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雪中アヤメ
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ヒューマンファーム見学レポート

 この国のアダルト産業は昨今それなりに発達しているほうで、中でもどの企業が一番とは言いがたい。ただし、ことSMやボンデージ系のジャンルに限れば誰もが口を揃えて言うだろう。ミスト・スランバーほど規模も大きくマニアックへ余念のないところはないと。  そんなミスト・スランバーが、つい先日とあるテーマパークを作ると話題になった。敢えて人里離れた立地に作り、未成年が触れる可能性のある場所には広告ひとつ出さず、一方で外国に向けても一定の発信をして、徹底的に必要な人にだけしっかり届くよう気を配っている。当然それに興味のある私は見逃すことなく、プレオープンに合わせて訪れることにした。……本当はその前の時点でスタッフなどの募集があったそうなんだけど、ちょっとそこまでは勇気が出なくて。  そんな8月初頭、学生最終年の身分たる私にとっては夏休みに差しかかった頃。現実逃避というわけでは断じてないけれど、予定通り他の全てを忘れて試験稼働中のテーマパークへ遊びに来たのだった。  ここの名前は『プロジェクト・ヒューマンファーム』。……その名の通り人間を家畜として飼い、その様子を観光資源として公開するという凄まじいコンセプトのアダルトテーマパークである。  廃ゴルフ場を買い取ったという孤立した平地に大きなガラスドームを作って、その中を牧場の形に整えた場所だ。なんでもマジックミラーのような光を内側にだけ通す形態と、太陽光発電ができる形態を兼ねた新素材らしい。冬は陽の光を取り込み、夏は遮光してほどほどの冷房を回して快適に過ごせるように作ってあるのだとか。  それはこのパークのテーマ上とても大事なことなのだと、私が参加したツアーの案内役さんは語った。確かにそれはそうだと思う。 「少なくとも、裸の人が運動しても快適でいられないといけないですもんね」 「ええ。様々にケアは施しておりますが、それでも牧場全体の気温は厳密に管理しております」  私たちは今、馬車に乗っていた。三頭立ての小さな馬車に、10人ほど乗り込んでいる。  しかし屋根のない馬車はとてもゆっくりだ。なぜなら、引いているのが馬ではなく人間だから。  ポニーガールやポニーボーイと呼ばれる存在で、この牧場では馬として飼育されている。細部はそれぞれ異なっているものの、全身をハーネスに締め上げられて轡を噛まされ馬車に繋がれて歩かされていた。  中央に全頭マスクを被りラバースーツを着せられたボーイが、左右に美しい裸体を晒したガールが馬具を車に固定されて、ガイドさんに鞭を打たれながら進んでいる。速度はせいぜい普通に歩くより少し遅い程度なものの、3人……もとい3頭とも漏れる吐息は色っぽい。 「まずはこの子達を畜舎に送り届けながら、ポニーについてご紹介させていただこうと思います。……このツアーで、皆様の理想の家畜が見つかれば幸いです」  ……このツアーはただの観光ではない。まだプレオープン直後のパークが募集した、同好の士のための見学ツアーだ。  ここに乗っている見学者は、全員がこのパークでの飼育に興味を持っている。ここで実際に見て回って、まだまだ足りていない家畜たちのうちどれかに仲間入りするかどうかを決めるのだ。 「では……走れ!」 「「「んぐぅっ!?」」」  最初の目的地は厩舎らしい。同類である私たちに背中を見られるだけならともかく、一般の観光客に通りすがりにまじまじと見られて恥じらっていたポニーたちは、三頭それぞれ背中やお尻に鞭を受けて走り出した。  普通に歩くだけなら裸で馬車を牽くくらいはし続けられるよう調教されているようだけど、やはり走るとなると体力的に長続きはしないらしい。人が小走りするくらいの速度にはなった馬車で、ガイドさんは命令なしでは走ることすら許されないのだと説明してくれた。その言葉に全員が息を呑んで、中でも一部は明らかに反応している。 