それは一瞬の油断だった。 ヒルを操る醒獣グフィエラを撃破したアストレアが、爆風を背で受けながら勝利の余韻に浸っていた、その時。 上空の死角から襲いかかった肉の塊のような別の醒獣が、アストレアの上半身を瞬く間に飲み込んだ。
「んっ!? なっ!? あっ……!!」 大きな口は、伸縮運動を繰り返しながらアストレアの身体をズルズルと引き込んでいく。
「や、めっ……! 離、し……ッ、んぁ……!」 腕ごと上半身を拘束されたも同然のアストレアは、引き締まった脚を空中でバタバタと暴れさせるという無様な抵抗しか出来ない。
そこから触手はゆっくりと、彼女の身体を飲み込んで行った。外に出ているのが足先だけになろうとも、アストレアは最後まで抗おうとしていた。 しかし醒獣は無慈悲に、女神の身体を嚥下していった。
「く、ぅ……何よ、これ……」
悪臭と水音。エナジーコアから放たれる光によって辛うじて視界に映る世界は、おぞましい桃色に彩られていた。 「んっ……うそッ、私……食べられて……」 絶望的な事実に、アストレアの表情が凍りつく。 エクシーズキャノンを放ったばかりの彼女に、この分厚い肉の壁を内側から破壊するだけのエナジーは残されていない。
「きゃっ! ぁあ、んっ……!」 ぐじゅぐじゅと音を立てながら壁が蠢き、その生理的な不快感に全身がびくんっ、と跳ねる。 艶めかしく輝く銀色の身体を貪るかのように、壁はアストレアの身体を締め付けていく。
「だ、め…… こん、な……」 か細い抵抗の声が届くはずもなく、壁はアストレアを埋めるかのようにゆっくりと閉じていく。
「ん、むっ…… んんっ……」 全身の自由が完全に奪われ、遂には呼吸すらも封じられた。 もはや消化を待つだけとなったアストレアの意識の残滓に、澄んだ声が響いた。 『アストレア。どうやらこの醒獣は内側から破壊するのが得策なようですね』 力なく閉じられていた瞳が、微かに開かれる。 『私が外からエナジーを送ります。あなたの力を見せておやりなさい』 その声のすぐ後、アストレアの全身に漲るほどのエナジーが流し込まれた。 清らかでいて力強い、よく知るエナジーの感触。
アストレアは受け取った力をコアから放出し、自らを拘束する忌々しい肉の壁を内側から破裂させた。 空中に放り出された身体を、二つの掌が包むように受け止める。
「ありがとうございます、クイーン。また助けられましたね」 アストレアの微笑みに、銀河系を統べる女神、クイーン・ステラもまた柔和な笑顔を向けた。
「アストレア。またこの星に大きな脅威が迫っています。共に人々を守りましょう」
ひゅー
2022-02-15 12:13:23 +0000 UTCShime
2022-02-14 21:43:11 +0000 UTCひゅー
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