巨大なバスから降りてから、3時間ほど歩いただろうか。男性用歩行帯をキャリーバッグを引きながらひたすら歩いてきた俺は、何度も至近距離で踏み下ろされる巨大な女性の脚や、日の光を妨げる巨大な女性の下半身から受ける威圧感に、身体も精神も擦り切れてへとへとになっていた。 「……ここか」 そんな長旅もようやく終わり、俺はこれから始まる一人暮らしの拠点となる賃貸のアパートの前に辿りついた。大学への合格が決まった時から家を探し始め、既に契約が住んでいるアパート。今日がちょうどその入居日なのだ。 (やっぱり、デカいな……) 俺の目の前にそびえ立つのは、小さい男性用のサイズのアパート、ではなく。…完全に女性のサイズに合わせて作られた、俺からすれば途方もなく大きなアパートだった。 …やっぱり、男性専用の土地のアパートを借りればよかったか。 アパートの巨大さに気圧され、少しだけ後悔する。この都市には、男性専用に作られた小さなアパートが並ぶ男性用タウンもいくつか存在する。しかしその数は少なく、家賃はかなり高い。上京したての大学生が住めるようなランクの家賃では決してなかった。 上京した男が家を借りるときの選択肢は、もう一つある。それは、女性が住んでいる賃貸の部屋の一角を間借りしたアパートに住む、というものだった。この都市では女性が賃貸を選ぶとき、「男性用アパート付き」という条件の物件が存在する。その物件では、例えば廊下の端っこに男性用サイズのアパートが備え付けられている。シル●ニアのミニチュアハウスのようなもので、そこに入居希望者の男性が割り当てられるのだ。 これは双方にとってメリットがある制度だった。女性からすれば、ミニチュアハウスくらいの大きさのアパートが部屋のどこかにあるだけで、そのスペースなどたかが知れている。せいぜいハムスターを飼うくらいのスペースが占領されるだけ。それだけで家賃の何割かを入居した男性たちに負担してもらえるのだから、かなり旨味があった。…そして、見知らぬ小さな男性たちが自分の家の中に住んでいることを、そこまで気にしない女性が多いのも事実だった。 男からしても、男性専用タウンにあるアパートを借りるよりも、女性の部屋の中にあるアパートを借りる方が圧倒的に家賃が安い。…巨大な女性がいる空間で済む危険さ、居住環境の粗悪さなど度々問題視されることもあるが、特に学生の場合はお金がないので、正直女性の部屋に住む以外の選択肢が無いのが実情だ。 「部屋は…103号室か」 一階にある部屋の巨大なドアに向かって、進んでいく。進むにつれて、ちょっと怖くなってくる。正直アパートの契約をする段階では、見知らぬ巨大な女性の部屋の中のアパートに住むことにちょっとしたワクワクを感じていたところもあった。しかし実際にこの都市に来て、絶望的に巨大で強い女性の足元を怯えながら歩いてきた俺は、本当に見知らぬ女の人と同じ空間で生活しても大丈夫なのか、危険ではないのか、という不安の方が大きくなっていた。第一、どんな女性の部屋かも分かっていないのだ。 「えっと…"男性用出入口"…?」 果てしなく空へ伸びる巨大なドアの前にたどり着いた俺は、その横にある小さな小さなドアに書かれた文字を読んだ。小さなといっても、ちょうど俺の大きさに合ったドアだ。入居する男性は、このドアから入れば良いらしい。 俺は意を決して、ドアを開けて中に入った。 「うわ…ひっろ……」 中に入った瞬間、感嘆の声が漏れ出る。そこには異常に広い空間が待ち受けていた。空間の広さに気を取られ、そこがどんな場所なのか気づくのに時間がかかった。 (構造は普通のアパートだ…) ドアを開けた俺の目の前に広がるのは、運動場のように広い玄関口だった。遠くの方に、バスくらい巨大なスニーカーやヒールが鎮座しているのが見える。明らかに、この部屋の主がいつも履いている靴たちだった。…ここが一人の女性の部屋に過ぎないことが分かる。ただ、その大きさだけが異常なのだ。 玄関口からその先には、果てしなく続くフローリングの床。これが廊下なのだろう。廊下の右側は壁、左側は取っ手の付いた薄水色の壁であり、さらにその上を見上げると換気扇が見えた。…よく見えないが、恐らくこの上にキッチンがある気がする。普通のワンルームのアパートの構造だと、そうだろう。 そして巨大な廊下のずっとずっと奥に、でっかいドアが鎮座している。その先は恐らくワンルームのリビング。