支援者限定のやつです。
過去の『人生リセットツアー』の設定に近いです。人を減らし集団ものとしての趣を失くした変わり、深い関係かつ描写にしました。
なお妻娘姪が乗っ取られることとなりますが夫はなんも知りません。
以下、本編をお楽しみください。
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小鳥がさえずり、曙光が世界を塗りつぶす朝、とある一軒家。
ダブルサイズのベッドの中、その女性は目を覚ました。といっても瞼は開ききっておらず、すぐに動き出しもしない。しばらく天井を眺めた後、がばりと起き上がった。
垂れてきた前髪に驚き、羽虫でもかわすかのように首を引っ込めたが、当然髪は追随していった。その事実に気がついたのか、髪をかきわけてみるも最後は諦めぐしゃぐしゃっといたわりのない手付きで払った。
女性の視線は自身の身体に移る。白いシルクのパジャマはなめらかな肌触りで、寝相もよいのだろうきちんと着込んでいた。しかし彼女の興味が向いているのは、女性の乳房。とても大きく、パジャマをこんもりと押し上げていた。
「……お、おっぱいだ」
ナイトブラ越しに数度、探るようにタッチする。大きな胸は面白いほどに揺れた。やがては両手で勢いよく掴んで、むにむにと揉みしだく。
「すごーい……」
手を止めた女性は、部屋を見回す。
ナチュラルな木目調の家具類、テレビにドレッサー。ダブルベッドは大キック、ひとつ枕が余っていた。
「へー……あ」
女性は部屋の隅、姿見に注目する。
映し出されている女性は30代前半ほど、とても優しげで控えめながら整った顔立ち。茶髪のショートボブで、素晴らしいプロポーションをした美女だった。
「すご……大人の女の人だ! 背も高いし……おっぱいもあって、おちんちんがないや」
女性の表情は緩んでいき、破顔し叫ぶ。低く落ち着いた声は包容力を示し、妖艶なスタイルと美しい顔は大人の女性と呼ぶに相応しかった。しかしベッドから飛び降りる姿は優雅さを欠いており、雰囲気にそぐわない。興奮具合もまた、どこか幼稚で無邪気な言葉遣いだった。
「……本当にママみたい……ママ」
しかし、徐々に女性の顔は曇っていき、今にも泣きそうになる。目の端、すこしだけ浮かんだ涙を拭った。
「ううん。泣かないよ……もう僕が、ママだもん」
ぐっと拳を握りしめ、自分に言い聞かせる。その物言いは随分と奇妙だったが、部屋には一人きりで、指摘する人間はいない。
「まずはリビングに行かなきゃないんだっけ」
元気を取り戻した女性は扉に手をかけたが、何かを見つけて後退りする。それは出しっぱなしになっていた財布。女性は中から免許証を探し出した。
「神田《かんだ》 瑠璃《るり》……あ、すごい。漢字も読める! これが記憶が読めてるってことなのかなぁ……なんだか、難しい言葉も分かる気がするし。それに……33歳か。ママより年上なんだぁ」
それから女性の――瑠璃の視線は姿見に戻る。眼差しは全て自身の肢体を捉え、満遍なく視姦していく。もう一度胸を揉み、太ももを撫でて、豊かなお尻もさする。
「すごーい……大人の女の人だぁ。背も高いし……」
瑠璃は歩くのですら楽しそうに、寝室を後にしたのだった。
――時を同じくして、同じ家の別室。
白にピンクの差し色が入った家具たち、学習机の上に放置された学校の教科書、ラベンダー色のランドセルにぬいぐるみ。そこは子供部屋だった。
部屋の主は、ファンシーな動物柄の寝具にくるまれて眠っていた。その穏やかで無垢な寝顔は、まさに天使のように可愛らしい少女だった。
しかし数秒前の、女性の声や足音に起こされてしまった。
「……ん~……」
声変わりもしていない、鈴が鳴るような声。手足でもぞもぞと掛け布団をかき混ぜてから、少女は身を起こした。
「……ああ、そっか」
部屋を見渡し、長くきめ細やかな髪に手櫛をして、小さなてのひらを見つめる。鏡の前に踊り出ると、嬉しそうに笑った。
「可愛い子だ……」
先程の瑠璃のように、飛び跳ねたり嬌声をあげたりはしない。しかし平たい身体の中、心臓の鼓動はとくとくと加速して顔も赤くなっていく。
「俺が……こんなちっちゃな……女の子に……!」
少女の目は潤んでいき、ほろりと一滴の涙を流す。静かに自分の身体を抱きしめて、膝を折った。
何分間そうしていただろうか、少女は立ち上がった。改めて部屋を探り、机の教科書を取る。
「かんだ さんご……さんごちゃん。これから俺がさんごちゃんなんだ……! それに一年生、俺、去年までスモック着てたんだ……はは、アラフォーのおっさんだったのに」
少女ははそう呟いた後、ランドセルをぽんぽんと叩く。表面の革にはひび割れも傷もない、真新しいランドセルだった。中にはラメ入りのペンケースや教科書、他にも緊急連絡先などもある。それによると、少女の名前はやはり珊瑚《さんご》のようだった
