それは戦闘……というには、あまりに一方的な蹂躙劇だった。
「このッ……うあぁ!?」
アストレアの清廉なエナジーを刃として結晶化させたエクシード・ソードは、地球に存在するどの鉱石よりも靭やかで、硬く、鋭い。
しかしそんな性質も、敵に触れることが出来なければ何の意味を為さない。
宙に浮かびながら舞うようなシェンハの身のこなしに、鍛え上げたアストレアの剣戟はいとも容易く躱される。
それだけでなく、シェンハの体躯の二倍はあろうかという長い槍は、剣を振るったアストレアの無防備な肉体を的確に切り裂いた。
「……うあぁあああああぁ!!」
「アストレア!!」
派手に火花を散らして悲鳴を上げるアストレアの名を叫んで、クイーンは自らもシェンハへと飛びかかった。
邪悪な意思を持つ者を縛りつける力を持つセイクリッド・ロッドによってアストレアの支援を試みていたクイーンだったが、どれだけ力を込めようと、シェンハの動きを封じることは敵わなかったのだ。これまで女王として数多の敵を退けてきたクイーンにも、このような経験は初めてのことだった。
その焦りが認識を僅かに鈍くした。アストレアと剣を交えながら、シェンハはクイーンに向けてエネルギー波を放ったのだ。
「しまっ……きゃあああぁああああ!?」
正面からそれを受けたクイーンは、身体が飛び上がる程の衝撃に上体を仰け反らせる。敵への視線が切れたその一瞬を、シェンハは見逃さなかった。
斬り伏せたアストレアの元から跳躍すると、槍の刃先を真っ直ぐ突き出す。その凶刃は、クイーンの胸で青く輝くコアの光を迷いなく突き刺した。
「あ……ッ!? くあぁああああああぁ!?」
クイーンの美しい声が鮮烈な苦痛を奏でる。エナジーを充填するためのコアを責められるのは、女神にとって急所を抉られるに等しい。
「ぁ、はッ……! あぁ……!」
息が止まるような痛みに貫かれ、火花を吹き上げながらも、クイーンのコアは何とかシェンハの槍を受け止めてみせた。
煙の上がる刃先を見つめながら、シェンハは少しだけ感心したような声で告げる。
「ふぅーん。やっぱ硬いんだね、ここは」
「当然です……! あ、あなたの攻撃などでは、傷一つ……ぐうぅ!?」
クイーンの虚勢は最後まで紡ぐことを許されなかった。シェンハの小さな手が、クイーンの気道を思い切り絞め上げたのだ。
「ぁ……ぐ、ぁ……! は、なし……ッ! ん……!」
シェンハは女王の首を掴んだままゆっくりと上昇していく。赤いブーツに包まれた二本の足が地面から引き離され、助けを求めるかのようにバタバタと足搔いた。
「は、ぐッ……! ゃ…… ん、ぉ……」
自身より二周りも小さな体躯しか持たない敵。そんな存在を前にしながら、クイーンは絶望的なまでの力の差を実感させられていた。
これまで相手にしてきた、どんな筋骨隆々な怪物よりも、この細い指から伝わる力は圧倒的だった。
(あ、ありえな、い…… こん、な……)
「クイーンを……離しなさい……!」
全身を斬りつけられ倒れていたアストレアは、目の前で繰り広げられているクイーンの危機に、何とか自らを奮い立たせる。
しかしシェンハはそんな彼女を一瞥すらせず、槍から放ったエネルギー波を見舞った。
「ああああぁああああああぁ……!!」
「女神様の力ってこの程度? こんな弱っちい奴らに、銀河の管理なんて務まるわけないじゃない」
シェンハはつまらなさそうに吐き捨てると、必死で自らの腕を引き剥がそうとするクイーンを乱雑に放り投げた。
力なく崩折れるクイーンの元に、アストレアが駆け寄る。
「ほら、最後のチャンスをあげる。あんた達の全力を打ち込んでみなよ」
高みからそう告げたシェンハが持つ槍の刃先に、巨大なエネルギーが結集されていく。その冷たい波動は、近くにいるだけで身を裂かれるような痛みを二人に与えた。
「ッ……ふざけないで! 絶対に後悔させてやるんだから!!」
「私達は、負ける訳にはまいりません……!!」
アストレアとクイーンは、残された全てのエナジーを振り絞り、渾身の一撃を放った。エクシード・キャノンとセイクリッド・キャノン。これまで幾度となく地球の危機を救ってきた、女神たちの必殺技。
向かい撃つように放たれたシェンハの名前もない一撃が、それをあっさりと飲み込んだ時。
「ぁ……」
アストレアの口から絶望の音が漏れた。
時間にして数秒にも満たなかったが、呆然と立ち尽くす自らの眼前に、己の肉体を盾にするかのようにクイーンが立ち塞がったのを、スローモーションのようにアストレアは捉えていた。
互いの声が届くよりも先に、シェンハの放ったエネルギー波が弾け、周囲を熱と音だけの世界に変えた。
黒煙の色が薄れていくと同時に、この戦いの結果が顕になっていく。
そこには全ての『光』を失い力なく横たわるクイーンと、息も絶え絶えにその後を追おうとしているアストレアの姿があった。
「そん……な…… クイー……ン……」
これまで何度も自分の危機を守ってくれた絶対の女王は、その名を呼ばれても反応することはなかった。
「あははっ、雑魚を庇って先にやられちゃうなんて、とんだ間抜け女王ね」
倒れ伏す二人の傍らに降り立ったシェンハが、甲高い声であざ笑う。
アストレアは怒りで体が熱くなるのを感じた。しかしその激情を持ってしても、もはや立ち上がることすら敵わない。
少しでも気を抜けば意識が飛びそうになる中で、アストレアは必死に両腕で上体を支える。
「許、さない…… あなたは、絶対に…… あぐッ!?」
その必死の抵抗すら歯牙にもかけず、シェンハはアストレアの肩を蹴り飛ばした。地面を転がり、仰向けになったアストレアの目に、女王の武器であるセイクリッド・ロッドを握ったシェンハの姿が映る。
「ほら、女王様からのプレゼントだよ」
「ぁ、やッ、やめ…… くぁはッ!?」
シェンハの思惑を察したアストレアが制止の言葉を吐いた時には既に、セイクリッド・ロッドの柄がアストレアの秘部へと突き込まれていた。
「あぁ……! ぁ、あ、あ…… ぁ…………」
その冷たい感触が、微かに残されていたアストレアの意思を、その残滓を、全て喰らい尽くした。
ゴトリ、と鈍い音がして、アストレアの頭と腕が地面に落ちた。そのコアから、瞳から、光が失われていく。
「はい、おしまい♪ それっ」
アストレアの性器から生えたセイクリッド・ロッドをシェンハが突くと、それに連動するかのようにアストレアの身体がビクリと痙攣した。
こうして二人の女神は、突如として現れた上位存在・シェンハの無慈悲な力の前に、完膚なきまでの敗北を喫したのだった。
ひゅー
2022-05-29 12:45:01 +0000 UTC724010309
2022-05-23 14:37:04 +0000 UTCひゅー
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