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ルフAA
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巨大化できるロリ魔法少女が勘違いしちゃう話

「お兄さん〜♡ どうかなぁ〜?」  猫撫で声を上げながら、若い青年を上目遣いで見上げる少女。青年の背が高いわけではなく、少女がその声に見合っただけの背丈と幼い見た目なのだ。これだけだと一見、仲の良い兄妹の何気ない日常にも映る。だがそれは、少女の格好が全てを否定していた。  外見のあどけなさのお陰で一瞬違和感のない、朝の女の子向けアニメのコスプレと言えば誰もが納得する服装に身を包む少女。だが、ただのコスプレ好きな女の子で片付けることはできない異様な様子がその空間には漂っていた。  異常な発汗と震えを伴わせる青年が見つめる先には、Tシャツとズボンが一着ずつセットで地面に倒れており、”ソレ”に対しての反応を待ち焦がれる女の子の姿があった。溢れんばかりの笑みの少女と、気を失いそうなほどに動悸を激しくする青年。この2つの存在が共存していてなお、納得性を生み出しているのは、2つの人型に落ちる服と、少女の純白のハンドローブとローファーを鮮血のような朱が存在感を放っていたからであった。 「せいぎのまほー少女ユナちゃんがわるい人たちをやっつけました♪ 褒めて~♡」  抱っこを要求するようなポーズで、屈託のない笑顔を見せつけるユナという名の少女。小さな手に綺麗に収まる、艶やかな生地のグローブの中には生々しい赤色だけでなく、丸められたピンクの物体が微かに残っていた。  凄惨さを物語る、かつては妹のように可愛く大切であった少女の細い腕が、虐殺の記憶を青年にフラッシュバックさせる。さっきまで生きていた、それどころか、自分よりガタイもよく喧嘩慣れもしてそうな男が、小さな虫が邪魔だからと潰す様に消滅したのだ。その光景と、目の前で自らに向けられる屈託のない笑顔とが脳内で合わさり、気絶しそうになりながらも、青年は手を伸ばした。 「えへへ~♡ お兄さんのなでなでしゅき~♡」  加えて脳を犯すように入ってくる甘い猫なで声に耐えながらも、桃色に映える髪から手を離さないのは、本能がこの小さな少女に屈服しているが故の生存本能であったのだろう。だが、ただの気のいい優しい性格をした青年がこれ以上の圧倒的恐怖に耐えられるはずもなかった。 「チッ……邪魔なゴミが」  青年が最後に聞いたのは、聞き覚えのないどす黒い声色のセリフと、風を叩き切る重音であった。  突然現れた真っ黒の空間が青年に消えかけた記憶を思い出させる。なぜこんなことになったのか。  雲一つない清々しい朝日の元、青年は歩きなれた路地を進んでいた。代わり映えのしない、目を閉じても歩けるほど慣れた場所。ただ今回ばかりは、運が悪かった。いや、良かったというべきだろうか、如何にもといったガラの悪い男2人に絡まれ、そのタイミングで魔法少女として一仕事してきた彼女と出会ったのだ。  青年を見つけた魔法少女は、満面の笑みを浮かべたが、見たものを虜にする可愛らしい年相応の顔は一瞬にして消え去った。気が付けば魔法少女は、倍以上ある男の胸ぐらを掴み膝をつかせていた。 「あ、お兄さんは心配しないでそこで見ててくださいね♪ ゴ……わるい人たちはささっとお仕置きしちゃうからね♡」  目の前に広がる光景と一瞬映った表情からは想像できない幼く可愛らしい声をかけられた青年は、返事することはおろか、頭を動かすことすら出来なかった。そうして始まったのは”お仕置き”とは名ばかりの虐殺であった。最初は威勢の良かった男であったが、その言葉の汚さが彼女の逆鱗に触れたようで、最初の処刑対象に選ばれてしまった。男を掴んでいる方とは反対の指を向けた魔法少女は、短く何かを口に出す。次の瞬間には、服だけを残して男は跡形もなく消滅してしまっていた。  奇妙であるがまだ、許容範囲内の行動に青年は強張った体が少し緩まるのを感じる。だが、その緩和が視力に余裕を持たせ、見るべきではなかった彼女の行動を目撃することになったのだ。  プリンセスのような純白で薄い生地のグローブ。