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ごみんと
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【支援者限定】和風ファンタジー世界に転生してえっちする話

 4月度は更新できずすみませんでした。だからと言って5月度ぶんの更新が増える、なんて予定はありませんがこんごともよろしくお願いします。


 さて今回の話は、あまりストレートに書いたことのない異世界転生話。とはいっても異世界ファンタジーを言い訳にしたエセ江戸話になりましたが、どのみち本筋ではないのであまり本気にしないほうがいいかなと。

 世界観や舞台の説明・演出・描写に終始してエッチシーンが少ない感じにはなりましたが、これはこれでエッチだと思います(?)



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 朝。目を覚まし、しばし天井の木目を眺める。特注で作らせた羽毛布団は軽く暖かくて、中々いつでも眠気を残る俺を捕らえていた。

「ふぁ……ぁ」

 時間は進む。屋敷の物音や、窓の外から響く威勢のよい声が、そろそろ起きなければ、という気分にさせてきた。重い身体を奮い立たせ、布団から引っ張り出した脚で、畳を間板を踏みしめる。

 障子をずらし、雨戸を開く。まだ陽は昇きっておらず、朝靄が広がる。その中にいくつか、四角い瓦屋根や、鐘のぶら下がる塔が突き出しているといった光景だった。

 やがて、とん、とん、とんと小気味良く階段が上って来る足音が聞こえてくる。この階にあるのは俺の部屋だけ。ふすまが開き、膝をついた少年が現れたら定刻だった。

「母様」

「わかってる。起きてるよ」

 それだけ言うと、すぐに少年は言葉を区切る。俺はうんと伸びをしてから――鏡に映る美女の姿を見つめ、髪を手ぐしで整えた。


 異世界転移。ここひと世代ふた世代を王道ジャンルとして席巻する物語で、もっと昔からも細部を変えつつも同様のストーリーは定番だった。なんらかの理由で現代日本から離れ、社会構造などの人の営みだけではなく、物理法則からして違うものも多い。

 俺が、それに直面したということだ。

 きっかけは定かではない。気づいたら俺は、この世界――〈暁光の国〉と呼ばれる江戸時代程度の文明を持った世界の森で転がっていた。すわタイムスリップかと思ったが、妖怪や精霊、仙術や呪術などを目の当たりにしてしまっては異世界だと結論づけるしかなかった。

 そして――俺は転移と同時に、美女の姿になってしまっていた。

 紫がかった黒髪を腰まで垂らし、眠たげな流し目は男も女も関係なく見惚れさせる。妖艶、蠱惑、豊満、優美、端麗……とにかく、外見に隙らしい隙のない、20代後半の美女の姿となっていた。

 優れた容姿は、転移してきたばかりで右も左も分からない俺の助けとなる。というより、最初は天女や女神と勘違いされていた。ひとめ見るだけでご利益などと崇められ、上げ膳下げ膳の暮らしとなった。

 飢える心配は無くなったものの、これでは面白くない。都へと連れ出してもらい、一人の人間として商売を始める。想像通り、元の日本で小さいながらも店を経営し営業経理マネジメントを一通りこなしていた経験や理論、高校大学の初歩レベルな化学知識でもこの世界では革新的だった。

 当初は金を作り、国の伝説にある『なんでも願いが叶う』などという秘宝を探し求めるつもりだった。だがまあ大成功して、どうでもよくなってくる。

 なにより、元の世界に戻りたくない理由があり――それは、女性の快楽だった。


「母様……その、朝から申し訳ないのですが」

「おや、元気じゃないか。いいよ、おいで」

 起こしに来てくれた少年――一之助《いちのすけ》を手招きする。

 今の俺はこの世界の女性としては長身で、およそ165cmほどといったところか。それに比べ、まだ元服(15歳前後で社会の一員として認められるための儀式)前である一之助は頭ひとつふたつ小さく、俺の揺れる乳房の前にちょうど顔が来る。

