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【無料小説】極小小人体験学習①~1/1000都市の世界へ~

この世界では、小人という種族が存在する。いや、存在した、という言い方の方が正しいかもしれない。かつて、小人は人間と同じように知能を持ち、同じように言葉をしゃべっていた。50年くらい前は、小人のサイズは普通の人間の1/50というサイズであった。 だいたい3cmちょっとのサイズ感では、小人の人権というのは軽視されがちだった。小人はペットショップで高価に売られ、犬や猫などのペットと同じような感覚で人間に買われていく。人間は自分の部屋にドールハウスを作り、小さな小人をペット感覚で可愛がっていた、らしい。 らしい、というのは、小人の歴史として授業で教わった内容でしかないからだ。…およそ30年前から25年前くらいの時期に、小人の体格は大きな変貌を遂げた。ただでさえ人間と比べて小さな体躯が、突然変異的に縮小したのだ。 その縮小率は、なんと人間のおおよそ1/1000だった。 1,2ミリに満たない体格に変貌した彼らは、やがて「極小小人」と呼ばれるようになった。今まで耳を澄ませば会話できた関係性は、もはや小人の話し声が一切聞こえない、人間から一方的にコミュニケーションを取るしかない関係性になってしまった。 …彼らの遺伝子に何が起きたのかは、専門家にもすぐには分からなかった。ただはっきりしていたのは、今までのようなペットと飼い主の関係性ではいられなくなってしまった、ということだった。 会話が成り立たないどころか、顕微鏡でも使わないと表情や身振り手振りすら視認できないのだ。かつては女子高生の間で小人ペットブームが起きて人権問題にも発展していたみたいだが、いつしか愛でる対象からも外れてしまった。…最終的に極小小人たちは、最新のテクノロジーで作られた人工都市の中へと追いやられていった。 人工都市はだいたい2メートル四方の単位で作られ、その中に約40000人もの極小小人が住まわされることになった。たたみ一畳分程度の大きさに40000人というのがにわかには信じられないが、小人からすれば2km四方の土地だということを考えれば納得の人口密度だった。 人工都市が作られてから20年ちょっと。極小小人たちは人工都市の中で働いたり、農作物を作ったり、できる限り自立して生きようとしていた。しかし何もかも小人たちで完結することは難しい。ドーム型のカプセルに包まれた人工都市の空調を入れ替えたり、足りない食料を供給したり、老朽化した建物を設置し直したり。この20年で「人工都市管理人」という職業が生まれ、管理人たちはミニチュアのような都市の状態を常にウォッチし、必要な管理や援助を行うことが求められた。 「…ということで、最近は人工都市管理人の不足と極小小人の人権軽視が問題になっているわけです」 近代史の先生が教科書を読む声を聞きながら、俺は窓の外をなんとなく見つめていた。内容に興味がないわけではない。ただ、ここ5年くらいずっとニュースや授業で言われている内容ではあった。 …そもそも人工都市管理人は、本当は難しい職業だった。都市管理についての知識を持ち、小人の歴史を知り、手先の器用さも持ち合わせていることが求められる。さらに"都市"の管理だけでなく、"小人"の管理をしなければならない。 …どういうことかというと。極小小人たちの全員が、人間の管理に素直に従って生活するわけではないということだ。普通の人間社会と同じように、極小小人の中にも都市のルールを守れないものはいる。それぞれが力を合わせて働かないといけない都市世界の中で一切働かない小人もいるし、窃盗や暴力を行う小人もいる。カプセルドームが開閉されるタイミングで外に逃げ出す小人も。 そんな極小小人を取り締まる仕組み、すなわち警察の役割を小人の中だけで任せるのは難しい。そのため、人工都市管理人はそういったルールを守らない小人を管理、指導して、都市の治安を一定に保つことまでも求められるのだ。 人工都市管理人が有資格者のみに許された職業だった時代は、常に管理人の不足が問題になっていた。極小小人の数は年々増え続け、今や人工都市の数は1000を超える。そんな数の都市を管理する人間がたくさん必要なのに、資格試験の突破率はとても低い。単純に試験が難しすぎるのだ。いつしか人工都市管理人という職業の人気は薄れ、深刻な管理人不足が訪れた。 「政府は2年前、人工都市管理人の不足を解消するため、資格試験の廃止を決定したね。要は、資格が必要な職業ではなくなったわけだ」 コンコン、と先生が黒板上の年表を叩く。「資格試験の廃止」と書かれた場所は、年表の矢印のうち現在を表す右端の点のすぐ直前だった。 資格試験の廃止が行われてから、人工都市管理の仕事は誰でも行えるようになった。…ただし政府の方針で、女性のみが仕事に就くことを許された。前時代的な考え方で、女性の方が手先が器用とか、情があるとか、そんな理由だった。 そのうち人手不足を解消するためにバイトの求人までもが出され、比較的割の良いバイト代に食いついた女子大生の間でちょっとしたブームにもなった。 …その結果、結局また別の問題がニュースとして取り立たされているのだ。