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【無料小説】極小小人体験学習④~怒れる小人と慈愛の巨人~

次の日の朝。目が覚めた瞬間に、俺は世界の異変を悟った。 「…ぐ…う………」 重い重い身体を、何とかベッドから持ち上げる。頭を動かすたび、鈍い頭痛に襲われる。身体の節々がどこかだるく、あまり深く眠れなかったことを身体の状態が物語っていた。 (……なんだ、この匂い……) 寝起きであっても、寮の部屋の中が今までとは異質な香りに包まれていることはすぐに感じ取ることができた。この部屋に1週間も住んでいないのだから、別に部屋のいつもの匂いを覚えているわけではない。ただ、今漂っているこの匂いは、どう考えても男子高校生が一人で住む部屋で発生することのないものだった。 有り体に言えば、異常に濃い"女の子"の香りに包まれている。 「っ……」ブルッ… 昨日の地獄のような光景を唐突に思い出し、俺は寒気を感じて身震いした。空一面に広がる、背の低いクラスメートだったはずの、一人の女子高生の巨大な顔。巨大な唇。巨大な舌。恐ろしいほど生物的なピンク色の洞窟から放たれた、災害級の熱風と湿度。世界中が高温サウナで蒸されているような常軌を逸した状況で、俺は重たい唾液に圧し掛かられて倒れ込んでしまった。 これまでの人生で、自分の死を本気で覚悟したのは初めてだった。 あの災害を引き起こしたのが、俺のクラスメートである紺野美晴であることは、頭では理解しているつもりだった。しかし、世界全体を唾液の海に溺れさせたあの神のような存在が、どうやっても紺野と結びつかなくて。…なにより、自分が一度死を覚悟して、うわ言のように謝罪を繰り返してしまった対象の女神様が、あの紺野であるということを認めたくなかった。 一夜明けたことでほんの少し精神は回復したが、もう一度、空を埋め尽くす紺野の顔を見上げた時に、自分が冷静でいられる自信が無かった。いつもの、ちょっぴりSっ気のある、ちっこい女子高生の、紺野であると思える気がしなかった。圧倒的な女神様の顔に、震えながら神頼みをしない自信が無かった。 (もう何時間も経ってるはずなのに…こんな…) そして、部屋を埋め尽くす、紺野の唾液の"残り香"。昨日直接住宅街を溺れさせた唾液の強烈な匂いは多少和らいでいて、どちらかというと女子高生特有の甘くとろんとした匂いの成分がより強くなっていて。 …それが、良くないのだ。甘い香りの中に、どこか嗅ぎ覚えのある女子の匂いがほんのり混ざり、紛れもなくこれが紺野の匂いであることを脳が理解してしまう。唾液の匂いは、そんな女の子の匂いの中に性的なニュアンスを加えるアロマへと役割を変え、まるでほんのり汗をかいた紺野の身体に常時抱きしめられているような、常時胸の中に鼻をうずめているような、そんな倒錯を頭が感じてしまうのだ。いくら紺野がちんちくりんで、人のことをからかうことが大好きなけったいな奴だとしても、こんな匂いに包まれて動揺しないはずがない。…興奮しないはずがない。どれだけ理性を保とうとしたって、強制的にこんな柔らかな匂いに抱きしめられたら、誰だって。 (くそ、換気だ……) ガラガラッ…… ふわぁっ…♡♡ 「っ…な………」 窓を開けた俺は、外から流れ込んできたさらに濃厚なJKアロマに鼻腔を追撃され、衝撃を受ける。部屋の中に匂いが滞留しているのであればまだ理解できる。でも、開けた外の世界にも匂いが残っているなんて。俺たちから見ればこんなに広大な都市なのに、その空間を簡単に埋め尽くして溜まり込んでしまうほど大質量の匂いなのだ。巨大すぎる唇の間から放たれた唾液と吐息は都市中の空気を占領してしまい、1000倍の女子高生からすれば大した広さではない空間なんて、何時間か経ったところでその匂いを書き換えることなんて出来ないのだ。 この世界に、紺野のJKアロマから逃げる術は存在しなかった。 (はあっ、お、落ち着け……) 様々な色の感情に占領された脳を整理すべく、俺はかぶりを振って冷静になろうとする。 