 俺は遠慮なく一之助をぎゅっと抱きしめ、谷間に呼吸と体温を感じる。一之助もおずおずと俺の細い腰へ回してくれる。その健気さは実に可愛らしく、庇護欲を掻き立ててくれた。

 そもそも一之助自身は実の息子ではない。地方から都に来る途中で拾った孤児《みなしご》だ。両親の顔もきょうだいも知らず、物乞いのようなことをしていたり盗みで暮らしていたが、それも限界が来て行倒れていたという出逢いだった。

 哀れと思い連れていき、ずっと身の回りの世話や雑務などを任せている。一之助は俺に逆らうことができない……と言い表すと人聞きが悪いが、実の母のように慕ってくれていた。

 そして俺も、一之助はこの世界に馴染むためには不可欠だった。現代で例えるならば『どんぶらこ』がどういう意味か、知らなければ国の人間かどうかを疑われるような風俗を、一之助から教えて貰っている。

「母様……」

 やがて俺は膝を折り、俺のために背伸びしてくる一之助の顔を迎えにいって口づけをする。一之助の瑞々しい唇は愛らしく、俺の胸を疼かせる。

「可愛い子。したい?」

「はい……今朝から、どうも集中できなくて」

 一之助は羞恥心も混じったとろんとした瞳で俺を見上げてくる。おでこへまたキスをしてから、布団へ連れていく。ややサイズが合っていない作務衣を脱がせてやり、精一杯にぴょこんと勃起した、ほんの少しだけ亀頭を露出させる包茎の男根を露わにした。

「初い奴……はむっ」

「んっ……うぅう」

 小ぶりなチンポを咥えてやると、小便のアンモニアの味や、年少者独特の甘いような香りがする。まだ香り立つ牡のフェロモンというには未熟ながら、俺を奮い立たせるには十分。

 俺は同性愛者ではない――そう思っていたのだが、この姿になってからは女性よりも男のほうに目が行ってしまっていた。こと一之助は年齢差もあるのか、俺は母性にも近いような感情を抱いていた。一之助も母のように慕ってくれている。

 それでいて、その息子を味わうことができるのも、背徳感が凄まじかった。

 もっとも最初からこうではなかった。

 都で商売を始めて軌道にのってきてから、祝として近場の温泉を訪れる。風呂は通常男女別なところ、家族風呂として旅籠に部屋を取っていた俺達は一緒に入ることとなった。

 それまでも何度か一之助の裸を見て洗ってやり、チンポに触れることもあった。しかし温泉に入った時、しっかり勃起していたのだ。もじもじとしながら股間を隠し、俺の裸を見ないようにする一之助が可愛すぎて、俺は手を出してしまう。結局、挿入まで遂げ――一之助は俺のものになり、俺は女の快楽に目覚めたという経緯だった。

「母様、母さま……ぁっ!」

「んっ!」

 しばらく口淫をしていると、一之助は精液を俺の口へ放ってくれる。青く生臭い、喉や舌に貼り付く。まだ鍛えられていないかわり、加減を知らない胤の臭いは鼻へと抜けていき、俺を一気に発情させてくれる。

「んっ、っふ……うまいよ、一之助」

「はぁ……はぁ……あっ」

 俺も、するりと寝間着の襦袢を脱ぎ一之助へと覆いかぶさる。肌の色、肉感もまるで違う男女は重なっていった。

 脚を開き寝そべると、一之助は必死に腰を振ってくれた。

「んぁっ、あっ、ふぅっ、ああんっ!」

「う、っ、うぁっ、あっ、母様っ!」

 一之助のものは、いささか小さくとも俺を満足させてくれる。この世界で誰とも繋がりがなかった俺を認めてくれ、俺も愛おしい相手だ。そんな人間なら、どんなだって幸福感が身体を満たしてくれる。

