現実改変×集団入れ替わりやつです。
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「――起きて起きて。朝だよ」
家族以外の人間に、寝ているところを起こされるのは十数年ぶりだった。
結婚するより前、無茶な酒の飲み方をして酔いつぶれ、終着駅で駅員さんに肩を叩かれたきり。突発的に倒れたこともなかった。朝日と共に目を覚ましたら見ず知らずの人間が目の前に居るというのは、それだけで緊張する出来事だ。
「起きて、朝だよパパ」
しかもパパ呼ばわりしながら俺の身体を揺さぶってくるのは、高校生ほどの少年。間違いなくここは自宅の夫婦の寝室で、親戚なんかを招き入れているわけでもない。朝っぱらから頭が混乱しまくっていた。
「おはよう、パパ。今日可愛い子だね」
「……?」
「ご飯できてるからね。二度寝、しないでよ――ちゅ♡」
そのチャラそうな少年は、俺のほっぺにキスを残して部屋を出ていった。妙なことに、その仕草は妻である春美《はるみ》が毎朝俺を起こしてくれる時お決まりの愛情表現だった。知らん少年にそんなことをされたのに何故か不快ではないし、よく見ると春美の青白チェックのエプロンを着用していた。
もう何がなんだか。変な夢でも見ているのかと思い、手の甲でもつねろうかと腕を持ち上げると――指が真っ白く、細い。
「は?」
爪には濃いパープル地に星が埋め込まれたようなネイルアートが施されていて、まるで俺の手ではなかった。ようやく身を起こして邪魔な前髪を……いや先週髪切ったばかりなのに?
さらには眼下にはシャツに透ける女性のバストが。ぽよんとした丸い膨らみと、先端をピンポイントで押し上げる突起。春美が下着をつけずシャツを着ている時のような……ノーブラ女性そのもの。
「はぁ……あ、あぁっ!?」
声も甲高い。いよいよ自分の身にどんな奇跡が起きているか察してきたあたりで、とどめは鏡。夫婦のベッドの上、わなわなと震えているのは20歳前後にしか見えない茶髪のギャルっぽい女の子ひとりだった。
その女性が自分だと導き出すのに、手がかりが揃いすぎている。つい胸を触ったところ、乳首がひりっと痛んで夢でない反証もできてしまった。
「ちょっとパパ、どうしたの? 子どもたちも起きてるよ?」
さっきの少年が戻ってくる。何をどこから主張すればいいのかわからず、口をぱくぱくとさせながら少年の顔を眺めていると、点滅するかのように春美の姿が浮かんで見えた。
春美少年はぽんと手を叩き、頷いた。
「あ、わかった。その子のからだ、低血圧なんでしょ。まだ頭働いてませんよー、身体も起きてませんよーって顔してる」
「……君は、春美なのか?」
「まだ寝ぼけてる。さ、いいから起きて」
俺は手首を掴まれ、ぐいっとベッドから引っ張り出される。勢いのままLDKへついていくと、今年で小学5年生となった娘娘である茉夏《まなつ》の席には、鷲鼻バーコード頭のおっさんがいた。
「おはよう、パパ。あたしより遅いなんて珍しいね」
野太く、滑舌の悪い声。
春美と同じく、娘の虚像がダブって見えている。着ていたパジャマも娘のものと同じらしいデザインなのに、サイズもぴったりだった。
「身体のせいなんだからしょうがないでしょ」
「えー、あたしもこんなんだけど全然だよ? 昨日のイケメンよりぜーんぜんおじさんなのにさ」
春美少年が弁護してくれたが、娘おっさんは得意げに言い返し太鼓腹をぱんと叩いた。
「昨日……イケメン?」
「あー、じゃああたしが教えてあげる。毎朝、男の人は女の人に、女の人は男の人の身体になるんだよ。知らなかったの?」
娘おっさんの口調は、異界のルールを説くチュートリアルといった風ではなく、ゲームや流行など俺がついてこれていないと見るやすぐ教えたがる子ども特有のマウント。そういう、やや生意気な性格も含めて娘らしいが。
――次第に、そういえばそうだったかも、いやそうだった、というような納得感が無理やりに覆いかぶせられてくる。眠っている間に身体は異性のものと取り替えられるのは自然の神秘のひとつで、人が産まれ、人が死ぬのと同じこと。
違和感はある。ただ、どうやら俺が世界の規律が異なる世界に紛れ込んでしまったか、あるいは、覆せない常識を疑う天才と狂人の境地に突然目覚めたか、そのどちらかだと理解に至ることはできた。
