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雪中アヤメ
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ポニー合宿(仮) 4

(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。  手綱を天井に繋がれ横一列に並ぶ。目の前のオリ様はホースの先端を持って蛇口に手をかけ、シノ様はやや斜めからわたしたちをレンズに映していた。  ここまで来れば誰だってわかるだろう。馬拘束のまま水浴びだなんて、なんて惨めなのか。 「ちゃんと綺麗にしようね。大丈夫だよ、ちゃんと一頭ずつやるし、冷えないようにすぐ拭くから」  なるほど、確かに風邪を引いては大変だ。折角の合宿なのにポニープレイはそこで終わりである。胴体は丸出しのこの格好でも寒くない、つまり厩舎に暖房が掛けられていることにようやく気付いたのはわたしだけだろうか。  しかし、また横並びで一頭ずつらしい。最初は中途半端で不要ではとも思った遮眼帯だったが、こうも意図的に横目にさせる場面を作られると意識してしまう。これだけ近くの真横にいるのに全く見えないというのは、どうやらわたしたちの人間としての精神を削っていってしまうようなのだ。 「ファゥ、ンッ!」 「ンゥッ、フゥゥ……!」  今回はわたしが最後だった。横から他の馬の可愛らしい嬌声が聞こえてくる。もどかしい。わたしだって運動後、うっすらかいた汗は早く落としてほしいのに。 「アフ、ゥァ……!」  一頭ぶんの放水の後、水を止めてタオルで拭き取る。二度目のそれが終わって合図もなしに飛んできた水流に身体を打たれ、わたしも似たような声を出してしまう。  ぬるま湯の流水をぶつけられるだけの粗雑な水浴びだが、それが癖になってしまいそうなほど心地いい。自分は馬なのだと、ことあるごとに刷り込まれるような丁寧な飼育が気持ちよくて仕方ない。  いっぽうでタオルは優しく当てられる。家畜だからといって全ておざなりにされるわけではない。ただ体が大きくて肌も人間より強い馬の真似をしているだけで、家畜も人間様に大切にされる存在だ。わたしたちが明日も元気に歩けるよう、必要な労いはちゃんとしてくれる。 「そのまま待ってて。トイレもこのまま済ませちゃお」  ……予想はしていた。何しろ今のわたしたち、水の流れている溝のすぐ前に立たされていたから。落ちないよう金網は被せられていたけれど。  一頭ずつ、今度も向こうから順に処置が行われる。人間に払われるプライバシーなど馬にはないから当然だが、見えずとも音は聞こえてしまうのだが。呻き声があまりに恥ずかしそうなので聞くのはやめたけれど、無論他人事ではない。 「最後はカナの番ね。しゃがんで脚を開いて?」  言われた通りの姿勢をとったわたしの貞操帯が外され、足元の金網も取り払われる。ちょうどお尻の下に溝が来るところだ。晒された水浸しの女性器から命令通りに尿が垂れて、それが終われば先ほどよりも緩い水流で綺麗に流される。  カメラを止めて後ろに回っていたシノ様に尻尾プラグを抜かれて変な声を出してしまいつつ、本日二度目のお浣腸。  ……ここから貞操帯を嵌め直すまでは、割愛させてほしい。確かに好きこのんで馬に身を墜とすような変態だけど、わたしだって乙女なのだ。一応。  諸々の処置を終えてすっきりしたわたしたちは馬房へ連れ戻され、銜枝ごと手綱を外された代わりに鉄格子に閉じ込められた。  わたしたちを散々苦しめた遮眼帯も外されている。夜はこの格好が基本にになるそうだ。各馬房に簡易小便所はあったが、それも貞操帯も使えば丸わかりになってしまう仕様だった。使わずに済めばいいけれど。  それに加えて、三つ隣り合わせになった畜舎は視覚的に隔てられていないのだ。お互いのことはしっかり見えてしまう。 「みんな、ご飯だよ」 「……アゥ」  時間は夜、到着が午後だったから昼はなかったが、当然これもある。何が起こるかなんて見え透いた餌の時間を認識して、わたしたちは一様に震えた。ほんの少しの恐怖も多少の期待、それと大きな興奮。