「「柚子、ちっちゃくてかわいー♡」」 「ちょ、ちょっと、やめてよ~…」 「「よしよし」」 休み時間の度に、2倍の体格に膨れ上がった友達たちに猫可愛がりされる小山の様子を見て、俺は何とも言えない気持ちになっていた。 …まさか自分の他に、成績が悪くて身長を縮められたクラスメートがいたなんて。確かに小山は普段からテストの点がいい方ではなかったけど。 (でも……) 俺はほんの少しだけ、ほっとした気持ちだった。良くない感情ではあるが、自分の仲間がいた、と思ってしまった。この広い教室の中で100cmに満たない体格で一人で過ごすのは、あまりに不安だったのだ。自分と同じ感覚を持つクラスメートがいるという事実は、思っているよりも精神的な安堵を覚えさせていた。 「「ほんと華奢だね…力入れたら折れちゃいそう」」 「乃絵ちゃん…ちょっとだけ痛いよお」 「「え、ほんと?」」 小山は椅子に座った七島に、ぬいぐるみのように抱きかかえられていた。小山の身体の2/3は七島の大きな上半身に包み込まれ、ちょっぴりはみ出した足は七島の太ももにぎゅぅ…♡と挟まれて固定されて。友達同士のスキンシップながら、どうみても小山が自力で脱出できるような体格差のスキンシップではなかった。完全な大人と子ども。自分を包み込む巨大な友達の上半身の中で恥ずかしそうに身悶える小山を、楽しそうに真上から見つめてよしよし頭を撫でる七島だった。七島は軽く太ももを締めているだけなのに、華奢な脚を挟まれた小山は少しだけ痛そうにしかめ面をしている。 「というか、暑いよぉ…降ろしてー…」 「「あはは、私体温高いからなあ」」 「「そんな風に抱きしめられたらそりゃ暑いでしょ」」 徹底的にぬいぐるみ扱いされる小山を横目に、俺は勝手に自分の鼓動が早くなっているのを感じていた。 (………) 普通の体格の女子と、1/2サイズになった人間の姿を俯瞰して見ると。ここまで圧倒的な体格差に見えるのか。 少し力を入れて拘束されるだけで、逃げ出せるはずがないだろう。小山の立場に自分を重ねて、何となく想像してしまう。 「っ………!」 想像した途端、恥ずかしさに脳が焼かれそうになる。大きな七島の上半身に自分が包み込まれる想像。冗談みたいに抱きしめられて、柔らかな女子の豊満な身体の中から逃げられない。むちむちの太ももでがっちりホールドされて、身悶えれば柔らかい内もものお肉がぐにぃ…♡とひずむだけで脱出できないのだ。決してそれは異性に対する緊張感を孕んでおらず、あくまでぬいぐるみを愛でるように可愛がられるのだ。 もし自分も、このクラスの中でそんな立場になってしまったら。 ありえない想像だけど、しかし甘美な想像だった。 …甘美?…いやいや、そんなのダメだ。男としてのプライドも無くなり、全く異性として意識されない学校生活なんて。 ズンッ…!! 「ひぇっ…!?」 突如目の前を女子に通り過ぎられ、重く踏みしめられたローファーとだぷんっ…♡と揺れるむっちりJK脚の迫力に、思わず悲鳴を上げてしまう。 「「あ、ごめんねー」」 高みから軽く謝られ、それが最上だったことに気づく。クラスで一番背が低いはずの最上の歩行にビビる自分。 …身長が縮んでまだ1日も経っていないというのに、みるみる地震とプライドが崩れていくのを感じていた。 ------ 1/2の身長で過ごす学校生活は、2倍のクラスメート女子に囲まれて過ごす学校生活は、自分の性格や態度をみるみる縮め込ませていくには十分なものだった。 朝は、他のクラスの生徒にあまりこの姿を見られたくなかったから、誰よりも先に登校して教室にたどり着くようになった。するとクラスの女子たちが足音と振動を響かせながら次々に教室に入ってくるため、俺はひたすら自席で俯いて授業が始まるのを待つのだった。 …なにせ、目のやり場が教室のどこにも無いのだ。