資格のない女子大生バイトが都市管理なんてできるのか、とか、極小小人の人権を不当に取り扱うバイトが多いのではないか、とか。 「…極小小人って、そもそも人権あるんだっけ?」 「あるんじゃない?戸籍は何年か前に無くなっちゃったみたいだけど」 「なにそれ、かわいそ〜。いなくなっても誰も分からないってこと?」 隣でヒソヒソと女子が会話している。紺野と宮前は女子高生らしく、人権というシビアな問題を軽い口調で話のタネにしている。 …そもそもの問題は紺野の言う通り、極小小人の戸籍管理を政府が諦めてしまったことにあると思う。増え続ける1,2ミリサイズの存在を区別して管理することはあまりにも難しく、3,4センチの大きさだった頃にはできていた戸籍管理は完全に撤廃されてしまったのだ。 極小小人の人権尊重、というのは政府が口酸っぱく唱えている。でも、バイトの女子大生が管理している都市の小人がどんな扱いを受けても、何人かいなくなったとしても、それが表面化することなんてない。そんな状態で人権尊重を唱えても、根っこから問題が解決することなんて無いように思える。 「…ということで、政府は3年前に、都市管理の体験学習を高校のカリキュラムに取り入れることを決定しました。うちの学校でも、もちろん実施します。女子は都市管理人として、実際に極小小人たちが住んでいる人工都市を1ヶ月間、管理してもらうからね」 「えー、めんどくさーい」 「私やりたかったんだよね、ミニチュアとか好きだし」 「1ヶ月って長くない?」 先生の言葉に呼応して、女子たちは口々に好き勝手リアクションを行い始める。 「実際の人工都市をランダムで割り当てて、それぞれの家の部屋にカプセル器具付きで転送することになっている。だから、自分の部屋はちゃんと掃除しとけよー」 えー、やだー、男子は楽でいいよねー、とさらに口々に言葉を交わし始める女子たち。 そう、男はそもそも都市管理人になることはできないから、管理人側の体験をしてもあまり意味がない。 「去年先輩たちもやっていたから知ってると思うが、男子たちは"極小小人"側の体験をして、管理される側の感情を理解してレポートにまとめてもらうぞー。これも一人一人ランダムに選ばれた別の都市に転送されることになってる。もちろん女子たちが体験管理する都市ではなく、プロが管理している都市にな」 「滝野くん、クラスメートに管理してもらえなくて残念だったねえ」 横の席の紺野が、やや小柄な身体を少しだけ乗り出して、ニヤニヤと話しかけてくる。一見おっとりした話し方だが、本当に人をイジるのが好きなやつだ。 「別に残念じゃないよ。不慣れな女子に管理されるなんて危ないし嫌だね」 「ふーん?じゃあもし私の都市に滝野くんが間違えて来ちゃったら、真っ先にばーんって叩いて退治してあげよう」 冗談と共に、ばん、と軽く机を叩いてジェスチャーする紺野。 「怖いって…お前、ちゃんと管理できるんだろうな」 「失礼だねえ。私、結構手先とか器用なんだよ?プラモデル作るのとか得意だし」 「なんか、おもちゃ扱いだな…相手は生きた小さい人間だぞ」 …目の前にいるこの女子高生のノリこそが、今の管理人関連の社会問題を典型的に表している気がする。極小小人だって、れっきとした生き物なのだ。こんなど素人の女子高生に本物の人工都市管理をさせるなんて、大丈夫なのだろうか。 「男子は人工都市の中の寮に住んでもらって、その間はパソコンからオンラインで授業を受けるように。あ、女子はもちろん登校だぞ」 先生は体験期間中についての説明を続ける。 「むう、めんどくさい…男子は楽でいいねえ」 紺野は机にわざとらしく突っ伏しながら、こちらを恨めしそうに見つめてくる。 「いやいや、身体を小さくされるって不安だぞ」 「うーん、でも別に都市の中で住んでる分にはよく分からないんじゃない?実感なさそう」 「まあ、そうかも。でも、ちゃんと実感を持って体験しないと極小小人の気持ちは分からないからな」 「おお、真面目だ…滝野くんはえらいのおー」 不意に紺野が手を伸ばし、俺の頭をぽんぽん、と手でタップする。 「や、やめろって」 「あはは、本日の照れゲット」 明朗に笑う紺野を尻目に、俺は少し赤くなった顔を隠すように髪を整える。…こいつの距離感の近さには困ったものだ。特に男女の垣根を気にせず、自分がイジりたいと思った人間には躊躇なくスキンシップを取ってくる。 「お前みたいなちんちくりんには照れないから」 「うわ、ひど!滝野くんは男子だから大きいだけでしょ」 「こら、お前ら話聞けよー」 先生の注意で、もはや恒例と化していたやり取りが中断する。紺野はぺろっと舌を出し、素直に前を向いた。 「今週末の日曜日に転送手続きを行って、日曜の夜から女子は体験管理開始、男子は人工都市の中で生活開始となる。準備しておけよー」 キーンコーンカーンコーン… 先生の説明が終わると同時に、ちょうどよくチャイムが鳴った。 「んんっ…楽しみだなあー、ね?滝野くん」 小柄な身体で伸びをしながら、無邪気な感想と笑みを投げかけてくる紺野。 「…そうだな」 これから始める未体験の生活に不安と期待を感じながら、俺は空返事をするのだった。 ------ 「それでは、今から人工都市への転送を行います。身体を今の大きさの1/1000まで縮小させて、実際に都市管理人のプロの方が管理している都市の寮の部屋まで転送します。