かたや、いつも普通に話していたクラスメートの存在に心から恐怖し、屈辱を感じつつもひれ伏している。かたや、いつも普通に話していたクラスメートの匂いに包まれ、勝手に大きくなる股間を止められなくなっている。矛盾した感情を一人の人間、いや、1000倍もの神様に対して抱き、何をどう考えればよいのか頭がぐちゃぐちゃになる。 俺は、紺野が怖いのか。怒っているのか。好きなのか。性を感じているのか。 違う。今考えるべきはそこじゃない。一刻も早く、この都市から脱出することなんだ。1000倍もの巨大な紺野に見下ろされていたら、残酷な体格差によって感情をかき混ぜられて、思考不能になってしまう。 しかし。通信障害となっている今の状況では、外部と連絡を取る方法は存在しない。部屋の机に置かれているPCはその時点で置物と化し、俺の知識では別の通信経路を探すだとか、そういう技術的な解決策を考えることはできない。そうなったら、残された手段は何か。 まず思いつくのは、紺野に俺の存在を気づいてもらうことだ。しかし、1000倍もの体格差で気づいてもらう手段なんてあるのだろうか。紺野からすれば、俺の身体は1.7ミリのゴマ粒のような存在。どれだけ目を凝らしたって俺の顔を識別することは出来ないし、俺が何をしたところで女神様の注意を引くことは不可能なように思われた。空を埋め尽くすレベルの巨大な瞳に俺だけを見てもらおうなんて、なんて畏れ多いんだろう。…いや、言葉がおかしい。紺野に対して畏れ多いなんて…。…でも、実際にあの途方もない瞳に自分が個体識別される想像をしたら、それはもう恐ろしいとしか思えなかった。 存在を気づかせるのが難しいなら、もう一つの方法。…脱出。その2文字が頭に浮かび上がるも、すぐに無謀な考えだと思い直す。あの半透明なドーム型カプセルが開いた瞬間なら、人工都市の一番端っこであればもしかしたら外に脱出できるかもしれない。しかしその先は、1000倍の女子高生が住む超巨大な部屋の中。フローリングの横幅だけで100メートルの長さを誇る空間に放り出されたところで、何ができるというのだろう。天からは200メートル超えのJK素足が無意識に振り下ろされ、その射程に一度入ってしまえば自力で逃げることは100%不可能。後は自分を無意識に踏み潰そうとするクラスメートの足の裏を泣きながら見上げるしかない。 いや、脱出した後に、紺野がベッドで寝るまで人工都市のすぐ傍で待っていれば。女神が寝静まった後に、何kmもの道のりを必死で歩けば、部屋の出口にたどり着けるかもしれない。…いや、だから、たどり着いたところで何になるのだろう。もし部屋の外の廊下に出られたところで、1000倍巨人の足が無遠慮に降り注いでくる環境に変わりはない。床をのたうち回る1.7ミリの生物など、どう考えたって虫にしか見えない。人工都市の中でなければ、むしろ優先して足を踏み下ろして殺戮する対象へと成り下がるのではないか。 そこまで思考を巡らせたところで、絶望する。極小小人の境遇の、あまりの残酷さに。 極小小人にとって、1000倍の管理人から逃げ出すということは、ほとんど死を意味するのだ。意識を向けてもらっているから、生き延びることが出来る。こちらに意識の無い巨人の中に放り出されたら、遅かれ早かれ足裏のシミとなって気づかれずに生涯を終えることになる。 …たとえJK女神様に人権を踏みにじられても、危険な災害の中に溺れさせられても。生き続けたければ、女神様が見てくれている場所に留まるしかないのだ。加護の中で生かされ続けるしかないのだ。 (…だめだ、…気が重くなる) (一度、外に出ないと…) 部屋に籠っていた所でやることは無く、思考の沼にはまっていくだけだ。授業も受けられない今の状況では、できるだけ外へ出て気分転換した方が良いだろう。 そう思い、俺は玄関を開けて、あまあまJKアロマで満たされた外の世界へ出ていった。 ------ 「な、なんだ…?」 不自然なほど女の子の匂いに包まれた街並みを歩いていくと、なにやら人の喧騒が聞こえてくる。…この住宅街の中央あたりにある、少し大きな公園の方からだ。 俺は何事かと気になり、公園の方角へ向かって歩き出す。