立っているときでさえ、女子とすれ違うたびにスカートの裾と太ももの境界線が目の前で見せつけられ、直視できないのだ。座っているときなんて、そばを通り過ぎる女子のスカートの中が普通に見えてしまう。女子たちは小さな俺の存在に少しずつ慣れてしまい、わざわざスカートの裾を抑えてすれ違うこともしなくなった。自分で目をそらせ、と言わんばかりに、下着を足元の男子に見せつけながら教室を闊歩するのだ。…もちろん、下着を覗くことを許されているわけではない。不意に見上げてしまえば、クラスでの俺の立場は本当に無くなってしまうだろう。それ故に、迂闊に目線を上げられないのだ。 「「原田くん、届かない?私やってあげようか」」 「あ、うん…ありがとう……」 そして男としてのプライドを傷付けられるのは、身長の低さによる能力の低下。もはや黒板に字を書くことも、掲示板にプリントを張り出すことも満足に出来なくなってしまった。日直の当番の時は最悪で、授業の後に黒板を消したり、女子の高い机の上にプリントを配っていったり、大きなほうきを持って掃除したり、という日直の仕事がほとんど出来ないのだ。…俺と一緒に当番になった女子は俺に気を遣いながら、大きな身体で軽々と仕事をこなしていく。申し訳ない気持ちでその様子を見上げる俺は、大人に庇護されている子どもの感覚で。今まで、重い物を持ってあげたりすることで小さく積み上がっていた男のプライドが、いとも簡単に崩れ去ってしまった。 そんな生活の中で唯一俺が人と話すタイミングは、同じく身長が縮んでしまった小山と話す時だけ。 「えっと、調子、どう…?さっきの板書、見えた…?」 「んん…春ちゃんの背がおっきいから、あんまり見えなかった…」 ほとんど話したことが無かった関係性だけど、今この教室で目線を合わせて会話できるクラスメートは、お互いに1人しかいない。クラスに友達がいない同士が何となく仲良くなるかのように、互いに話し相手を求めて、俺と小山はちょくちょく会話するようになった。内気な小山とはもの凄く会話が弾む、ということは無かったけれど。2倍の女子の身体を避ける日常の中で、話し相手がいるというのは救われた気分になった。 「次のテストは大丈夫そう?俺、数学が不安で…」 「うん、私も…化学も自信ないかも…」 小山とは、よく勉強の話をした。俺らは、3か月後の全国共通テストで同じ失敗を繰り返すわけにはいかないのだ。黒板が見えづらい不利を受けながらも勉強を挽回して、確実に共通テストで合格点を取らなければいけない。…その目的のもと、俺と小山は休み時間にお互いの理解が浅い部分を教え合うことが多かった。2人で助け合わないと。その認識は確実に共通していた。 「「あ、また二人で仲良く話してる~」」 「っ……い、いや…」 「っ……乃絵ちゃん…」 肩身狭く2人でこそこそ話しているところへ、よく七島や他の女子が茶化しに来る。傍の床に足を踏み下ろされるだけで机が振動し、俺らは毎回大きな声に少し驚いて反応させられる。小学生同士の恋愛を茶化しに来た年上の女の子のように、自分たちの土俵とは違う恋愛を見物しに来るのだ。…そもそも俺と小山の間には恋愛的な雰囲気は今の所存在しない。いや、別に、全く意識していないわけではないのだけれど。小山がどう思っているかも分からないけれど。少なくとも、最近話し始めたばかりのデリケートな関係性の時期に、大きなローファーという土足で踏み入られたくは無かった。 「「悪いけど、柚子借りてくからね♪」」 「ひゃんっ…乃絵ちゃんっ、変なとこ触らないで…」 ぬいぐるみのように軽々と小山の身体を抱いて上空へと連れ去る七島。くすぐったそうに悶える小山に拒否権は無く、俺も勉強の相手を強制的に連れ去られて何も言えない。…2倍のクラスメート女子の都合で、俺たちの会話はいつも簡単に中断させられるのだ。 「「勉強なら私が教えてあげるし~」」 「ん…じゃあ教えて欲しい…」 七島の席で勉強会が開催され始め、取り残された俺は自分の席で独りで自習を続けざるを得なかった。