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雪中アヤメ
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【先読み】とろけてべったり甘えんぼかんがるーさん

「───お疲れ様。お水、いる?」 「いる……」  もう深夜そのものとという時間になって、私は裸のままダブルベッドに身を投げ出していた。  ここはパートナーである瞳さんの家だ。隣にいる瞳さんがベッドサイドに用意していた水差しからコップを差し出してくれたから、起き上がってそれにそのまま口をつける。 「侑依ちゃんはあまえんぼさんだね?」 「うん……あまえんぼだから、こんなこともしちゃう」 「あら……仕方ない子」  自分で手を使わずに飲ませてもらう形にしたら、瞳さんは困ったように笑ってくれる。私はそれが全然困っていないことをよく知っているから、コップがサイドボードに戻されたところを見計らって瞳さんへ抱きついた。  お互いに裸だし、このあと一緒にシャワーを浴びるから汗や汚れは気にしなくていい。涼しげな瞳さんと違って私は全身にうっすら汗をかいているし、お股のあたりはだいぶ情けないことになっているけど、瞳さんはむしろ抱き返して腰をぐっと引き寄せてきた。それが嬉しくて、私は脚を開いたままいわゆる「だいしゅきホールド」の形でくっついてしまう。 「……ねえ、瞳さん」 「なあに?」 「私のコレ、めんどくさくない……?」  私の体には、大量の縄の痕がついている。夏場こそ隠すのが大変だけど、これはもはや私にとって日常だ。というのも瞳さんは、それを職業にしつつも趣味でもこうして緊縛をするほどの縄師だから。私は週に一度か二度、瞳さんの家に上がって縛られている。  とても上手でぜんぜん痛くならないし、三十分ごとに解いて休憩しては違う縛り方をしてくれるから飽きないし、とても楽しそうに縛るから私にとってもすごく楽しい。私はBDSM的な意味では自覚的にはマゾというわけではないこともあって、それに合わせて縛ったあとは優しく可愛がってくれるし。  一方で私はというと、筋金入りの甘えんぼだ。そんなあまり名誉的でないことを自称するくらいには。昔から家族や友達に隙あらばくっつき抱きついて、からかわれはしつつもそれなりに愛されキャラでやってきた。  だけど大人になってきて、さすがにおおっぴらにそんなこともできなくなってきて。それでもどうしても物寂しさが拭えなかった私が偶然目にしたのが、緊縛SMだった。一見するとほとんど共通項もないように思えるそれに不思議と気を引かれて、試しにと体験会に足を運んでみて……そこで出会ったのが、瞳さんだった。 「そんなこと思ってるように見える?」 「見えないけど……瞳さんは縛るのが好きなだけなのに、重くないかなって」 「……侑依ちゃんはそうやって、嫌がられるかもって踏みとどまれるからこれまでも愛されっ子でいられてきたのね。だとしたら……それで離れようとするなら、こっちからしっかり捕まえておかないと逃げちゃうのかな」  縛られてみて、自分がそれに惹かれた理由がわかった。あくまで私が抱いただけの感覚だけど、ほどよく縄で縛られる感覚は、不思議と抱きしめられるのと似ていたから。全身に触れているのは人肌ではなく縄だけど、逃げられないほどぎゅっと抱かれているような錯覚すらあった。  その場で縄酔いまで起こしてしまって、他の参加者の前で痴態を晒してしまった私は、そこで受けた羨望と興奮の視線たちさえ気持ちよくなってしまって……最初に縛られた一方で最後に解いてもらったあと、こっそり瞳さんに誘われた。体験ではなく、もっと本格的に縛られてみないか、と。  最初はラブホテルだったけど、あまりに相性がよかったようでどんどんのめり込んで。瞳さんからしてもお気に入りになったようで、いつしか家に上げてもらえるようになった。最近では作品としての被写体になってほしいとまで言ってもらえて、今はそのためにダイエットしているところだ。  なんだけど……私はただ甘えたいだけで、縛られる感覚が抱かれて甘やかされているように感じるというだけ。そのまま本当に甘えてもしまっていて、体の関係にもなっているせいかそれに歯止めがあまり利いていないのが現状だ。  あくまで頻繁に縛られてくれるパートナーとして近づいたであろう瞳さんには、プレイと関係すらないそれは迷惑なんじゃないかと思ってしまったのだけど、それを吐露したら返ってきた答えは、より強くなった抱擁だった。 「めんどくさくも重くもないし、もっと甘えてくれていいのよ。侑依ちゃんを可愛がるのも、私は大好きだから」 「……そんなこと言われたら、ほんとに甘えちゃうよ?」 「もちろん、どんとこいよ」  私もここまで言われて遠慮を続けるほど鈍感じゃないから、それならもっと甘えていいかな、なんて楽観的な気分になっていた。それは間違いではなかったんだけど、一方で私には読み違えもあった。  だからこれは、抱えている欲に素直に吐き出しただけの言葉だった。