その道中で、未だ粘性の強い液体に根元を犯されたままの街路樹が立ち並んでいた。植込みの土で大量の唾液を吸収しきれずに、木の根っこがじゅくじゅくの状態で浸されている。このままじゃ、幹が腐って枯れてしまうだろう。 「…だから、今日の徴収はボイコットすべきだ!」 「こんなひどいことをされて黙ってられるかっ…!」 「いやでも、徴収を差し出さなければ何をされるか…」 公園にはたくさんの大人が集まっていて、怒鳴り声を上げながら揉めている。中にはプラカードを持った人もいて、ちょっとしたデモ隊のようになっていた。怒れるデモ隊が声を発する先には、それをなだめようとしているスーツ姿の男性が立っていた。 極小小人の人たちにも、声を荒げて主張する心の炎が存在するのか。…しかし、一体何に反発しているのか。勇気を出して、その群衆の最後方にいる女の人に声をかけてみる。 「あの、これはいったい……」 「ああ…昨日の管理人の暴行に、住宅街に住んでいた人たちが怒っているのよ。今まで、管理人がこの都市に危害を加えることは無かったから…」 昨日の、紺野が行った暴挙。災害レベルの被害を引き起こしたあの行為は、極小小人たちの反感を買うのには十分すぎた。当たり前だが、それまでのプロの管理人は都市に危険なことを一切してこなかったのだろう。それが急に、女子高生の管理人に変わった途端、人権を無視した行為にさらされて。怒った住人たちはいてもたってもいられず、公園に集まってきたのだろう。 「まあまあ、とりあえず今日の徴収は出しましょうよ…管理人様からの怒りを買ってしまうかもしれません…」 スーツ姿の男性は必死で群衆を抑えながら、"徴収"とやらを要求している。 「…あの、徴収って何ですか…?」 再び、女の人に聞いてみる。 「知らないの…?私たちは3日に1回、都市の中で作った作物や工芸品を管理人に渡さなければいけないの。管理人からしたら必要のないものだけど、都市の従順度を保つために行われているのよ。…今までは欠かすことなくしっかりと納品していたけど、昨日みたいなことがあったらね…。納品なんてしたくない、って思う人がたくさん出てきているの」 「なるほど…そうですよね……」 改めて、悪戯好きのクラスメートが犯した罪の大きさを認識する。今まで平和に交わってきた都市と管理人の関係が、一夜にして崩れてしまうなんて。 「でも、大丈夫なんですか…?反発しても、相手はあんなに大きいんですよ…?」 「そんなの関係ないわよ。好きにさせてたらもっと危険な目に遭わされるし、ここで強気に出ておかないと…!」 俺と話しているうちにヒートアップしてきたのか、女の人の語気が強くなる。少しだけ怖くなって、「そ、そうですね」と言いながら俺は群衆と距離を取った。 「このまま皆で都市部の徴収場所に向かって、都市全体でボイコットすることを呼びかけるぞ!」 「おーっ!」 「ちょ、ちょっと、待ってください…!」 群衆はついにスーツ姿の男性を無視して、デモの列を作りながら公園をぞろぞろと出ていった。あのまま都市部を目指すのだろうか。…残された男性はがっくりうなだれている。あの人だって極小小人の一人。徴収を行う仕事を請け負っているからああやってデモ隊の怒りを鎮めようとしていたが、あの人も昨日は怖かったはずだ。危険に晒されていたはずだ。 …もし、都市全体でボイコットが成立してしまったら。恐らく今日の夜に紺野が要求してくるであろう"徴収"が、成立しなかったら。1000倍の巨体を持つ紺野は、何もしてこないのだろうか。管理人体験中だから何もしてこない、という想定はとうに崩れ去っていた。学校は各女子の部屋でどんな管理が行われているか、全く関与していないのだ。「危害を加えることはしないように」と指導こそしていても、実際にそのような行為が行われたことは誰にも知れ渡ることがない。極小小人たちの主張など、どの人間も聞き入れない。そもそもコミュニケーションが取れないのだから。 胸騒ぎがして、嫌な予感がして。 俺はその日の夜、都市部の中央に向かったのだった。 ------ 「徴収をボイコットするぞーっ!」 「おおーっ!!」 