XaiJu
kuroihako
kuroihako

fanbox


【inuneko_another】導入1

そこは 「デジタルデータが実際のモノに、実際のモノもデータに」 変化させる技術が確立された、こことはよく似て非なる世界線の東京。 データ実体化技術は急速にその世界の人々の生活に浸透し、大きな変革をもたらした。 ……その変換技術が隠し持っていた「闇」と共に。 「これは……思ったより大きいな」 港湾地域の埋立地の一画。何もないはずのその場所には大きな建造物がそそり立っている。 それを見上げて、璃緒は驚きを含んだ呟きをもらす。 「数メートル先に【境界線】が視える。この建物と周辺一帯が【電脳空間】である事は間違いなさそうだ」 璃緒の傍で同じく建物を見上げながら天色がため息をつく。 彼は「データ」を視認できる能力(ちから)を持ち、実在と遜色なく再現されたデータ由来のモノも見分けることができる。 「でも、誰が何のためにこんな馬鹿でかい空間作ったと……」 璃緒の問いかけに天色は、 「こんな莫迦げた事をやるような奴は俺は1人しか思い当たらんが?」 とその腰に生えている二股の尾をゆらりと揺らす。 「ああ……」 璃緒もまたその「1人」に思い当たる節があるのか、大きなため息をつく。 「じゃあ、俺達が来たのは彼の思う壷という所だね」 「そうですね、こんなに思惑通り事が運ぶと思いませんでしたが」 「!」 2人の会話に割り込む声。はっとしてその声の主を見る2人。 建物を背に、いつの間にそこにいたのか、穏やかな微笑みの赤毛の青年が立っている。 「フォレスト……」 璃緒が反射的に身構える。彼はデータ実体化のもたらした弊害、【CD-S】にのまれ怪物となった者。 如何なる攻撃を以ても死ぬことの無くなった【immortal】と呼ばれる存在。 知性と強力な能力を保ったまま狂気に堕ちたその存在は璃緒達の所属する組織にとって厄介極まりない存在。 「ちょっと【Monster】達の為に娯楽施設を用意してやろうと思ってね。そこに丁度君達が来てくれたという所だ」 「娯楽……施設……?」 【Monster】はフォレスト同様、【CD-S】にのまれた者たち。 但し、フォレストのように知性を保つことはできず、さながらファンタジー作品に登場する怪物となり果てた者たちだ。 「【Monster】たちにもただなんでも破壊するのが楽しいと思ってないのもいてね。そんな子達の欲求不満解消の場として作ってみたんだ、闘技場」 微笑みのまま、明るい声で背後の建物について解説するフォレスト。 「闘技場……」 無骨な石積みの外観を持つそれは、確かに歴史の本で見たそれに似ている。 「こういう場所であれば思う存分力試しできるって子もいるんでね、ちょっと趣向を凝らしてみたんだ。ゆくゆくは人間君たちも招待をしようと思っているよ。 ……そうだ、丁度いい。璃緒と猫君、最初のテストプレイヤーとしてご招待するよ。遊んでいかないかい?」 「…………」 【電脳空間】は特定の法則を持つ空間。並の人間が迷い込めば、その空間に適用されている【条件】を満たさない限り外に出る事すら叶わない。 【CD-S】に対抗する術を持つ璃緒たちであればともかく、一般人を取り込み始めれば……。 「それで、【条件】は?」 璃緒が、意を決した表情でフォレストに問う。 フォレストもまた、その言葉を誘いへの同意と理解し目を細めて口を開く。 「【Monster】達と対戦し打ち勝つ事」 「分かった、その誘い、乗ってやる」 「璃緒」 「ただし、対戦の条件はこちらから提示させてもらう。 そして、こっちは戦るのは俺だけだ。天色はあくまでバックアップ、一切手を出すな」 「璃緒」 どんな意図なのか、と天色が慌てる様子で問う。 「何かあった時に両方動けないのは困るから……それに、こういうのは俺の方が向いてるだろ?」 璃緒の方はにっこりと笑う。 璃緒の条件をふぅむ?と聞いていたフォレストは目を細め 「良いだろう。猫君はその力自体が僕らには脅威だからね。 不利な場所での闇討ち回避かい? そして、璃緒には痛い目を見てる子もいる。喜んで乗ってくる子もいるだろう。……ふむ、良い余興にはなりそうだね」 クスクスと小さく声を立てて笑うフォレストはその条件受けようと答える。 「では交渉は成立だ。この空間にいる間、仮の衣食住は保証しよう。【CD-S:Colosseum】へようこそ」 フォレストがそう宣言すると、2人の眼前の空間が……大きく歪んだ。 ------------ 本作は作品のイメージ用に作成した小話です。

【inuneko_another】導入1

More Creators