いわゆる『TS娘×親友君』に該当……すると思います。たぶん。
当初は美少女になった姿を友人たちに見せびらかす話を考えていたのですが、なんか手なりでこうなりました。
以下本編です。
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「なにこれ」
ある日の朝。目覚まし時計に叩き起こされた可哀想なあたし。
通知とSNSをチェックをするため枕元のスマホに手を伸ばして、画面ロックを解除したところで手が止まる。
なんだかよくわからないアプリがインストールされていて、壁紙にしていたあたしの顔を隠すように、無神経にもど真ん中に居座っていた。
「……現実……なにそれ?」
意味不明。ただ思い返してみると昨日の夜は寝落ちしたような気もする。何か誤操作で間違って入ったものなのかも。ちょっぴり不安だけど、あたしは寝ぼけるままに起動してみた。
すると『スキャニング中』と味気ないフォントで表示されて、読み込みバーがゆっくりと伸びていった。
「ふわぁ……」
時間がかかりそう。あたしは先に、朝のあれこれを済ませることにする。今日は大学があって、時刻はいつも目覚ましをセットしている通りに六時。のちょっと過ぎ。あんまりゆっくりもしていられない。
あたしはベッドから出て――なにか違和感を覚えて、周囲を見回す。
壁にかかったピンク色のフリルブラウスやらスカートやら、色とりどりのコスメに黒に金の箔押しドレッサー、同じデザインのチェストやらバラ柄のラグやら。
天蓋付きのベッドから垂れたレースカーテン越しに見える光景は全く変わっていない、あたしの世界一可愛いお部屋だった。
なにもおかしなところはないのに……変な夢を見ていたのかな。
「あ」
ロック画面になったスマホを見て気がつく。今日は土曜日、大学もバイトも何もないオフの日だ。
「もー……」
なんだ、早起きする必要なかったじゃん。がっかり。あたしは丸まっていたパジャマを直して、長い髪も手ぐしで整えてからおふとんを被る。
あったかい。二度寝の体勢に入った。
「……」
けど寝られない。昨日の夜焚いたカモミールのアロマや、あたし自身のはずの匂いが強く感じられて……なんだか、あたし自身なのにむらむらとしてきちゃった。
朝からオナニーかあ。休みとはいえ、ちょっとかわいくない。目は冴えてくれたから、あたしは二度寝は諦めよう。
お気に入りワンちゃんのマスコットキャラのコラボスリッパを穿いて、あたしは部屋を出た。毎朝のルーチン通り、洗面所で鏡を覗き込む。アイドルは顔が命だ。
「……あれ、可愛い」
パープルとシアンのメッシュが入った黒髪は、ぼさついていない。メイクで誤魔化していた目のクマもすっかり落ちていて、唇もぷるっぷる。全体的に、寝起きどころかお風呂上がりみたいな潤いっぷりだった。
「かわいい……あたし最高か?」
やっぱり二度寝もオナニーもなし。今日はお出かけだ。そうと決めたあたしは、るんるん気分でトイレに入る。スリッパと同じキャラのパジャマとショーツをずらして――
「? あれ、あたしったら……やだ」
おちんちんどこいった? と思ったの、なんで? 本格的に寝ぼけているみたい。この調子でおでかけして、こんなにかわいいあたしが男子トイレに入ったなんていったら、大変なこと。やめとこっかな、やっぱり。
「んー……なんか、変」
おしっこをして、あそこを拭いているとまたなんかエッチな気分になってくる。生まれつきほとんどお毛々が生えていないあそこを見るのも、なんだか照れくさいし。
とっても身体が熱くて、本当にオナニーしたくなってきちゃった。
朝ご飯を食べようと思ったけど、あたしはまっすぐ部屋に戻る。天蓋カーテンを突き破って、ずどんとベッドへと飛び込んだ。ごろごろとしたあと、ベッドの下からおもちゃを取り出す。
さあしよう、と思ったところで、クセでスマホを開く。すると、さっきのアプリの処理が終わっていた。
「……なにこれ?」
その地味~な画面には、何個か文字が並んでいる。〇〇大学在籍だとか、19歳女性だとか、本名の『楢橋 めると』とか、胸のサイズとか。あたしの個人情報……というより、何かの設定みたい。
そして下の方にはなんか難しい漢字がどうたらとか並んでいて『改変認識:オフ』ってのが一番気になった。なんだかここは、触っちゃいけないような気がした。
「……」
いじっていいのかな。でも、あたしのスリーサイズまで出ているっていうのは、ただのアプリじゃないような真に迫る何かが感じられた。あたしが入力した記憶もなし。
まあ大丈夫かな。ちょっと怖気づいたけど、まさか触ったらお家が爆発するとか天地がひっくり返るとか、そんなことがあるわけはないんだから。