瞳さんが叶えたいと思ってくれたらでいいや、くらいの感覚だったんだけど───それが瞳さんの心に火をつけたのだと知るのは、しばらく後のことだった。 「それなら……もっとたくさん、縛られてたいなぁ……。私の体のこと考えてくれてるのはわかるし、嬉しいんだけど……」 「縄は他の拘束具と比べても、体への負荷が大きいものね……注意は払っているけど、それでもこれ以上長くするとなると、負担軽減を考えないといけないかも」 「でしょ? 正直、多すぎるくらいたくさん縛ってもらえてるのはわかってるし……でも、かといって緩くされるのは本末転倒だから……んん、難しいな。ごめん、忘れて」 「……」  そしてこの先の展開を読めなかったことは、縛られて甘えることばかり考えていて瞳さんの気持ちを測り間違えていた私の怠慢だった。ミスト・スランバーという会社と一緒に仕事をしている、とくらいは聞いていたというのに。  そのミスト・スランバーが最近行っているあれこれを少しでも興味を持って調べていれば……こう、心の準備くらいはできたし、忘れてなんて言って複雑な顔をさせずには済んだだろうに。  後日、そのときは毎週の逢瀬よりずいぶん早い時間に呼ばれた。なんだろうと思いつつ、もしかして何か考えてくれたのだろうかなんて期待して瞳さんの家を訪れた私を待っていたのは、車を用意していた彼女の姿だった。 「……どこか、出掛けるの?」 「ええ。……そうだ、せっかくだし軽く縛られて行く?」 「いいの?」  どうやら今日の舞台はここではないらしい。普段と大幅に違うことをすることは薄々察していたけど、まだ返事をしていないから撮影ではないはず。わからないままガレージに入る。  どうやら先に縛ってしまっても大丈夫なところに行くらしい。緊縛ドライブと思うと興味が出てしまったから、私は二つ返事で欲しがってしまった。 「服の上からにする? それとも」 「は、裸から……が、いい。上から着せられても、いいから」  これまででなんとなくわかったことだけど、私は着衣よりも素肌を直に縛られるほうが好きだ。そのほうがぎっちりするのもあるけど、直接抱き締められているみたいで。……それに、恥ずかしくてドキドキする。  表から見た死角の位置に移動して、服を脱いで先に車へ積んでしまう。それから、ささやかな野外露出でぞくりとしてしまった私の体が、後ろ手の菱縄縛りにされていった。股下にもいつも通り、こぶ付きの股縄が通される。 「他の姿勢も考えたけど、あくまでついでだから普通に。いったんこれだけね」 「んっ……は、ふ」 「……可愛い。じゃあ、これ着せて……はい、助手席に乗って」  もう腕が使えない。足は自由なままだけど、そうとは思えないくらいの心細さと温かさを感じる。そんな私に暑くない程度の薄さのロングコートを被せて前を留めた瞳さんは、助手席のドアを開けて促してきた。  歩くだけで股縄が擦れて少し気持ちいい。席に座ってみると……これだけでもう、かなりの背徳感だった。外からはただの寒がりな同乗者に見えるかもしれないけど、実際は裸コートで縛られて車の中で興奮している変態だ。 「じゃあ、しばらくこのままね。ちょっと長いから、何かあったら遠慮なく言って」 「わかった……ん、ぅ」  シートベルトすら自分ではつけられない。全部お世話してもらって、これでもう逃げられない。……実際は嫌がれば中断してもらえそうだけど、まさかそんなもったいないことする気はないし。  背中とシートに挟まれた腕すら非日常感を演出していて、このまま縄酔いしてしまいそうだ。そんな中で瞳さんは運転席に回って、そのまま車を出した。 「……それで、どこに行くの?」 「ヒューマンファームって言うんだけど、知らない? 一緒にお仕事させてもらってるミスト・スランバーが作った、えっちな施設なんだけど」 「んん……瞳さんと遊んで、満足しちゃってたから。あんまり調べたりしてないかも……」 「嬉しいこと言ってくれちゃって。……そこは私たちがやってるのよりニッチなことがメインなんだけど、侑依ちゃんと試してみたいものがあるの」  車は郊外のほうへ一直線に走っていって、やがて人の少ない田舎道に出た。確かにけっこう遠いようで、途中では少し逸れた位置にある人気のないコンビニで停まる。そのまま縄を一度解かれて、今度はコートを一度脱いでから全身をシートへ縛りつけられるように縄をかけ直されてしまう。  普段と違う感覚に興奮してしまっている私に手ずから飲み物を与えてくれる瞳さんに、照れ隠しにこの後のことを聞いてみる。返ってきたのはなんだか妖しげな響きの施設名だった。人間牧場、だなんて、それこそSMチックだ。  私はそういう方面には手を出したことがないのもあるけど、瞳さんとの遊びで満たされていたこともあってあまり動いたりしていない。嬉しそうな瞳さんが体を隠すようにコートを被せながらさらに教えてくれたけど、私は「瞳さんがやってみたいことなら興味がある」くらいの感覚だった。  そのまま、今日は本当に体力がもつのか不安になるほど興奮しっぱなしでドライブが続いて、普段なら二度目の休憩になるくらいの時間が経った頃に車が停まった。