XaiJu
雪中アヤメ
雪中アヤメ

fanbox


ポニー合宿(仮) 8

(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が変更される可能性があります。ご容赦ください。  昨日の調教後はずいぶんと醜態を晒してしまったが、寝て起きれば思考そのものは随分と明瞭になっていた。普通にものを考えることもできそうだが、しかしどうにも普段と違う。  なんというか、人間に戻れないのだ。全身の拘束具がわたしを馬だと自己認識させ、わたしが人間であることを前提とした思考ができない。不自由であることが窮屈でもなければ、興奮しつつも一応は辛く苦しいはずの調教が楽しみで仕方ない。早く走りたい。家畜としてオリ様やシノ様の役に立ちたい。 「ふふ、随分馴染んできたみたいだね。それでいいんだよ、カナ。お前は私がそうと言う限り、卑しい雌馬でしかないのだから」  食餌中に掛けられたこの言葉が意識に染み込む。そうだ、わたしは人間でもただの馬でもない。ご主人様方が望めばいつでもポニーに成り果てる、浅ましく都合のいい雌馬なのだ。  そうして馬の姿のまま人の意識へ戻る方法を擦り込まれたことに気づきもせず、わたしは餌を平らげて轡を噛み直した。  前日と同じく貞操帯越しに小水を垂らして流され、手綱を持たれて外へ。今日も天気がいい。全身に感じる陽射しと風は開放感抜群で、そのくせ日焼けもしないし衛星写真にさえ痴態は映されない。こういうところが本当に徹底しているミスト・スランバーだからこそ、わたしはここまで馬になれるのだ。 「今日は、これを使います」 「……ゥ、」 「ン、アゥ!」  今日はこれまでと少し違い、セメントで舗装された道路のような区画だ。その中でも練習場と思わしき場所で、路面電車のような線路がコースを形成している。向こうにある線路なしの舗装路は、ここで感覚を掴んでからということになりそうだ。  そしてこの舗装路には、なんと馬車があった。とはいって小さな御者台に申し訳程度の荷台という、馬車と呼ぶには貧相なものだ。本物の馬とは文字通り馬力が違うから、荷台を使うことも考えるとポニーガール一頭が牽くにはこれが限界の大きさなのだろう。  車庫と思われる建物の壁にやはり手綱受けがあった。今回はまたわたしが先らしく、ミカとアナは一度向こうに繋がれた。シノ様もあちらでカメラを回している。 「馬車には重さがあるから、これまでと少し勝手が違うよ。コツを掴めば難しくないから、頑張って」 「フゥンッ」  大まかに見れば人力車に近い構造をしている。わたしを挟むように伸びる支柱とボディハーネスの金具を数本のベルトで繋ぎ、二輪の馬車から重みが体へ伝わる。たったこれだけの変化だが、まだ動いていなくともわかる。わたしは今、馬車という乗り物のパーツへ貶められた。  こつ、こつと舗装路を踏み締める。硬いぶん反発も大きいが、やはり柔らかな芝生よりは歩きやすい。足裏は蹄鉄がついているから、音が高らかに鳴ってしまうのが少し恥ずかしいけれど。 「まずはこれをやっておこっか。この指示が『ピアッフェ』、覚えて」  昨日言っていた足踏みの指示だ。手綱が上向きに引かれる感覚を覚えつつ、腿を振り上げてその場で足踏みをする。 パレードの見世物になったみたいで微かな興奮がある。わたしかしっかり出来ていることを確認して、共通の停止の指示が入った。  下腹部が疼き始めるのを自覚しながら次の指示を待つ。わたしの横から前に回りながらピアッフェを撮っていたシノ様が、オリ様と目配せして横に退いた。いよいよだ。 「これからは転んでも芝生がないから気をつけて。……それじゃ、発進」 「ンムゥ……ッ」  言われてみれば確かに。歩きやすくなった代わりに、転んだりしてしまえば受身も取れない拘束裸体が硬いセメントに打ち付けられる。