り返される前後運動は依然として猛烈で、その衝撃が全身に響いて不快極まりなかったが、徐々に摺り足のように、進む。歯を食いしばり、銃へ手を伸ばす。
あと1メートルほどのところまで来て、グリズリーは一気に手を伸ばした。体を前へ倒し、肘をつく。四つん這いのような姿勢になって、銃へ手を伸ばす。
その瞬間、蜂のピストンが速さを増した。グリズリーは一突きされるごとに前へ吹っ飛ばされそうになり、思わず両手で地面を押さえる。
しまった、グリズリーは後悔する。この姿勢は蜂にとって出し入れしやすいに違いない。思い切り尻を突き出しているのだ。両足で股を閉じていた先ほどまでとは全く違う。産卵管が猛烈に出し入れされている。蜂は狂ったように牙を鳴らす。そしてひときわ大きく産卵管を打ち込むと、ピストンを止めて静止した。ギチギチと奥へ奥へ押し付けられている。
これは、まさか。
「やだっ──」
射精。
勢いよく何らかの液体が発射され、ただでさえ極太の産卵管で満ち満ちているグリズリーの膣内にそれを受け入れるスペースなど全くなく、液体は隙間という隙間から外を目指した。ピュッという音を立てるほどの勢いで膣口から噴射する。二回、三回。膣内に液体が満たされてゆく。
白濁した液体が股の下に大きな水溜りを作っている。ゼラチンほどではないが粘性の高い液体だ。噴射されたものが糸を引いて重そうに垂れてくる。これが蜂の精液。
グリズリーは吐き気を抑えながら、今度こそ銃へ手を伸ばす。今ならやれる。雄は射精中ほど無防備な時はない。今こそ撃ち殺してやる。
しかしふと、そんなことを考えている場合では全くないはずなのだが、グリズリーは思った。
寄生バチって、獲物に卵を産みつけるんじゃなかったっけ? 精子──?
グリズリーは自身の中へ液体を出される感覚の奥に、膣口が押されるような感覚を感じ取った。なんだ、これ。産卵管の外? 違う、中、産卵管の中だ。何か大きいものが産卵管の中を通ってあたしの中へ入ろうとしている。
「ちょっと嘘でしょ……」
グリズリーは銃よりも優先して両手を股間へ。上体を起こし仰け反った姿勢で股間を見下ろす。蜂の産卵管は180°折れる形になり、侵攻する何か大きいものは折り目で詰まるはずだ。
さらに未だ押し当てられている産卵管の根元、蜂の腹を掴むと、何とか産卵管を抜き出そうとした。しかし全く無理だった。ゼラチン質と溢れ出た精液のような液体が滑って、安定して掴むことすらままならない。
拳大の物体、おそらく球体に近いそれは、産卵管の根元から徐々に進んでいる。折り目など平然と通過した。重力で落下しながら進んでいるわけではなく、管の中を満たされた何らかの圧力で押されているらしい。蜂はゴールへ向けてしっかりと侵入経路を作っている。
もはや止める術はなかった。
「やだ…やだやだやだ冗談じゃない!」
球体がグリズリーの恥部へ到達した。膣口が押し除けられ、じわじわと開かれる。
産卵管の下で、何か大きい球体が少しずつ膣口をくぐってゆく。抵抗など無意味だった。球体を握っても、管の下をぬるりと逃げられる。管自体も滑って抜き出せない。
眼下で球体が体の中へ入ってゆく。少しずつ進んでいくのが見える。グリズリーは半狂乱になりかけながら、必死に止めようと足掻いた。銃で撃ち殺すことなどもはや頭にはない。そのほうが事態を打開できたかもしれないが、目の前の絶望に彼女のメンタルは支配されていた。
球体はもう半分も入った。峠を越えた。あとは下り坂だ。簡単に入る──
ずぽっ、と湿った音を立てて、それが入った。グリズリーの中へ、入った。
音がメンタルの中で反響する。何かが入った音。蜂の体内から排出され、自分の中へ入った音。拳大の物体がお腹の中へ入った音。
卵を、体の最深部へ植え付けられた、音。
「おえ」
猛烈な吐き気がグリズリーを襲い、しかし口から吐き出されることはなかった。けぽ、と空気だけが抜けた。メンタルの変調による人工内臓の誤作動かもしれなかった。しかしまるで、球体の分の体積が押し出されたかのようでもあった。腹に圧迫感がある。見下ろすと実際に膨らんでいるようにすら思える。
グリズリーは力無く崩れ落ち、顔面から地面へ倒れた。手を伸ばせば銃に届く。辛うじて腕を持ち上げ、手に取ろうとする。今度こそ蜂を撃ち殺す。
しかしその時、腰に巻き付いたままの蜂が猛烈に羽ばたき始めた。もはやトラウマにすらなった悪夢の低音が響き渡る。産卵管はグリズリーに突き刺さったままだ。ゼラチン質と精液のような潤滑剤が糸を引いて揺れる。