どうやら施設の駐車場の片隅らしいんだけど……向こうにあった車と降りる人でいっぱいの駐車場からは少し離れている。  また解かれて車から降りると……今度は一言謝られたかと思うと、コートの上から縛り上げられてしまった。別にそれも充分楽しめるけど……大丈夫なのかな、こんな、外からも丸わかりな緊縛姿で。 「一応フード被っておこっか。……ああ、実は関係者扱いなの」 「そうなんだ……すごい。それに、大きい……」  瞳さんが、それも関係者扱いでやるなら大丈夫なのだろうと割り切って、施設を見上げる。……とても大きな施設だ。どれだけの広さがあるんだろう。  用意してあったスーツケースに私の服も入れて、二人で入口へ。……コート越しとはいえ縛られているのがとても目立つようで、入場待ちの列から大量の視線が届く。 「……ひとみさん」 「大丈夫、私が守るわ。……ほら、こっち。関係者用の入口から行けるから」  思わず瞳さんに擦り寄ってしまうと、片腕で抱いてくれる。向こうからの視線はなんだかいやに柔らかく生暖かくなった気がするけど、それに目もくれず瞳さんは列と別の扉へ進んだ。  不思議とぞくぞくする私も一緒に通されて、どうやら一般客は振り分けられるらしい受付も素通り。その先には……。 「な、なにこれ……」 「ふふ。ここがある意味、どこよりも業が深い場所。ヒューマンファームよ」 「こんなすごいところがあったなんて……」  これだけ縛られておきながらあれこれには疎い私にとっては、情報量の暴力に等しかった。すぐに目につく範囲だけでも、手足を折りたたまれた四つん這いで恥ずかしいピンクのぴっちりスーツ姿を晒してこちらにお尻を向けている子だったり、馬具を模したようなものをつけて拘束されたまま馬車に繋がれた子だったり。ヒューマンファーム、の意味はすぐにわかってしまう。  だけど、どうやら目的地はそちらではないらしい。それでも客がここで拘束されたりしているのは珍しいのか、まだ視線を浴びながら連れられて歩いていく。 「こっちはヒトペット広場。可愛くて情けないペットになった子を見たり戯れたり、自分もそうなったりして遊べる体験型のテーマパーク」 「……こんなのが、普通にあるなら。もうちょっとちゃんと、調べててもよかった、かも」 「今日はいきなりワンちゃんにならせたりはしないけど……試してみてほしいものがあるから、まずは向こうのホテルに行きましょっか」  併設されていたヒトペット広場、こっちが今日の舞台らしい。さっきのピンクの子……たぶんあれは豚なのだろうと今ならわかるけど、こっちにはあれと同じ拘束がたくさんいる。ついている尻尾から犬や猫だとわかるけど、それ以外らしき動物、ペットを模した姿もたくさんあった。  看板に見える動物園やドッグランの文字もだんだん気になってきてしまったけど、行き先はそちらではないらしい。もはや縛られているだけではあまり視線を集めなくなってきた中を連れられて、ホテルと呼ばれた建物に入った。 「ペットホテルをご利用ですか?」 「308号室で打ち合わせ済なのですが……」 「……はい、確認いたしました。こちらを」  ホテルと言っていたけど、正しくはペットホテルらしい。確かに場には即しているけど……つまりここでいうペットというのは、外にいたような犬や猫、のような格好で拘束された人間のことだ。  そう思えば、なんとなくわかってしまう。あれではないとのことではあるけど、平たく言えば私もまたここに来たマゾといえるから……きっと、私もペット、なのだろう。  やはり普通の客とは違う様子のやり取り。打ち合わせ済だそうで、今日の瞳さんは仕事かその伝手を使っていることもさすがにそろそろわかってくる。もしかしたらこの縄も、私もまた普通の客ではないことを示すちょっとしたマーキングなのかも。  エレベーターホールまできて、目の前のエレベーターが開くと……そこからは、やはりここに来てから何度か見かけた四つん這い姿の女の子が出てきた。見るからにぐちゃぐちゃに興奮していて、首輪から伸びるリード紐を同行している男の人に握られていて、お尻から生えた……さすがにもうわかる、お尻の穴に挿入されている尻尾を振っている。  犬の女の子が私を見上げてきた。やはり縛られているところを見てきて……ふにゃりと、まるで同類でも見るかのように微笑んできた。……それで合っているのかもしれないけど。 「……なんか、現実じゃないみたい」 「でしょ? 無理にこういうのを好きになれとは言わないけど、私はけっこう好きなの。人間として当たり前に持ってる尊厳や自由をぜんぶ失って、情けなくて愛らしいペットになって飼い主に甘えて……とっても可愛い」  言われて、思う。なんだかそれもまた、甘えん坊の私と似ているのではないか、と。  私が緊縛を好きになったのだって、大人になっておおっぴらに他人に甘えるのが憚られたからだ。ああいうペットたちの少なくとも一部が、普段は表に出さない甘えたを人間へ求めるために自らを貶めているのなら……それはとても、私が普段からやっていることに似ている。  