「母さんはどんな人なんだろうな。姉……っていうか従姉妹も同居してるんだっけ」
少女は――珊瑚は部屋を後にする。うさぎのスリッパをぺたぺたと鳴らし、慎重に階段を降りていくのだった。
またその頃、別な部屋。
壁には高校の校章が入ったセーラー服や、ハイティーン向けのブランドのワンピースなど。部屋全体は若干散らかり気味で、筋トレ用具が床の片隅に寄せられ、テーブルの上はコスメで埋め尽くされていた。しかしチェストの上だけは聖域のように片付いていた。中央にある写真立てには、テーマパークのシンボルとなっているお城をバックに、セーラー服姿で肩を組む二人の少女。
部屋の主は、おしゃれを楽しみ青春を謳歌する、ごく普通の女子高生であるらしいことが窺えた。
もっとも今は、ベッドの上で眠っている。白いTシャツに丈の短いショートパンツだけで、空色のスポーツブラやショーツがちらちらと覗いている。前髪をポンパドールにしていて、幸せそうな寝顔も良く見えた。
しかしそんな活動的な要素と相反するように、寝相はとてもいい。
「んー……」
寝返りをうって、呻く。枕元のスマートフォンは電池が切れていた。
◆◆◆◆◆
まだ眠っている家族の存在に気付かず、リビングに脚を踏み入れた珊瑚。そこではパジャマ姿の大人の女性、瑠璃が自分の胸をおもちゃのように揉みながら、テレビで朝のニュース番組を見ていた。
扉を開けた物音で、ソファに座っていた瑠璃も振り返った。ばっちりと目があって、一瞬の沈黙が流れる。口火を切ったのは、瑠璃の方だった。
「おはよ! 君が僕の子どもかな?」
「多分な。あんたは母親か……俺は珊瑚っていうらしい。これから一生付き合うんだ、仲良くいこうぜ」
「うん! 僕はね、瑠璃さんっていうみたい」
極めて明るい調子で瑠璃は挨拶をして、珊瑚も返事をする。二人の顔立ちはよく似通っており、母娘ないしは血縁関係であることに疑いはない。それなのに、珊瑚は自分の名前を把握しておらず、母親らしい瑠璃は娘の顔も名前も知らない。不思議な会話だった。
珊瑚は勢いよくソファに座る。しかし先客である瑠璃からは離れている。二人とも横柄な脚癖で、特に瑠璃の方は長い脚を持て余していた。
それから言葉を交わすことなく数分。家のチャイムが鳴った。
「お、きたきた」
珊瑚は裸足のまま玄関へと向かい、鍵を開け家に上げる。訪ねてきたのは10代前半ほどの少女で、なんとも野暮ったい容姿と三つ編み、そしてぽっちゃりというにも憚られる体型をジャンパースカートに詰め込んでいた。しかし顔には営業スマイルを貼り付けており、愛嬌はなくもない。
三つ編み少女はリュックを下ろし、ソファに浅く座る。やや脚も開いており、やはりどこかビジネスマンのような所作がにじみ出ていた。
「おはようございます。あれ……確か当ツアーの対象者は三名なのですが……まだ一名、起きられていないようですね」
「おはようございます。それ、父親とか?」
「いえ。父親は夜帰りですので……ああ、従姉妹の女の子ですね」
手元のタブレットを操作した三つ編み少女。そこには三つの名前が並んでいた。
「わかった。探してくる」
「お願いしますね」
その役を引き受けたのは、娘の珊瑚だった。
「広い家だ……あれ、俺が小さくなったからか? でも部屋も多いし……」
小さな歩幅で家を歩きながら呟く珊瑚。ドアノブが目線の位置にあり、大人のように軽く手を出すのではなく腕全体を持ち上げなければ届かなかった。
「ここだな」
目星はついていた。自分の部屋の隣。珊瑚は一応ノックをしたが返事はなく、仕方なくがちゃりと扉を開いて入っていった。
「失礼します……あ、寝てるし」
案の定、部屋の中には女子高生の姿があった。もちろん、眠ったまま。
「……そっか」
小さな珊瑚からでは瑠璃が巨人に見えたし、それは女子高生に対してもそう変わらない。さらに筋トレ道具から、それなりに運動をしていることが窺える。
寝起きが悪い人間で、不機嫌なまま引っ叩かれたら抵抗できない。珊瑚は今更になって少し怖気づいたが、仕方なく女子高生のそばへ近づいていった。
「おーい、朝だぞ」
「んー……」
珊瑚が女子高生の身体をゆすると、反応はある。だが、タオルケットを引っ張って丸まってしまった。
「……朝だ、起きろー! サービス参加者だろ!」
「んー……? サービス……あ、あ!」
そのワードがトリガーとなり、女子高生は一気に覚醒した。ばっ、と跳ね起きて、自分の身体を見下ろす。
やや控えめな胸をさすり、ショートパンツの中に手を入れ、確かめるように何度か声を出す。女子高生は起こしてくれた珊瑚そっちのけで、自分の身体をまさぐった。その顔は歓喜に満ちあふれており、特にすっきりとしたお腹を何度も何度も撫で回した。
「本当だ。女の子になってる……! それに細い、前みたいなデブじゃない!」
「お楽しみのとこ悪いけど、もう担当者来てるんだ。後にしようぜ」
「あ、はい……ごめんなさい」
「でもまあしょうがねえよな」