「パーク内は写真撮影は禁止とさせていただいておりますが、ツアー中はどうしても人目が集まることが予想されます。他のお客様の視線が向く可能性がありますが、ご了承ください」  三頭分の手綱をまとめて握るガイドさんはもう、それ以上の鞭を入れもしない。見世物として歩くときはサービスとして鞭も見せているが、走らせている間は負担が大きいから必要分だけになるのだとか。こういうところ、ただ責め立てるだけではなく家畜として長続きさせるようにできているらしかった。  少しして、手綱を引かれた三頭はゆっくりと減速を始めた。急に止まれば慣性の残る馬車に追突されてしまうから、そう躾けられたのだろう。ブレーキが存在しないからこその様子もまた、こうして見てみないとわからないところだ。  馬車を適切な位置に停車させた三頭は、ハーネスを馬車から外されて別のスタッフさんに連れられていった。どこか誇らしげに、仲間同士で目配せをしている様子だったのは、やはり自分たちから望んでポニーをやっている証左なのだろう。 「厩舎は後からお見せいたしますので、まずはこちらへどうぞ」 「あれは……農耕馬、ですか?」 「はい。足元の蹄ブーツが少し大きいのがおわかりになるでしょうか」  と、馬車に繋いで走らせるプレイはポニープレイでは有名だが、それだけで終わらないのがこの牧場の凄いところ。なんとここでは農耕馬としても使役が行われていて、しかも実際にその労働力を用いて農業を行っているのだ。  当然ながら本物の馬と比べれば作業効率は落ちるものの、会員向けの高級品としては好調らしい。清潔に徹底されたポニーの汗や体液が土に落ちていることを評価するのは、なかなかレベルの高い話だと私たちも思うけど。  土を掘り返す耕耘に精を出すポニーボーイから、種まき用の器具を引いてゆっくり歩くポニーガールまで。そのどれもに共通しているのが、きつく拘束されて辛い労役をさせられているはずなのに嬉しそうなところだった。体力作りや筋トレに効果があるのか筋肉質なポニーが多いけど、そんな力自慢である以前にやはりマゾなのだろう。よくもまあ、そんな人を牧場ができるほどの数集めたものだ。 「ポニーは馬車や農耕のほか、施設の備品運搬やショーに用いられます。ただし、それぞれ事前に希望を取っておりまして、やりたくないものには配属されないよう回されております」 「……なんだか、バイトのシフトみたいですね」 「究極的には、パークの家畜そのものがそのようなものだとお考えいただいて問題ありませんよ」  ……なるほど。確かに仕事扱いとなってお給料も出るという話だし、やることはともかくシステムだけならよくあるものなんだ。  なんだか急にハードルが下がったような気がする。元々本気で考えてきているけど、それならより気楽に飛び込めるかもしれない。 「そしてこちらが厩舎と、併設の放牧エリアとなります。こちら側の区画は触れ合い広場も兼ねておりますが、これも希望制です」 「……なんか、思いのほかラフにエロいことしてるんすね」 「ふれあい広場に入る際にはお客様にも清潔を徹底していただいておりますし、あそこまで許容し望むポニーも存在します。首に掛けている札に許容範囲が記されておりますので、細かく指定も可能です」 「なるほど……」  ふれあい広場の形式そのものは、普通の動物園とさほど変わらない。柵に囲まれた空間にお客さんが入って、パークや馬自身の許容する範囲内での触れ合いが行われる。  単に歩いているところに近づいて撫でるだけのこともあれば、背中に鞍がついていて騎乗できるようになっている馬もいた。お尻を叩かれて嬉しそうなポニーガールが目立つ一方で、中にはカバーを外されて露出した性器を扱かれて悶えるポニーボーイも。よく見れば確かに、何が可能かによって身につけているものが少しずつ異なっている。  装具の違いはそれだけに留まらず、裸を見せたくないポニーはラバースーツに身を包んでいたり、顔を隠したいポニーは全頭マスクや馬マスクを被ったりとさまざま。どこまでの変態かはポニー側が定義して、客が趣味が合うように選ぶ形が取られていた。 「もちろんふれあいを希望しない馬もおりますので、それらはこちらの区画に。