大人の人間が他人に甘えるのは恥ずかしく情けない、望ましくないことだという通念はどうしてもある。だけどペットになるという行為が、「そもそも人間じゃないから」とそれをすり抜けて欲のままに甘えられる手段になるなら?  そんなことをぐるぐる考えてしまって……残念ながら長い廊下でそれ以上他のお客さんと出くわすことはないまま、308号室に辿り着いた。  瞳さんが受け取っていた鍵を開けて扉を開けると……ホテルの一室らしくありつつもあちこちにペットのための内装がある部屋の中には、何やら大きなゴムらしきものを広げたスタッフの女性が待っていた。  その人がこんな特異的な施設のスタッフだとはわかっていても、縛られた格好を見られるのは恥ずかしい。私はこれまでにこうしたところを見られたのは最初の体験会だけで、それ以外は全て二人きりだったから。 「道中でもこうしたことができる信頼関係、とても素敵ですね」 「あ、ありがとうございます……」 「侑依ちゃんは私のことを信用してくれていて。ありがたい限りですよ」  それでも何やら褒められて、さも当たり前とばかりに受け入れられたのは不思議と嬉しかった。挨拶は滞りなく済んで、その場で縄を解いてもらう。そのままコートを脱がされて、一度シャワーを浴びるよう促された。  いつも以上にしっかり綺麗にしてシャワー室から出てきた私を待っていたのは、置かれていたゴム……ラバーが大の字に広げられている様子だった。恥ずかしながらほとんど調べてこなかったこともあって、私はラバースーツというものが界隈にはあることくらいしか知らない。これがその系統の何かであることくらいしかわからなかった。  それから、瞳さんは湯浴み着のようで脱ぎ着のしやすそうなつくりの白地のシャツと、ゆったりしたつやつやのロングパンツに着替えている。 「えっと……たぶん、ペットみたいなことをする、んですよね?」 「部分的には合ってるけど、ちょっと違うの。侑依ちゃんはあくまで拘束されてるだけでいいのよ」 「ヒトペット広場なのに、ですか?」 「そういうモノのテストを兼ねてるんです」  裸のまま近づく私のことを瞳さんはいらやしい目で見てくるけど、それは慣れているしむしろどんとこい。ただ慣れないスタッフさんからの視線は、まるで普通に服を着ているときのように自然だったから気にならなかった。おかげで必要以上に恥ずかしがらずに済んでいる。  ただ、これからやることには微妙に要領を得ない。てっきり外で見たりすれ違った子たちのようなことをするのだと思って、意を決してそれを試してみる気でいたのだけど……。  ただ、確かに目の前にあるものは見てきたものと少しだけ様子が違う。二人がまずはそれの胸元にあたる部分にあるジッパーを開けて、中のぬるぬるした潤滑剤が薄く広げられた様子を見せてきた。 「これはまだ考え出されたばかりの、少なくとも私たちは同じものを知らないプレイなの。仮だけど、名前は“かんがるーさん”」 「カンガルー……?」 「これが嫌じゃなければだけど、まずは着てみて。手伝うから」  カンガルーというと、あのお腹の袋に子供を入れている有袋類だろうか。ペットという印象は全くないどころかむしろ強い印象だし、何よりこの真っ黒なラバースーツとは似ても似つかないけど……。  とはいえせっかくの機会だし、いざこうして見てみると興味も出てきたし、何より瞳さんが私にと勧めてくれるものを逃す気はない。言われるがまま着てみることにした。  ラバースーツとしてはやや珍しいらしいフロントジッパーが首から肋骨の下近くまで降りているから、そこから体を滑り込ませて……滑りをよくしつつもあまり感触のないローションに手伝われつつゆっくり足を通していく。手伝ってもらいながら皺を伸ばしていくと、独特で不思議な感触とともに肌に張り付いてくる。股下からお尻の後ろまで伸びるジッパーも、それひとつで恥ずかしいところが丸出しになるのだと突きつけてくる。  なんだか、これ自体も気持ちいい。ラバーの密着感を楽しみながら腕も入れて……そこで気付いた。手のところもミトン形状になっていて、指が開かないようになっている。そして手足の先端から、幅広の短いベルトがそれぞれ伸びているようだった。 「嫌な感じはしない?」 「大丈夫……むしろちょっと好きかも」 「そう。じゃあ今後はこういうのも使ってもいいかもね。……はい、このまま閉じちゃうわよ」 「あ、もしかしてこれ、これだけでもう自分じゃ脱げない……」  手刀のような形で開かなくなって、全ての指ごと手のひらを握るくらいしかできない。その状態で肩口を整えられながらジッパーに手をかけられれば、さすがに気付く。これは一人で脱げるようにはできていない。  実際に上げられていくごとに上半身も優しく締め上げられながら密着されていって、胸の膨らみもある程度出たまま閉じ込められてしまった。試しに手を首元に当ててみてもつまみはとても掴めそうにない、やっぱりこれ自体が拘束具にもなっている。 