昨日の走行訓練では何度か転びかけもしている、言われた以上に気をつけていく必要がありそうだった。  手綱が後ろに一度。ウォークの指示だ。わたしはオリ様の言葉ではなく、手綱の指示に従って歩き始めた。……が、普通に歩こうとしても前に進まない。足の力だけでは馬車が重いのだ。 「重量を考えて、慣性を意識して……そう、その調子」  やり方を変える。一歩の踏み出しを小さくしつつ、胴全体を押し込むように前傾。緩やかに動き出した馬車の速度が上がるにつれて歩幅を大きくし、背筋を伸ばしても問題ないところまできたらそれを維持し始めた。  こつ、こつ。静かな線路に足音が響く。最初の直線を抜けて、もうすぐ右カーブだ。 「視線は前、線路は見ない。道路全体の形を認識して、指示は手綱に集中しなさい。ポニーガールに自分の意思で動く権利はないよ」  歩行を止める時とは違う、やや下への手綱で俯いていた頭を正された。ポニーは御者の手足として思うままに動く家畜だから、勝手に考えて曲がったりしてはならないのだ。  昨日の走行時に近い形で頭を空っぽにして、手綱の指示だけに従って曲がる。ほとんど無理な感触はなかった、これならもう怖くない。  コースは角の緩やかな楔型をしていた。左、右と曲がり、二度目の直線に入る。ここで次の指示があった。 「ちゃんと覚えてるよね?」  緩められた手綱が上から下に振られ、背中に打ち付けられてから再度引き絞られる。パッサージュの指示だ。わたしはそれに少しだけ頬を染めてしまっているだろうか。  脚を大きく挙げるパッサージュは、ウォークより速度が出づらい。そのまますぐに移れば急減速は必至で、最悪わたしが追突されてしまう。それを防ぐために少しずつ移行する。緩やかに減速した馬車はその効果を遺憾なく発揮し、繋いだベルトを緩めることなく無事に移行が完了した。  かぽ、かぽ、かぽ。それこそ行進で見せられるような、魅せるためだけの歩き方で馬車を牽いていく。なかなか進まない景色の端を想像してしまい、わたしの遮眼帯の奥には空想の観客が現れた。 「ふふ、恥ずかしいね。ついこの間まで人間だったのに、こんなにえっちな格好で拘束されて、しかも見せつけるみたいな歩き方で自分から馬車を牽いているなんて」 「フウゥッ!?」  馬としての意識に押し込められて隠れていたわたしのM心が急激に膨張する。ポニーである自分と見世物にされた哀れな奴隷が同時に去来して、貞操帯からはすぐに愛液が滲んでくる。  それでもわたしは歩みを止められない。水平まで上げる太腿を緩められない。もはやわたしは馬なのだから、その惨めさを見せつけるために歩かされていても逆らうことはできない。 「お疲れ様。二周目は軽く走るから、覚悟しておいてね」  恥辱と興奮のうちにあっさり直線は終わり、最後のカーブを経て元の場所へ戻ってくる。停止の指示にも無意識に従って、慣性を味方につけながらぴたりと停止した。ボディハーネスからベルトを取り外され、手綱を引かれて待機場所へ連れられる。アナと入れ替わりでその場に繋がれた。 「次はアナの番だね。馬車は大変だけど楽しいから、頑張ろうね」  覚悟といわれても、わたしは不意に煽られた興奮で頭の中がぐちゃぐちゃになっている。ひどく興奮したままの頭で仲間の歩行を見なければならないし、それもたぶん躾のうちだ。  「馬として使役されることとその苦悶に興奮し、走りながら絶頂できて、その間も無意識に走り続けることができる」。きっとご主人様方は、わたしたちをそんな馬に躾けようとしている。  わたしもそうなりたいと思った。小さな身体を綺麗に伸ばしてピアッフェをするアナを見て、貞操帯中からヨダレを止められずにいながら。 ───────────────── FANBOX先行公開はここまでです。追加シーンを収録して後日pixivにて投稿させていただきます。ひとまずはご支援ありがとうございました。


More Creators