反省の色を見せる女子高生に、珊瑚は咎める風でもなく同調した。その手は、股間に伸びていた。
やがて二人がリビングに降りていく。瑠璃は相変わらずむっちりとした身体をまさぐっており、三つ編み少女は苦笑いしっぱなしだった。
女子高生もソファに座ると、ごほんと三つ編み少女は咳払いをした。
「お集まりのようですね。でははじめに、弊社の『人生リセットサービス』をご利用頂き、誠にありがとうございます。これまでの人生を捨て新たなる人生を歩み始めるお二人へ、心よりの祝福を申し上げます――」
それから――三つ編み少女は淀みのない喋りと声、そして取り出したタブレットも見せながら、説明をした。
曰く、ここは神田家。瑠璃が33歳にして珊瑚の母親で、瑠璃は7歳の娘。父親は大企業に勤めており、昨日きょうと出張で帰宅は夜。ツアー参加者ではないので注意すること。
そして遅れて起きた女子高生は、瑠璃の姪にあたる翡翠《ひすい》という17歳の少女。数ヶ月前に両親が1年間海外赴任することとなったものの、半端に日本を離れるのが嫌ということで神田家にて預かっている。伯母夫婦との関係は極めて良好、珊瑚とは特に仲良し。
容れられた肉体は、各自事前の要望通り。『魂』が定着しており、以降の行動は全て自己責任となる。意図的に他の参加者を妨害するような行為は厳禁で、サービスから強制中断もありえる。
今回は全員が家族ないしは血縁者であるため、こと無関係である父親に勘付かれないよう注意すること。一度だけならアフターサービスとして、周囲の人間が抱いた違和感や不審を無くする処置もできるが過信は禁物。
肉体の記憶が読めるようになるのは少々時間がかかり、個人差があるものの、おおむね12時間以内には読めるようになる。性的快楽や性的快感で促進を図ることはできるものの、女性の快楽が強すぎて本来の自分を完全に見失うケースもあるため、あまり推奨はできない。
――三つ編み少女の説明をかいつまむと、そのような内容だった。全員が真剣に耳を傾けており、話はつつがなく区切られる。
「さて……以上ですが、何か質問は?」
三つ編み少女の声に、手を上げたのは幼い娘である珊瑚だった。
「サービスとは関係ないんだけどいい? あなたはその身体で生きてる、サービスの担当者ってこと?」
「いいえ、たまたま近くに住むサービス適合者の身体ですね。もっともですね、社長令嬢でありいい暮らしなのは間違いないのですが……この外見ですし、貰い手がまったくおらず。もっぱら、ここら一帯の高級住宅街でのサービス利用者様への説明用に都度利用している、という形です」
三つ編み少女はふくよかすぎる身体を撫で、しかし商品としか見ていないような口調で告げた。
「太ってるのって男なら多少役立つ時もあったけど、デブってだけで……いじめられたし、女の子でデブは、もっと嫌だなぁ……」
そう言ったのは、すっきりとした体型の女子高生である翡翠。長くすらりとした手脚と細いウエストを愛おしそうに撫でながら、台詞に実感を込める。
「さておいて、他にご質問等は? なければ私は失礼させて頂きますが」
瑠璃、翡翠、珊瑚の三人は顔を見合わせ、首を振る。それを見て、三つ編み少女は満足げにうなずいた。
「かしこまりました。では最後に、先程も少し触れましたが、この肉体も間借りしているのみなので、明日以降は元の人物です。何か話しかけられてもお答えできませんので、ご留意下さい。では――新しい人生を、お楽しみください」
三つ編み少女は立ち上がり、ぺこりとお辞儀をする。つられて三人も頭を下げたが、身体に慣れていないのか全体的にぎこちなかった。
「では、失礼いたします」
そう言って、にこやかな顔で三つ編みの少女は神田家を後にした。見送ってから、三人はリビングに戻ってくる。
数秒、誰も喋らない。三人が改めて、自分がどうなったかを自覚したかのようだった。
静寂を破ったのは、最も幼い珊瑚だった。
「じゃ、しばらくは自由時間だな。俺はロリっ子の身体を色々と確かめたいところだが……瑠璃さん、昼飯は作れる? 中身子どもみたいだが」
「ちょ、ちょっと珊瑚ちゃん。元の人生については……せ、極力詮索しないって」
慌てて止めに入る翡翠。やはり活動的で元気そうな容姿に似合わず、はっきりとしない喋りで目線も合わせていなかった。
「記憶が戻るまでの間には必要なやり取りの範囲だろ。俺はこの身長だし火を使うのも危ないから、何なら翡翠ちゃんが作ってもいいぜ」
「そ、それは……できるかな……」
「わあ、喧嘩しないで。僕がなんとかするよ、記憶も多少読めてきたし」
険悪というほどでもないが、意見が向かい合った二人をなだめる瑠璃。口調はさておいて、母親らしい振る舞いではあった。
「お。じゃあ頼むよ。まあなんかあったら、娘らしくお手伝いしてやるからさ」
「……お、俺も……居候みたいだし、言ってね」
「うん、任せてよ」
どん、と胸を張って見せる瑠璃。大きな胸が揺れた。