「なんか変な夢を見てたみたいでさ。平気平気、ありがとうな、茉夏《まなつ》」
先ほどまでの混乱も、さっぱり落ち着いている。ちょっと見窄らしいおっさんの姿となっている娘の茉夏を、抵抗なく名前で呼ぶことも出来た。
妻の春美もふっと笑う。
「なんだ、朝から変だったけど大丈夫そうね」
「パパったらおかしー」
春美と茉夏は口々に心配してくれる。姿は変わっても、家族は家族だ。この身体シャッフルとでも呼ぶべき現象は意味不明ながら、正気を保っていることは出来そうだった。
……落ち着いたと言ったが嘘だったかもしれない。朝食のあと、すぐ着替えてリビングへやってきた茉夏を見て揺らいだ。
茉夏、つまりおっさんは、可愛らしいピンクのロングパーカーとレギンスに、淡いパープルのランドセル。サイズがぴったりだとしても、あまりに似合っておらず見苦しい。
「いってきまーす!」
ランドセルを背負い女児服で出発するおっさん、エプロン姿で見送る男子高校生。まるで適当にキャストしたかのような光景だった。
それは自分の身体も同じ。
会社に着ていくスーツも採寸したかのようにサイズがぴったりなのはいいにしても、股下のつくりなどは男物。ネクタイを締めると、ギャルっぽい女の子がノーメイクで男装をしているような風貌だった。
「いってらっしゃい、あなた……ちゅっ♡」
キスで送り出してくれる妻は、タイトなチノパンにゆるめのブラウスを着ている。何らかの事情で母親の服を着ている息子、としか言いようがなかった。
当然、街もちぐはぐなことになっている。
じじむさい白無地シャツと帽子を着用している金髪の女の子に、蛍光ピンクのウインドブレーカーでジョギングしているおじいさん。スカートやパンストを穿きおしゃべりしている青年や、ビッグサイズなスモックや女児服姿のおっさんがはしゃいでいる様は見るに耐えなかった。
そういう意味では、まだ男物の服を着ている女性は許容範囲内で、そういう見苦しさはない……いやごめん。むちむちの熟女が黄色い通学帽を被ってドラゴンのTシャツを着ているのは強烈なフェチズムを漂わせているし、作業つなぎと安全ヘルメット姿の幼稚園児はすわ児童労働かと怖くなってしまう。
女性が男性に、男性が女性に。年齢に関わらず肉体だけが交換されていて、誰も疑問を抱いていない。今朝娘が話していたことが正しく、俺の推察が合っていると確信するに足る混沌さだった。
勤め先の会社も同じ。女の子や女性はだいたいスーツを着ているし、男の子や男性はフルメイクの女装をしているようだった。
「ふぁー……」
普段より重く感じられるリュックを抱えながら、俺はようやく自席に到着した。
自分のデスクは、いつもより広く大きい。これまた不思議なことなのだが、椅子の高さやモニター角度などのセッティング位置は変わっておらず、元の身体に合わせた状態だった。
けさの娘の口ぶりやみんなの反応から察するに、身体のシャッフルは今朝から始まったわけではない。昨日も俺本来の身体ではなく、衣服は身体に合わせられているのに。そもそも、必ず異性と身体が入れ替わっているというくせに、本来の性別とはどういう意味になるのか。
何から何まで、いびつだった。
「おはようございます、課長!」
しゃきっとした声が飛んでくる。今年の新入社員、俺の部下となった元気印の女の子……だが、その姿は強面の男。まだリクルートスーツを着て出社している子なので、お笑い芸人がコントかなにかで女装しているかのようだった。
新人ちゃんは目を輝かせながら、俺の手を注視していた。
「今日の課長、可愛いー! ネイルもちゃんとしてますし、ピアス穴もあって……結構ギャルな感じなんですかねー。課長、ちょっと見せてもらっていいですか?」
「そ、そうかな? 俺にはよくわからんが」
「手間かけてたみたいですね、この子。いいなー……男の人の身体も色々楽でいいんですけど、おしゃれしたいし女の子に戻りたいなー……」
「朝から課長困らせちゃだめだよー、っと」
会話に混ざってきたのは、とてもスリムで綺麗な女性。こちらは朗らかでひょうきんながら有能な、小太りおじさんなはずの部長だ。
一応実際の姿と本来の姿が重なって見えているので、誰が誰だか分からなくなることはないものの、ギャップに頭がおかしくなりそうだった。