放牧地でくつろいで遊んでいるところを鑑賞することも可能です」 「まるで動物園みたいですね……」 「家畜の望む形での被虐を見せる施設ではございますが、あくまで見世物としてではありますので。どれだけ隠しても構いませんが、見世物にはなっていただくことになります」  それは確かに、そうだ。労役をこなしていてもここの主目的はあくまで観光地であり、家畜が養われ報酬も出るのは展示物だから。そこは従わなければならない線引きなのだろう。  もっとも、それは募集の時点で大きく明示されていた。嫌であればそもそも応募していないから、見学者は見世物扱いを苦にしない、それどころか興奮する変態ばかりだった。  畜舎はというと、全てのポニーの休憩場所であり固有空間だった。広いとはいえない小部屋にそれぞれ入れられて、寝転がっていたり立ったまま壁についた玩具と戯れたりしている 。  しかし鑑賞ルートは存在するから、この中にもお客さんは入ってくる。少なくとも開園時間中は、ポニーたちに誰にも見られない方法は与えられていなかった。 「その他にコースを設営しての競馬や、他の家畜を交えての品評会なども計画しておりますが、まだ試行段階です。数も足りてはおりませんので、皆様のご参加をお待ちしております」  馬車を牽いていたポニーは畜舎に帰ったから、ここからは徒歩でのツアーとなる。続いての目的地は隣接している牛舎だ。  表の放牧地では、ポニーとほぼ同じ拘束を受けた牛たちがのんびり。ポニーとの違いはいくつかあるけど、わかりやすいのは首元のカウベル、必ず露出している胸、全身の牛模様だ。模様は肌に描いているものもいるけど、大半が牛柄のラバースーツになっている。  それと、こちらは雌しかいないらしい。プレイの上ではアソコを搾られる雄牛というのも聞いたことはあるけど、ここは牧場だ。精液では畜産物足りえないと、あまりにも当然で惨いことを言われていた。 「中には農場での奉仕も希望する牛が存在しますが、多くはこちらの畜舎にて乳を出すだけの存在となっております」 「……うわ、すごい光景」 「甘い匂い……」  畜舎は馬のそれよりもずいぶん整然としていて、そこが搾乳場も兼ねていた。生活空間であろう小部屋から出てすぐのところに固定台が存在して、その台へ水平にお腹を乗せる形で拘束されている。垂れ下がった乳房に搾乳器をつけられて搾られていて、牛たちは嬌声をあげながら人間では有り得ないほど絶えず乳を噴き出し続けていた。  搾られた乳は一定量がその場に溜められてお客さんが飲めるようになっていて、それ以外は大きなミルクタンクに送られている。そこで殺菌処理をして、ミルクとして販売しているのだとか。甘い匂いはそのタンクから漂っているらしい。 「牛たちには独自開発された特殊な薬を投与しておりまして、牛のように大量の乳を出すようになっております。健康への害や後遺症はございませんので、ご安心を」 「…………ミスト・スランバーはとんでもない技術を抱えてるって、ほんとだったんだ」 「すごい……」  通路は牛たちの前後にあって、前側の通路から搾乳の様子が、後ろ側の通路からは突き出されたお尻が鑑賞できる。スーツに覆われていたり単に丸出しだったり、玩具が固定されていたり尻尾が生えていたりとまちまちだけど、ここも傍に掲示されている希望内容さえ守れば好きにいじっていいらしい。そこかしこからスパンキングの音が聞こえたり、水音が響いたりしていた。  健康診断の真似事なのか、時にはずらりと並んだ雌牛のお尻へ順番に指を入れてかき混ぜて回る飼育員さんもいる。稀に希望しないとしてお尻をガラスケースに守られている牛もいるけど、全体的にポニーと比べるとずいぶん気持ちよさそうだ。 「搾乳そのものが快楽を伴いますので、それだけでは物足りないという牛は玩具を身につけたりお客様を誘ったりしております。気持ちよくなり続けたい女性の方には一押しの家畜です」  また、この牛にもふれあいコーナー……というよりは乳搾り体験コーナーが用意されていた。形式は同じなものの、搾乳器がつけられずに大きな乳房が垂れ下がっていて手搾り用になっている。  