「さて……じゃああといいか? 記憶戻ってないし、外には出ないように。飯もなかったら、最悪ピザかなんかとろうぜ」
「あ、それなら俺、ピザが、いいな……」
「んじゃあそうするか。じゃあ解散しよう」
珊瑚と翡翠は、意味深に自分の身体に触れる。しかし瑠璃だけは、いまいち理解していないようだった。なぜかそれぞれ別れることになっているのが不満のようで、口を曲げる。
「……みんな、自分の身体って……そんな、なにかしたいの? みんなで遊ぼうよー」
「……ほら、さっきの人も言ってたろ。エロいことすると記憶早く読めるようになるって。まあやりすぎるなとは言ってたけど」
「そうなの?」
「あー……えっとな。んー……要はお前にもおっぱいあったりおちんちんんなかったり、男の子とは身体が違うだろ? 記憶が戻ればいいとはいえ、色々どうなっているか知りたくないか? 裸になってみんなでやるのは恥ずかしいから自分の部屋でやろう、ってこと。女の身体の仕組みとかを知れば、もっと早く記憶が読めるようになるっていうのもあるしな」
「あー、確かにね。わかった! ありがとう珊瑚ちゃん」
まるで子どもに説明するかのように、噛み砕いて説明する珊瑚。母親の瑠璃と娘の珊瑚で、立場がまるで逆転していた。
「ま、わかったならいいんだ」
「じゃあ僕、おトイレ行ってくるね」
「っておい……ま、いいか」
理解したのかは怪しいが、瑠璃は元気よく頷くとリビングを出ていった。珊瑚はあの様子できちんと排泄ができるか不安だったが、そこまで世話する必要もないかと気にしないことにした。
翡翠は、ふうとため息をつく珊瑚を見下ろした。
「なんか……手慣れて、ますね。珊瑚さん。ありがとうございます」
「前は子どもも居たからな。我慢できずにちょっと手出したらすぐ離婚になって、嫁についていってそれっきりだったけど」
言葉使いが若干悪いものの、面倒見はよい珊瑚。兄貴分のようだった。それが何を示しているのか想像した翡翠は素直にねぎらったのが、続いた台詞に仰天する。
「そういうことなんですね。その……小学生の女の子にしたのも」
「だな。お前は……デブだったってとこか」
「……ええ、まあ……」
「良かったじゃん、お互い」
翡翠の固い腹筋をバシバシと叩く珊瑚。その小さな紅葉のような手では、翡翠の鍛えられた身体はびくともしていなかった。
「瑠璃さんはなんだろうな。まあ後で聞いてみるか」
「で、ですね……」
過去について触れたことをさっきは咎めた翡翠も、珊瑚の話を聞き興味は湧いてしまった。消極的に肯定しておく。
「さて……と。俺はまあ大したことできないと思うけど、オナニーでもするかな……」
そう言って珊瑚もリビングを出ていく。ひとり取り残された翡翠は、自分の身体を見下ろし、静かに笑うのだった。
◆◆◆◆◆
「ふうー……っと。おしっこおしっこ」
一階を少し歩き回ってから、瑠璃はトイレを発見した。中はローズの香りに満ちていて臭いはなく、便器もぴかぴか。掃除がよく行き届いていた。
「へー……すごいや」
普段自分で掃除をしているにも関わらず、瑠璃は初めて見たかのように褒める。棚の扉も開けて、清掃用具すらも綺麗なことに感心した。
「へっへー……じゃあ、おしっこしようかな……あ、おちんちんないんだった」
立ったまま白いパジャマのズボンをショーツごと下ろし、そこで気づいたように呟く。丸出しになった下半身、股間を手探りで触っても、当たり前ながら竿や玉はなく、もさもさとした陰毛しかなかった。
「……んー……おっぱいも邪魔だなぁ」
瑠璃はさらに股間を見下ろす。もう二十年以上付き添ってきたはずの大きな胸に、今更愚痴をこぼした。取ろうとでも思ったのか、何度かぐにぐにと揉みしだく。
「でもママもこうだったのかな。大変だったんだ……あ、えっと……おしっこ、どうするんだろ」
何度か足踏みをして、股間を突き出して、しかし最終的には思い出したように便座へ座る。それからさらに数秒、ぽちゃぽちゃと水音がし始めた。
「……ふぅ……おしっこ、出せたぁ」
一気に瑠璃の顔はほころぶ。瑠璃の股間から放たれた小便は、一人の娘を産んだおまんこの形状や陰毛にひっかかり、便器の中で不規則な軌道を描く。当人に我慢していたつもりはなかったが、朝一番だからか量も溜まっており、排泄は何十秒にも続いた。
「見えないなぁ、やっぱり」
瑠璃は興味本位で自分の小便が出ているところを覗き込もうとしたが、やはり大きな胸で遮られていた。むっちりとした肢体も柔軟とは言い難く、身体を折ろうとしてもすぐに限界が訪れる。
「……っふぅ……気持ちよかったな、なんだか」
やや語彙少なめの幼稚な台詞を、吐息がかった艶な声に乗せる瑠璃。ぽたぽたとしずくを垂らしながら、言い知れない心地よさに浸っていた。
やがてぶるりと体を震わせた瑠璃は、足元のショーツに手を伸ばす。
「女の人の……けど、ずっとこれなんだよね、ぼくのパンツ」