「――ぁっ、うぅ……っ!」

「んぁっ、ああっ!」

 やがて、一之助は俺の中で果てる。一之助が俺で気持ちよくなってくれたことに満足し、はあはあと息を切らす少年を胸で受け止め抱きしめてやった。

「よしよし」

 優しく短髪を撫でながらも、身体の内は情欲で灼けている。そのうち一之助はまどろんでいったので、俺の布団に寝かせてやったのだった。




◆◆◆◆◆




 俺は身体を拭いた後、着物を羽織っていく。純粋に好みの色として紫色で、着込むと和服のような見栄えになりつつも着付けの手間などはない。やはり和風ファンタジー、というべき意匠だった。

「んー……っと」

 着替えを終え、階段を降りていく。屋敷では女中や使用人がせかせかと働いている。特に一階は商店も兼ねているので、住み込みでない従業員の姿もあった。

 朝餉は白米、ニシンの焼き魚にたくあん、菜っ葉。質素ながら十分。飯炊きの女中を褒めてやってから、店の方へ出ていく。

「ご主人様、おはようございます!」

 皆は俺の顔を見ると、元気に挨拶をしてくる。ご主人様、だなんて呼ばれるのもはじめはくすぐったかったけれど、もう慣れていた。どっしりと構えていないと、むしろみんな不安がるのだ。

「さて……ん」

 帳簿をチェックしようと腰を下ろし、顔をしかめる。股間から、一之助と繰り広げた情事の証が垂れてきたのだ。奥から白濁液が、陰唇からは愛液が伝ってくる。

 風呂にでも入るか。

 ぺらぺらと帳簿をめくっても、おおよそ問題なさそう。店の方へ顔を出しても、順調に開店準備が進んでいる。笑いかけてやると、若い衆は頬を赤らめたり鼻の下を伸ばしたりと一気に元気を出してくれる。

 こういう時、美人は楽だ。軽く見回りを済ませた俺は、そのまま縁側へと赴く。

「お……精が出ているな」

 俺が目を止めたのは、庭で働く青年――真二《しんじ》だった。

 真二は10代後半、彼もまた一之助と同じく拾った男の一人。商売の一環として遊郭に立ち寄った時、男娼の中に見かけたのだ。

 江戸時代なら陰間などと呼ばれる……例えるなら男の娘喫茶や男の娘風俗のようなところで見かけた。もうその頃は俺も頭の中ピンク一色で、なんとも現代的な顔立ちでのイケメンだったのだが流行りではないらしく、いまいち人気が無かったので、そのまま身請けしたという経緯だった。

 俺は草履を履き、庭に降りる。真二は椿の木をいじっていて、土の似合う男だった。その隣に並び、花を眺める。

「真二、おはよう。相変わらずお前の咲かせる花は綺麗だな」

「ありがと。あれ姉様、仕事はいいの? もう陽が高いけど。それとも、わざわざ僕のところに来てくれた?」

「そんなわけないだろう。仕事は今日はゆっくりやる。来たのもたまたまだ」

「なぁんだ」

 最も真二を好んでいるのは、このかしこまらない態度にある。ともすれば身請けなど主従どころの話ではない。屋敷では命を救ったも同然な深い恩義のある使用人は数多いが、軽い口を利くなんて命令でもできないなんて義理堅い連中ばかり。

 しかし真二は、ごくフラットな態度で接してくれる。容姿を気に入っていることもあって、息子のような一之助とはまた違う、弟や少し生意気な後輩のような感覚だった。

 もちろん、真二にも忠誠心あってこそ。真二という名前も身請けにあたって新しい名前が欲しいと申し出てきたからつけてやったものだった。

「……いい香りだ」

「姉様に似合う、いい色になってくれたよ」

「ふふ、口が上手いじゃないか」

「本心さ」

 そう呟く真二の顔は、現代日本に居たアイドルを彷彿とさせる。一瞬、異世界であることを忘れさせてくれる存在だった。

「さて……と、風呂にでも入るかな」

「あ、やっぱり朝から誰かとしたんでしょ。一之助とか?」

「……まあな」

 いたずらっぽく笑いながら、真二は尋ねてくる。一応俺が使用人を囲い食べているのは秘密ではなく、この世界の富裕層の独身女性の嗜みらしい。だが、少し照れくさいのは否定出来ない。