容器目掛けて搾るお客さんも楽しそうで、牛のほうも気持ちよさそうな声をあげていた。轡も噛まされていないのに、もおもおと情けない鳴き声しか許されていないようだけど。  なんというか……他の場所とは違う倫理観が醸成されているというか、独特な世界観ができあがっている。マゾ的な憧れと興奮とは別に、面白いと思ってしまったのは変だろうか……?  まだ敷地は余っているようだから後から増える可能性もあるとのことだけど、この牧場には大きく分けて4種類の家畜がいる。次で3種類目だ。 「こちらは鶏舎となります。ただし、鑑賞で楽しむことが前提のものとなっておりまして、特に羞恥好みの方にはお楽しみいただけるかと」 「羞恥……確かに、放牧エリアの時点ですごいですね」  馬、牛ときて、次は鶏。ただ、乳はともかく卵は人には産めないだろうという感覚は正しかったようで、より観光資源に寄った性質になっているらしい。  羞恥、恥ずかしいという感覚に注力したエリアということもあってか、自由行動が許される放牧柵の中にも凄い格好の子たちが晒されている。  両腕は後ろで拘束されて、脚は曲げて畳んだ状態で束ねられてしまっている。少したりとも膝を伸ばすことができず、可動域のほとんどない足はひょこひょこと小さく歩くことしかできなくなっていた。  しかもその上で、全ての個体に共通して股間が丸出しだ。どうやら隠すことは許されないようで、性器もおしりの穴も丸出し。しかも脚の状態が状態だから、股は強調するような姿勢になってしまっている。 「産卵が役目である鶏は、股間を隠すことを許されません。産卵時に改めて露出させることも手間ですし、オスの不要なぶら下がったものであっても見世物くらいにはなりますので」  確かに合理的ではあるんだけど、やはりとても恥ずかしそうだ。こんなところに自ら望んで入るくらいだから、オスは例外なくがちがちにして揺らしている。  そして羞恥が原因なのか、他よりもマスクを被っている割合が多い。デフォルメしても可愛くなりづらい鶏の頭を嫌ってそのままの子も、メスを中心に多いようだけど。  家畜同士の交尾は禁じられているようで、耐えきれないほど発情した家畜たちは常駐している飼育員のもとへ列をなすかふれあい客に擦り寄るか。当然こんなところのお客さんなんてサドかマゾしか来ないから、下手なことをされないための監視さえあれば悪いことは起こらないようだ。やっていることがことだから、入園料がそれなりにするのも理由かもしれない。  それはさておき、ここまでで一番自信ありげなガイドさんに続いて鶏舎の中へ。そんな得意げな態度に違わず、私たちは揃って感嘆することとなった。 「こちらとなっております」 「うわぁ……」 「これは……壮観ですね……」  馬や牛のそれと違い、体の向きを変えたりという最低限の余地すら残されていない狭い空間。部屋というより箱のほうが近いそれが、鶏一羽ずつに与えられた空間だった。  表の鶏と同じ拘束をされた上で、全身のあちこちをぎちぎちに繋がれて姿勢を変えることすらできない。思い切り開いた股の下は便器のようにお尻だけを乗せる椅子があって、その中央に開いた穴の下からはちょうどお尻と膣穴を分ける位置に頂点がある山の形の斜面が前後の溝まで続いている。産み落とした卵はここに転がり落ちて、溝を伝って集められるようだ。  そしてそんな股下には、オスには一本、メスには二本の謎の機械。何かと思って近くの雌鶏のそれを見ると、ちょうど動き出すところだった。 「うぅ……んぁっ!? あぅ、んぅ……そ、そんなに、みないで……」 「この棒は卵を装填する装置です。前回産み付けた個数の産卵を確認すると、こうして上がってきて挿入され、先端から卵が穴の中へ植え付けられます」 「すごい……これでずっと卵を産まされているんですね……」  棒が縦に上がってきて、ちょうど空になったらしきおしりの穴に挿入。中から小さな音がして、雌鶏の反応から察するに何個かの卵を植え付けられた。こうして奥まで装填されて、それを産んでの繰り返しをする場所のようだ。  ちょうど産み落とされた卵を拾ってみてみると、愛液に塗れた卵状のプラスチックボールだった。