「あ、部長もきれーい。モデルさんとかなんですかね? いいなー」
「うふふ、かもねー。妻とか娘にも羨ましがられたよ。課長は?」
「え、いやー……まあ」
部長と新人ちゃんはニコニコとしながら、異次元の会話を繰り広げている。
――モデルさんみたい、というからには、このシャッフル現象下においてもモデルは優れた外見であるということを指している。しかし、その身体は毎日入れ替わっているはずなので、同一の人物が務められるはずがない。
何気ない会話に潜んでいた綻び。つまりこのシャッフル現象は自然ではなく、俺の方が正常だ。ここまできてモデルという言葉の定義だけが変わっているとも考えにくい。
だが何も出来ない。それを声高に訴えかけたところで、気が触れたと思われるだけだろう。まずは今日一日を過ごしてみてから。
業務が始まってからも、俺は翻弄され続けた。
キーボードで入力作業をしている最中、自分自身のネイルや白く細い指が見えてどきりとする。新人ちゃんからのなんてことない質問も、女装したヤクザにしか見えず妙な緊張がある。艶やかな部長の吐息がちな声のせいで、話が頭に入ってこない。
昼時間になりふうと脱力したところで、新人ちゃんが顔を覗き込んできた。
「課長、体調悪いんですか?」
「なんかねー……」
「ひょっとして……女の子の日、ですか? ナプキンとか大丈夫です? 重い子の身体だったり? ありますよ」
今の常識に当てはめれば男にしか月経がこないはずなのに、女の子の日というのか。しかもなぜ男性の身体であり続けるはずの新人ちゃんが女性の生理用品を携帯しているのか。
疑問は尽きないが、俺は今日一日を当たり障りなく過ごすと決めていた。
「ありがとう、でも大丈夫。多分寝不足とかだと思う」
「そっか。でも前兆でそういう症状が出る子もいるみたいだし、もし始まっちゃったら言ってくださいね」
言い残して、新人ちゃんはそそくさとオフィスを出ていった。
その後もどうにか仕事をして、やっと一日が終わる。定時になってすぐ、俺は会社を後にして家路についた。
奇妙な街をすり抜け帰宅し、間もなく家族揃っての夕食となった。
チャラい男子高校生が妻の春美で、バーコード頭のおっさんは娘の茉夏、そして俺はギャル風の女性。どこを組み合わせても、両親と娘の3人家族の食卓には見えなかった。
「茉夏ちゃん、学校はどうだった?」
「今日は隣の席のユウキくんがおっぱい出るお母さんの身体になっててさ。保健室で先生にお世話してもらったんだって。みんなママーっていって遊んでたよ~」
「あんまり身体のことでからかっちゃだめだよ。どうしようもないんだから」
「違うって。ユウキくんもびゅーって出しておっぱいビームとか言ってふざけてたんだって」
娘の茉夏は脂っぽい鼻をふごふご鳴らし、妻のお叱りを回避する。
なるほどなぁ。小学生でも容赦なくシャッフルに巻き込まれているのはわかっていたけど、こういうことになるのか。無邪気というか残酷というか、もうめちゃくちゃだった。
「……パパ、疲れてるの?」
黙って話を聞いていたら、茉夏が心配そうにたずねてくる。気づけば二人とも俺を見ていた。
「いや、大丈夫。ありがとうみんな」
今朝からこれしか言っていない気がするな。でもきっと、明日の朝には収まってくれる……はず。今はそう信じるしかない。
食事と片付けの後、ギャル女性の身体をできるだけ見ないようにして風呂を済ませる。興味はあったが、最低限のチェックや手入れはしたがそれだけ。ナニかするのは妻への不貞だ。
今晩はさっさと寝ることにした。青いパジャマに着替えた俺は、早々にベッドに入る。しっかり身体も疲れていたようで、すぐ眠気が襲ってきた。
「やっぱり、あなた疲れてたんじゃない」
眠りに落ちる直前、ぎゅっとスプリングが沈む。入浴とスキンケアを終えた妻がやってきたようだ。明かりを消し、もぞもぞと掛け布団の中に入ってくる。
「まあ……茉夏の手前な」
「ふふ。子どもにあんな言われたらねー。ちょっぴり生意気だけど、あなたのこと大好きだから」
夫婦の会話なのだが、真っ暗だと声の違いが気になる。俺が若い女性で、妻が少年の声。
――妻の春美には話してもいいだろうか。バカにされたり冗談と捉えられる可能性はゼロ。
いや、逆か。だからこそ、余計な心配をかけたくない。ヘタをしたら、打ち明けたその瞬間から、周りからは正真正銘の異常者と思われるかもしれない。