 真二もこの風習に俺が慣れていないとして、からかってくる。その距離感の近さもまた、心地よかった。

「うるさい。ほら、真二も土と葉汁まみれじゃないか。お前も入るよ」

「へーい」

 俺は真二の手を引き、風呂場へ連れて行く。脱衣所に入るなり、真二は俺の着物を脱がせてくれてから、真二も作務衣を手早く脱いだ。

 すかさず、真二は俺の豊かな胸を触る。掬い上げるように揉み、もっちりとした感触を楽しみはじめた。本当に、好奇心から手が伸びふざけるかのような手つきで、愛撫とは程遠い。桜色の頂も、わざと避けられている。

「こら。せめて汗を流してからにしろ」

「いつものことながら、でっかいなって」

「全く」

 真二を窘めつつ、戸を開き浴室に入る。

 ――こういったエネルギー関連のところは、元の世界との違いを感じる。付呪された木札や木簡などが高価で販売されており、素養のある人物なら扱うことができる。

 そして俺は、その素養があった。壁に立てかけられた木簡を取り、空の風呂桶へと差し込む。何一つ文字は読めないが、清流が湧き出るイメージを滾らせると――木簡が消え、大量の水へと変化した。

 さらに木札を取って、空想に炎を燃やす。水は程よい温度の湯になる。あっという間に、湯船の完成だった。

「さすが姉様」

「お前もできるだろうに」

 まあこの素養は、そこまで珍しいものでもない。真二も使えるし、他の使用人も扱うことができた。

「わぷっ……いきなりかけないでよ、姉様」

「先に汚れを落とせ」

 俺は手桶で真二の頭上から湯を浴びせかける。持ち込んでいた手ぬぐいで軽く身体を擦ってやって、最低限の汗や土を落としていった。

 その後、俺も股間を流してから、一緒になって湯船に浸かる。真二は当たり前かのように俺の膝に入り、ぴったりと寄り添ってきた。

「ふー……気持ちいい」

「真二も朝風呂、好きだものな」

 眼前には真二の広い肩と、筋肉質な背中。俺はその肌を、なかば無意識のままになぞる。ヒノキの香りに混じって、男の香りが漂ってきていた。

 真二は俺に体重をかけてきて、胸を押しつぶすよう寄りかかってきた。湯の中なので辛くはなく、むしろ気を許してくれて嬉しい一方、よくもまあ恩人に対してこんな態度をとれるものだと感心する。