さすがに紛い物のようだけど、こうして形とサイズは同じものをひたすら産まされる屈辱は計り知れない。 「ご覧の通り羞恥は最も激しい家畜となっておりますが、希望者は最も多くなりました。ここに繋がれている鶏たちは、どれも尊厳を奪われて恥を晒し続けるだけの見世物となりたがった変態でございます」 「……いい、ね」 「いいですね、これ……」  確かに、見方によっては馬や牛よりひどい。労役やミルクで役に立てるそれらと違って、鶏のすることはただ偽物の卵を産み続けるだけ。一応産んだそれの一部はお土産になっているようだけど、見た目の恥ずかしさも見世物の比重も段違いだ。  しかも、もうひとつ。ここでちょうどアラームが鳴った。 「ぅ……んっ、はぐ、んむ……」 「……これは鶏用の飼料です。見た目はこうですが、味も栄養も人間の食事並みになるよう調整されております。皆様も少しどうぞ」  鶏舎は足元に卵を集める機構があるほかに、顔の少し下にもレーンがあった。そこにフレーク状の固形飼料が流れてきて、鶏たちはそこに顔を突っ込む。これしか与えられないから食べるしかなく、それがどんなに恥ずかしい姿であっても選択肢などないそうだ。もちろんお客さんがいてもお構いなしだそう。  姿勢をほとんど固定されているのがわかる頭だけを下げた姿で貪る鶏たちを見ながら、レーンから数粒を拝借。食べてみると……確かにすごく美味しい。しかも毎食味が変わるそうで、あくまで有効な被虐以外は快適に過ごせるようにしているとわかる。そのほうが長く飼うことができる、だとか。  もちろん食餌中も産卵は止まらない、というか出てきてしまうようで、食べながら卵を産んでいるものも多かった。ただしお尻の穴を産卵に使われている都合上、食後には腸内洗浄を課されているようで排泄の自由すら存在しない。しっかり繋がれたチューブで浣腸されてから、綺麗な直腸にまた卵を産み付けられる様をひととおり見学させてもらえた。  餌というと、ポニーと雌牛は専用の細長い固形餌を轡を外して手ずから与えてもらえるらしい。餌やり体験もまたアクティビティとして用意されていた。  どちらのほうが屈辱的かはなんともいえないけど、少なくとも興奮はしている様子。でないとこんなところに入らないだろうから、当たり前ではあった。  そして、もうひとつ。最後の家畜も見学してから、その日は併設されたホテルに宿泊した。ツアーは2泊3日で、明日は希望した家畜を体験させてもらうことができる。実際にやってみて、入舎するか決められるのだ。  しかし当然、こんなツアーに申し込んだ私たちのような変態は止まれるはずもなく……。  そんなツアーから時が経って、私は正式に家畜としてパークへ収容された。体験を終えて帰宅してからもずっと、何ヶ月も悶々が止まらなかった変態には相応しい場所だろう。  体験のときは一通り全て試させてもらって、自分に一番合う家畜がどれかを確かめた。実のところどれも最高で、応募するときにはどれを第一志望にするか本当に迷った。馬車に繋がれて走る屈辱はそれまでの性経験など簡単に塗り替えたし、がっちり固定されたまま乳を搾られるのは部品にされているような興奮があった。鶏はそれらよりも恥ずかしくて、何度も見られるだけで産卵イキしてしまったほどだ。  だけど、私は最終的にはどれも選ばなかった。本当にどうしようもないマゾだった私には、最後のひとつが一番心地よかったのだ。  それが、これ。他の家畜たちからさえ尊敬されながら見下される、牧場の最底辺。 「ほら、いってこい!」 「んぶぅぅっ!?」  豚だ。この牧場の飼育物としては当然真っ先に候補に挙がったであろう、無様さなら一番の四種目の家畜。私は最終的に、誘惑に抗えずこれを選んだ。  それぞれ希望による個体差はあるけれど、姿形はけっこうシンプルだ。私の場合は胸と股間の穴が丸出しになるショッキングピンクのラバースーツに身を包んで、蹄つきのヒトイヌ拘束具を履かされている。四つん這いから起き上がることはできないが、一応歩いて身動きは取れるから鶏よりは束縛度は少し控えめ。 「んぶっ、ふすっ、ふっ……」 「んぁ……んぐ、ぶるるっ!」  