※『週刊ぶんかま』は、絵とエッセイの週刊記事です。
冒頭で最近のスケッチを掲載して、そのあとにエッセイが続くという流れです。毎月第一回は全体公開にしていますので、興味のある範囲でお楽しみください!
9月分↓

※『週刊ぶんかま』は、絵とエッセイの週刊記事です。 冒頭で最近のスケッチを掲載して、そのあとにエッセイが続くという流れです。毎月第一回は全体公開にしていますので、興味のある範囲でお楽しみください! 8月分↓ ------- アイちゃんばっか描いてますね レモネードと石井さんの追憶 ・レモネードが、とてもおいしい...




5週もあったのね!
最近は新作に向けたイメージスケッチがほとんどです。
東京とおにいちゃん
・この頃は東京と自宅を行き来することが多くなっている。
・イベントなどの遊びはもちろんだけど、それ以上に仕事の都合での往復が増えている。
・自宅から東京までは、高速を使えば3時間ほど。日帰りができる距離感ではあるにしても、3時間の運転というのは気合が必要だ。新幹線なら片道8000円だ。
・ぼくにとって東京とは、「遠くにあるおもしろい場所」である。
・そんな「遠くにあるおもしろい場所」に、仕事の関係上ぼくが住む可能性が出てきている。
・ぼくは東京に住んだことはない。でも、東京は好きだ。東京に住むことにも、実はほのかな憧れを持っている。
・眠らない街灯が、途切れない人混みが、路地裏のホコリのにおいが、呼び起こすんだ。兄に連れられ入ったライブバーでの夜を。
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・ぼくは就活の合間を縫って、仙川駅(京王線・調布市)に来ていた。
・実家を出ていった兄と、ここで待ち合わせをする約束なのだ。大好きな兄との久しぶりの再会だ。
・改札を抜けてすぐ、兄の姿はあった。
・「おう!来てくれてありがとね」
・これから行く場所は決まっている。日は落ちかけて、町はもう薄暗い。どうやら時間がギリギリらしいので、少し急いで歩いた。
・体感10分くらい歩いたと思う。坂の途中の建物、地下へ続く階段を降りた先にあった分厚い扉を兄が押し開け、ぼくもそれに続いて中に入った。
・中は、ほぼ明かりがついていない。薄暗かった外よりもはるかに暗いので、瞬時に夜を迎えたかのような錯覚にあった。
・高く上がったステージ、そこに置いてあるピアノだけが煌々とスポットライトの光を浴びていた。
・兄の背中に続いて前方の席に座る。息をつく間もなく、演者が登壇してシャンソンの弾き語りが始まった。瑞々しい歌声とピアノの音色が会場中を潤した。
・この一連の体験だけで、ぼくは胸がいっぱいになった。
・これまで味わったことのない「特別なワクワク」を感じていた。ぼくたちまるで、憧れのライブ会場に忍び込んだ、スラム街の子どもたちみたいじゃないか。そういうスリルも付加したようなワクワク感が全身に沸き立っていた。
・東京での思い出は、それはそれはたくさんある。イベントもそうだし、オフ会もそう。
・でも数ある中でも、ぼくにとっての「東京」、イコールあの夜の出来事なのだ。不慣れな路線を乗り継ぎ、大好きな兄に会い、潜り込むように会場へ入って、シャンソンを聴いたあの夜の出来事だ。
・今でも折に触れて思い出す。東京の行き来が増えて、距離が近く感じる最近でも。仮に、本当に東京に住むことになったとしても、あの夜の出来事はずっと後ろをついてくるんだろうな。
・あのライブバーは、もう無いらしい。
ぶんかま