「本当に横柄なやつだ」

「だってそれがいいんでしょ? 姉様は。やめる?」

「いや……止めないで欲しい」

 他の使用人なら、俺と一緒に入浴なんてリラックスどころの話ではない男ばかり。一之助など安心してくれる男もいるが、気負わなさは真二が一等だった。

「ほら。姉様、寂しがり屋なんだから」

「分かったような口を利くな」

「じゃあ抱きつかないでよ。あと耳元、すっごい息かかるんだけど」

 言い訳はしない。俺は背後から真二に抱きつき、胸板を触っていた。このように寄り添い、甘い吐息をこぼしている俺は、真二の馴れ馴れしさに安らいでいた。

「姉様」

「あ、急に振り向くな――」

「好き」

 ぐるりと身を返され目を丸くしている隙に、真二は俺の肩を掴んでキスをしてくる。真二の濡れて尖った短髪が、俺のおでこに当たり、天井の湯が鼻先に落ちた。

 ――この猫のような、気まぐれさも真二の好きなところ。軽口ばかり叩くのに、愛情表現は愚直なまでにストレートだった。

「……っぷ……真二……」

「可愛い。姉様、愛してる……」

「やめ……あっ」

 唇を離されたかと思ったら、股間に指が進入してくる。胸が揉まれ、乳首が摘まれる。

「一之助としたんでしょ? 僕もしたいな」

「……猿め」

「じゃあ姉様は雌猿でしょ」

「ぁ、んっ!」

 こういう手管は、おそらく男娼だったころに培ったものなんだろう。俺はあっという間に絡め取られ、湯の中で一つになる。

 ちゃぷんと水が跳ねて、淫靡な波紋を作っていった。

「んっ、んっ、んぁっ――!」

「姉様、好き、好き――っ!」

 結局逃れられず――逃れるつもりもなく、俺は真二に抱かれた。静かになった湯面に、卵の『カラザ』のような精液が浮かんでくる。

「おい真二、汚れるのだから……湯の中でする時は……はぁ……はぁ」

「ごめんごめん。中で、だったね」

 真二に引きずり出された俺は、胸をぷるぷると揺らしながら仰向けで呼吸する。

「朝から……疲れすぎたな……」

「突いてあげたからね」

「愚か者」

 余韻と余熱が引いてから、真二に身体を流してもらったのだった。




◆◆◆◆◆




 風呂から上がり、身体を拭って着物を羽織る。紫の生地はさらりと肌に馴染み、和服の優雅さを演出しつつ、現代的な簡便さを併せ持っていて楽だった。

 午前中はゆっくりと仕入れを行い、商品開発部の様子を見る。これらも俺の知識ベースながら、あくまで表層のもの。少しアイデアを渡せば、あとは研究者が伸ばしてくれた。

 今日の忙しさは、ほどほど。普通に営業するだけならば、ほとんど手がかからなくなってきていた。

「んー……っと」

 くう、と腹の虫が鳴る。懸命に仕事はしていないものの、朝から二人と続けてするのは久しぶりだった。心地よい疲れが腰に溜まっている。何か、がっつりとした濃い味付けのものが食べたい。

 そう考えた時、行きたい店はもう頭に浮かんでいる。少し躊躇はあるのだが、選択肢はない。

 俺は店の若い衆をお伴として、昼過ぎの街へ繰り出していった。


 都の通りから窺える建築様式は、暮らしの文化以上に江戸と違う。地面は土ではなく整った石畳で、小川も整備されている。両側には瓦屋根の商家や屋台が並ぶものの、一部は木造でも石造りでもない、煉瓦作りの建物もあった。

 ただ、美女がいれば目が向くのは世の常。俺は注目を集めていた。

 あからさまに情欲を滾らせる男の目に、ぽうと見惚れ頬を赤らめる純情そうな少年の眼。嫉妬と羨望が入り混じった鋭い視線の女と、素直に憧れの輝きを瞳に宿す少女。

 誇らしさと優越感、微かな不安を引き連れて俺は道を行った。

 やがて高級な料亭やらが並ぶ通りに差し掛かると、ひときわ香ばしく懐かしい匂いが漂ってくる。醤油と炭火が弾け、脂が焼ける濃厚な香りだ。

 見えてきたのは、風格ある鰻屋だった。この世界――〈暁光の国〉でも名の知れた店で、暖簾の中は磨かれた板の間に上品かつ絢爛な内装が出迎えた。

 客もいい身なりの商人や武士ばかり。絹の着物が擦れる音、真昼から上酒をあおり盃を傾ける笑い声が店を賑わせていた。

 店に入るなり、少女の丁稚が小走りで寄ってくる。まだ幼さの残る顔に、愛嬌のある笑みを浮かべていた。

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「兄様はいるかい?」

 丁稚はきょとんと首を傾げる。なるほど、見ない顔だと思ったけれど新しい子か。胸の膨らみもない丁稚を見て、また稚児趣味な、いや俺も同じか、などと思いながら笑いかける。