…別に、自分の力でも勉強はできる。絶対に次のテストは合格して、周囲の評価を変えてやるのだ。 そして。 3か月後に全国共通テストが行われ。 その結果が、前回と同じように寮の部屋に郵送されてきて。 「…………………え………」 通知書に書かれていた点数と全国順位は、 「…合計点数……115点……」 「全国……下位、……6%……」 前回の結果さえも、下回っていたのだった。 もう、言葉が出なかった。3か月前に身体を1/2に縮められてから、危機感を覚えた俺は必死で勉強をしてきたはずだ。元々そこまで成績が悪かったわけじゃないのに。 …ただ、今回のテストは手ごたえがあまりなかったのは事実だった。一つの原因として、身体が縮んだことで勉強する環境が悪くなっていたことは明らかだった。 体格の大きい女子に阻まれ、まともに黒板の板書をノートに取ることもできない。先生は縮んだ生徒にそこまで気を遣ってくれず、女子だらけのクラスの中で俺に親切に勉強を教えてくれるクラスメートもいない。 小山も最初は一緒に勉強を教え合っていたが、途中からは七島に勉強を教えてもらうようになった。…当然だろう。七島の方が明らかに勉強できるし、身長が縮んだ不利を補ってくれる。俺と勉強しているよりも効率が良かったはずだ。 え。 俺……また、身体が縮むのか……?今よりも…? そんなの。まともに生活できるはずがない。そんなことが学生に対して、許されるわけ…。 ドクン。 「が…あ……!?」 3か月ぶりに心臓を襲った鼓動は、前回のそれよりも激しいものだった。やはり体が熱くなり、締め付けられる胸を抑えて立っていることもままならない。 「だ、誰か……助け……」 床を這いながら、自分一人しかいない部屋の中で呻く。広くなってしまった部屋の中で、1/2の体格で出すか細い声が薄れて消えていくような感覚だった。 (これ以上、縮んでしまったら…学校の中で暮らしていけるのかも、分からないっ……!嫌だ、いやだ、いやだっ……!!) 視界は無慈悲にも膨張し、ただでさえ広かった世界がさらに広がっていく。 そして。 俺はこの夜、人間としてはありえない大きさまで、堕ちることになった。 ------ 無理だ。こんなの、まともに学校生活を送れるわけがない。 「……うぅ…」 この3か月間、俺は普通の生徒が学校の入り口に着くよりも30分も早く着くようにしていた。…1/2の体格では、長い廊下や段差の大きな階段を登るのに時間がかかってしまうからだ。 しかし、今日の俺は、それよりもさらに30分早く学校の入り口に到着していた。教室までの道のりがどれほど過酷なものに変わってしまったか、想像つかなかったのが理由だった。 (大きい…何もかも……ずっと地べたに這いつくばっているような景色で……) 元の身長の、1/4サイズ。具体的には、40センチちょっと。下駄箱でいうと、靴が入る区画の2段分の身長しかないのだ。それよりも高い場所に6段分も区画が用意されているが、到底今の俺には届く高さじゃなかった。 そもそも、靴を入れる空間があまりに大きすぎる。俺からすれば自転車でも入るんじゃないかと思えるほどの広くて深い穴。ここに、他の生徒の靴が入るので精いっぱいとでも言うのか。 幸いなことに、俺が靴を入れる場所は一番下の段だった。大きすぎる靴箱の中に、昨日の夜に郵送で支給されていた1/4の体格用の靴をしまった。それだけで胸が締め付けられるような不安を覚え、俺は誰もいない下駄箱からそそくさと廊下の方へ上がり、階段の方へ向かってきたのだった。 そこで、絶望する。 立ちはだかったのは、自分の胸の高さまである、巨大すぎる階段。数か月前まで何も意識せずに登ることが出来ていた階段は、今や過酷な朝のアスレチックとなって俺の前にそびえ立っていた。…現実を直視できず、俺は当たり前のようにそこに手をかけて登ろうとする。