薔薇の意匠のレースが張り巡らされ、一児の母としては少々派手といえるエメラルドグリーンのショーツ。瑠璃はそれを引っ張りながらまじまじと眺め、気恥ずかしそうにしていた。
「ちっちゃいし、おまたもぴったりだし……うわ、お毛々付いてる……」
ショーツを手の中でこねくり回していた瑠璃は、クロッチを見て顔をしかめた。縮れた陰毛が数本、それに白っぽいカスがこびりついていて、黄色いシミもある。真ん中も丸く濡れていた。
一晩瑠璃が穿いていたもので、局部に直接触れっぱなしの布。分泌された液体やら何やらが着いていて然るべきなのだが、瑠璃は嫌がっていた。
臭いを嗅いで、さらに顔を遠ざける。
「うー……まあ、しょうがない、んだよね」
忌避感があったようだが、瑠璃は観念しショーツに脚を通し――小便をして濡れたままの股間に、ぴったりと張り付いた。ズボンも穿き直して、瑠璃は水を流した。
ぱたん、とトイレを出る瑠璃。その顔は、ほんのりと赤く染まっていた。
洗面所に行った瑠璃は、鏡に移る自分の姿を見つめる。大きな胸に肉感的な身体、それに美しい容姿。
(……このお姉さんが、ぼくで……あんな、おパンツ……)
瑠璃はパジャマの上から股間を撫でる。眼差しは他人を見るようで、こんな美女の恥ずかしいところを自分は知っている……とでもいうような優越感を帯びていた。
手を洗った瑠璃は、ふらふらと自分の、夫婦の寝室に戻っていく。その途中、娘である珊瑚とすれ違った。
珊瑚は白いシルクのスリップに女児用ショーツのみという下着姿で、まっすぐトイレへと向かっていく。
「あ、珊瑚ちゃん。お洋服は?」
「別にいいだろ。着替えてたんだよ」
そう言って、珊瑚はトイレに入っていった。すぐに『うおー!』だの『すげー、ロリのおしっこシーン……!』などと聞こえてくる。その声を背に、瑠璃は寝室に戻ったのだった。
(なんか……具合、悪いような)
一息ついた瑠璃を襲ったのは、正体不明の身体の感覚。すべてを否定する不快さではないものの、瑠璃は落ち着かない。仕方なくベッドに飛び込むと、瑠璃の鼻腔いっぱいに男の臭いが殺到してきて――
「……あ」
身体の芯が熱くなり、切ないような、うずうずする感覚。その訪れとともに――瑠璃の脳内に、鮮明な映像が何万倍速で再生された。
「……そっか。これが……記憶、ってことなのね」
瑠璃は身体に手を伸ばす。その表情から先程までの無邪気さが鳴りを潜め、外見相応、実年齢相応の妖艶さを取り戻していった。
「私、だものね」
それから瑠璃は――慣れた手付きで、パジャマから着替えていくのだった。
◆◆◆◆◆
「珊瑚ちゃん、俺の娘より可愛いな」
その頃、子供部屋に戻った珊瑚はパジャマから着替えていた。着ていたのは、黒いワンピースに白いボレロ。上品かつ清楚で、ハート柄が縫い目に浮かぶ白いタイツまで穿いていれば、これから結婚式や卒業式にでも行くかのような格好だった。
長い髪もツーサイドアップに結い上げていて、まさに純真無垢な天使。とても可愛らしい、どこに出しても恥ずかしくない幼い少女だった。
「んー……でもこれが成長していくだけって考えると、もったいないなぁ……赤ん坊も選べたけど、親の容姿見たところでギャンブルだし」
それでいて、自分の洋服を試しているような幼気ではなかった。鏡に映る自分の虚像に鼻の下を伸ばし、いやらしい手つきで体中をまさぐる。まだ成長途上である腕も脚もぷにぷにすべすべ、普段は大人しい性格だったので擦り傷やあざもない。
珊瑚は調子に乗って、自らワンピースの裾を中のスリップごとたくし上げる。タイツが覆っているのは、白地のうさぎ柄フロントプリントという特に幼い女の子しか穿かないようなデザインと形状のショーツ。お尻のほうにはレースフリルも縫い付けられており、セクシーさや色欲などとは絶対に無縁な代物だった。
しかし珊瑚は下卑た目で眺め、嬉しそうに下腹部やおしりを撫でる。指を立ててゆっくりと這わせてみたり、タイツの両側を引っ張って食い込ませ、ぷっくりとした股間を浮かび上がらせてみたりと好き放題。無知や無邪気という免罪符が通用しない、いやらしい仕草だった。
「あー……ふひゃっ! くすぐった……っふ、ふはひゃはっ!」
ぶつぶつと独り言を続けていた珊瑚は、自身をくすぐって笑い声を上げる。当然誰かに聞かせるつもりはない。自分の舌足らずで声変わりのしていない声に、珊瑚自身が酔いしれていた。
「んうー……ちょっと、気持ちいい、のか……ふっ」
やがて珊瑚は、指で股間のど真ん中――おまんこのあたりをタイツとショーツ越しに触り始める。くるくると円を描いて、ぐにぐにと押し込んでみるなど、自慰と何ら変わりない動作だった。
「……」
少しだけ、とろんとした目になる珊瑚。口数も少なくなっていき、ついには押し黙った。
そのまま無言で座り込み、乱暴にタイツとショーツを脱ぎ去ってしまう。