巨大な女性のメインの居住空間だろう。ドアは一部分擦りガラスになっており、リビングの様子はモザイクがかかったようになっていて見えなかった。 そこまであたりを見渡して、目線を元に戻す。と、そこでようやく、巨大な廊下の右端にミニチュアハウスのようなアパートが備え付けられているのが分かった。…ものすごい違和感のある光景だった。普通の女性の部屋の廊下に、いきなり精巧なアパートの建物が置かれているのだから。しかしそれは置物でも何でもなく、実際に小さな男性が住むためのれっきとした居住空間だった。 「…………」 シーン……… カチッ…カチッ…カチッ…… だだっ広い空間に、どこかに置かれた時計の針の音だけが響く。リビングの方からは、特に音は聞こえてこない。…この部屋の持ち主は、どうやら留守のようだった。 「…はあっ……」 巨大な女性がいると思って身構えていた俺は、とたんに息を吐いて脱力する。とりあえず今は、この空間に巨人はいない。 俺はアパートに向かって歩き出す。ただの女性の部屋なのに、玄関を上がって廊下を進むのに数分ほど時間がかかる。このだだっ広い廊下を巨大な足で闊歩する女性の姿を想像してしまい、その足元のアパートで生活しなければいけない不安がさらにこみ上げてくる。 「よし、やっと着いた…」 廊下の端に設置されたアパートの目の前までたどり着く。俺の部屋は305号室。一応、このアパートの最上階に位置する部屋だった。俺は階段を上りきり、「305号室」と書かれた自分の部屋のドアを開けた。 そこには、ほっとするサイズの部屋が広がっていた。男性のサイズに合わせて作られたアパートの部屋には、当たり前だが俺が使いやすいサイズの玄関口、廊下、キッチン、そしてリビングがあった。何の変哲もない6畳ほどのワンルームで、まだ家具のない殺風景な部屋だったが、ようやく自分の居住空間までたどり着いたのだ。 俺は全ての荷物をひとまず投げ出し、リビングの床に仰向けで倒れ込んだ。 「はあ…疲れた……」 何万歩も歩き、全身筋肉痛だった。上京初日からさすがにハードすぎる移動距離で、身体が悲鳴を上げている。俺は仰向けのまま、リビングを見渡す。リビングの壁のうち一面は全て窓になっており、外の景色がかなり見やすくなっていた。しかし、そこから見える景色は。 (でっかい廊下、だ……) 窓の外に広がるのは、巨大な廊下の景色だった。廊下の対面には薄水色の壁がそびえ立っており、壁には取っ手のようなものが付いている。恐らくキッチン下の収納スペースなのだろう。取っ手を掴んで開けば、中にはフライパンや鍋などの調理器具が格納されていそうだ。 そんな景色が部屋の窓から見えているこの状況が、あまりに異質だった。今俺が寝転がっているリビングはどう見ても普通の大きさのリビングで、住み心地の良い空間でしかない。しかし窓の外を見れば、同じワンルームの部屋でありながら異常な大きさの廊下が見えているのだ。アパートの中にアパート。マトリョーシカを思い出す。…このデカい廊下を、居住主の女性が歩くのだ。それを想像すると、心がザワザワしてくる。しかし今は女性はいない。アパートの中は、静かだった。 (…眠くなってきた) 疲労困憊だった俺は、リビングの床に倒れ込んだまままどろみ始めた。部屋にはまだ寝具もなく、明日買いに出かけなければならない。一応寝袋は持ってきていたが、それを出すのも面倒臭く、俺はそのまま目をつぶって睡魔に身を任せた。 ------ --ガチャッ!!ズンッ…!!ズンッ…!! 「っっ!!!」 身体を襲う振動に、慌てて跳ね起きた。寝起きでぼーっとする頭のせいで、状況を理解するのに時間がかかる。 (なんだ…地震…?) ズンッ!!ズンッ!! なお激しい振動が俺の部屋を揺らす。リビングの隅に置いてあったキャリーバッグが倒れ、アパート全体がギシッ、ギシッ、と軋んでいる音が響いてくる。部屋を揺らす災害的な振動に、本能的な恐怖を感じる。 ドンッ!!ドンッ!! 「ひぃっ……」 これは地震じゃないと、ようやく気付く。この男性用アパートが置かれた大きな部屋の持ち主が、帰ってきたのだ。時計を見ると、夜の7時を指していた。 思わず窓の傍に駆け寄った俺は、その先に広がる衝撃的な景色を目の当たりにした。 ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!! 