その上には、肌色をしたムシが怯えた様子で倒れていた。その人型のムシが、服の残骸の主だということに気付いたのは、ムシから発せられる悲鳴に似た低い声を聞いた時だった。  広げられた掌とは反対の手で、緩む顔を抑えるように頬を支える。それでもなお零れる愉悦感とも取れる顔の緩みを作りながら、指を一本ずつ折り、拳を作り始めた。指を曲げるごとに、細い枝が折れたような軽い音が鳴る。その音は、彼女にしか届いていなかったが、その後に発生した悲鳴と思われる音は青年の耳にも微かに届いていた。 「本当はもっと遊んでいたいけど、お兄さんもいるからね……」  意識もほとんどないのか、手のひらに転がる動かないムシに顔を近づけて囁くと、ムシが突然黒い点へと変わる。次の瞬間残りの指をすべて閉じ、拳へと変化させると、彼女は笑みを零した。  その表情のまま、青年のほうへと視線を向ける魔法少女。逃げ出したくなる感情すらも抑圧する未知の圧倒感によって金縛りにかけられたのは、青年だけではなかった。青年の奥。もう一人の男と視線を交差させていた。  声にならない声を漏らしながら、腰が抜けたであろう倒れ方をする男。映画で見るような余りにも滑稽な姿であったが、青年はその姿を見ても微塵も嘲笑う様な感情は湧き出てこなかった。マジックのような生易しいものでも、魔法のような可愛らしいものでもない、男の消滅を見せられた後では、気絶しないだけ勇敢に見えたのだ。 「次はキミだよ~わるい人は、しっかり反省しないとね♪」  青年が気付いた時には、魔法少女のつむじがそこにあった。桃色に照らされる頭頂部から発せられた薫る甘く優しい風に、懐かしさと安心感を感じた青年であったが、それが長続きすることはなかった。もう一人の男も、その姿を消していたのである。 「反省した? ……ほら、命乞いをしないと……わたし優しいから許してあげるかもよ?」  呟く声量の魔法少女の声に釣られて、思わず視線を向ける。そこに居たのはネズミサイズになった、数秒前まで後ろで怯えていた男の姿であった。  彼女の言葉に従い、体が弾け飛ぶ勢いで大声の命乞いを始める小人。グローブと同じ素材で作られた靴下の先にある、年相応のおしゃれなローファーに、収まる大きさの生物から出たとは思えない十分な音量であった。青年にも十分聞き取れる、断末魔がやる気のない所業に思えてしまうほどの声色。青年は、人の限界ともいえるそれを聞いて、これ以上のことは起こらないだろうという根拠のない安堵を抱いていた。だが、それは一瞬で否定される。 「え~? 全然聞こえないんだけど~♪ やっぱ~わるい人たちは、反省なんてしないんだね~じゃ、お仕置きぞっこー♪」  魔法少女は、可愛げに宙で指を振ると、足元の小人がもう一回り小さくなる。それでもなお、絶叫の声は大きくなっていった。丸みを帯びた、オシャレなローファーがゆっくりと角度を下げていく。その度に足元の声質が変化していき、骨を鳴らしたような軽く小さな音が間に割り込んだ。  グシャという、トマトでも踏み潰したような柔らかい音と共に、赤い何かが足の隙間に果肉如く漏れ出ていた。いとも簡単に潰れたそれが、トマトや準ずる食べ物なんかではないことを青年は理解していた。だが意識を保てたのはその光景が思わず過去と重なったからだ。学生のころ好きだった怪獣映画のワンシーンだ。  青年は思い出す。膝に可愛い姪っ子がいた。そして思わず呟いた”カッコいい”という言葉と彼女の笑顔を。 「あ、お兄さんやっと起きた~♪ えへへ、ごめんね~驚かせちゃって」  青年の視界を埋め尽くしていたのは、見慣れた少女の笑顔。だが、顔を近づけただけにしては、比率がおかしいほどに巨大だった。青年が辺りを見回すとそこは、溝のある肌色の大地であった。 「ほら、みてみて~すっごく高いでしょ~♪」  誘導されるように、四つん這いで指の隙間へと辿り着く。そこから見える景色は、出張で乗った飛行機より高いのではないかと思える、衛星地図の上にいるかのような景色が広がっていた。  思わず食い入るように地面を覗き込む青年を見て、ユナは年相応の微笑みを浮かべる。その奥へと彼女の視線が向くと、微笑みは邪悪なものへと変わった。  