珊瑚は鏡の前、脚をM字に開いた。明かされたのは、真っ平らな肌に切れ目を入れただけのような一本のすじでしかない股間。珊瑚が片側を引っ張ると少しだけピンク色の粘膜が覗くが、それもほんの僅か。不純物や汚れ、穢れもない女性器だった。
「……はぁ……はぁ……」
息を切らし、のぼせる珊瑚。食い入るように己の股間を観察していて、喋るのも忘れているようだった。
「何か……カメラ……あ? これ……珊瑚ちゃんの記憶、だな」
珊瑚はいきなり、立ち上がった。学習机の引き出し、上から三番目を迷うことなく開けて、中に入っていたスマートフォンを取り出す。それは母親である瑠璃のお下がりで与えられた本物のスマホであり、インターネットには接続せず使われている珊瑚のおもちゃだった。
「へえ、こんな感じなんだぁ」
にやりと笑って、珊瑚はカメラを起動する。そこからは、イメージビデオに類するような光景だった。
小学校の制服、幼稚園の時に着ていたスモック、ただ可愛らしい私服に、ピンク色をした水着と、プリント柄の下着姿まで。珊瑚はひたすらに着替えるシーンでもカメラを回し続け、時にはおまんこをギリギリまで接写し、すべてを映像として記録していった。
その間も、何度かオナニーを試みようとしたのか直接股間や乳首をいじったり、よだれを垂らして潤滑剤としていたもののいずれもうまくいかず、結局は着替えと撮影に終止することとなった。
「ふぅ……後で母さんにSDカードとか、記録媒体もらってとっとかなきゃなぁ……オンラインはアレだし――」
その時、隣の部屋――珊瑚からみて従姉妹である翡翠の部屋から、つんざく声がした。驚いて手を止めた珊瑚は、耳をそばだてる。
「――っ、ぁっ、あぁあっ!」
「……なんだ。オナニーしてんのか」
その声は苦しさを孕みながらも、艷やかさに満ちている。珊瑚はふうと鼻から息を吐いて、ぽっこりしたお腹とまっ平らな胸を撫ぜた。
「ま、この身体だからな。ゆっくりでいいさ」
◆◆◆◆◆
「あっ……あぁっ……」
珊瑚の隣の部屋、翡翠は床の上でのたうっていた。
パジャマや下着を下敷きにして一糸まとわぬ姿、全身に汗が浮かびおまんこ周りをどろどろとした液体で汚し、さらには顔も真っ赤だとなると、彼女が何をしていたかは明白だろう。
「はぁ……はぁ……すご」
しかしまだ絶頂はしていない。もう少し、というところで手を止めたらしかった。
翡翠は指をしゃぶり、まとわりついていた液体を味わう。自身の分泌液とはいえ――その躊躇や忌避感は感じさせなかった。
「……ふう」
呼吸を整えた翡翠は、ぴょんと軽やかに立ち上がった。額から滴った汗が顎までたどり、控えめな胸に垂れて引き締まった腹筋にまで流れていった。
「すごい、女の子……っていうか、翡翠ちゃんの、身体……」
ぐ、と握りこぶしを作った翡翠は、恍惚そのものの表情で呟く。特別腕や脚が太く見えるということもないのだが、30歳を越え運動不足で脂肪の多い瑠璃の腕や、まだ子どもで発達していない珊瑚、そして同年代の少女らに比べ筋肉の形がくっきりとしていた。
やや肌が白いのは、彼女が日々励んでいるのは屋内競技であるボルダリングのため。それ以外でも基本的にジムで運動しているとなれば、陽に焼ける機会はほとんどなかった。
他の点については健康体そのもの、利発そうなショートヘアも相まって着飾らなくてもエネルギッシュな印象が漂う女子高生の姿だった。
「可愛い、し……早く、心まで翡翠ちゃんになりたいなぁ……」
翡翠になりたい、と一見意味不明なことを呟く。そわそわとする手や足元から冗談の意図は一切なく、期待と希望そのものに目が輝いていた。
「……だとしたら、やっぱり、オナニー、だよね」
自分の身体をぺたぺたと触る翡翠。先程までも自慰に耽り堪能していたのは事実だったが、到達点に至る途中で引き返していた。何にためらい、何を恐れていたのかは定かではないものの、今の翡翠の瞳には先程なかった決心と覚悟が宿っていた。
「うん……どうせ、覚えててもいいことないし……んっ、ふぅ……っ」
翡翠は再び、自らの身体を愛撫し始める。控えめな胸にはぴんと乳首が勃っていて、コリコリと転がして快感を得ていた。全身はぴくんぴくんと小刻みに跳ねて、その快楽の強さもさることながら、翡翠の身軽さを物語るようでもあった。
「んっ……っふ、きぅ……っ」
友人とおしゃべりをしたり、時にはボルダリング中に勢い付けるための喉から、ふにゃふにゃにとろけた声が漏れ出す。普段の元気さと運動に対するストイックさ、あるいは普通の少女としての一面を知る男なら、声のギャップに一発で恋に落ちてしまうだろう。
それだけ今の翡翠は弱々しく甘い声を出し、セクシャルなのに儚いオーラを纏いながら自分を慰めていた。
「っ……ぅ、ふ、処女、なのかな……」
お尻に敷いていたスポーツタイプのショーツにまたも愛液を染み込ませた翡翠は、姿見に近づいて股間をくぱあとばかりに開く。