「あ……ああ……」 窓の外に広がる、だだっ広い廊下の景色。その左の方から、巨大なビルのような肌色の物体がドンッ!!ドンッ!!と近づいてくる。紛れもなく、50倍女性の巨大な生脚だった。あまりにも大きくて太くてたくましい女性の脚が、一歩踏み出すごとに爆撃のような音と衝撃をこちらのアパートに与えてくる。巨脚が一歩踏み出されるだけで、あんなに遠くに見えていた脚がもうアパートの目の前に着地している。踏み出された素足は廊下のフローリングをギシィィ……と容赦なく軋ませ、女性の巨体が持つ異常な質量の大きさを物語る。着地した脚のふくらはぎや太ももに力が入り、柔らかそうな肉の中からたくましい筋肉が隆起しているのが見えた。 ズンッ!!ズンッ!! 「ひぃぃぃっ……」 あまりにも迫力のある景色と、部屋全体を襲う災害のような歩行の衝撃。思わず恐怖で頭を抱えてしまう。…部屋の窓からは女性の生脚しか見えず、どんな見た目でどんな年齢の女性に恐怖を与えられているかすら分からない。ただただ、窓の外に見える巨脚の大きさが恐ろしくて。もしあの脚がこのアパートに踏み下ろされたら、一瞬で倒壊してぐちゃぐちゃに踏み鳴らされてしまうだろう。そう考えるだけで、50倍女性の足元のアパートで生活する恐ろしさが心の中をどんどん支配し始める。 ズンッ…!!ズンッ…!! ガチャンッ…!!……バタンッ!! 「っっ………」 怯えているうちに、巨大な脚は一瞬にしてアパートの前を通り過ぎた。そしてその先にあるドアが開かれ、巨脚はリビングの中へ歩みを進めていった。やや遅れて、ドアが閉まる激しい音と振動が伝わってくる。 そうして、50倍女性の帰宅による災害が終わったのだった。 「…………」 脚が通り過ぎてからも、しばし呆然として窓の外を眺めていた。女性の歩行の強大さに対する畏怖や、それに対するこのアパートの建物の頼りなさ。何よりこれからあの巨大な下半身が闊歩する空間の中で生活を続けなければいけないというとてつもない不安にさいなまれる。 (本当にここに住んで、大丈夫なのか…?) さすがにあの女性がこのアパートに危害を加えるようなことはないと思うし、法律でも明確に禁止されているはずだ。でも…自分が住んでいるアパートを一踏みで潰せてしまう巨人が常にいるというのは、それだけで恐怖だった。 そんなことを考えていると、 ガチャッ!! ドンッ!!ドンッ!! 「ぎゃあっっ!!!」 再びドアが開き、巨人の脚が廊下に踏み下ろされてくる。完全に油断していた俺は叫び声を上げてしまった。 ドンッ!!…… 2本の巨木が、アパートの正面あたりに後ろを向いて着地する。女性が男性用アパートに背を向けて立っている形。そのまま、 ジャーーー…… キッチンのシンクの蛇口を捻り、出てきた水で手を洗っている。こちらの窓からは、タワーのように伸びる脚の裏側、ふくらはぎの肉やむちむちの裏腿が景色いっぱいに広がる。さらにその上には、柔らかそうな生地のグレーのショートパンツがお尻を覆っていた。完全に部屋着用の、気を抜いた下半身の服装。そんな生々しい恰好を大パノラマで見せつけられ、本能的な恐怖の裏側で少しだけ変な気持ちになってしまう。 「っ……」 どんな女性なんだろう。俺は怖がりつつも、変な興味を持ってしまった。窓の外にそびえ立つむっちり艶めかしい生脚の持ち主がどんな人なのか、見てみたい。俺はそーっと窓の方に近づいてガラリ、と窓を開けた。 (っ…匂いが……) 窓を開けた瞬間、女性特有の香りが部屋の中にも流れ込んでくる。…外の暑さで蒸された下半身から放出される酸っぱくて甘い匂いが、アパートの外の空気を既に支配していた。この女性の支配下で生活していることを、強く実感する。 俺は濃厚な匂いを嗅がされながら、そのまま小さなベランダに出る。 「…すっご………」 窓越しではない生の景色に、思わず唾を飲んだ。とてつもなくデカい女性の下半身がそびえ立っており、首が痛くなるほど見上げないとお尻から上の部位が見えない。上空高くに女性の上半身が鎮座しており、ラフな白いTシャツに覆われた巨大な体格が見て取れた。ややサイズの大きいTシャツの裾から、女性の腰の肌がちらちらと見え隠れしている。 そしてさらに上を見上げると、女性の後頭部がやっと視界に入ってくる。茶色いセミロングの髪は綺麗に手入れされているように見えた。…あの髪の一本一本が実際どれくらいの大きさなのか想像すると、頭がくらくらしそうになる。 