「そうか、店はまだ慣れないかい?」

「え、はい……もしかして」

「兄様! いるんだろう!?」

 俺は声を張り上げる。店が少ししんとなったけど、構わず待っていると店の奥から物音。ふすまが滑らかに開き、現れたのは20代後半の男――三蔵だった。

「久しぶりだな、妹君よ。訪ねてきてくれて嬉しいぞ」

「妹になったつもりはないけどね」

「俺とお前の仲だ。食っていくんだろう? 奥へ入れ」

 三蔵は渋い容姿と低い声を操り、昭和の名優を想起させる眼力の持ち主だった。背丈も180cmほどと、気配や雰囲気を含めて存在感が半端ではなかった。

 その大きな背中へ、俺はついていく。お伴にも飯をと頼んでから、店の二階席――というより三蔵の私室に招かれた。

 一階のざわめきは遠い。窓からは桜の花びらが舞い込み、壁には山水画の掛け軸がかけられ、卓には茶器が並ぶ、静謐な空間だった。

「どうだ妹君よ、商売の方は?」

「おかげさまで。兄様の店に来れるぐらいには」

「けっこうなことだ」

 卓の向こうにどっかりと腰を下ろした三蔵は、当たり障りのない質問を投げかけてくる。微かな皮肉は、通じていない。

「まあそちらの石鹸やらも、うちで利用させてもらっているよ。あればっかりは――元の世界の技術のほうが上だからね」

 そう言って、三蔵は目を細めた。


 そう――三蔵も俺と同じ、現代日本からやってきた転生者だ。

 聞けば、転移してきたのはもう五年も前のことらしい。俺とは逆に、元の世界では女性、30代前半の会社員だったという。

 だが、肉欲に溺れるのは運命のようだ。男の身体を得て、元の世界の調理を取り入れた料理屋が成功すると、女を買うようになるばかりか、屋敷に囲うようになった。今も遊郭さながらの暮らしを謳歌していると聞く。俺が男たちを囲うのと、まるで鏡写しのようだった。

 接触は三蔵からで、俺の商店がこの世界の技術を一歩抜く発明品――石鹸や香料、簡単な薬品――を取り扱ったことで、三蔵は同じ転生者の可能性を嗅ぎつけた。

 三蔵は中々に豪快な男(元は女性というのも過去で、俺目線でもまるきり男だ)で、探り合いなどもなく『俺は現代日本から来た。お前はどうだ?』とストレートに来た。

 どうやら三蔵は転生者仲間が増えるのがよほど嬉しかったらしい。一方的に俺を『妹君』と呼んでくる。俺は兄ほど慕うわけではなかったが、ある程度の敬意と共感を示すとともに、呼び方一つで気をよくするならと『兄様』と呼んでやっていた。

 もっとも、初めてそう話した時に、まさにツンデレで生意気な妹だ、などと笑われて悶えたこともあった。


 三蔵の私室で卓を挟み、しばし世間話を交わす。商売や都の噂、妖怪絡みの妙な事件。どれも当たり障りのない話題だが、時折マンガやアニメに喩えられたり、映画などにも話が逸れるのは、やはり他の誰とも分かち合え無い楽しみだった。

 そのうち、丁稚の少女が膳を運んでくる。漆塗りの盆に載ったのは、鰻丼と野菜の天ぷらだった。

 ふわりと立ち上る醤油と炭火の香り、つやつやと光る鰻の身に、俺の腹がまた小さく鳴る。

「さあ、食えよ、妹君。うちの鰻は格別だぞ」

 俺は箸を取り、鰻丼に手を付ける。一口頬張ると、濃厚なタレが舌を包み、鰻の脂が舌の上でじわりと溶けた。天ぷらはナスとカボチャ、シソの葉。衣は軽やかで、野菜の甘みがしっかり引き立っている。