あたしは気になっていた『改変認識:オフ』の欄をタップして、オフからオンに変更してみる。右下で灰色になっていた『適用』のボタンが明るくなったから、ぽちっと押した。
「えいっ」
「……え、あ……ああっ!」
――その瞬間、思い出した。俺はめるとという女の子ではなく、普通の男だ。
昨晩、インターネット広告から飛んだサイトで『現実改変アプリ』なるものをダウンロードし、あれこれと設定をいじって架空の理想の女の子を作り上げた。
それで適用をしてみると、初回は時間がかかり翌朝反映、以降は即時反映、などという文章が出てきて、やはりジョークソフトかと思いそのまま眠ったところまで、記憶が蘇った。
おそらく『改変認識』の設定をなしにしてしまっていたため、自分が元々誰だったかを忘れてしまっていたようだ。
「なるほどー……」
そして今錯覚していた通り、俺にはめるととしての記憶と性格、習慣や癖も持ち合わせている。このあたりは『自分大好き』『超絶美少女』『有名ではない』『実家が金持ち』などと、思いつくままいい加減に入力した内容を解釈してくれたようだった。
「へー……んふふー、にゃるほどぉ」
あたしは……っとと、俺はパジャマに包まれた身体を見てにやりと笑う。
ほっそりとしたモデルのような肢体に、豊か過ぎないバスト。自分大好きなめるとが枕元に置いている鏡には、その自信も頷く童顔のキュートな美少女。
「はは……ふふ」
素晴らしい。昨日は眉唾どころか信じるスタンスもなかったが、俺は現実として美少女になることが出来たらしい。自然とこぼれていく笑みも、とても愛らしかった。
「……ふー……じゃあ、どうしよっかな」
めるとは大学生だが、今日は休み。改変前の俺ならば、土日だろうが出勤だったので、久々の休み。かえって、何をすればいいのか分からなかった。
あたしがしようとしていたように、オナニーをそのまましてもいいし、ものすごく女の子の身体に興味はあるんだけど、なんだか勿体ない気がする。
だって今のあたしは、超絶かわいい美少女。こんな女の子が家でキノコみたいに根っこ生やしてたら、人類全体の損だもの。
「……はは」
――なんて、めるととしての思考もどんどん湧いてくるのは少々恥ずかしい。でも、確かに俺はエロいことをする以上に、美少女になった自分を見せびらかしたい気持ちが強かった。
「……そうだ」
このアプリは現実改変、と言っていた。元の人間との交友関係は……っと。
「おお」
チャットアプリを開き、めるとの記憶を掘り起こしつつ確かめていくと、リアルの交友関係はだいぶ変わっている一方、ネット起点の繋がりはそのまま。改変と称しているとおり、俺とめるとが全くの別人というわけではなさそうだった。
同じゲームを好み、同じコミュニティに入って、同じようなオタ話を繰り広げている。アイコンやハンドルネームも同じだった。
「んー……」
ネットだと男っぽいけどリアルでは美少女だった、という展開はしたい。男のオタクならみんなしてみたい。俺ならそうする。
けれども、同時にこのコミュニティの空気や俺の扱いを変えたくはない。なぜなら俺が本物の美少女だと知られた途端、絶対に争奪戦やあからさまな媚売り合戦が始まるからだ。俺ならそうする。
自慢したい気持ちはあるけれど、やっぱりやめておこう。
「だとして……なんかないかな」
俺は現実改変アプリに戻り、すべての項目を隅々までチェックする。すると、ほしかったところがあった。交友関係、だ。
「おー」
そこには何人かの友人や同僚、家族なんかが並んでいる。氏名や年齢と顔写真、それに付随する関係性などがばーっと並んでいる様はまさにゲームのパラメータのよう。その情報をどうやって得たのかを考えると空恐ろしいがそれはもうどうでもいい。
全て『改変認識』はオンとなっていて、つまりこのままなら俺にめるととして接してくれるということだろう。
俺はその中から、現実で何度も会っている何人かの友人をリストアップする。美少女になった俺を見せびらかすためで、要はデートできるラッキーな奴を選ぶということだ。
加藤はすぐヤらせろとか言ってきそうで、目的から外れるので却下。大原は最近疎遠気味なので声かけづらい。永田も悪くはないけど、豹変しすぎそうだな。
よし、智久《ともひさ》にしよう。この流れの中で唯一下の名前で呼んでるぐらいには仲のいいやつだし、童貞でもない、それにいいやつだから変な感じにはならないはずだ。
そうと決めた俺は、あえて智久の詳細を見ないまま『認識改変』をオフにする。これで智久からすれば、俺がある日突然女の子になっていた……という風になるはずだ。あ、でももしかしたら俺と同じように、俺がめるとである世界の記憶も保持しているのか?