こんな高さ何でもない、と思いたくて、軽々と登ろうとする。 「くっ……そ………ぐぐっ……」 しかし、自分の胸の高さもある段差を軽々と登れるはずがない。手をかけて、全身に力を入れて踏ん張り、息を止め、とてつもない腕力を使いながらなんとか上の段に這いつくばって、転がり込む。 「っっ…、はあっ、はあっ……」 息を切らし、肩を上下させながら階段の段の上で座り込む。これで、たったの1段。俺がたどり着くべき教室は3階。どう見積もったって、50段くらいは今と同じ重労働を積み重ねて登っていかなくてはならない。 そんなの無理だ…。これをあと50回も繰り返すなんて、多分1時間くらいかかってしまう。今日は全力で頑張って登りきれたとしても、明日の朝から登校する度に、1時間分息を切らしながら階段を登らないといけないのだ。毎朝、ハードな登山をするようなもの。絶対に、無理だ。 逆に、これを軽々と登っていける他の生徒たちの大きさを想像し、末恐ろしくなる。当たり前のように今自分が座っている場所は、階段の1段分のスペースでしかない。普通の生徒の足を乗せられるくらいの広さしかないはずなのだ。この広いスペースに足を振り下ろして階段を登っていくクラスメートの姿を想像すると、それだけで恐怖を感じた。 どんどん世界が自分から遠いものになっていく感覚があった。俺の身体の大きさに、この学校は合わせてくれない。従来と同じスケールで、健常な生徒だけが快適な学校生活を送ることができる。レールから外れてしまった無能な生徒への配慮などなく、俺は目の前にそびえ立つ絶望的に高くて長い階段を見て、学校から拒絶されている気持ちを味わっていた。 「…でも、はやく、登らなきゃ…」 40,50分もすれば、他の生徒たちが登校してくる。それまでに階段を登り切って教室に行かなければ、この小さく醜い身体で階段にへばりついている様子を、他のクラスの生徒たちに見られてしまう。そしてなにより、階段をゆうゆうと登ってくる生徒たちの足元にいては、あまりに危険すぎる。まだ1/4の体格になってから普通サイズの人間を目の当たりにしていないが、この巨大な階段を少し足を上げただけで登れてしまう生徒の大きさを想像しただけで、寒気がした。 「ぜえっ、ぜえっ、…ぐぅっ……」 息を切らしながらも腕に力を込め、一段一段全力で登っていく。運動不足もたたり、連続で登れるのは2段が関の山。2段分登っては数分間休憩し、また次の段に手をかける。朝っぱらからの全身運動は負担が大きく、思った以上にペースが上がらない。…それでも何とか最初の踊り場までたどり着き、その先に広がる2階までの道のりを視認し、再度絶望する。肩で息をしながら無心で段を上り続け、 やっと。踊り場と2階を繋ぐ階段の中腹あたりまでたどり着いたとき。 ガヤガヤ…… ズンッ……バタンッ…… 「っ………!!」 1階の下駄箱の方から、生徒たちの声や靴を下駄箱に入れて扉を閉める音が、騒がしく聞こえてきたのだった。 (ま、まずい……上がってくるっ……!) 階段を登り始めてから、もう40,50分が経っていたなんて。この時間を使ってなお、俺は2階にすら辿り着いていない。階下からの振動が階段に伝わってきて、俺は生徒たちの無数の歩行の振動に恐怖する。今から慌てて登ろうとしたところで絶対に間に合わない。4倍もの巨体たちが、この階段を登ってくる。…俺は這うようにして階段の一番端っこまで移動し、階段の外側の手すりが付いている所の真下で身体を丸める。 「「あ、夏帆ちゃんおはよ~」」 「「おはよー今日も暑いねえ」」 「「わたし今日の小テストの勉強全然出来てないんだけど」」 ズンッ、ズンッ、……!! 女子生徒たちの大きな声が、階段の踊り場辺りの空間に響き渡る。階段を登り始めた3人の歩行の振動が、どんどん大きくなってくる。まだ姿が見えていない声と歩行音が、プレッシャーを与えてくる。 