「す、すごい数だ…」 都市部の中央にある芝生の大広場に集まっていたのは、ざっと見積もっても1000人を超える極小小人たちだった。老若男女問わず、多くの人が一同に会して大声を上げている。『管理人の危険行為断固反対!』と書かれたプラカードを持っている人までいた。…管理人の目からは、見えるはずもないけれど。この大声も、聞こえるはずがないけれど。 ただ、いつもはスーツ姿の男性が徴収品を揃えて置いているはずの大広場に、大量の小人たちが集まっている様子を見れば、恐らく紺野も状況は察するはずだ。 …紺野は悪い奴じゃない。決して人を傷つける人間じゃない。自分の悪戯がここまで怒りを買ってしまったと知ったら、普通に反省して謝るような性格だと思う。そう、思いたい。あれだけ多くの人を苦しめたと知ったら、悪いことをしたと、悲しむ奴でいてほしい。 しかし、数十分後に上空に現れるであろう巨大な紺野の姿を見上げた時、同じことを思えるのだろうか。紺野の性格を信頼していても、現実は1000倍もの残酷な体格差を持つ神のような生物。今まで俺が見てきたのは、そんな神様のような巨大な人間同士の中での話なのだ。 そして。 ガコンッッッ!!! 「っ、ひ……」 ちょうど19時になったとき。 昨日と同じように、カプセルのドームが開き始める爆音が、都市中に鳴り響く。 ゴゴゴゴッッッ…!!! 「っ……」 「…………」 にわかにデモ隊の喧騒が止み、全員が空をじっと見つめる。1000人もの群衆に一気に緊張感が走る。…ゆっくりと開いていく大空から登場するであろう巨大な管理人の姿を、固唾をのんで見守る。 ゴゴゴゴッッッ…!!! ガコンッ…!!! 「「「みんな、こんばんわー。徴収の時間だよー♪」」」 今回も1/4くらいの角度だけ解放されたカプセルの隙間から、余裕たっぷりの巨大なJK顔が覗き込む。顔のパーツの隅々までくっきりと極小小人たちに見せつけながら、今日一日中都市に残されていた香りの何十倍も濃い生の香りが大量に注がれる。顔の左右から垂れさがる青髪が落ちてこないか、見ているだけで恐ろしかった。 「「「大広場に置いてくれたらピンセットで取るから……って、なんかめっちゃ集まってない?」」」 むぅ、と目を凝らしながら紺野が呟く。1000人もの人だかりはさすがに紺野の目にも認識できたようで、巨大な瞳の巨大な視線が、大広場に集まったデモ隊の姿を貫いた。 それを皮切りに、群衆の怒りが溢れ出す。 「おいっ!昨日のことを謝罪しろーっ!!」 「俺の家の窓ガラスが割れたんだぞ、弁償しろ!」 「私の家の植木は全部だめになったのよ!」 「全部直さないと徴収には応じないぞ!」 もの凄い剣幕で、大人たちが上空の女子高生に向かって怒鳴り始めた。1000人を超える小人たちの怒りは真剣そのもので、相手が自分たちより年下のJKであることなど関係なかった。 …それを近くで聞かされる俺は、少しだけ、紺野のことが心配になった。あまり聞こえていないかもしれないが、ここまでの怒りを真正面からぶつけられるのが少し可哀そうだった。本人はほんの悪戯心でやったのかもしれない。それを、大人たちに集団でこれほど言われるなんて。落ち込んでしまわないだろうかと、にわかに不安になった。 上空の紺野は、その様子をしばし、ぽかんとした顔で見下ろしていた。 …そして、数十秒ほど経った後。 「「「あっは…♡」」」 ぽかんとしていた顔は愉悦に歪み。 「「「みんな、もしかして怒ってるの?可愛すぎるんだけどぉ…♡」」」 唇から放たれたのは、圧倒的な強者の立場からの、慈愛の言葉だった。 「…っ、ふざけるなっ!!こっちは本気なんだぞ!!」 「そうだそうだ!!」 JK女神様のおちょくるような言葉に、大人たちが顔を真っ赤にして叫びたてる。 「「「なんか微かにキーキー聞こえるけど…。あ、徴収の納品も用意してないんだ。ボイコットって感じ?」」」 目を細めて笑みを浮かべながら、状況を正確に把握する紺野。俺の心配は全くの見当違いで、この状況でも紺野は一切落ち込むことも怖がることも無く、むしろ今までよりも一層楽しそうに、愉しそうに、民衆の怒りを見つめていた。 