目が覚めたら、外に出て都市の様子や生活の仕方に慣れておいて下さいね」 その週の日曜の夕方。転送を行うために公営の施設に集められた俺たち男子は、一人一人ベットのような装置に寝かされた。そこで担当の専門家の人から説明を受け、いよいよ転送されるのだという。 「寮の中にパソコンが備え付けてありますが、これは授業を受ける時と、緊急時に私たち専門家と連絡を取る時以外は通信できませんので注意してくださいね。基本的に人間が使っている電波は都市内では使えないので、スマホもテレビも無しです」 高校生には辛いデジタルデトックスが強要されることを聞かされ、一ヶ月暮らせるのか少し不安になる。…授業中以外は、基本は誰とも連絡は取れないってことだよな。 「それでは転送します。目を閉じてリラックスしてください…」 言われた通り目を閉じた瞬間、麻酔が効き出したかのように、意識がぼーっと薄れていく。周囲の音が聞こえなくなって、体がふわっと浮いた感覚がして、 それで。 ------ 「…んん、…」 目が、覚めたようだった。 「…ここは…」 自分の部屋では無い、見慣れない一室のベッドで目を覚ました。俺は少し身体を起こすと、勉強机とベッドしかない簡素な部屋の全貌を把握することになった。 「………」 なんとなく自分の手を見つめる。身体を触ってみる。普通だ。特に、自分の身体に何か変化が起きたような実感はない。 「…俺、1/1000になってるのか…?」 あまりに違和感のない起床で、転送や縮小が本当に成功しているのかよく分からなくなる。ベッドから降りて窓の外を見ると、この部屋は2階に位置しているようで。道路には普通に自動車が走り、歩道には普通の人間が往来している。あまりに、普通の光景だった。 「とりあえず、外に出てみるか」 玄関に備え付けてあった運動靴を履いて、寮の1階まで駆け降りて外の歩道に飛び出す。…やはりそこには、いつも外出すると見る光景と何ら変わりない、車や人の往来があった。20代くらいの男の人が、ランニングしている。30代くらいの女の人が、買い物袋をカゴに乗せて自転車を走らせている。小学生くらいの男の子と女の子が、ボールを蹴り合って遊んでいる。 ドンッ… 「あ、すみません…」 ぼーっと突っ立っていた俺は、後ろから歩いてきていた40代くらいのおじさんにぶつかってしまった。 「あ、こちらこそごめんね。大丈夫?」 優しそうなその人は俺の方を気遣ってくれて、怒ることはなかった。…よっぽど、聞いてみようと思った。『ここは人工都市ですか?』と。しかし、人工都市の住人に俺が普通の人間であることを知られるのは禁止されていたため、聞くに聞けなかった。 でも、生活に必要なことは聞いておいた方が良い気がした。 「大丈夫です。えっと…あの、スーパーって何処にありますか?」 「…?配給所のことなら、この道をまっすぐ進んだところにあるよ」 「あっ、ああ、なるほど、ありがとうございます」 …そういえば授業で教わっていた。人工都市の中では農作物を作ることはできても、何か人工的な食品を作るようなことはできない。そのため、人間が加工食品などを1日1回、縮小させた状態で配給するのだ。…それをそのまま配給所と呼んでいるらしい。 本当にここは、人工都市の中なんだ。 「…もしかして君、最近他の人工都市から移動させられた?」 「え、えっと、そんなところです」 この2km平方の都市を俺が何も知らないことを訝しんでいるようで、俺はなんとか怪しまれないように会話を合わせる。 「そうか、じゃあもうすぐ"配給の時間"だから、家の中に戻った方がいいよ。それじゃあね」 おじさんはそう言うと、そのまま早歩きで去ってしまった。配給の時間。加工食品とかを届ける時間ってことか。なんで、家の中に戻った方が良いのだろうか。 「…とりあえず、もうちょっと周りの様子を見ておいた方がいいか」 忠告の真意がはっきり分からなかった俺は、すぐには寮に戻らず、しばし都市の中を歩き回った。 "都市"といっても、一辺が2kmしかない小さな街程度の大きさ。少し歩くだけで、その端っこまで到達してしまう。 「これが、カプセル…なのか」 "立ち入り禁止"と書かれた立て看板の向こうに、半透明で分厚い壁のようなものがそびえ立っているのが見える。目線を上の方に移すと、その壁は直立しているわけではなく、この都市をドーム型に覆うように存在しているのが分かった。カプセルに覆われた小さな都市。その中の住人は、目の前の分厚い壁によって完全に閉じ込められているのだ。 「外は、…茶色い地面…?」 カプセルは半透明なので、外の世界はかなりぼやけて見えている程度だった。外に出た時から、天井には空ではなくぼやけた白色が見えていることには気づいていた。そして今目の前を見ると、遥か遠くまで、何か茶色い地面が続いているようだった。他にも様々な色の巨大な物体が高いところにぼんやりと見えているが、都市管理の施設の器材だったりするのだろうか。 「…戻ろう」 狭苦しい都市の端っこまで到達してしまった俺は、元いた寮に向かって歩き始めた。街中の時計を見ると、どうやらもうすぐ18時のようだ。…太陽の光が差さない都市の中では、時計を見ないと昼か夜かすら分かりづらい。 そして、寮の付近まで歩いて戻ってきたときだった。 ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!! 「…っ!?」ビクッ! 突然、街中のスピーカーからアラーム音のような音がけたたましく鳴り響いた。 『配給の時間です。住人の皆さんは屋内に避難してください…繰り返します…』 女性の声でアナウンスされた内容は、少し前に通りかかりのおじさんに言われたものと同じだった。周りを見渡すと、そういえば人通りがぱったりと止んでいる。行き交っていた自動車も、今では一台も走っていない。 よく分からないけど、部屋の中に戻ろう。 そう思った瞬間だった。 ドンッッッ!!! 「うわぁっっ!!??」 突き上げるような振動が、都市を襲った。上下に揺れた地面が、電灯や建物の窓を音を立てて激しく振るわせる。 ドンッッッ!!! 恐怖を掻き立てる振動が再び襲う。 地震だ。 人間の世界でも地震が起こっているのだろう。すごい揺れだけど、大丈夫だろうか。屋内に逃げ込んだ方が良いか、それとも…。 ドンッッッ!!! ドンッッッ!!! そのうち。 突き上げるような振動が、不自然なほど定期的に都市を襲っていることに気づいた。 自然災害である地震の揺れ方ではない。 じゃあ、この揺れはなんなんだ。 「なんだ…あれ……」 俺は、空を覆う巨大なカプセルの向こう側で、とてつもなく巨大そうな物体が動いていることに気づいた。半透明なカプセルによって何かは見えづらいが、東京タワーやスカイツリーよりもさらに巨大な、動くにはありえない巨大さをもった物体。 ドンッドンッ!! 「ぐうっ……!」 振動が2回続けて襲い、俺はバランスを保てなくなって道端に這いつくばる。怖い。今までこんな大きさの地震を経験したことがなかった。自分を支えている地面ごと揺れているという、本能的な恐怖。地震ではないとしたら、これは何なのか。 「「「このボタンを押せばいいんだよね…」」」 ぐわんっ…ぐわんっ…!! 「……っっ!!??」 …突然都市中に鳴り響いた爆音に驚き、思わず耳を塞ぐ。また街中のスピーカーから放送が流れているのかと思ったが、違う。もっと高いところから、天高くから都市全体に鳴り響いているような。今まで生きてきて聞いたことがないような音の響き方。 「「「もー、説明書難しくて分かんないよお…」」」 ぐわんっ…ぐわんっ…!! 「うぐっ……!!」 大きすぎる音がそこら中で反響し、その音だけで周囲の建物がギシギシと悲鳴を上げている。突然建物たちが崩れるんじゃないかと思い、恐ろしくて、でも逃げ場もない。…しかも、爆音すぎて聞き取りづらいが、俺の耳には人間が発した言葉に聞こえていた。 まさか、都市管理人の声なのか。人間が発しただけの声が、建物を震わせるほど巨大なのか。ただの声が、こんなに怖いのか。 震える身体で歩道にへたり込みながら、空を見上げていた俺は。 ガコンッッッ!!! けたたましい音と共に、空に長い長い線のようなものが現れたことを視認した。 ゴゴゴゴッッッ…!!! その線の場所から、ぼんやりしていた景色が少しづつはっきりとした白色に変わっていく。空の色が塗り変わっていく。天変地異でも起きたかのようなその現象が何を意味しているのか、少し遅れてから理解した。 カプセルが、開けられているのだ。 外界との隔たりだった半透明のカプセルが、空の真ん中から片方に向けた開いていっている。激しい爆音と共に、直接外界の景色が少しづつ見えていく。 「「「よし、これで開いたかな?」」」 都市管理人と思わしき声が依然として鳴り響く。まるで天の声のように、都市中の全住人が聞かされることとなる。 …プロの都市管理人にしては、どこか間延びした、若い声。 そのどこかおっとりした声に聞き覚えがあるような気がしたが、あまりに巨大な声すぎてピンとはこなかった。 ゴゴゴゴッッッ……!!! ガコンッッ…!!! そして。 ドーム型のカプセルの半分が全て開け放たれ、外の景色が直接都市の中から見える状態となったとき。 「あ、あ、ひぃぃっ……」 そこには。 天を埋め尽くすほどの、あり得ないほど巨大な、 「「「………」」」 "人の顔"と思われる光景が広がっていたのだった。 「ひ……い……」 腰が抜けて、悲鳴も出てこなかった。まるで神様のようだった。空全体を埋め尽くすようなその物体は、明らかに人の顔の形をしていて。普通に生きていて、こんなにも超巨大な物体を目の当たりにすることがそもそもない。異常な光景、異常な世界。 あまりに巨大すぎる物体を掲げられたら、人は畏怖の念を抱くらしかった。 「「「んで……物資を補給してあげるんだっけ?」」」 そして。 巨大すぎて、顔のパーツひとつひとつしか視認できていなかった俺は。模様までくっきりと見える2つの恐ろしい瞳や、ちょっとした山脈くらい大きいのではないかと思えるほどの鼻や、声が発せられるたびに蠢くピンク色の2枚のくちびるを、それぞれでしか認識できていなかった俺は。 「あ…え…なんで……」 「「「ん…なんか挨拶とかしといた方がいいのかなあ」」」 神様のように空に鎮座する巨大な顔が、 「「「こんにちは〜、今日から体験管理人をする、紺野美晴っていいまーす。小人のみんな、これからよろしくねえ」」」 どう見ても、よく知ったクラスメートにしか見えないことに、ようやく気づいたのだった。 ---続く---