「四足歩行とかはしなくていいけど、かんがるーさんもペットではあるから……これ、つけましょっか」 「うぁ……は、い」  そしてダメ押し、首輪を見せられる。これまでより間違いなく自覚が増してしまっているマゾ心が疼いているうちに、他のペットもつけていた革の首輪をしっかり嵌められてしまった。  苦しくはないけど、ぴったり密着していて無視できないし……私には見えない位置だけど、たぶんラバースーツの境目を覆われてしまった。これだと首輪が外されないとスーツも脱げないのに、そんな首輪に、南京錠。かちり。 「鍵は私が持ってるから、私がいいって言うまで侑依ちゃんはこのままなのよ」 「っ……そ、それでっ……これで、何する……の」  私自身、こんなことでぞくりとするほどのマゾだとは思っていなかった。だから愉しそうな瞳さんを見上げて、自分でもびっくりするくらい浅ましく話を逸らすことしかできずにいる。  だけど、この“かんがるーさん”はここからが本番だった。着ているだけでちょっとずつ恥ずかしくなってくるぴちぴちのラバースーツ姿のままベッド縁に座らされた私の前で、瞳さんは膝立ちになって手を低めに広げてくる。  それが何を示しているか、これまでもたくさん瞳さんに甘えてきた私がわからないはずもない。促されるままに抱きついてしまうと……瞳さんの肩の上を通した両腕が、背中を抱え込むような形にスタッフさんの手で整えられた。 「ほら、脚も」 「そ、そこまで見られるのはちょっとはずかし……」 「はい、そのままにしていてくださいねー」 「え、あ、も、もしかしてっ」  私がどう抱きつくか、瞳さんはよくわかっている。腕を低く広げればよりくっつくために肩の上から被さることも、許されるならそのまま脚も股に挟むように絡みついてしまうことも。  促されてやるのはスタッフさんの前では恥ずかしかったけど、言われた通りいつも通りにしてみると……気付いてしまった。手足の先にある短いベルトは、こうするとちょうど繋ぐことができる位置と長さになっていることに。  腕を軽く引っ張られて頭まで前に突っ込む姿勢にさせられると、私の視界の真下でそれらが繋がれていく。しかしそんなことをされているのに私の体はむしろぎゅっとしがみついてしまって、強く抱きついて密着したままベルトで固定されてしまった。……そう、腕は抱っこ、脚はだいしゅきホールドの形で。 「これだけだとちょっと負担なので、袋をつけていきますねー」 「カンガルーって、そういうこと……これ、恥ずかしいよっ……!」 「そう。侑依ちゃんは今から、かんがるーさんのこどもになるの」  そのベルト、拘束具がしっかり繋がれてしまった後はもう、私はほとんど動けなかった。ぎゅっと引き絞ってしがみついたままにされているから、瞳さんとの間に隙間を作ることすらできない。  そのまま瞳さんに立ち上がられてしまった。私は宙に浮くかっこうになって、一気に心細くなる。ふらついて瞳さんを転ばせたくもないから、さらに自発的に抱きつくことになった。  続けて見せられたのは、透明なビニルの半円状のシートにベルトがついたもの。まさかと思う暇もなく、私の下半身を覆うように瞳さんの体に取り付けられれば、それがちょうどカンガルーの袋のように。だけど透明だから、私の恥ずかしい格好はどの向きからでも丸見えだ。  さすがにもうわかってしまう。私はカンガルーの中でも、袋に入れられる赤ちゃんのほうだ。こうやってママである瞳さんにしがみついて、くっついたまま甘えることしかできないのだ。 「……どう? 気に入ってくれるんじゃないかと思って、試しに連れてきてみたの」 「これ、すっごく恥ずかしくて……きもちよくて、くっつけて、すき……」 「よかった。このままたくさん甘えてね、私の侑依ちゃん?」 「うう、っ……!」  ここに連れてきて、施してくれて理由がわかった。これは確かに、この間私が漏らした欲を満たしてくれるものだ。身動きを取れないように固定しつつ、縄による継続負担のないラバーの拘束にして、しかも心ゆくまで密着して甘えることができる。というか、甘えることしかできない。  すっかり興奮してしまった私を抱えたまま、瞳さんはスタッフさんが用意してくれた車椅子型のカートに座った。これならこどもを抱きかかえるママも楽に動けるし、こどももママの膝にお尻を置いて楽にくっついていられるということらしい。背もたれもちょうど真ん中、手と足を繋ぐベルトと同じ高さに細くあるだけだから邪魔にならない。 「それから……」 「え、まっ、まって、そこあけたらっ」 「大丈夫よ。ローションは速乾性だから、もう乾いているもの。動くたびに摩擦でぎちぎちするでしょ?」 「で、でもっ」  さらには瞳さんは自分の袋の中に手を入れると、私の股下のジッパーを開けてしまう。後ろ側は袋に覆われているけど、前面は真っ白な瞳さんの服に密着しているのに。  白々しくうそぶく瞳さんだけど、今の私はそんなことをされたら……。 「あれ? 服が染みになっちゃってるわ」 「うぅぅっ……!!」 「恥ずかしい……ふふ、実はね。