「「私も~。世界史のカタカナ、全然覚えらんないんだもん」」 ドンッ…!! 「ひぃっ………」 踊り場をターンして、ついに姿を現した4倍JKの姿は。 同じ人間だとは思えない、建物のように巨大な体格を持っていた。 「「それより今日から体育バレーだって」」 「「うそ、楽しみ~」」 ドンッ、ドンッ、ドンッ…!! 1年生であることを示す緑色のリボンを付けた3人の女子校生たち。短い紺色のスカートと白く眩しいセーラー服に身を包み、談笑しながら俺がいる階段の1段目に足をかけ、みるみると登ってくる。4,5階建てくらいの巨大な後輩JKは横並びになって階段を上がる。うち一人は階段の外側の手すりを掴み、白い太ももを歩行の度に揺らしながらこちらに向かって登ってくるのだ。 (うそ、だ、ちょっと待ってっ……) 手すり側に身を寄せるようにして逃げていた俺は、ちょうど自分の方向に向かって巨大な脚が上がってくるのを目にして、冷や汗が止まらなくなる。ふくらはぎまでの大きさ、高さ、太さだけで俺の全身よりも巨大で強そうなJK脚が迫りくる。ちょうど3段下で、俺と同じ横の位置の場所が、大きな上履きでドンッ!!ぎゅうぅっ…と踏みしめられるのが見えて、パニックになってしまった。 「ひっ、あっ、……」 思わず、階段の中央側にもんどりうって出てしまった。接近する1人の後輩女子の脚を恐れ、何も考えずに逃げ出してしまった。ハッとして女子生徒たちの方を見れば、そこには絶望的な光景が広がっていた。 「「うち、汗かくから基本体育やりたくないんだよね~」」 建物級のJK巨体が、すぐ目の前に迫っていた。まぶしく光る巨大なふくらはぎと膝、太ももが、軽々と持ち上げられる。強烈なローアングルで見上げる女子生徒の姿は、あまりに自分の体格とかけ離れすぎていて、とても今まで同じ立場で生活していたとは思えない。 ドンッ…!!! 「あ……あ………」 俺がいるちょうど1段下に、その脚が激しく着地する。振動で身体が浮き、波打つふくらはぎと太ももの筋肉を見せつけられる。もはや見上げても巨大JKの顔はスカートの裾に遮られ、豊満な太ももの先に見える純白の下着がこちらを見下ろしているだけ。一切こちらの存在に気づいていない下半身が、あっという間に次の段目がけて右脚を持ち上げ、少し汚れた上履きの裏側を矮小な男子に披露する。完全に腰を抜かしていた俺は恐怖で声も出せず、身体も動かせず、本来なら魅惑的であるはずの女子生徒のスカートの中という光景に、恐ろしさ以外の感情を持てなかった。次の瞬間に、この巨大な上履きが自分の身体に圧し掛かってくる光景を想像する。常軌を逸した体格が、巨大な質量が、無意識のままに自分を踏みつける。もう逃げられない。骨が折れるかもしれない。内臓が潰されるかもしれない。スカートの裾に視線を阻まれ、気づいてもらえる可能性なんてない。 ドンッッ!!! 「ぎゃあぁぁっっ!!??」 激しい着地音と振動、そしてJK特有の甘い下半身の香り。目を瞑って叫び、全身を縮こませた。…しかし、恐れていた直接の衝撃は訪れなかった。 恐る恐る目を開けると、 ぎゅうぅっ……ぎちっ…… 巨大な生脚が、俺のいる段を偶然跨ぎ越している光景が広がっていた。行儀悪く一段飛ばしで階段を登った後輩女子校生は、むっちりとした太ももと隆起したふくらはぎの筋肉を、真下の矮小な先輩に向けて無意識に見せつけていた。広がった股ぐらの中心には、引き伸ばされた真っ白なパンツの生地がシワを作っている。ものすごい力で引っ張られているはずなのに、JK下着は縦ジワを作りつつもその衝撃を吸収していた。…ただ後輩女子に跨られただけなのに、圧倒的な上位存在の生命活動を見せつけられているような感覚。自分が体格的に絶対に叶わないことを教えられているような光景。 事実、俺は階段を登っているだけのJKの股の間で震え、動けず、一度はその巨足に踏み砕かれることを覚悟したのだ。 