魔法少女の視力で映った地面の光景。それは、突如現れた雲よりも高い巨大すぎる存在を、阿鼻叫喚を作り逃げることをも忘れて立ち尽くし、見上げるしかできなくなっていた、微生物サイズの人間であった。 「お兄さん~見ててね~! かいじゅうなんかも今のユナにかかればひと蹴りで消し飛ばせちゃうんだよ♪」  轟音と共に、目標と思われる、頭一つ高いビルめがけてフリルの付いた足が加速する。  ズゴシャァァ!!!!  魔法少女ユナの、膝を一切曲げない蹴りとも呼べない適当な足の動きによって、地面が底から削り取られる。その程度のやる気のない動きで、そこに元々何があったのか分からない程に巨大な溝を作り上げ、多くがまだ働いているビルや往来の多い道など等しく全てを消滅させたのだった。 「お兄さん♪ どうだった~? かっこよかった~?」  数十分前に見た異次元の恐怖によって麻痺したのか、それと比べ物にならないほどの非現実的な光景を目の当たりにしてか、青年は映画でも見ている気分になっていた。そのフィクション感をさらに強めるのは、自分の何倍もある巨大な顔から放たれる声が、聞きなれた心地の良い声量であったためだ。 「ああ! 昔一緒に見た怪獣映画なんか比べ物にならないくらい凄いよ!」  振り返った青年は、軽く興奮した様子でユナを褒める。その言葉に、抑えきれないほどの喜びを覚えたのか、上機嫌で次の提案を青年に与えた。 「えへへ~嬉し~♡ じゃあね、今度はもっと凄いもの見せてあげる!」  遥か上空で繰り広げられる甘い空間の真下では、やっと動き出した群衆によって地獄絵図が作り上げられていた。たったひと蹴り、ひと振りでこの街の中心地を蒸発させた事により、交通が完全にマヒし完全に孤立状態で怯えることしか出来なくなっていた。  衝撃波や巨大な地揺れに耐えきった距離ある位置にいた人々は、目の前に新たに表れた山と砂漠にも似た楕円形のクレーターという天変地異を作り出した存在の次の言葉で絶望に染まることとなった。 「かいじゅうは口からビーム出してたけど~ユナは、指からも~っと、つよつよなビーム出せちゃうんだよ~えい♪」  純白のグローブから一本の指が伸び、先程とは少し離れた位置を指す。青年がその指に目線を向けたことを確認するとユナは、可愛い掛け声を発した。  そんな声とは裏腹に、人差し指から現れたマグマの様な赤色をした熱線は、声が消え去るよりも早く地面に激突する。  揺れに驚いたのも束の間、他人事だと胸を撫でおろしていた住民のほとんどが何が起こったか理解する前に、建物ごと文字通りに蒸発していた。数十mはある指先から放たれた同じサイズの熱攻撃に、人が作り出した鉄筋コンクリートなど耐えれるはずもなく塵一つ残さず消し去ったのであった。  指先の形の熱線に焼かれることなく運よく生き残った街。灼熱の熱風と煮えたぎる地面の横で、安堵と喜びを噛みしめた人々を襲ったのは、どこから現れたのかも分からない爆発であった。 ドゴォン! ボゴォン!! ドゴォン!  赤熱のヒビが各所に現れ、ビルや施設が持ち上がる。続いて地面が噴火したかのような数千度の地獄が現れ、無差別に全てを飲み込んでいった。爆発音が不規則に鳴るたび、逃げるどころか動くこともできずに、自分のいる地面が光らないことを祈る。その祈りが途絶えた時には、人は塵一つ残さず消え去っていた。  天変地異に恐怖するだけの無力な人々は、それが、聳え立つ少女の指から作られた事象だということを理解している者は誰一人として居なかった。  街一つが、適当に放った指先程度の熱線の副次効果で、完全消滅の危機に陥っている中、当人の魔法少女は、その地を視界に入れてすらいなかった。  彼女の瞳を奪っていたのは、自らの手のひらに乗る存在。彼女にとっては、何十億人という人類の命や文明より、目の前の小虫サイズの彼を喜ばせるほうが大切であった。 「あ、そうだ♪ お兄さんは危ないからここに入っててね♡ 瞬間移動ほいっと♪ くるしくない? よかった~♡ そこでゆっくり見ててね♡」  手のひらに居た小さな存在である青年を上に投げるように動かす。サイズ差を考えれば風圧だけでミンチになりそうな勢いのある動きであったが、青年は言葉の通り一瞬で、彼女の首から吊り下げられていたペンダントの中に移動していた。  