「……まあいいか。どっちでもいいだろ、どーせあたしにメロメロになるのは一緒なんだから」
逡巡したけど、どうせ同じ。めるとの能天気さに引っ張られ、些細なことは大丈夫だろうと楽天的になっていた。そう自覚してなお、止められていないのだからどうしようもない。
俺はすぐさま、智久に電話をかける。中々出ないな、と思ったらそれもそのはずでまだ六時半。智久はあたしと違って一人暮らしだから、ぶっ壊れた生活を送っているに違いなかった。
「……んふふー。じゃあ起こしに行ってやるか」
今から、智久の驚く顔が楽しみだ。
結局、俺が家を出たのは八時過ぎになってしまった。
あのあとお手伝いさんが作ってくれていたパンケーキを頬張り、それから顔洗ったりメイクしたりお着替えしたり。めるととしての記憶で分かっていたものの、女の子のお出かけ準備は時間がかかってしまった。
でも、そのおかで今日のあたしは完璧。黒髪に入ったパープルとシアンのメッシュを左右でツーサイドアップにして、お気に入りの長いリボンでまとめる。元がかわいいからメイクは薄めで十分様になる。
お洋服はフリルとレースの黒いセーラー風ワンピース。パニエを入れたらもうロリィタファッションな、可愛らしいやつ。それに黒いグローブと、カメオブローチとリボンをつけたベレー帽、白いパンティストッキング。
大きめな洋書風バッグとエナメルのベルトパンプスも履いたら――
「ちょ、ちょっとたんま」
いきなり、恥ずかしくなってきてしまった。
これが、俺? いや、かわいいのはかわいい。かわいすぎて、男としての意識でもって恥ずかしくなってきてしまった。これで智久に会いに行くなんて、正気の沙汰とは思えない。
その辺りの判断も含め、かなり色濃くめるとの人格が表に出ているようだった。俺は少し怖くなってきて、アプリを開きめるとの設定を見直した。
すると今朝も見たような『自信満々』『美少女』『前向き』『楽天家』などが繰り返し並んでいるほか、『惚れっぽい』だの『一途』『処女』『男への免疫はなし』だのもある。昨晩の俺は、頭の中がまるっきりピンク色のようだった。
「……まあいっか!」
その設定のせいだ。そう分かっていても、俺はめるとの――俺自身の性格設定を変える一歩を踏み出すことはできなかった。めるとは自分自身の見た目だけではなく性格も好きなので、それをいじるなんてとんでもない! と騒いできたのである。
なんとかなる。少なくとも、マイナスには働かないだろう。そう俺は信じて、立派な家を飛び出していった。
街の方は変わっていない。が、ずっと光景が明るく見えていた。
例えばコンビニの前、スーツ姿でタバコを吸っているおじさんは、これまでならくっせえなあとしか思っていなかったところ、朝からお仕事で大変なんだな、とか。
例えばコンビニのレジ前、ゆっくりと小銭を取り出しているおじいちゃんには、これまでは仕方ないと思いつつイラつきは抑えられなかったものの、長生きしてねだとか優しい気持ちになったり、とか。
めるとは圧倒的いい子で、ストレスフリー。ものの見方ひとつでここまで世界が変わるのかと、俺自身はめるとでいることを楽しんでいた。
「ふふっ」
徐々に、俺自身のアイデンティティがめるとに近づいているのがわかった。けれども侵食だとか汚染だとかではない、むしろ浄化と呼べる気さえする。
あたしはスカートを翻して、横断歩道を渡っていった。
「さて……っと」
電車も利用した俺は、早々に智久の住むアパート、部屋の前に到着する。まだ今朝の電話から折り返しはなく、まだ眠っていることが窺えた。
ひとまずはもう一回、電話。出てくれたら楽だけれど、起きていないだろうな。
一回、二回とコールが続いて、やっぱりだめか、そばのモールでお洋服でも見ていようかなと思ったところで受話された。
『……伸弥? どうした、こんな朝……いやもう昼だけど』