蜂が飛び上がる。グリズリーを掴んだまま。戦術人形を持ち上げるのだから、蜂のサイズに対して凄まじいパワーだ。銃へ伸ばした手は空を切り、もはや届かない高度に上がる。蜂が移動する。
グリズリーはされるがままに手足を垂らす。手足どころか、もはや呻き声を漏らす気力すらなかったが、何とか右手のシューティンググローブに指を引っ掛けると、その勢いのままその場へ放り出した。
グリズリーは、エリート戦術人形である彼女は、まだ負けを認めてはいなかった。素体の状況とメンタルの気分は最低最悪だが、それらは勝利への執念に何ら影響を及ぼさない。
今回得られた新型E.L.I.Dの情報は貴重だ。持ち帰る価値がある。自分はこんなことになってしまったが、これを他の子たちにも味わわせるわけにはいかない。そのためには自分が帰投しなくては。自力での帰投は難しそうだから仲間に助けてもらうしかない。そのためには出来る限り救出可能性を高める行動を取らなければ。
グローブがその道標になってくれるといいのだが。
グリズリーは希望の灯を内に秘めた瞳で、小さくなっていく愛用の銃とグローブを見つめていた。
「こちらウェルロッドよりHQ、応答せよ」
『こちらHQ。感度良好、信号中継機は機能しているようだ。どうした』
「グリズリーのグローブを見つけました」
『本人の痕跡は』
「見当たりません。破壊されたわけでもないようです」
『違法人形業者に捕まったか? こんな放射線濃度ではあり得ないか』
「それはないでしょう。それになんだか……液体のようなものが点々と垂れています。グローブは大きな水たまりの近くに」
『なんだ?』
「分かりません。半透明で粘性のある、何かの体液みたいな……辿っていけばグリズリーがいるかも」
『了解した──探索継続の許可が出た。本隊との合流を待て』
「いえ、待てません。液体が乾きつつある。見失ってしまいます」
『新型E.L.I.Dと遭遇した恐れがある。危険だ。本隊を待て』
「グリズリーのコアは稼働時間限界が近いはず」
『単独先行は許可できない』
「捜索を開始する。信号中継機を置きながら進むので、私の状況をモニタしていてください。最悪の場合は私がロストしても後続部隊が辿り着けるでしょう」
『……ロストするな。必ず帰れ』
「善処します。状況開始」
──────────────────────────────────────
制作後記
ドン引きされる超マイナー性癖だと思っていたんです。
だから今まで描くことなく隠してきたんですが、ちょっと思い付いちゃったので、「まあフォロワー減っても仕方ないか」くらいの感覚でTwitterにアップしたんです。
そしたらなんですか?
6000いいね? フォロワー激増?
ちょっと何言ってるか分からない。
蟲姦愛好家って、みんながみんな「キショい超マイナー趣味だから隠れとこ」って思って隠れてるだけで、実はそこらじゅうにいるんじゃないですか? メジャーな趣味なんじゃないですか?
隠れてないで出てこい
皆さんからのお墨付きを得たということで、これからはNTRと敗北と蟲を思う存分描いていきますね。末長くお付き合いくださると幸いです。
SugaC
2024-05-19 20:07:46 +0000 UTC桐嶋眞人
2024-05-16 12:43:42 +0000 UTCSugaC
2024-05-12 19:42:00 +0000 UTCAuxiliarier
2024-05-12 12:28:40 +0000 UTCあや
2024-05-12 09:41:11 +0000 UTCSugaC
2024-05-12 04:41:12 +0000 UTCSugaC
2024-05-12 04:40:34 +0000 UTCSugaC
2024-05-12 04:40:20 +0000 UTCSugaC
2024-05-12 04:39:32 +0000 UTCさいめん
2024-05-12 03:23:57 +0000 UTC네가
2024-05-12 02:56:58 +0000 UTCAuxiliarier
2024-05-12 02:53:14 +0000 UTC理科係
2024-05-12 02:45:44 +0000 UTCAuxiliarier
2024-05-12 02:44:09 +0000 UTC