【無料小説】極小小人体験学習①~1/1000都市の世界へ~

Comments

ありがとうございます! 間違えて転送されてしまうくらいなので、さらなる悲劇的なハプニングもあるかもしれません😌

konan

見知った相手が圧倒的な存在になって徐々に価値観が強制的に上書きされていったりなんてのも楽しみですね この1ヶ月生活が終わった時に、ハプニングでクラスメイトのところに縮小転送されたのと同様にハプニングでさらに1000分の1となってしまったり・・・なんてさらに小さくなる展開とか無いかなと期待しつつ今後も楽しみに待ってます(/・ω・)/

ケン

ありがとうございます!

konan

最高のunaware萌えですね😊

konan

ありがとうございます!いきなり絶望的なサイズ差でのunawareとなり、主人公は危険に巻き込まれていきます😌

konan

次回からさらに不安とドキドキが加速します😊

konan

ありがとうございます!

konan

このあとの展開が楽しみです!

セロハン

新シリーズ!楽しみです 「いなくなってもわからない」て萌えますね

murkyreal

過去にあった小人体験学習や文化祭のお化け屋敷の話のような 縮んだことで見知った相手が巨大になって無自覚に屈服させられる話が好きなので今から続きが楽しみです! 特に今回はいきなり1000分の1かつ不慮の事故?という事でunaware要素も強そうで楽しみ

ああああ

不安とドキドキが入り混じった感じで2話が楽しみです!

あめんこ

このあとの展開が楽しみです

ハラショー


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