智久の声。名前もめると呼びではないので、やはり認識ナントカはきちんと無効になっている。
「んー……俺、女の子になったんだ」
『……は? どちら様?』
「なんて言えば通じるかな、なんかそういうアプリでめちゃくちゃかわいい女の子になったんだよ。それで、お前に自慢したくて、もう家の前まで来てるの!」
しばらく無言。しかしばたばたと部屋の中から聞こえて来たあと、がちゃりと玄関の扉が開いた。顔を出したのは、ぼさぼさの髪に目が開ききっていない智久。
「おはよ、智久! 俺だ俺」
「……なる、ほど? とりあえず上がれ」
「はーい、お邪魔しますっ!」
自分でも驚くほどに明るいあいさつ。不思議と智久もあっさり家にあげてくれた。
何も変わらない、ゲームやらプラモやらが散らかっている、一人暮らし男オタクらしい智久の部屋。俺はいつも座っているクッションを取って、お尻に敷いて座った。
自分の朝食も兼ねているのだろう、智久はブラックコーヒーを出してくれた。苦くて飲めなかったから、お砂糖のスティックを3本もらった。
ふう、と一息ついてから、智久が尋ねてくる。
「おはよう、智久。目、覚めたでしょ。それだけかわいいんだから」
「あのさ……まあ、いいけど。なにしたんだ、お前? なんかめると、って名前がチラついて仕方ないんだけど」
「おー、そうなるんだ。えっとね――」
俺は身を寄せ、スマホの画面を見せながら説明してみる。
現実改変アプリなる奇妙なアプリがきっかけであること、それで好みを最大限反映した女の子の姿になったこと、世界はもう俺をめるとという美少女になっていること、智久だけはその認識改変を外したこと。
「そういうことなのか……」
「納得した?」
「なんとか」
正直言って、そう簡単には信じられない話。俺だって全く関係ない悪い女が俺を名乗っていると思うに違いない。
けれども、智久は飲み込んでくれたようだった。
「で、どう?」
「なにが」
「かわいいでしょ、俺」
ここまででも、智久はあからさまに照れている。反則級にキュートな顔はもちろん、華奢な腕やストッキングに包まれた脚だって。何から何まで、智久を魅了している自信があった。
「かわいい」
「でしょー? 一番に見せに来たんだ、お前に」
「……電話もそれか?」
「そう。一緒にお出かけしよ! 今は俺が美少女だから、デートだよデート!」
片目を閉じて、難しい顔をする智久。ぽりぽりと頭をかいて、顔を背けた。
「つれないなー……嫌?」
「なんか、テンション高すぎて伸弥っぽくなくてな。性格も変わっているってのは頭でわかってんだけど。デートは行きたい」
「なんだ、素直じゃーん」
まさかまだ疑われているとかと怯えてしまったけれど、そんなことはないみたい。あたしがかわいすぎて、びっくりしているだけだった。
「ほら、お着替えしてお出かけしようよ~」
ともかく、決まったら智久を着替えさせて、家を出よう。朝ご飯……にはもう遅いから昼ご飯だけど、一緒に食べたい。
そう思って、俺は智久のシャツやハーフパンツもすぽーん! と脱がしてやる。すると当然ながら、智久はトランクス一丁になった。
ここまでは男としてやったこと。けれども、そんな男ならなんの問題もなく見られる半裸は、めるとにとってはかなり強烈だった。しかも朝一番――男の子のしるしが、大きくなっていた。
「あ、あの……ごめん、その……」
「はぁ……朝イチから女の子が来たら……なんか、こうなるだろ」
「え、あたしがかわいいから……?」
「あほ」
ため息をつく智久。
「ちょっとあっち行ってろ」
「……」
「聞いてるか?」
男の人のおちんちんって、あんなに大きくなるんだ。いや、俺は知っているはずなんだけど……あたしは、知らなかった。
すっかり身体が動かない。ちょっと、めるとのこの性格はやりにくいな、うん。
「ご、ごめんね」