きっとその割合は三頭とも同じはずだ。  次々に鉄格子に空いた穴へ顔を出す。ちょうど少し余裕を持って頭が通るくらいの、用途がわかりやすい空間を使えばすぐ下には受け皿がふたつ。というか、餌皿なのだろう。縦に割った竹がしっかりと設置されていた。 「見た目はともかく、ちゃんと美味しいから。たくさん食べてね」 「ん……あぐ、っむ、んくっ……」  その竹皿のに注がれたのはあまり美味しそうな見た目はしていない流動食と水だった。食欲を奪うほど毒々しい色はしていないが、そもそも流動食そのものが食欲を煽らないのだから仕方ない。  しかしこれが美味しいらしい。こういう時のオリ様は嘘をつかないし、馬であるわたしたちにわざわざ言ったのならなおさらだ。さすがに気遣いが必要だと思ったのだろうし。  ヘッドハーネスから口枷を外されて、自由になった口をおそるおそるつけてみる。舐めとったそれは意外と悪くない味だ、わたしとミカはそのまま食べ始めた。 「ああ、轡は外したけどお前たちは馬だからね。人間の言葉なんて喋らないよね?」 「あ、ぅ……はむ」  三頭揃って一応の警告を当然と聞き流すが、アナは少し様子が違った。餌の美味しさには気づいたみたいだけれど、口の付け方が控えめだ。わたしたちと違って彼女だけはペットプレイを経験していないから、当然なのかもしれないけれど。  ところがそんな女々しい、人間らしい挙動を、我らが調教師様が許すはずもなく。 「むぐっ、うぅ!?」 「後輩なんだから戸惑うのもわかるけど、餌はちゃんと馬らしく食べようね?」 「ん、ぅ、ぅっ……!」  後頭部を掴まれた勢いで口を餌皿へ突っ込まされ、真上から注がれる笑顔の圧力に耐えかねて大人しく食べ始めるアナ。心なし涙目になっているが、馬であることを放棄すれば口答えできる今も従っているのだから心配はいらないだろう。  こうした姿を目の当たりにすると、わたしたちはほんとうに馬として躾けられているのだなと実感する。嫌と一言言えば解放してもらえる環境だから、当然ながら皆望んでこうしていることは明白だし。  甘過ぎず辛過ぎず、飽きがくる味でもない餌はいつの間にか消えていた。つくづく技術力の無駄遣いだ。介護業界に売る予定はあるというのは後から聞いた話だけど、開発の動機がどう考えてもおかしい。そのおかげでわたしたちは今のように快適なプレイに興じられるのだから、ありがたいことこの上ないけれど。 「んく、んぐっ……」  続いて水皿にも口をつけて直飲み。これもまた被支配感を煽ってくる。轡に空いている小さな穴に先端を通せば厩や待機地点の壁につけられた給水器からも水は飲めるけれど、皿から飲んだ方が楽だった。そうでなければわざわざ獣のような飲み方などしないから、これもやはり計算のうちなのだろう。ファーストテストはどのように行ったのだろうか。  揃って餌を平らげたわたしたちは改めて轡を噛まされ、ご主人様方が去って暗くなった畜舎で藁の寝床に横になった。思ったより柔らかいし、素肌にちくちくしたりもない。気分を煽られ続けるだけで、この調教は徹底的に無駄なストレスが排除されている。それがミスト・スランバーの方針でもある。 「ッ、ウゥ……」  切なげな呻き声と一緒に藁を鳴らしたのはミカとアナのどちらだろうか。気持ちはわかる。これだけ煽り続けられて、性刺激はまる三日以上の合宿の間一度として与えられないのだ。貞操帯の中がもどかしい。今すぐ慰めたくて仕方ない。でも性器は分厚い拘束具の中だ。そもそも腕も動かない。  しかしそんな状態なのに、三頭とも眠れないとはならなかった。やはり慣れない拘束状態や歩き方、歩行訓練で疲れがあったのかもしれない。アナのアームバインダーが藁と背中を叩く音もいつの間にか消えた。 「ン……ムゥ…………」  余計な自由がない状態がひどく心地よくて、不健全な行為による健全な疲れもあっていつもより眠りは深かった。ポニーとしての姿がずっと前から馴染んでいるかのような、どこか不思議で気持ちいい感覚だった。


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