「「「…分かってる?みんな、私の指の指紋くらいちっちゃいんだよ?それなのに、本気で反発して、勝てると思ってるなんて……うふっ、逆に好きだよ?健気すぎて…あははっ…♡」」」 極小小人たちをわざとからかうというよりは、心底おかしそうに笑う紺野。その感情が伝わってきて、叫んでいた群衆たちはさらに怒りを逆撫でされ、ボルテージが上がっていく。ただのJKに笑われてバカにされて、プライドが傷ついたに違いなかった。 「わ、笑うなっ…!!」 「どう言われようが、絶対徴収されないからなっ!!」 「徴収できずに困るのはそっちだぞ!!」 この声が全て巨大な耳にはっきり聞こえていたら、紺野の態度も違っただろうか。…いや、そうは思えない。1,2ミリの生物の強い感情をいくら知ったところで、1000倍の上位存在の感情が揺れ動くことは無いのだろう。 その残酷さを、目の当たりにした。 「「「んー……」」」 紺野は少し思案するような表情を浮かべて。 「何とか言ったらどうなんだっ!!」 「早く帰れっ…!」 「絶対に引かないからな…!!」 「「「「「うるさーーーい♡♡」」」」」 ビリビリビリビリビリッッッ!!!! (っっっーーーー!!!???) ものすごい規模の地震が起きたのかと錯覚した。地面が浮き上がり、空気が激しく振動し、耳は塞ぐ前に爆音の衝撃で半分壊された。 それが一人の女子高生のちょっとした"大声"で起こされたものだとは、すぐには理解できなかった。 「ひ……い……」 上空に浮かんだ、大きく開け放たれた唇を視認して、今の衝撃の発生源を知らされる。全身に響き渡ったJKボイスが、1000倍という圧倒的な体格差を身体の奥まで分からせてくる。 自然に身体が震えはじるのを感じた。クラスメートに少し大きな声を出されただけで恐怖するのはあまりに屈辱だった。ただそれ以上に、全身を脅かす凶悪な音量の声によって、自分の命が如何に上空の女神様にとってちっぽけなものか、分からされてしまった。 「………う…」 「っ………」 気づけば大広場に集まっていた大人たちも、黙りこくって上空を見上げていた。 一人の女子高生にわざとらしく大きな声を出されただけで、黙らされてしまう。こんな屈辱的な光景は、見たことが無かった。 「「「あんまり文句言うようなら…」」」 ゴゴゴゴッ…!! 「っ…!や、やめてっ……」 紺野の巨大な顔が、ゆっくりとカプセルの中に入ってくる。 怖い。怖い。絶対に抗えない巨大な身体を持つ生物に、何かをされる恐怖。 ゴゴゴゴゴッッ!!! 「「「「「んふ……♡♡」」」」」 「ひぃ……」 「……………っ…」 「な、なんだっ…!!」 空を可憐なJK顔で埋め尽くされて、大人たちは声も出せず固まってしまう。圧倒的な存在感でニヤニヤ見つめられる恐怖に、皆が戦っている。震える身体を必死で止め、屈辱から目を背けようとする。怖くない振りをしようとする。 そんな、壊れかけのガラスのような強がりは。 「「「「「このままちゅーしちゃうよ?♡♡」」」」」 「ひぃぃぃっ……!!」 「きゃあぁぁあっっ!!??」 「やめっ、ああっっ…!!」 ただの求愛とも取れるJKの発言に、音を立てて崩れ去ってしまうのだった。 「「「…あは、ちゅーされるのが怖いのぉ?みんなが震えてるの、ここからでも見えるよ?…唇近づけられるだけで怖いのに、頑張って抗議して、偉いねぇ♡」」」 後はもう、頬を上気させた女神JKの言葉責めを、震えながら浴び続けるしかなかった。ふっくら綺麗な唇の山に恐怖したことを、悟られてしまったのだ。これからいくら虚勢を張ったところで、もう無駄だった。 「「「虫よりもちっちゃいのに、おっきな私に勝てると思ったのかなあ……くすっ……一言だけ、言っていい?」」」 ずいっ…!とさらに近づけられた顔から、誰も逃げることなんて出来ない。 「「「「「ばぁーーーかっ♡♡♡」」」」」 「ひぃぃっ……うううっっ…!!」 「やっ、助けてっ…」 「っ……う、ぐすんっ……」 1000人もの群衆に浴びせられた下品な罵倒は、もはや女神様からの恐怖の鉄槌で。 あまりの迫力に、泣き出す者さえいた。 