俺は背中を向ける。スマホを取り出してアプリを起動し、『感じやすい』『美少女』『強引な男に惚れる』『乗せられやすい』などの設定一覧を流していき、影響の大きそうな設定をいじろうとしたけど、やっぱり変えられなかった。だって、めるとが自分好きすぎるから。
「……すまん」
「え……きゃっ♡」
気づけば真後ろに智久。俺の……あたしの肩を掴んで、向きを変えられた。その強い力に、あたしはきゅんきゅんとしてきちゃう。
「ど、どうしたの? 智久、変だよ?」
「もう我慢できない……お前が悪いんだからな」
「え……んっ♡」
俺は――あたしは、智久からキス、されちゃっていた。ツーサイドアップの髪を掴まれて、セーラー風ワンピースのスカートに体重をかけられて。
一気に、頭が茹だっていく。
――こんなの、あたしが知ってる智久じゃない。もっと奥手で慎重で、思いやりがあって……少なくとも、あたしが美少女になったからって、いきなり襲うような男の子じゃなかったはずなのに。
「……っぷ……唇、甘い……」
「! ば、ばか……なに言ってるの……♡」
いくら元男相手、友人相手だからって、いきなり唇を奪うなんてひどい。許しちゃいけない。そのはずなのに、あたしの胸はドキドキしっぱなし。これもちゃんと見ていなかったけど、そういう押しに弱い性格になっているのかも。
「……う、うう……」
「めると、好きだ」
「ふぇ!? あ、あたしがいくらかわいいからって……元男の子だよ!? だめだめ、だめだって……智久にはもっといい子が……」
嬉しい。嬉しすぎて、頭がどうにかなりそうだった。
ただの友達だと思っていた智久がこんな強引に迫ってきて、そのうえ好きだなんて言われたら……あたし、おかしくなっちゃう。
さすがにだめ。あたしもうめるとっていう女の子の気持ちになっているけど、元は……ええと、とにかく男の子。智久と、そういう関係になっちゃだめだって。
そうだ、アプリの方をいじっちゃえば。
あたしは智久の手が緩んだ隙をついて、スマホを拾って彼の設定を確かめる。
すると――智久の詳細欄を見て、目を疑う。関係は『恋人』になっているし、よく見ると『性経験:なし』になっている。
「え、うそっ! 智久、彼女がいて、セックスしたことあるって……あれ、嘘だったの!?」
「……すまん」
「ううん、怒ってるとかなじゃなく……」
どうしようもなく、嬉しい。智久の初めての相手があたしで、あたしの初めての相手も智久。そんなの、ロマンチックすぎる。
というか、恋人って。もうあたし、智久のものになってるんだ。告白もちゃんとされていないのに、お互い恋人同士のつもりで。
「……めると」
「あ……んっ♡」
智久は拙い手つきで、あたしの胸を触り始める。本当に下手くそ。赤ちゃんにでも揉ませてあげたほうがずっと上手なんじゃないかって思うくらい。
けれども、智久の手で、智久の体温が伝わってくる。それは男の子同士ならちょっと気持ち悪いくらいはずなのに、あたしはその事実だけですごく敏感になっていた。
しかも、智久だって馬鹿じゃないからなんとなく慣れてきて、すぐにあたしは溶かされていった。
「あんっ、んっ……もっと、もっと……♡」
あたしは自分から背を見せて、セーラー風ワンピースのファスナーを外してもらう。こんなことになるなんて思っていなかったけど、ちゃんとした下着でよかった。
錨やお船、浮き輪なんかがプリントされた青いブラとショーツ。セーラー風ワンピに合わせてみたもので、好きなやつなんだけどもう智久には関係ないみたい。すぐ剥ぎ取られて、ストッキングも脱がされた。
「あ……っ」
もうあたしのあそこはどろどろ。初めてだっていうのに、智久は指で確かめてくれた。
「んっ」
「……もう、いいか」
いつの間にか智久もトランクスを脱いでいて、すっかり固くなったおちんちんを丸出しにしていた。男の子の匂いがして、あたしの脳みそはくらくらとしてくる。