完全な密閉空間のペンダントの中には、ハード型のクッションが置かれており、青年にとっては十分すぎる広さの空間であった。前面ガラス張りのそのペンダントからは街が一望でき、そのあまりにもな絶景に青年は感想を滝の如く彼女へと伝えていた。その景色を用意した存在が、既に数百万人の命を消し去っていることを青年が理解することはなかった。  青年の素直な賛辞が、魔法少女であるユナの気分を上げ、更なる蹂躙をエスコートする。人類滅亡の循環が始まる合図であった。  青年をペンダントに移したユナは、わざわざ外していたグローブを再度はめると、両手でハートの形を作り上げる。ペンダントを輪の中心に来るように手を胸元に動かすと、本来なら無類の可愛さだけを残すポーズと掛け声を発した。 「えへへ~♪ あとね、こんなのもあるんだよ♪ ラブリーマジカルビーム♪」  作られたハートの形から、指先から放たれた熱線とは大きく違った、禍々しさのないピンク色の光線を放つ。その見た目からは想像できない被害を生み出すのはもちろんのことだが、それに隠れて彼女はもう一つ災害を生み出し、一区画を消滅させていたのだ。  お決まりの決めポーズなのか、愛嬌をふりまく手の形のほかに片膝から下を蹴り上げる形で曲げ、その勢いで軽く片足ジャンプを行っていたのだ。  ハート型ビームの着弾音に掻き消される形で、超巨大魔法少女の着地音が鳴り響く。  空中で蹴り上げられた足は、地面を抉り取ることこそなかったが、その風圧は台風や竜巻など自然が作り出すものを遥かに凌駕していた。一瞬にして直下にあった防災対策が完璧に施された新築マンションは見る影もなく塵となっていたのである。  足を振り上げただけで楕円形の更地を作り出した魔法少女のか細い足は、もう片方の足によってその事実すらを塗り替えた。  人類が作り上げたどの巨大建築物よりも頑丈で広く高い靴が、まるで無重力のように軽やかに持ち上がる。どんな高層建築物も辿り着けない高度まで容易く浮かび上がったそれは、風船がゆっくり落ちてくるように優しく地面へと激突した。  フェザータッチとも言える優雅な着地であったが、それは同じサイズの存在が見た時の話。実際に起こったのは、そこからは想像もできない、人類が体感することのなかった衝撃波であった。塵へと変わる風圧が可愛く思えるほどのその衝撃波は、人を始めとする生物はもちろん、頑強という認識が揺るがない建物や自然物をも平等に、揉み消していったのであった。  富裕層の住む、シェルターというモノも存在していた街。それが足元にて、残骸一つ残らない砂漠へと変わった事に気付く者がいなかったのは、彼女から放たれたビームが、街の中心部で比較にならない被害をもたらしていたからである。  ハート型の焼き印が地面に刻み込まれる。その瞬間、指先からのビームで起こった現象の倍以上の惨事をハートの外側で起こしていた。地面から現れた地獄が全てを平等に蹂躙していく。その内側では、世界の終わりから守られたような平和が訪れていたのであった。 「ねぇねぇ、お兄さん♪ どうだった~♪ 凄かった?」  火の海と紅蓮の色が濃くなる大地の遥か上で、開かれる感想会。ペンダントに向かって年相応の可愛さを振りまくユナに、彼女の小指サイズのガラスの中から全身を使った感想を伝えていた。  買ってもらった玩具を友達に自慢する程度の感覚で、数千万に昇る人類を一方的に虐殺した魔法少女。正義の為に与えられた力で、起こした悲劇の代償か、それとも地面から吹きあがる熱気か。ユナを襲ったのは、ごく一般的な生理現象であった。  本来なら、しおらしさが見える幼い少女のモジモジとした動き。だが、天をも支配するほどに巨大な彼女のその動きは大地を揺るがす巨大地震を引き起こす原因となっていた。 「もぉ~っとすご……ねぇ、お兄さん……お耳ね、ふさいどいて欲しいんだけど……」  ユナは頬を赤く染めながら、数秒前まで割れるほどの目力で見つめていたペンダントから不自然なほどに目を逸らす。ガラス内で保護されている小人の青年は、訳が分かっていない様子でありながら少女の言葉に従うと、耳を覆った。  