ただし、それは首から下の話だ。豚は胴体こそただのヒトイヌ拘束なものの、強いられる羞恥や惨めが激しいものが多い。ラバースーツは着るならば色はピンク固定で、艶やかな黒や他の色なんて許されない。上質な豚は今後黒豚にするかも、という話は聞いたけれど、今のところはまだ。  それに一番の特徴として、鼻フックが必須になっている。今も私は上方向にしっかり鼻を潰されて、無様な豚鼻を放牧地に晒している。さらにはお尻の穴に挿入された尻尾プラグも、短く巻かれた豚のそれ。馬のような長い尻尾と比べると、ぴょこぴょこと主張して私はこっちのほうが恥ずかしい。一応鼻は豚鼻そのもののような飾りで隠すこともできるけど、私は迷わず丸出しにしていた。 「よし、偉いね。ご褒美だよ」 「んぶっ、うぅっ……!」  その上で口は、豚の鳴き声に近づけるためなのか猿轡に塞がれる。これは種類を選べるから、私はフェイスクラッチマスクとバルーンギャグにした。適度に圧迫感があって、よりぶぅぶぅ言いやすいからお気に入りだ。  そんな豚の役目はいくつかあるけれど、今やっていたのは牧羊犬代わり。追い立てたのは馬で私は豚だから、牧馬豚といった方が正しいかもしれなけど。  放牧している他の家畜に四つん這いで近寄って、追い立てたり先導したりして畜舎へ収容する労役である。家畜たちは豚を見たら一緒に畜舎へ向かうよう躾けられているから、さほど難しい仕事ではない。  ただ、家畜は一頭ずつ連れ立たなければならないし、それぞれに一度ずつ思い切り豚面を見せつけなければならない。その上で尻尾と尻を見せつけながら振るか、より遅い四つん這いの惨めさを噛み締めるかのどちらかとなる。 「よし、それじゃ戻りなさい」 「んぶぅっ!!」  全ての家畜を戻したあと飼育員さまがご褒美をくれるかはまちまちだけど、ご褒美の内容は豚にとっては嬉しいことだ。頭や尻を撫でられたり、鼻フックを上へ引っ張られたり。豚にとって一番のご褒美は、自分が豚なのだと深く実感できる行為だから。  豚のもうひとつの特徴として、単独でパーク内を歩くことがある。畜舎でどこの手伝いをしてくるか命令されて、自分で四足歩行でそこまで行って、役目を済ませたら自力で畜舎まで戻るのだ。GPSがつけられているから迷子にはならないけど、あんまり遅すぎるとお仕置きもある。  そしてそれはつまり、お客様と同じ空間に存在しうるということで。 「お、豚ちゃんだ」 「帰りかな?」 「んぶっ」 「お疲れさまー」 「おーよしよし、ブザマで可愛いなぁ」 「んぅ、っぶ、うぅ……」  すれ違ったお客様には、豚が帰りだと認めた際だけ撫でるところまでは許されている。だから出張する牧畜豚は、帰りのどこで撫で回されるかわからない。勃った乳首を擦るように胸を撫でられることも多いし、お尻も毎回のように叩かれてしまう。それで悦んだ反応をしてしまう豚が悪いのだけど。  そんな調子だから、いくら会員制で民度のいいパーク内とはいえ散々もみくちゃにされて帰ることになる。股間こそ触らないよう案内されているけど、後ろ脚やお尻や胸を撫でられ続けるだけでマゾ豚は発情が止まらなくなるものだ。畜舎に戻った頃にはふらふらが常だった。 「はい、できましたよ。……おまえはよく励んでいるみたいですし、新企画があったら薦めておきますからね」 「んぶっ、うぅ!」  豚に限らず、家畜のスケジュールは三日に一度程度の休みがとられている。いつも拘束されて体に負担をかけているから、人間より少し多いくらいの休息くらいはないとよろしくないのだ。休日は家畜どうしでマッサージをしあって、あとは好きなように生活することができる。……それくらいは人間に戻さないともたないとテストでわかったそうだけど、一体だれがどんなテストをしたのやら。  その休みが明けて、今は拘束具をつけて豚に戻ったところ。大抵の家畜は休日のほうを疎みがちで、私も「休日は拘束など体に負担のかかることをしてはいけない」というルールにもどかしくなるほうだ。だから着け直したときは興奮して、鼻や尻尾を強調して飼育員さまに甘えてしまう。優秀だと褒めてまでもらえたのだから、今日はなおさらだった。 