今日一日でわかったことは、ルールが変わっても家族は家族。それでいい……ことにしておこう。
「眠い?」
「すまんな……この身体、体力があんまりないみたいでさ」
身体を言い訳にするのも慣れないが、使わない手はない。俺は春美と手を繋ぎながらまた目を閉じる。春美も寝る体制に入り、部屋が静かになった。
しかし――春美が身体を寄せてくる。
「……寝ちゃった?」
仕草と、その一言で俺には伝わった。春美が何を求めているのか、何をしたがっているのか。
「この子の身体、私と同じですっごく性欲強いみたいなの。あなたの匂い嗅いでいたら……おっきくなっちゃった。しない?」
耳元で囁かれて、全身がきゅんと唸った。お尻が触られ、胸にも腕を回される。まだ答えていないのに、やや強引に迫ってくるのは春美の癖だった。
「け、けど……ぁっ」
「ごめんね。一回だけ、私が全部してあげるからさ」
「や……んっ!」
「うわ、敏感さんなんだ……この身体」
春美はシャツの中に手を入れて、乳首やマンコに直接触れてくる。
「ぁ……んっ、ふぁん……っ」
「大きな声、出しちゃだめだよ……んっ」
俺は仰向けにされ、唇を奪われる。妻に求められている幸福感が身体に満ちてきて、繁殖の本能に従い身体が熱くなってきた。
急速に、目の前のチャラい少年が……春美だと馴染んでくる。重なった唇、刺激される粘膜から、愛が溢れてきた。自分自身の身体も受け入れられて、子宮が疼きまくっていた。
このシャッフル現象の影響下において、家族、ひいては夫婦の関係も変わらなかった。男女が逆転し、誰ともしれない肉体を宛てがわれたとしても、夫婦が結ばれることに何の問題もないと、身体が教えてきてくれた。
「ん……春美、ぁ……っ」
「いいから。私に愛させてよ、今はあなたが女の子なんだから」
「ぁんっ!」
俺は妻からいいように貪られる。乳首をちゅうちゅうと吸われ、マンコもくちゅくちゅとほじくられる。俺が女、妻が男として合体するまで時間はかからず、気づけば俺はセックスに夢中となっていた。
「ぁんっ、んぁっ、んんっ!」
ぎしぎしと軋むベッドの上で繰り広げられているのは、正真正銘夫婦の営みだった。身体の貞操がどうとかなんて理屈はどこかへ消え、あっという間に俺達はめくるめく快楽の旅に出ていた。
「んぁ……春美、もっとぉ……っ」
「ふふ、明日は土曜日だし、たまには思い切りやろうね……はぁっ!」
いつしか俺はマンコを開いて、自ら腰をふり春美を迎え入れていた。どくどくと子宮に精液が注がれ、夫婦としてなすべきことをしている。
「疲れてたんじゃなく欲求不満だったんでしょ、どうせ……ほら、ほらっ!」
「んぁっ、んぁっ、んぁっ、ああぁああっ!」
俺は何度も絶頂し、妻に抱かれまくったのだった。
そして翌朝――
「あら、起きたかしら……おはよ、あなた♡」
ベッドの中、微笑みながら告げてきたのは、幼くあどけない少年。俺は――おっぱいが大きく、母乳さえ滲ませている女性。のっそり身を起こし鏡を見ると、気だるそうにフェロモンを撒き散らしている。二人とも裸で、いけないことをした母子かのようだった。
「あ、こら……茉夏が来ちゃう……ううんっ、おちんちんだめっ、ちっちゃくて敏感なんだから……ぁんっ!」
「まだ大丈夫。それに昨日は遊ばれたから……ね♡」
俺はベッドに戻り、春美の包茎チンポをかぷっと咥える。精一杯に勃起したチンポからはすぐ青臭く濃厚な精子が飛び出してきた。
春美は目を白黒させている。もしかしたら、この男の子の精通だったのかも。そんなことを考えると、母性の弱いところがつつかれ、お乳や愛液がとくとくと溢れ出てくる。
巨乳の中に春美を埋めさせてやると、チンポはすぐ復活する。俺は間違いなく出産経験のある経産婦マンコで、童貞くんとなった春美をにゅるーっと誘った。
「ぁなっ、んぁ、おちんちんしゅごっ、出ちゃうぅ……っ!」
「いいぞっ、出して、っ、俺の中にたくさん出して――ああぁっ!」
――身体のシャッフル現象は収まらず、その日からずっと続いた。
俺が幼女に、春美がおっさんになっても。二人とも高校生くらいになっても。夫婦であることは揺るがず、営みを続けた。
もう俺は、元の身体のことなどどうでもよくなっていくのだった。