天空に聳え立ってから、一歩たりとも動かずに周囲を蹂躙し続けた彼女が、大地を踏みしめながら前へと進み始める。小股でありながらも、ズンズンと星を揺るがす音が鳴り響くが、それによって消し去られた人や建造物は、玩具とすら認識されずに存在の終焉を迎えたのであった。  動くたびに柔らかいクッションに打ち付けられる青年が、その心地よさを感じる前にその揺れは止まった。 「もうヤバいかも……ぱっと見た感じ街もないし……とりあえずここでいいや」  十数キロ先の正面に広がる、既に壊滅寸前の街の上で立ち止まったユナは、その場で糸が切れたように勢いよくしゃがむ。これまでの圧倒的で一方的な蹂躙虐殺を行っていながら彼女は理解していた。微生物以下の大きさと存在であっても、地面に広がるのは街であり多くの存在に見られていると。  生理現象が呼び起こした冷静な思考は、この緊急事態にユナにそれを自覚させたのだった。その末に選んだ場所が、彼女の必殺技ともいえるハート型のビームにて大地ごと消滅させた場所。遥か上空から見ても一面オレンジの光と土が埋め尽くすこの世の終わりを具現化したような場所。  だが、彼女は忘れていた。後のお楽しみにと、取っておいた、ハートの形の中に閉じ込めた無事な街があったことを。 「まだダメ! ス……スカートで隠して……んっ♡ 出る♡」    チョロ……ズドドドドォ!!!!   大粒の雨から始まった、黄金色の聖水は加速度的に強まっていき、最終的には滝をも上回る勢いで、大地へと吸い込まれるように降り注いだ。マグマの如く煮えたぎる地面を一瞬にして正常化させながら、柔らかくなった大地を抉り、湖へと変えていった。  不思議な力で守られていた百万人ほどが閉じ込められた街。奇妙なことに、灼熱の熱風に晒されることも、地面から叩き上げるような地揺れや衝撃波に襲われることもなく、神の加護と言っても誇大表現ではない現象に守られた人々は、突然訪れた夜にさほどの恐怖心も覚えていなかった。  すぐさま適用した街の住人は、夜用のライトアップを時間をかけることなく実行する。すると、上空に現れたのは見慣れた夜空ではなく、淡い肌色の空であった。その一部、月のように自己主張をする窪んだ様な形をする桃が浮かんでいることに、数百万の住人は気づいてはいたが、気に留める者はいなかった。  平和だった街を湿気と、汗と似て非なる慣れない生々しい匂いが徐々に蝕み始める。それでも、パニックを起こさず違和感に興味を示す微生物たちを分からせたのは、ビルを粉砕した金色に輝く巨大な雨粒であった。  ズドォォォン!!  その一撃で、大パニックが起こるも、次の瞬間には悲鳴を上げる者も逃げ惑う人間も、何もかもが存在しなかった。黄金色の湖に消え去るよりも、黄金の津波にさらわれるよりも先に、秘部から吐き出された放尿の落下によって全てが消し飛び、蹂躙されてしまったのだ。 「ふぅ きもちよかったぁ~♡ 思った以上にいっぱい出たかも♪」  スッキリとした、頬を緩ませる可愛い表情を作り上げたユナは、しゃがんだ体制のまま、行為を示すような言葉を漏らす。開放的な排泄行為が、青年にバレる羞恥心を上回ったのだ。そんな彼女のスカートに隠される地面には、強烈なアンモニア臭で充満していた。  加えて放尿時の威力で地面を削っただけでなく、ハートを形作った地殻変動は、湖になる素質を持った十分すぎる窪みを生み出していたようだ。  達成感すらも感じられる顔つきで立ち上がった魔法少女は、ペンダントに意識を向ける前に、ふと地面を見る。その目に映る、愛の形に模られた、濃い黄金色の湖を目にした瞬間、忘れかけていた羞恥心が吹き出ると同時に、体が熱くなる感覚に襲われたのだった。  そこに、自らの意思で生かしておいた人たちと街があったことを思い出したからである。秘部や放尿の事実を知る存在はもう既に消え去っていた。だが、それを見られたという事実と、排泄で街ごと消滅させたという事実が彼女の中で感じたことのない衝撃となって現れていた。 「ねぇ、お兄さん♡ あそこ、何があったか覚えてる~?」  何かが吹っ切れたような、達観した顔でペンダントを持ち上げ、湖を指さしながら向ける。ガラスに張り付きながら首を横に振る小人の青年を確認したユナは、優しく唇で笑みを浮かべた。 