女神様に人工都市がひれ伏した、瞬間だった。 「「「はぁ…まあ、可愛いから許してあげるけど…。みんなさー、弱すぎるからって甘えちゃダメだよ?どうせ敵わないからって、何してもいいと思ってない?女子高生にそんな甘え方しちゃうなんて、恥ずかしくないのぉ?」」」 そして追撃のように、あまりに的を射た言葉責めが小人たちを突き刺していく。 そう。俺たちは、あまりに自分たちが小さすぎて、あまりに管理人様が大きすぎて、全力で反発しても逆に許されると無意識のうちに思ってしまっていたのだ。1000倍もの圧倒的な存在だから、年下の女子高生に暴言を吐いても許されると思ってしまっていたのだ。 それはなんと愚かで、滑稽な姿だっただろう。もしJK女神様が本気で腹を立ててしまったら、簡単に都市ごと潰されてしまうのに。ほんの気まぐれで、山のようなむっちり唇で、あらゆるビルや住宅と共に、むちぃぃっ…♡♡とキスで潰されていたかもしれないのに。 何故その現実が、分からなかったのだろう。 ズズズッ……!! JKのご尊顔は空へと上昇していき、カプセルのすぐ外側まで遠ざかっていった。…少しだけ、小人たちの恐怖と緊張感が和らぐ。それだけ、先ほどまでは尋常じゃない圧迫感だったのだ。 しかし、 「「「…でも、お仕置きはしないとねえ♡」」」 紺野のその言葉で、また一瞬で都市中に緊張感が走る。 年上の大人に怒られたような、ばつの悪い子どものように、都市中の小人が紺野の顔を伺って見上げるしかない状況。 それはまさに、都市を支配する管理人の姿を象徴していた。 「「「みんなさあ…この人工都市で、どうして水道が不自由なく使えるか知ってる?」」」 JK女神が何を言おうとしているのか、全小人たちが巨大な表情の中から読み取ろうとする。 「「「管理人が、人工都市にくっついてるタンクに、水を入れてあげてるからだよー?ま、ペットボトル1本分で数か月は持つらしいんだけど…。みんなが蛇口をひねった時に出てくるのはその水なんだよ?」」」 俺は嫌な予感がして、生唾を飲み込んだ。 「「「もう明日くらいで、水切れちゃうんだよね。だから、私が水を入れてあげないといけないんだけど…」」」 にぃ、と紺野の恐ろしい笑みが広がる。 「「「みんなが反省するまで、……おあずけ♡」」」 「なっ……」 「…っ、ふ、ふざけるなっ!!」 「それじゃ、生きていけないじゃないか…!」 「やめて、そんなの……!!」 可憐な管理人の意図、いや、悪意に気づいた瞬間に、群衆の怒りが再度爆発する。小人が生きていくのにあまりに必要不可欠な、水。それを、紺野はお仕置きと称して、この人工都市中から奪おうとしているのだ。 「「「許してほしかったらぁ…1週間、いつもの徴収の"3倍"の納品をするように♡」」」 いつもの量の3倍。それを、1週間。 明らかに、無理難題を言っていた。どれだけ極小小人たちが頑張っても、キャパシティを超えた作物や工芸品を作ることなんて出来ない。 「「「それができなかったら……」」」 クラスメート女子の巨大なご尊顔は、少しだけ頬が紅潮しているように見えて。 「「「タンクの中に、"変なもの"、入れちゃおうかなぁー…♡」」」 女神様の昂ぶりは、秘められた恐ろしい悪意の片鱗を、小人たちに見せつけていた。 ---続く---

【無料小説】極小小人体験学習④~怒れる小人と慈愛の巨人~

Comments

自分の力を理解して煽りまくるJK良いですね! 声だけで圧倒的な力の差を叩きつけられるの好きです。 一体何を入れられてしまうのか、続きを楽しみに待ってます!

ショージン

これはおし◯こ入れられますねぇ いや、どうか入れてください

すまぶらー

とても楽しみです。変なものっていろいろ考えちゃいます

Goose

勇気を振り絞って抗議活動してたのに遊び半分の行為で反抗する意思もかき消されちゃうのすごく良かったです...!

migi_33

どんなものが入れられるのかすごく期待しちゃうな...ごくり

ハラショー


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