翡翠のおまんこは淡い陰毛に覆われているものの、膣の方はとても綺麗なものだった。花びらにも喩えられる小陰唇はまだ蕾と言えるし、色もサーモンピンクを保っている。
「んっ……きつい……ぁっ、ふぁっ……」
自分の性経験を知らないのは奇妙な話なのだが、翡翠は指をずぶずぶと挿入していく。ひっかかるものはなく、突き立てた中指を根本までくわえ込んだ。
一瞬険しい顔になった翡翠だったが、すぐに喜色に染まった。
「そっか……彼氏居るんだ……っ、リョウジくん……あ、あんなに……かっこいい……っ!」
何か思い出したかのように、いきなり恋人の名前を呼ぶ翡翠。一気に手が早くなり、ぐしゅぐしゅと膣の中をかき混ぜ始めた。
「あっ、ダメ……だ、っ、あたし、翡翠……翡翠……っ! 翡翠ちゃんなんだ……ぁっ――あぁっ!」
そして、最後には自分の名を確かめながら絶頂する。
全身がおおげさに上下して、腰も浮かび上がる。膣は蠕動して、自分の指を舐め回すようにうねった。
がくり、と倒れ込んだ翡翠。若干の疲労の中、満面の笑みを浮かべた後自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
「あたし、翡翠になっちゃった。すっごく、嬉しい……こうなんだ!」
オーガズムの余韻も冷めていないのに、飛び起きた翡翠。両足で床を踏みしめ鏡にピースサインを決めるその姿は、完全にいつも通りの翡翠だった。
「よし……じゃあ、珊瑚ちゃんとかおばさんには言っとこ。先……おばさんかな?」
静かになった部屋、隣の珊瑚の部屋は先程まで黄色い声がしていたものの静かになっている。
反面、家の中のどこか遠くからは、かすかに艶やかな声が聞こえてきていた。
翡翠は脱ぎ捨てていたスポーツブラやショーツを拾って身につけ、運動用のハーフパンツとTシャツをチェストから引っ張り出して着込んでいった。ごく自然な、日常通りの一連の動作だった。
◆◆◆◆◆
「あ、珊瑚ちゃん!」
「おう」
廊下に出た翡翠は、パステルカラーのキャラTシャツとスカート、サイハイソックスを履いた珊瑚と鉢合わせた。翡翠はにこにこと笑って駆け寄っていき、屈んで珊瑚のもちもちととしたほっぺを両手で挟んだ。
「あら可愛いお洋服だね、自分で選んだの?」
「ちょ、っむっ」
「うりうりうりうり!」
ほっぺをぐりぐりとされる珊瑚は喋れない。無理やりに振りほどこうとしても力が入らず、そもそもの身長差や年齢差の前ではただ弄ばれるしかなかった。
「ふふー、でも今日はお出かけダメだもんね」
「……お前、もしかして」
「そ! 翡翠ちゃんの記憶、読めるようになったよ」
ようやく解放された珊瑚は、暗く湿っぽい雰囲気から一転、明るく元気になった翡翠の姿に胡乱げな視線をぶつけながら言った。
「恋人も居るし、えっちも……えへへ……オナニーもするよ。って、珊瑚ちゃんに言ってるのなんか不思議ー」
「そうかいそうかい。こっちは少しだけ見えたけど、まだなんだよな」
「時間が経てば戻るらしいし、いいんじゃない? そ、れ、よ、り!」
翡翠はわざとらしく耳に手を宛てて、目を閉じる。こうして二人がじゃれついている間にも、家の中には女性の艶やかでセクシーな喘ぎ声が響いていた。さっきより大きくなっているほどだ。
家の中に居る女性は、従姉妹で居候の翡翠と、娘の珊瑚以外には一人。
「珊瑚ちゃんはさ、おばさんのエッチな姿見たことある? 実を言うと……夜、おじさんとしてるんだろうなって声を聞いたのは何回かあるんだよね」
「だから記憶読めてないんだっつの」
テンションの高さにうんざりした珊瑚は、翡翠のすねを蹴っ飛ばす。翡翠にとっては痛くも痒くもなかった。
「普通肉親のオナニー見るなんてキツいけど、まだそこまでなってないし……多分、珊瑚ちゃんはエッチなことなんも知らんから逆にどうでもいいかもな」
「おばさんさ、中身子どもっぽかったからさ、あたしみたいに変わってたら面白いよね」
「どうだろうな……」
「ま、いこいこ」
翡翠は会話を切り上げ、大股で夫婦の寝室へ近づいていく。喘ぎ声はもちろん大きくなっていき――
「たのもーっ!」
「うるせえ……ってやってるね」
「――んぁっ、ぅぁっ、あぁあっ!」
二人が踏み込んだ夫婦の寝室、ダブルベッドの上では――母親である瑠璃が一心不乱にオナニーをしていた。全裸で寝そべり、カエルのように脚を開いて珊瑚が産まれてきたおまんこをいじめまくる。
しかし二人が驚いたのはその光景ではなく、瑠璃が大きなバイブレーターをおまんこにずぼずぼと出し入れしていたことだった。
はしたなく濁った喘ぎ声に、モーターの駆動音が混じっている。愛液もびちびちと撒き散らして、貞淑とは口が裂けても言えない、娘が居るとは思えない乱れっぷりだった。
「んおっ、あっ、珊瑚ちゃ、見ちゃ、やっ――ああぁっ、ぅぁあああっ!」
そして瑠璃は、愛娘である珊瑚と大事な姪である翡翠が闖入してきたこと、自分の浅ましい姿を見られたことに焦り――しかしその感情の動きにすら興奮を高め、二人の目の前でイってしまった。
