XaiJu
u5rilla
u5rilla

fanbox


いつか星の海で

ーもう少し、2人でいたいです。


決戦前、艦の付近を巡航中シャドウバガーとの対戦を終えたあと、ポツリ呟いた。


「……!あ、あはは!何言ってるんだ後輩っ!あ、い、いや、違う。そういうことを言いたかったんじゃなくて……」


愛しいその人はいつもコロコロとよく表情を変える。

いまは焦った顔。


「つ、通信切れてるよなっ?ブリッジに聞こえてない、よなっ」


機体の通信が艦と切れているのを確認後、先輩はホッと安堵を漏らした。


ークロガネ先輩。そっちに行ってもいいですか?


「こ、こっちに…?い、いいよお…!?」


機体のシートベルトを外し、後部座席の先輩の元に寄り添う。


「ちょ、ち、近い……!いや、嫌じゃあないよ!嫌なわけ……」


大の大人2人が一つのシートにおさまるわけもなく、ギチギチになってしまう。

少し強引に先輩の腕におさまる体勢になる。でもこれくらい許されますよね。最後かもしれないんだから。


「……」


少しの沈黙の間、目と目が合う。

そんな沈黙を先輩はいつもの調子で破ろうとする。


「あ、あはは!流石に2人はキツい…な!改良の余地アリってやつだ!」


ー先輩。


「わ、わかってる……よ。後輩がどういう気持ちでこうしてくれてるかくらい。こんな機械いじりばっかの俺でもさ…!でも緊張しちゃって」


ーじゃあこうしましょう。


俺は機体の電源を予備と生命維持活動分の最低限だけ残し切る。

機体内の照明は落とされ、宇宙の藻屑と等しくなる。

星の海に囲まれ、反射した光だけが機体内の俺たちを僅かに照らしていた。


「ああ……後輩はいつもそうやって……ずるいんだ」


ー先輩の話が聞きたいです。


「話?そうだなあ……。……じゃあ家族の話を聞いてくれるかい?俺の大事な。大事だった家族の話」


そう言って先輩は持ち込んでいた携帯端末を開き、一枚の画像を表示させた。

その画像には少し年老いた白髪の男性、よく似た容貌の双子らしき2人、角の生えた男性、体格がふくよかに恵まれた色黒の男性、背丈の低い少年と、クロガネ先輩が仲睦まじそうに映っていた。


「血は繋がってないけど、みんな俺の家族だったんだ」


ー先輩は変わらないですね。


「そうかな?いまの家族ももちろん大事さ。だからかもしれない」

「みんな腕の良い技術者だったんだぜ。じっちゃんは俺の目標だったし、ヘパ兄はロボット工学で右に出る者はいなかったしタロスとのコンビは抜群だったな。タケ兄も心が籠った良い物を作るし、トヴァ兄ははた迷惑なとこもあったけど生体工学ではピカイチだった。ムサシは技術者じゃないけど風呂が嫌いでさ、いつもじっちゃんと無理矢理風呂に入れてさ…」


先輩は画像を指差しながら、愛おしむように、慈しむような眼差しで語った。


ー本当の家族だったんですね。


「ああ。みんなシャドウバガーにやられちまったけどな」

「なあ後輩。技術ってさ、“たすき”だと俺は思うんだ」


ーたすき?ですか?


「ああ。俺たちが今乗ってる機体だって、生活をしている艦だって、遥か過去の誰かからのたすきでできているんだ」

「誰かの失敗や誰かの成功、一つ一つは薄っぺらい紙みたいな物かもしれないけど、その全てが積み重なって今に繋がってる。誰かから誰かに、その誰かからじっちゃんに、じっちゃんから俺たちに……」


ーその紙が重なって、宇宙まで来られた。


「そういうことだ。だから、だからさ」

「この戦いは絶対に負けられないんだ。じっちゃんから受け取った、このたすきを次の誰かに渡すためにも」



ークロガネ先輩!


「んむ!?こ、後輩!?ん……何を…!?」


不意打ちのキス。ずるいかな。

でも先輩は拒まない。甘く、労るような優しい口付けだった。


「な、なにするんだよ!ずるいぞ!」


ーこの“たすき”は戦いが終わったら返しに来てください。


「……!こ、このぉっ!後輩のくせにカッコイイこと言っちゃってぇ!そういうのは、お兄ちゃんの役目なんだぞおっ!」


あくまでクロガネ先輩らしい、可愛らしい抗議。そうだ。先輩は人類滅亡の危機でもどんな時も変わらないんですね。


「……なぁ後輩。“たすき”はちゃんと返すけど、今もう一回、その……キスしてもいいか?」


星々の光だけに照らされた空間で、微かに紅潮した表情が見て取れる。


ーもちろんですよ。


「後輩っ!」


今度はお互いを求めるように激しく。

口付けと身体を引き寄せ合い、手を絡めて。

先輩と2人なら、このまま本当に宇宙の藻屑に成り果ててしまっても、星屑の一部になってしまっても良かった。


でも、だめですよね。


「ああ…凄いなあ…こんなにドキドキしてる……。もし、もしさ、戦いに負けて死んじまっても、生まれ変わったらまた後輩を見つけるから。だからまたこうして手を繋いでさ。キ、キスして……さ。そうしたら絶対に思い出せるから。何度忘れちまっても。このドキドキで絶対に、絶対に後輩の事を思い出すよ。いいだろ?」


ー未来に“たすき”渡すんでしょう?


「!そうだな……!後輩には敵わないよ!ははは!」

「なぁ後輩。また俺とこの星の海に来てくれるかい?」


ーもちろんです。


「ありがとう。その時は、ちゃんと言うよ。“たすき”と一緒に…な!」

「……で、でも、ちょーっとだけ、前借りしても…いいか?」


ーしまらないですね。でも、嫌なわけないです。


「こ、後輩っっ!!」


未来は絶望的かもしれない。後悔するかもしれない。

でもクロガネ先輩となら、掴んだ未来がどんなものでもはにかんでいけるだろう。


いつかこの星の海の先までも。

Comments

本家も確かに良かったですね〜☺️ でも、個人的にはゆうごさんの特殊の方が好きです! 秘島の頃から前進したな〜って感じと、不穏漂う最終決戦感が放サモぽかった…… いや、放サモしてました!! お陰でニヤニヤが止まりません😁

ありがとうございます〜!! 本家の特殊も良くはあったんですけど、できればこうであってほしかった…!という願望でした笑 お褒めいただいて嬉しいです❤

號ゆうごう

聞こえない筈のBGMが聴こえて来る……。 選択肢や先輩の表情差分も見えるし 完成度高いです!


More Creators