「うまいな。さすがは兄様」

「だろう?」

 三蔵が満足げに頷き、膝を叩く。

「文明が進んでおらず自然が多いからといって、天然の飯がうまいかというとそうじゃない。品種改良がなされていないからな」

 ここぞとばかりに、三蔵は得意げになる。元の世界では農業大学の出身で、植物の品種改良を学んだらしく、店の野菜は自ら改良したものらしい。

 数段うまい野菜を作り出し、趣味特技レベルだった調理で活かす。この世界では未開拓のところも多く、都でも評判の味を確立した。

 俺が商売の経験を活かして成功したように、三蔵は料理と農業の知識で財を成したのだ。商売の領域が食い合わないから、こうやって気楽に話せるのかもしれない。

 箸は進む。天ぷらを一つ摘み、口に運ぶ。シソの香りが鼻を抜け、口の中が油と涼しさが同居した。

 ふと、三蔵が箸を置いて俺をじっと見つめているのに気づく。もう三蔵は食事を終えていて、膳を脇にやっていた。

「どうした、兄様。じろじろ見てさ」

「いや、妹君が美味そうに食うからな。つい見惚れた」

「趣味悪いな……おい、まだ食い終えていない」

 ゆっくりと立ち上がった三蔵は、俺の隣に腰を下ろす。距離が近い。男の匂い――汗と炭火と、ほのかに酒の香りがする。

 そして三蔵は――脂でてらてらとした唇を、容赦なく奪う。

「やはり妹君は最高の女だ」

「莫迦者、妹を抱こうとする兄があるか……んっ」

 俺の着物は、抵抗する間もなく脱がされていた。特注で造らせたブラジャーやショーツめいた下着も剥ぎ取り、女の穴に指を差し入れてくる。

 元は女のうえ、この世界で男として女を抱きまくってきた三蔵は征服的なまぐわいについてはまるで敵わない。俺は毎回、生娘のように味わい尽くされるだけだった。

「欲しければ、兄様におねだりしてみろ」

「嫌だね。なんで兄様にそんなこと頼まなきゃないのさ」

 俺は――こいつの好みを知っている。生意気な妹を演じ、意地を張るのが三蔵のツボだ。

 媚びに媚びて、あさましく、哀れっぽく股を開くのではない。わざと拗ねた声で返し、膝を閉じて、口を尖らせるのである。

「ほう、生意気な妹だな。分からせてやらねばならないか」

「や……ぁん、兄様の変態、やめ……っ!」

 もはやイメージプレイでしかない。ひとときの快楽の乗り物だとしても、お互い肉親がなくひとり転移してきた寂しさを紛らわすには、十分だった。



 行為が終わり、体液にまみれて布団で寄り添い合う。三蔵は俺の長い髪ごと、腰を抱いた。

「妹君よ」

「やだ」

「まだ何も言ってないだろう」

「どうせ、家に来いって話に決まってる」

 もう何度も聞いている。耳にタコが出来そうなほど。屋敷に住め、夫婦になれば商売も楽になると。確かに、飯屋と商店は領域が被らない。

 けど、俺はそれを認めはしなかった。

「私は不倫をするだろうからな。兄様もだろう」

「この世界では不倫じゃない。妾だ」

「だとしてもだよ。屋敷の男たちも、捨てられない」

 俺はきっぱりと言う。一之助の健気な瞳、真二の気まぐれな笑顔。他にも、俺を頼ってくれる男衆がたくさん。いつかは、と思いつつも、今は誰のものにもならないでいたほうがいい。


 もう一度情熱を酌み交わし、結局夕方になってしまった。

「また来いよ、妹君」

「気が向いたらね、兄様」

 玄関先で、駕籠に入り三蔵へ別れを告げる。


 もう慣れてしまったな、三蔵との関係も、この世界も、この身体も――とりとめもなく今日、三人を相手にしたことを想い、淫乱な女だと自嘲しながら外を眺めるのだった。

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