おまんこからは大量の潮を噴いて、ベッドに染み込ませていく。よだれと汗、涙が枕にこぼれていく。大きな胸はぶるぶると暴れ――そのうちに、瑠璃はバイブを抜いて、ベッドに伏した。
黒いバイブは真っ白い液で斑をつくっていて、瑠璃が本気で感じていたことを主張している。しかしその証も、彼女が再び噴き出した液体で洗い流されてしまった。
「あ……ぅ、うぅ……」
「うわー、おばさん大丈夫!?」
「ええ……平気、よ……いつもこのくらいだから」
「こわ」
正気を失うほどに乱れる女性が居るとは翡翠も知識にあったが、それが身近な人間である瑠璃に当てはまっていたことに驚く。あまりに荒い息から、心配して駆け寄った。
珊瑚はというと、いっそ引いていた。
「……ふぅ……落ち着いたわ。あら、どうしたの二人とも……って、あんなに声出してたら聞こえるわよね……恥ずかしい」
瑠璃は横座りをして、タオルケットをたぐり身体を隠す。たおやかな所作で、言葉遣いも穏やかなものになっていた。
その台詞を聞いた翡翠はにっこりと笑って、隣に座った。
「あ、その様子だとおばさんも記憶読めるようになったんですね! あたしも翡翠に、なっちゃいましたよ?」
「あら、そうだったの。珊瑚ちゃんは? オナニー……まだ、小学生だと難しいかしら」
「まだ。オナニーはしてみたけど、全然だったんだ」
憮然として答える珊瑚。母親から猥談を振られたき恥ずかしさや嫌悪ではなく、なにか別の思いがありそうだ。
「まあ、焦ることはないわね。パパが帰ってくるまでにはきっと記憶読めるようになるでしょうし」
「にしても……おばさん、ドスケベだね。いっつもおじさんとこんな獣みたいにセックスしてるの?」
「まさか。もっと激しいわよ。珊瑚が幼稚園に通ってるときだって、朝送り迎えしたりお弁当作らなきゃないのに、何回も何回も……けど、最近してなかったかも」
「ひゅー! あー、私も彼氏とエッチしたいなー……」
母親の瑠璃と姪の翡翠。恋の話、といえば多少聞こえはいいかもしれないが、まるきりセックスの話。珊瑚は置いていかれており、静かに腕を組む。
「ねえ珊瑚ちゃん……弟か妹、欲しい?」
「勝手にしてくれ。さっきまでお子様かと思ってたのに……」
「うふふ、照れちゃって」
二人の変わりように呆れた珊瑚。着替えていく母親を尻目に、大きなあくびをする。
「珊瑚ちゃん、眠いの?」
「ちょっと。寝ようかな……」
「それじゃあお昼ごはん用意するから、その後はお昼寝にしましょう」
「へいへい」
「……ん」
曖昧なまま、目を覚ました珊瑚。眠っていたらしく、まだ瞼は開ききっていない。耳からはテレビの音声、頭の裏には柔らかな感触と温かい人肌。
頭上には、よく見知った顔があった。
「あ、ママ……?」
珊瑚はそう言ってから、自分の台詞に仰天した。これまで母親の瑠璃を名前で呼んだり、母さんと言っていたことが普段とは違っていたのだが。
「……ママ。ママ。珊瑚って、自分のこと珊瑚って呼ぶんだ……」
ゆっくりと起き上がった珊瑚は、自分の小さな手を開閉する。しばらくぼうっとした後、にっこりと無垢な笑顔を浮かべた。
その様子を眺めていた瑠璃と翡翠も、嬉しそうに笑った。
「珊瑚ちゃんも?」
「うん……うんとね、クラスのみんなの裸とか、幼稚園の頃のも全部見ええるんだね」
「たぶんそうだね。あたしも、ずっと昔の事まで思い出せるし……本人より詳しいんじゃない?」
同意する翡翠。ちなみに彼女は隣で握力を鍛えていた。
「そろそろパパも帰ってくるわよ。そしたらみんな、元の神田家よ」
「あたしは居候だけどねー」
「……あ、ほんとだ。珊瑚、結構寝てたんだ」
時計を見るまでもなく、外は暗い。おそらく寝起きから、12時間はゆうに経過していた。
「あ、車の音。帰ってきたわね」
砂利と車のエンジンの音。膝から珊瑚を下ろし、瑠璃はぱたぱたとリビングを出ていく。
「あ、珊瑚もー」
「あたしも行こっと」
翡翠と珊瑚もワンテンポ遅れ、続いていった。
そして、何も知らない父親が玄関から入ってくる。妻の瑠璃、姪の翡翠、娘の珊瑚は――いつも通りの笑顔で出迎えたのだった。
◆◆◆◆◆
「ママ、ほんとうに赤ちゃん作っちゃったんだね」
「ええ。パパもいいって言ってもらったし。弟がいい? 妹がいい……って聞くまでもなかったわね」
「妹! 珊瑚にもお世話、手伝わせてね」
「珊瑚ちゃん、変なイタズラしたらだめだよー。赤ちゃんは繊細なんだからね?」
「分かってるって、翡翠お姉ちゃんは心配性だなぁ~。どうせ翡翠お姉ちゃんも、彼氏さんとえっちなことしまくってるんでしょ?」
「実は最近会ってないの! 大会近いから、スパートかけてて」
「真面目ねぇ。まあ、私が高校生の頃は彼氏なんていないから自分で慰めてばっかりだったけど」
数ヶ月後。一家の大黒柱たる父親がいない神田家で、のびのびと話す三人の姿があったという。