ズンッ、ズンッ、ズンッ……!! 「「ていうか、もうすぐチャイム鳴るじゃん」」 「「いそごいそごー」」 そんな足元のパニックには一切気づかない年下JKたち3人は、やはりその生美脚をローアングルで見せつけながら、談笑しつつ階段を登っていく。俺が1段1段全力をかけて登っていたものを、少し脚を持ち上げるだけで軽々と登っていく。あっというまに4倍巨体たちは階段の頂上までたどり着き、そのまま廊下の方へと消えていった。 「…………」 しばし、呆然として階段の上を見上げるしかなかった。あまりに一瞬の出来事ながらも、自分をあわや踏みつぶそうとした美脚たちの光景が目に焼き付いている。1/2のサイズだった頃とは、まるで違う。大人と子どものような体格差だったのが、同じ生物と思えない体格差まで広がっている。ただ歩行しているだけの女子が恐ろしい。 ガヤガヤッ…… ズンッ、ズンッ…… 「「ーーーーっ……」」 そして。下の方から大量に聞こえてきた、女子たちの談笑の声と地響き。次々に下駄箱に登校してきた生徒が現れ、上履きに履き替えてこの階段を登ろうとしている。 「あ、あっ…………」 情けなく狼狽え、しかし逃げようにもすぐ登ることも降りることも叶わない。階段の左右どちらに逃げようが、安全地帯なんてない。一番端まで行っても、手すりを持って上がってくる生徒の足の射程圏内だ。 そのうち。 俺は乱立するJK美脚の爆撃の中に、晒され続けたのだった。 ドンッ、ドンッ、ドンッ…… 「「○○ちゃん、おはよー」」 「「おはよ!」」 「「ねえ、昨日の××チャンネル見たー?」」 「「見た見た!あの子めっちゃ可愛いよね~」」 ズドンッ…!!ぎゅうぅ…♡ ズンッ、ズンッ…… 高らかなJKボイスと共に降り注ぐ凶悪な脚。階段が震え、着地した上履きがぎゅうぅっ…♡と擦り付けられる音がおぞましい。大きな上履きが簡単にねじれ、踏みつけられ、形を変える。四方八方を綺麗な肌色のふくらはぎと太ももに取り囲まれ、天国のような地獄から抜け出せない。次にいつ誰の上履きが縮こまった俺の身体を捕えるのか、全く分からない状況の中。顔も分からない同級生や後輩の下半身に向かって、心の中で祈り続けるしかなかった。 そして。 一つの巨大な上履きが俺の真上に覆いかぶさり、全ての光が届かなくなったとき。 「あ…………」 俺は声も出せず、目を瞑り、全てを覚悟したのだった。 「「……わ、日菜、足元!」」 「「え?…きゃっ、なにこれっ!?」」 「「もしかして、原田くんじゃない…?」」 「「うそ…なんか、またちっちゃくなってない…?踏んじゃうとこだったよー」」 「「またテストの点悪かったってこと?」」 「「かわいそー…」」 「「こんな所で何してるの?」」 「「…なんか言ってるけど、聞き取りづらい…」」 「「階段上れないんじゃない?小さすぎて」」 「「日菜、教室まで運んであげたら?」」 「「えー…でも、こんな所にいたら危ないもんね」」 「「なんかもう、お人形さんみたいにちっちゃい…」」 「「わ…手で持てちゃった…原田くん、大丈夫?」」 「「ちょっとだけ可愛いね」」 「「高くて怖そうだよ?抱きしめてあげたらー?」」 「「やだよ!恥ずかしい…」」 「「これからどうやって生活するんだろ」」 「「ね…先生に聞いてみよー」」 ---続く---
konan
2025-09-30 00:36:25 +0000 UTCkonan
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2025-09-30 00:36:04 +0000 UTCmmmros
2025-09-06 07:51:37 +0000 UTCdederugon
2025-09-05 04:17:19 +0000 UTCはひ
2025-08-31 10:55:39 +0000 UTC