これはかんがるーさんの恥ずかしさのためのキャンバスなの。だから安心して、たくさん恥ずかしく塗っていいのよ」 「み、みないでっ……!」 「それは無理。これからたくさん、いろんな人に見てもらいに行くの。ヒトペット広場は、そういうところだもの」  触られてもいないのにとめどなく溢れては服に染みを作る私の愛液を、愉しげに指摘してくる。私はそんなありさまでもより強く抱きついて暴れたくなるのを我慢するしかなくて、止めることなんてできずに服を濡らしてしまっていた。  一応内側には撥水性のインナーを着ているようだけど、だからこそ染みは広がってしまう。それなのにそれを許容されて、かんがるーさんの役目とばかりに促されすらして。しかもこのまま、外に出て見せつけるのだと宣告されてしまった。  だけど、嫌がれない。本気で嫌がればやめてくれるとわかっているのに。私は本心では、このままあまえんぼの晒し者にされることを望んでいるようだった。  残って一度片付けをしておいてくれるというスタッフさんを置いて、瞳さんは電動カートを肘掛け部分にあるコントローラーで操作しながら廊下に出た。  ついさっきまでも縛られたまま裸にコート一枚で連れられていたとはいえ、同じ恥ずかしい衣装一枚だけかつ拘束でもこれはわけが違う。違うんだけど、考えるほど似ていることを突きつけられて「さっきまでの自分で望んだ姿も晒し者だったんだ」と実感させられてしまう。 「…………っ」 「どうしたの?」  私は姿勢的には後ろを向いたまま進んでいるから、通り過ぎたばかりの別室の扉が開いたことに瞳さんよりも先に気付くことになった。手押し車の荷台部分が檻になっているそれは、どうやらペットカートと並んでペットを運ぶ手段となっているらしい。人のようには動けないよう拘束されているのだから当然とはいえ、多くのペットは移動では自分で歩くことを許されずにこうして運ばれているのだとか。  恥ずかしくて顔を半分以上肩口へ埋めつつもじっと見てしまって、檻越しにそれが何であるかがわかった。逆バニー姿でM字開脚を強制する拘束を受けているらしいそれは、かなり過激なうさぎさんだ。猿轡越しに呻き声を漏らしながら顔を真っ赤にして、向こうもこちらを見てきている。 「う、ぅ」 「恥ずかしいね。だけどユイちゃん、恥ずかしいの好きだものね」 「ば、バレてるの……!?」 「私が侑依ちゃんのツボをわかってないと思った?」  背もたれが小さすぎるせいで、私がどんな形で拘束をされているかはむしろ後ろ……私からすれば前のほうから丸見えになっている。胸もお腹もお股も丸出しのうさぎさんにも、その檻カートを押す飼い主さんにもじっくり見られて、私がみっともなく抱きついたようでいて身動きが取れないことは丸わかりになっていた。  そこに他のお客さんがいることはすぐにわかったようで、瞳さんは振り返ろうともしなかった。だけどすぐにエレベーターホールに辿り着いて、下りボタンを押したところでカートごと振り返ってしまう。  というかなんだか、今の呼ばれ方、普段名前を呼ばれるときとニュアンスが違ったような……。 「かわいいうさぎさんですね。これから広場ですか?」 「はい。……そちらは」 「試作段階の“かんがるーさん”を試しているんです。見ての通りのあまえんぼさんなので、たくさん見てあげてください」 「はっ、う……」 「わかりました。……グミちゃんも気に入ったの?」 「むんっ……!」 「そっか。じゃあ、正式に出たらなってみようね」  瞳さんが面と向かうほうになると、私は背中を向けることになる。ラバーにぴっちり覆われた背中と、裂け目まで密着して形が丸わかりのお尻が晒されていて、私からは見ることもできない。こっちの方が恥ずかしくて屈辱的かもしれない。  わたしはそんな紹介までされても瞳さんの背中を叩いたりできるほどは手を背中から離せなくて、脚を開いて絡みつかされていることもあってただ抱きついていることしかできない。太ももが真横より上を向いて膝に座っている状態だから、腕に力を込めて浮かないと座り直すことすらできないし……それをしたら、一目でその情けなさがわかってしまう。  それから、うさぎさんがグミちゃんと呼ばれたところでわかった。ここではペットを人間とは違うものとして、それこそペットの名前を呼ぶようにするのが当たり前なのだ。私の場合は名前が短いのもあって、たまたま人のの前とペットの名前が同じにされているだけ。  しかも、この安全な施設の中でならそうして、普段の自分とペットとしての自分を重ねられるのも、私は喜んで興奮してしまうタイプだとも見透かされている。瞳さんは悔しいくらい私のことをよくわかっている。 「はっ、はっ……!」 「ふふ。グミちゃん、見て見られてきもちいいね」 「んくっ……!!」 「ごめんなさい、お見苦しいところを。この子ったら、見られるだけでイけちゃう恥ずかしい子で」 「可愛いじゃないですか。私のユイちゃんにもそうなってほしいくらいですよ」  エレベーターの中、ちゃんと鏡はあるのに瞳さんがそちらを背にしてくれないから、私だけお尻を向けたまま蚊帳の外で話をしている。