――ふと、男の人格が鮮明に蘇ってくる。本当に智久とするのか? 俺が? いや、でもそのくらいは……加味したよなあ、朝誰に声をかけるかの取捨選択の時点で。
それに男に戻ったり、設定を変えたら……この世界が輝いて見えるときめきも、燃えるような身体もナシ。それは絶対に嫌だった。
いいか――もう。あたしはめると、智久の彼女。何一つ悪いことなんて、ない。
「……うん、いいよ」
「ゴム……ちょっと待ってて」
「あはは、持ってたんだ。けどいいよ、そんなの」
あたしは背中から智久にくっついて、おっぱいを宛ててあげる。
「もうちょっと自分を大事にしろよ……」
「うー……そういうこと言ってくれるから、したくなっちゃうの!」
今度はあたしがもう我慢できない。智久の前に回って、床に押し倒しちゃった。またがって入れてもらおうと思ったけど、あたしが本気だってわかると、智久の方から抱き締めてくれた。
寝かせられて、正常位の体勢にされる。すぐかな、と思ったら、智久はあたしの裸をじっと見つめていた。
「……あんまり、見ないでね。恥ずかしいから……」
「綺麗だ」
「そ、それは決まってるでしょ。あたしはどこも綺麗なんだから」
――そうだ、めるとが綺麗なのは心も。だから、こんなにドキドキして、こんなに純粋に嬉しいんだ。
「……しよ」
「ああ……」
そう言って――智久のおちんちんが、あたしに入ってきた。ぶちって中が壊れたのは分かったし、あそこ自体も狭くてとっても痛かったけど、気持ちよさそうな智久の顔を見たら痛みなんて吹っ飛んじゃう。
それに繋がっているところも。すごくえっちで、生々しくて、めるとは失神してしまいそうなほど怖いのに、ずっと見ていたい。智久とあたしが一つになっている、証だから。
初めてのあたしたちには、すこしの時間で十分。智久のおちんちんがびくびくってして、あたしのあそこもじんじんしてきた。
「めると……っ!」
「うんっ♡ いいよ……っ♡ いっぱいちょうだいっ♡」
智久の動きが早まって、あたしも目の前が白くなっていって――
「あぁあんっ♡ あああああっ♡ ともひさぁあっ♡♡♡」
「めると、出る……っ!」
イっちゃった。智久のおちんちんが大爆発して、ぴゅっぴゅってたくさんの精子がやってくる。あたしも全身がぎゅってなって、幸せで一杯。溢れたぶんが、おまたの穴から出てきちゃうみたいだった。
「……はぁ……はぁ……っふ」
「んぁ♡」
少ししてから、智久がおちんちんを抜いた。どろっと白い液体が出てきて、床を汚す。
智久は真剣な顔で、頭を下げてきた。
「……すまん」
「なんで謝るの。あたしがしてって、言ったんだから。それより」
あたしはアプリの画面を見せる。
「ほら、智久……性経験一人、一回ってなったね。おめでとう。あたしとの関係も、恋人だよ? そんなこと言って、あたしにメロメロだったんじゃない」
「それは……」
「ふふ……でも仕方ないよね、世界一かわいいあたしとえっち出来たんだから」
「……はぁ。とんだ彼女ができたもんだ」
なんて言いつつ、智久はうれしそう。あたしの頭を撫でてくれた。
そんなことを話しているうちに、画面がロックされる。もうちょっとアプリをいじろうと思ったら、画面はホームに戻っていた。
「……あれ?」
何を、しようとしたんだっけ。なにかをしようとしたことは覚えているんだけど、それがわからない。壁紙ではあたしの顔が笑っている。世界一かわいい。
「……まあいっか」
「どうした?」
「なんでも。ほら智久、お出かけするよ! って思ったけど、シャワー浴びてまたメイクするのやだからぁ……今日はずっと、しない?」
首を抑える智久。面白い。
「するの。折角初めてしたんだから、いいでしょ」
「わかったわかった」
それからあたしたちは、ずっとした。
あたしはなにか忘れているような気がしたけど、忘れたままでいい気もする。
でもいいよね。あたしが世界一かわいくて、世界一幸せな女の子、なんだから。