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雪中アヤメ
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ガール・キャット・ロールプレイ 4

「それじゃあ、まずはルールを説明しましょうか」 「ルール、ですか」  後ろ脚を畳まれて四足歩行になったヒトネコと、目線の高さを近づけるために屈んだ飼い主が相対する。イヌのときとは違って、首輪にリードはついてないけど。  今回のプレイにはルールがあるらしい。その代わりに拘束が優しめだが、雌猫ロミアはそう思えているだろうか。彼女もミスト・スランバーの動画は見ているはずだけど。 「まず最初に、ヒトイヌのように命令に従う必要はないわ。お前は犬ではなく、猫だからね。基本的には好きに動いていい。ただし、猫らしくね」 「猫らしく……わかりました」  無理に命令に従う必要はない、か。珍しいやりかただ。ロミアも含まれるであろう調教済の奴隷にとっては、むしろそのほうが難しいかもしれないけど。 「次に、人語は使わないこと。猫なんだから、ちゃんと猫語で喋ってね?」 「は……にゃあ」  おっと、人語の返事が出かけた瞬間に寒気。いやはや怖い、もうプレイは始まっているわけだ。  一度にゃあと鳴いて自覚が深まったのか、心なし顔の色が赤らんでいる。なんというか、かわいい。こんな反応はこの家ではなかなか見られないのだ、みんな慣れすぎて。 「水が欲しくなったら、このボタンを置いておくから押しなさい。近くにいる人間が持って行くから」 「にゃあ」  部屋の隅におもちゃのボタンが置かれた。押すと音が鳴る、クイズ番組で出てきそうなやつ。……なんでそんなものがあるんだろう。 「当然だけど、餌も水もこの皿で出すから自分で食べること。トイレも……ほら、あそこに用意してあるから」 「っ……にゃあ」  そう、この徹底的なペット扱い。この家でペットプレイをするときは決まってこういうことになる。餌は餌皿から犬食いで水も皿から舐めて飲むし、おしっこに至っては仕切りもなくペット用トイレだ。  ……というか、今アナが用意しているあれ、猫砂だ。これのためにわざわざ用意してあったの? 「休んでいてもそんなに文句は言わないけど、暇だったら近くの誰かに絡みなさい。みんな遊んでくれるからね」 「にゃ、にゃあ」  もちろん、こんな状態で遊ぶとなればそれだけで恥ずかしい。それどころかアナルフックが不意に食い込むことだってあるだろうし、大変なのは目に見えている。そしてそれを私たちも理解しているから……ふふ。 「そして最後に。もし発情を抑えられなくなったら、体を誰かに擦りつけなさい。……応えてくれるかはわからないけどね」 「……にゃぅ」  うわぁ、意地悪だ。わざわざこれを言っておくことで発情への逃げ道を作る代わりに、そこに誤解の可能性を与えない。気持ちよくなりたかったら宣言するしかないんだ。  しかも、宣言したとしても発散できるとは限らない。この言い方は私たちへの「焦らせ」という言外の指示でもあるし。  普段のヒトイヌとは違って前足は使えるけれど、肉球だから簡単ではない。しかもそれが「猫らしい振る舞いではない」と見られてもおかしくない。自分一匹では気持ちよくなることすら難しいのだと、いつも以上にマゾにはっきりと叩きつけたのだ。  それがわからないロミアではなかったみたいで、どこかもどかしそうな表情で弱々しく鳴くだけだった。 「……にゃ、にゃあ」  まずは動作確認。何事も動けなければ始まらない。このあたりは動かなくて済む普通の拘束プレイとは違うし、ロミアも恥ずかしそうにしていた。  左前脚、左後ろ脚、右前脚、右後ろ脚。本物の動物とは違うけれど、人が四足歩行するのならこれが歩きやすい。関節の少ないヒトイヌならなおさら。私たちには周知の謎知識である。実はアナだけ経験はないけれど、知ってはいるみたいだし。  このあたりの感覚はロミアも簡単に掴んだみたいで、思いのほかすぐに歩き回れるようにはなった。のだが、 「ふっ、ん……んぃゃぁっ!?」  文字に起こすとなんだか不思議な声を出して、ロミアは喘ぎながら慌てて頭を上げた。  普段のヒトイヌプレイなんかだと尻尾はアナルプラグでつけるんだけど、今回は別のもののテストになっているのだ。頭を下手に下げたりすれば、首輪に繋がったアナルフックがロミアのお尻をこじ開ける。  少し疲れて首が垂れるたびにそれで姿勢が戻るあたり、このアナルフックテールはかなり凶悪な代物だ。上級者向けというか、姿勢矯正には少なくとも絶大な効力を発揮しそう。餌の時どうするんだろう、なんて思ったけれど、それはロミアが考えることだ。ちょっと気の毒だけど。 「……ん」 「あら、もう大丈夫なの?」 「……にゃ、ぁ」  さらにしばらく動いて、適度に疲れてきたところでようやく満足したらしい。性欲はとっくに酷いことになっているだろうに、大した自制心だ。  ロミアは慣れてきた四足歩行で歩み寄って、奏に脇腹を擦りつけた。にやつきながら眺めていた奏は少し残念そうだったけど、ロミアが切なげに一鳴きするとがらりと表情が変わった。ペットショップで可愛い動物を見るような目から、自分に縋ってくる可哀想な雌奴隷を見下ろすような熱い眼差しに。  その変化にロミアも少したじろいだけれど、ああなった奏はしばらく止まらない。私はこちらに来るまでは、ただ鑑賞するだけにしておこう。


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