きっとわざとだ、かんがるーさんはこうして一方的に見られるしかないのだと突きつけてきている。  だから二つの視線を浴びて、うさぎのグミちゃんの荒い吐息と鳴き声だけを聞かされて、私のほうもすっかり興奮させられている。くっついているから瞳さんには深呼吸が筒抜けで、だけどそうでもしないとそれこそ呼吸が浅くなってしまいそう。  グミちゃんは瞳さんに見られるだけで絶頂したのだと、聞かされるだけ聞かされて気になってしまっている。あの大股開きのつるつるおまんこから、触られてもいないのに愛液を吹き出したりしたのかな。そんな恥ずかしくてえっちで羨ましい様子が、もし私の背の向こうで起こっていたなら……私にとってはそうして見ることができないこと自体が、屈辱であり被虐そのものになってしまっていた。なれるかどうかは、わからないけれど。 「じゃあ、お気をつけて」 「ええ。お互い見せつけて回るわけですから、また会うかもしれませんね」  私はずっと入口のドアを見つめさせられる配置だったから、先に瞳さんがバックしてエレベーターを出る。その場でくるりと回って、檻カートを押して出てくる様子がようやく見えた。  無毛のタテスジをひくつかせて興奮を隠せずにいるグミちゃんと目が合うと、彼女はぞくぞくとした様子の嬉しそうな赤面顔で微笑みかけてきた。たぶん私も同じような顔をしていたと思う。  そのままエントランスに出てくると、そこにいたらしい数人の人たちがすこしだけざわつく。やっぱりメニューにないテスト中の新しいものということで、目立ってしまうみたいだ。  特に私のラバー尻に集中している気がする視線をよそにカウンターに寄ると、手配を待つ主従やただ見に来た人を見ることができつつ拘束を見られる私を無視して、受付嬢は何かを取り出したようだった。……と思ったら、わざわざ私にも見せてくれる。 「疲労や快適性はもちろんですが、お客様方の反応も見ていただきたいので……こちらをつけさせていただきますね」 「はい。お願いします」 「っ……!」  カートの見た目のバランスを崩さない範囲で目立つよう大きく作られた、カートに取り付けるのぼりだった。「かんがるーさん テスト中」と大きく書かれていて、私が何をされているのかこれでもかと宣伝するようになっている。  瞳さんは最初から知っていた様子で軽く頷くけど、私はあまりの辱めにさらにきつく抱きしめるしかない。こうして繰り返し羞恥心を刺激されるたびに、無意識でも意識でもとにかく抱きつくばかりの私の動作を突きつけられていた。抱きついて甘えることしかできない、というのは誇張でもなんでもなかった。  それにたぶん、私が言葉を失ってただ呻くばかりなのも見透かされている。もはや恥ずかしすぎて言葉を発することすら恥晒しになることも、だからいっそ猿轡が欲しいくらいなことも。  そのまま外に出てきた。ペットホテルはふれあい広場の端に隣接するように建っているから、そこはもうたくさんの主従や野良ペット、見物客などがいる広場だ。私には出てきたホテルと振り返ってくる人たちしか見えないけど。  ただ、これまでとは比較にならないほどたくさんの視線がこちらを向いたことはわかった。おびただしいほどの好奇や興味、興奮に羨望だ。不思議なことに不快な視線も、これだけ見られて不快感も全くない。 「たくさん見られてる。このままぐるっと回って、ユイちゃんのあまえんぼなところ、たくさん見てもらいましょうね」 「はっ……はっ……!」 「こんな人間として終わっちゃった辱めでぞくぞくできちゃうマゾなところも、興奮しすぎてなんにも喋れないところも、可愛くて大好きよ、ゆいちゃん」  私自身にすら体験会で同じ初心者に見られて縄酔いしたときや、全裸で開脚縛りをされたりして辱められたときくらいしか実感の機会がなかったのに。ほぼそのときの反応だけで私が羞恥マゾだと見抜いていたらしい瞳さんが、囁いてくる。それが「かんがるーさん」に相応しい甘やかしであることも突きつけられてしまう。  私、人間として終わっちゃったんだ。ペットとしてじゃないと満たせないマゾに目覚めて、今みたいになんにも喋れなくてもわかって満たしてくれる飼い主のもとじゃないと満足できなくなっちゃったんだ。  もともと私ばっかり好きになって大丈夫か心配になるくらい瞳さんのことが好きだったけど、これはもうだめだ。依存してしまう。どろどろに甘やかされて、瞳さんがいないとだめになってしまう。だってもう、人間の侑依として甘やかされているのか、ペットのユイとして可愛がられているのか、頭の中がぐちゃぐちゃでわからない。 「……あれなんだろ、見たことない……」 「……かんがるーさん、だって。新しいやつ?……」 「……あそこで拘束されてるのか。凄い格好だな……」 「……はずかしそー……やってみたいなぁ……」  もともと人がたくさんいるふれあい広場だから、四方八方からこれでもかと見られているし声も聞こえてくる。一部は私からも見えるし、人間ともペットとも目が合ってしまうし、だからといって逃げ場はない。