「よしよし。では、今日はふれあい広場です。行ってきなさい!」 「ぷぎゅっ!!」  お尻を強めに叩かれて、私は大人しく踵を返した。これで畜舎待機の日だったら少し寂しいけれど、ふれあい広場ならお客様に甘えればいい。  四つん這いで広場に出ると、今日もたくさんのお客様。こんなニッチな趣味でよくぞとは思うけど、海外からの観光客も多いおかげでこの牧場は繁盛している。私はとりあえず、まだ近くに豚がいないお客様のもとへ駆け寄った。 「お、きたきた」 「うわ……改めてみると、すごいね。ちょっと憧れちゃうな」 「おや、冬花もずいぶん染まってきたじゃない。同意見だけど」 「ぶ、ぅぅ……」  お客様は若い女性の二人組で、珍しいことに二人ともマゾらしい。私のことをじっくり見下ろして観察してきて、あれこれ感想を言い合っている。  実のところ、私はこういう扱いをされるのが一番好きだ。せっかく近寄ったのに触れられもしないでたくさん見られて、恥ずかしい要素をつらつら並べ立てながら勝手に盛り上がられてしまうことはけっこう多い。  とはいえ、そんなお客様方もせっかくの実物と触れ合える場所にわざわざ来ているわけで、そう長く我慢していられるものでもない。尻尾の間抜けさを褒められた私がお尻を向けて振っていると、お客様の片割れがしゃがんでラバー尻を撫でてくれた。 「大丈夫、たくさん触ってあげるからね」 「おお、他のマゾの気持ちがわかっておられる。調教の成果ね」 「咲樹だって同じでしょ。……お腹も撫でていいんだ」 「んぶぅ……ぷひっ」 「ほら、ここ撫で上げられるの好きでしょ。豚だものね」  聞くに二人とも一緒に他の誰かに調教されている関係のようで、だからこそ他のマゾの気持ちを理解できるようだ。お尻を撫でられるのが一番好きだと、振っていたおかげかすぐに伝わった。 休まずお尻を撫で続けられながら背中をなぞられて、無防備にしていたらお腹も撫で回してくれた。手つきも優しいから信頼できると思って、私は芝生へ仰向けに寝転がる。冬花さまはお尻とお腹、咲樹さまは頭と喉をたくさん撫でてくれる。  これではまるで犬だなと思った矢先に、まるで心を読んだかのように豚だと自覚させてくれる。牧場や家畜とのふれあいはは初めてなようなのに、あまりに上手い扱いに撫でられた豚鼻をひくつかせてしまった。  そう、豚が一番悦ぶのは、豚らしく扱ってくれたとき。広場の入口で教えてもらえるそれを忘れていなかった様子の二人は、私を見る目がだんだん妖しくなってくる。  ……試しに、お尻をぐっと持ち上げてみる。 「確か、豚にとっては叩かれるのも撫でられるのと一緒だったよね」 「んぶっ、ぁ!?」 「それに、丸出し……手も洗ってきてるし、こんなの触れと言っているようなものよね」 「ぷぎゅ、っ、んぅぅ!!」  ばっちり伝わった。少し浮かせたお尻には、冬花さまから綺麗なスパンキングが入る。私はあまりに気持ちよくて、撫でられるよりひどい反応をしてしまった。  その一方、鼻を弄び続ける咲樹さまは丸出しの乳首を捏ね回してくれた。牧場に出てきてからずっと硬くしていたから、ちょうど欲しくて乳を揺らしていたところだった。 「不器用な子もいますが……なんて言われてたけど、嫉妬するくらい甘え上手じゃない。口も塞がれてるのに、何されたいのか一目でわかるんだもの」 「ぁぶ、んきゅ、うぅ……!」 「ほんとに。おまんこ掘り返されるより、お尻叩かれながらポルチオこねられる方が気持ちいいんだもんね?」 「ぁっ、ぷぎぃ、ぶぅぅっ……───ッ!!!」  もう手篭めだ、なんにもできない。読み取ってほしくてアピールしていた私の弱い全部が責め立てられてしまって、私は破裂音と水音を立てながら地べたで跳ねるどうしようもない生き物になってしまっていた。  お互いへの奉仕を課されているとかなんとか言いながらサド顔負けの手管で私を踊らせて、しばらくするとようやく手を止めてくれた。私は大の字になって息を整えながら追加の恥を晒していたけど、聞き馴染んだ音に慌てて起き上がる。 「ほら、餌あげるね。栓も抜いてあげるから、じっとしてて」 「おお……こんなに膨らませて入れてあるのね。