「ビームの威力を調整して~生き残る様にした街があったんだけどぉ~♪ ユナ、おしっこしたくなちゃったから、いっぱい出して消し飛ばしちゃった♡」  数分前まで、恥ずかしいがために耳を塞ぐ要求をしていた当然の羞恥心を持った少女とは思えない発言を、堂々と行った彼女。その言葉に、一瞬動揺して血の気が引いたような顔色を見せた青年であったが、次の時には興奮した喜びの様子を見せていた。  青年の態度は明らかに気を使ったような豹変とも言える行動であったが、ユナはそれら全てを理解したうえで機嫌を良くしていた。現れた沈黙の時間に二人はガラス越しに見つめあう。その間に考えていたのか、ユナは青年が耐えられる時間のギリギリで沈黙を破った。 「実はこの街、みんな悪の組織に洗脳されていて、へいわの為には綺麗にしなきゃダメなの♡ だからぁ~お兄さん♡ ユナががんばるところ、見ててくれる?」  後から作り上げた設定の様な話と、大虐殺の宣言にペンダントの小人も感覚が麻痺しているのか、真剣な眼差しで励ましの言葉と首が取れそうな程の頷きを見せていた。 「いっくよ~♡ えい、それ♪」  ズゴォォォン!!! ズゥゥゥン!!! ズゴォォォン!!!  深く沈み込む様な重々しい音が交互に鳴り響くたびに、小惑星級の衝突が地面を襲う。彼女の靴底の厚さにも満たない建物や群衆が、潰れるという言葉が優しく聞こえるほどに、微粒子の塵へと圧縮され消滅していく中で、それによって生み出される衝撃波も同等の破壊力を持っていた。  超巨大魔法少女が一歩、街一つを飲み込むローファーを動かす度に、青年は彼女の一部になった気持ちで全力の声援を言葉にして吐き出す。それを、遥か上空から見下ろすユナは、青年が力を持ったように感じて、体を震わせるほどの愉悦感を味わっていた。  それに集中していた為か、彼女の意識が地面に向いた時には、靴を象った超巨大クレーターが五個地面に点在していた。既に、街の半分近くが砂漠の砂のほうが大粒と感じる不毛な土の大地へと変わっていた。 「こっちのほうは、ひみつきち~とかがあるかもしれないから、念入りに綺麗にしないとね~♡」  残る街へ体を向けたユナは、世界的に名所となっている人類最高峰のタワーのある場所を見下ろす。彼女は一瞬街を見下ろすとすぐさまペンダントへと視線を戻し、外した薄い高級感漂うグローブを無造作に放り投げる。彼女にとって、一ミリや二ミリ程度の高さの違いが分かるはずもなく、玩具としての資格を与えられることもないまま、降ってきた純白の空の下へ消えていった。  意図せず囲むように配置されたグローブを見ても何も関心を抱かないまま、辛うじて形を保つビル群に手のひらを叩きつけた。 「お砂場遊びみた~い♪ えいえい♪ こっちの手でもざらざら~♡」  演技か本心か、時折見せる無邪気さのまま、両手を地面にかざしたユナは巨大な手形を街の新たなシンボルに置き換えると、そのまま擦る様に動かす。手形が完全な円形になるころには、グローブに挟まれるように生き残っていた街は、住民諸共同じ物質に変えられていた。 「ほら~お兄さんみて~♡ このつぶつぶ~ぜ~んぶ街や人だったの♪ ユナがちょっとおててで遊ぶだけで、わるい人はこぉ~んなになっちゃうの♪」  汚れた手を見せつけると同時に、その汚れを解説するような言葉を添える。すると、順調にそれらを受け入れていたペンダントの中の小人は、何かを思い出したかのように固まると、みるみるうちに青ざめていき、クッションに吸い寄せられるように倒れていった。 「あーあー、まだまだダメかぁ~でも……フフッ♡ 今度は何してあげようかな~」  ずっと続けてきた甘い声が、嘘のような声色で言葉を零すと、無造作に尻を地面に叩きつけた。ユナは残りの、街とも呼べない崩壊しつつある場所を、背中で一気に滅ぼすと、ペンダントを胸に当てながら呟くのだった。 「ユナって、弱くて惨めなゴミを圧倒的に虐殺するのが大好きなの……♪ だから、もっとユナのわるいところ見て~もっと強くなってね♡ ユナだけの、世界で一番弱くて惨めなお兄さん♡」


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