抱きついて甘えるのが一番かんがるーさんらしくて恥ずかしいのに、私は他の行動を本当に一切取れない。  飼い主、あるいはママにくっついて甘えるところを晒されて、これでもかと見られている。そんな恥ずかしさが私も大好きになってきていたのだからもう救えない。人間には戻れない。 「……あの、首から下だけでいいので、写真いいですか……?」 「私はいいですけれど……ユイちゃん、大丈夫?」 「っ…………!」 「大丈夫みたいです」  挙句の果てには、写真撮影まで持ちかけられてしまった。ここは同意が取れた場合に限り撮影OKだから、私が承諾したら本当にこんな恥ずかしい姿が写真に記録されてしまう。  だけど、撮られたくなってしまった。ぎゅっとして、ぐっと股を押し付けただけで、それが伝わってしまった。もう顔を上げられなくて、ずっと耳まで真っ赤にして肩と首筋に埋めたままだ。  ……だけど今、気のせいでなければ丸出しのおまんこに擦れた服の布生地が、湿った大きな音を立てていたような……。 「っく、ぅ……!!」 「見ての通りテスト中で、宣伝も兼ねているので……ええ、この画角なら、SNSに上げちゃって大丈夫です」 「わかりました!」 「……ほら、ユイちゃんも見せてもらいましょ」 「ああ、どうぞ」  片腕で抱かれながら、誰とも知れず私からは顔を見ることもできない女の人の声に写真を撮られて、それだけで頭が真っ白になった。情けない詰まった声が漏れて、腰がびくびく震えて……瞳さんはたぶんさっきの願いが叶ったとわかっただろうに、それはすぐには言わないでくれた。  だけど、本当に首から下しか写っていないことを確認してかSNS投稿まで許可してしまって……しかも、その写真を私にも見せてきた。嫌な予感はしたんだけど、それをあっさり見てしまったのは間違いだった。ある意味でご褒美だったけど。 「ぁ、っ、────っ!!」 「気付いてなかったのよね、こんな恥ずかしすぎるところを晒されてたこと」 「そっか……そのくらい、見えないんですね」 「ええ。うちのかんがるーさん、可愛いでしょう?」 「はい。とっても」 「嬉しいのよね。かんがるーさん専用キャンバスをこんなに見事なアートにしちゃって、自分がほんとうに人間未満のはずかしいペットだって実感できたのが」  こうなること自体はわかってはいた。瞳さんがわざわざ着ていた白い服は、直に触れさせられて私のおまんこから溢れた蜜を染み込ませて塗り広げるためのキャンバスだとは理解ができていた。  だけど、ここまでだと思っていなかった……いや、改めて見せつけられた完成図が、私が想像できた範囲を軽く飛び越えていたのだ。シャツがべったり染みになって私が濡らした分を晒し上げるそれが、実際どれだけ恥ずかしいのかを。  シャツの半分以上が濡れてしまってもはや染みの形すらわからないそれが、今も遠巻きに見ている人たちに対しても「このかんがるーさんはこんな格好でこんなに濡らすド変態マゾペットです」とこれでもかと見せつけるのが、どれだけ恥ずかしいか。わかりやすいように斜めの画角で撮られているけど、もはや正面からですら丸見え。見えていないのは私だけだった。  それだけですらない。予想していなかったのは、お尻の穴の後ろまで開いていたスーツのジッパーのせい。かんがるーさん自体が恥ずかしすぎるから気を取られすぎていて、そもそもそれのせいで見せつけるようだったお尻が孔まで丸見えだったこと自体が今ようやく実感できたところだったけど……それ以上に、私を収めている透明な袋にまでべったり愛液が広がって水溜まりのようになっているのが、恥ずかしすぎた。 「おもっ、てたよりっ、すーばい、やばい……っ」 「ふふ。羞恥系のペットとしては大成功みたいね」 「…………っ」 「それに、あまえんぼさんにとっても幸せそうね」  そしてかんがるーさんには、それを受け止めて発散する術がひとつだけあった。飼い主兼ママに抱きついて、甘えて擦り寄り可愛がってもらうことだ。辱めの末に理性が耐え切れなくなったら、自動的に情けないあまえんぼになるように作られている。  そしてそれが幸せだから癖になる。ぴったりくっついて、自分が人として終わっちゃったことを突きつけられて、その唯一の逃げ道として飼い主へ擦り寄り媚び甘えることを覚えさせられていく。  これ、危険だ。ちゃんと面倒を見て飼ってくれそうなパートナーとしかやらない方がいいと思う。あまりにもマゾを刺激しすぎて、本能の一番奥のところを引きずり出されて人間未満のあまえんぼペットにされてしまう。  その代わり、そういう人に向けて恥をかなぐり捨てて媚びるには最高だろう。今の私は普段ならごちゃごちゃと考えてしまう強がりや遠慮を挟む余裕なんてひとつもないまま、とにかく瞳さんへ縋り付き甘えて幸せになることしか考えられていなかった。そうして己の全てを差し出して懇願して、それを受け入れてくれるなら……きっと、信頼できる人だろうから。


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