後で膨らませなおしてあげるから、安心なさい」 「んぶぁ、っ、……あぅ、ぁ……」 「ふふ、よく飲めました。ほんと可愛いなぁ……」 「それじゃ、お食べ」 「あぅっ! ……ん、ぁっ」  餌だ。ふれあいの一環として販売されているヒトブタ餌のペーストを、餌皿へ出す音が聞こえた。空腹をアピールする方法は周知されているとはいえ、豚は基本的にお客様から餌をいただくから朝はお腹空っぽなのだ。  私の轡はフェイスクラッチマスクになっていて、栓を外すと一体化しているバルーンギャグも抜けるようになっている。入っていたバルーンの大きさに驚かれつつ、栓についた穴から吸わされることもできる水を飲ませてもらった。少しこぼしてしまいながら喉を潤して、合図とともに皿へ顔を突っ込む。  他の豚はいざ知らず、私は餌を開口マスクのまま食べる。それができるように餌はペーストになっているし、開口マスクの豚はしっかりトレーニングをしているエリートだとか説明がされている。  顔を汚しながら舌で餌を掬いあげて、あまりにも遅い食餌をする私をお客様は見守ってくれた。あちこち撫で回しながら感想を言い合って、自分たちもやりたくなったことを話したりしながら。 「はっ、はっ……」 「よしよし、けっこう食べられたわね」 「あとは食べさせてあげるから、ちゃんと舐めてねー」  しかし開口マスクで舌だけだと、どうしても盛り上がった部分しか食べられない。これ以上は自力では無理となったら、汚れた顔を見せつけながら待機姿勢を取るように躾けられている。そうするとお客様は顔を拭いて、残りをスプーンでかき集めて食べさせてくれるのだ。  執拗に鼻を押し上げるようにしながら顔全体を拭き取られて、スプーンを口の中でひっくり返される。舌でスプーンの凹んでいる側を舐め取れば、綺麗に食べられて餌付け体験もできるという寸法だ。お客様がやりたければ、もちろん最初から全部こうして餌付けされることもある。  どう作られているのかこの餌が美味しい上に、三食くらいはもらわないと足りないから豚は餌やりを嫌がらない。全部綺麗に食べられたら、人工芝へ五体投地で人間様への服従と感謝を示すのだ。 「よくできました。……それじゃ、私たちは行くね」 「楽しかったわ。ちゃんと豚らしく、この後も励むのよ」 「んぶぅっ」  宣言通り大きめにバルーン栓を入れ直してもらって、他のエリアを見に去っていく二人へ尻尾を振りながら見送る。それから次のお客様を探そうかと思ったところで、脇腹に何かが擦られた。 「んぶっ」 「うーっ、んむぅ!」  近寄ってきていた他の豚だ。豚が他の豚の体に鼻を擦りつける行為は、助けを求める意味を与えられている。振り返ってみると、どうやら6人組を二匹で相手しきれなくなっていたところらしい。お客様がたくさんの豚どうしの絡み合いを見たいようだ。  私はすぐに頷いて、二匹連れ立ってそちらへ向かった。同じような悦びを持つ豚仲間と一緒に遊ぶのは、私たちとしても楽しいのだ。  辿り着くや否や、一緒に来た豚を柔らかい芝へ押し倒した。その上に乗っかって体を擦りつけて、ラバーの擦れ合う豚どうしの戯れを見せつけてみた。  向こうは盛り上がってくれたけど、優位は長続きしない。もう一匹の豚が助けるように横から突き倒してきて、私は二匹に乗られてしまった。頭とお腹に股間が乗せられて、もう自力では逆転もできない。  だけど、こちらに気づいた四頭目の豚が向こうからこっそり寄ってきている。あの子に助けてもらえれば、四つ巴の乱戦に持ち込めるはずだ。私はお客様の歓声に辱められながら、鼻でオナニーをしてくる豚の攻撃を耐えることにした。  ……少しして、お腹に座った豚で見えない丸出しの股間に、豚鼻らしきものが押しつけられる感触がした。あれ、もしかして三対一!?

Comments

イラストが描ける方は羨ましいですが、テキストを書くからにはそれで映えるようにとは意識するところです。

雪中アヤメ

やっぱり変態はテキストや!

黒田伊都子


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