空高くの後頭部を見つめていると、 ジャーー……キュッ…… 「「ふぅ……」」 手を洗い終えた女性が、振り返った。 (あっ……) ここで初めて、この巨大な女性の顔を認識した。茶髪に包まれたその顔は、高校生というのは少し大人びている。大学生くらいだろうか。俺よりは年上の女性に見える。 ドンッ!!ドンッ!! ガチャンッ!!! 女性はまたドアを開き、歩行音を鳴らしながらリビングの方へ消えていった。 「………」 女性の顔を始めて認識した俺は、廊下を闊歩する巨大な身体が一人の女性のものでしかないことを改めて実感した。あんな大きさだけど、怪物でも何でもなく。ただの一人の女子大学生が、普通に自分の部屋で生活しているにすぎないのだ。…その部屋を間借りして住んでいる矮小な男から見れば、圧倒的で恐怖を感じるほどの巨体なのに。 あの無防備で艶めかしい生脚の持ち主の顔が分かった途端、心臓が跳ね始める。…何故かはよく、分からない。ただ、巨大な脚が得体の知れない怪物のものではなく、普通の女子大学生のお姉さんのものであるという事実が、俺の精神に突き刺さっていた。おっきな脚を見せつけられ、やや心を奪われてしまってもいた。 …巨大すぎる女性と生活しなければならない不安と、見知らぬ女子大学生の部屋着姿を見上げる生活が始まるドキドキ感が、心の内に同居していた。 ------ ドンッ!!ドンッ!! 「っっ!!!」がばっ!! 部屋を襲う激しい揺れで跳ね起きた。窓の外を見ると、巨大なふくらはぎが右から左へ、一瞬で通り過ぎていった。 「……はあ…」 思わずため息をつく。…このアパートで生活し始めてから1週間。大学の入学式まではまだ1週間あり、俺はアパートで生活しながら家具や生活必需品を揃えていく必要がある時期だった。 このアパートでの生活は、巨大な女性の生活リズムに合わせなければならない。いくら朝ゆっくり寝ようと思っていても、起床した女性が廊下に脚を踏み入れた爆音と振動で強制的に起こされてしまう。その場合の寝覚めは強烈に悪く、アパートが破壊でもされるのではないかという強烈な音と衝撃に驚いて跳ね起きてしまうのだ。…そうなると必然的に、女性が眠りにつく時間に寝て、朝同じ時間に起きる生活をし始める。女性の睡眠リズムに強制的に合わせさせられるのだ。 …正直、寝不足だった。女性の部屋のトイレはちょうど男性用アパートの隣に位置しているため、夜中に女性がトイレのために起きると、暗い廊下に鳴り響くズンッ!!ズンッ!!という歩行音でアパートの住民も全員起こされることになる。巨脚の歩行音と振動をよそに睡眠し続けることなど不可能なのだ。そして強制的に起こされた後は、遠くから聞こえてくるシャーーッ……というおしっこの音が部屋の中に鳴り響く。女子大生のおしっこの爆音を聞かされた男は、本人がトイレから出て再びリビングに戻った後も、悶々としてなかなか眠れない。俺は今日夜中の3時くらいにそれをやられた挙句、朝7時に歩行音で目覚めさせられたのだ。…十分に睡眠が取れず、頭がぼーっとしていた。 「………」 ぼーっとした頭で、何となくベランダの方を見る。ベランダには、俺の洗濯物たちが干してあった。…そういえば、昨日の夜に洗濯して干したままだった。俺はベランダに出て、自分のTシャツやパンツなどを取り込んでいく。取り込む最中、服の匂いをそれとなく嗅ぐ。…嗅ぎなれない甘い匂いが、鼻腔を突いた。 (っ……もう、匂いが……) このアパートのベランダで服を干し始めてから、俺が持っている服全てにあの50倍女子大生の匂いが染み付いてしまった。それもそのはず、アパートの外では巨大女子大生が私生活を送っており、女性のプライベートの生の匂いが充満しているのだ。そこに濡れた服を干しておけば、充満した甘い匂いが存分に染み込むのも時間の問題だった。 俺はパジャマ替わりに着ていたTシャツを脱ぎ、代わりに取り込んだばかりのTシャツに着替える。ふわっと甘酸っぱい匂いに包まれる。まるで、あの女子大生に包まれているかのよう。…気づけば、股間が立ってしまっていた。 「っ…くそっ……」 俺の意思とは関係なしに、大きな女性が無自覚に出したフェロモンに支配され始めている。俺は常時あの女子大生の匂いに包まれながら生活する羽目になっていた。…若い女性の匂いを嗅いで平静でいられるわけもなく。俺は朝服を着替えると、決まって興奮を抑えられずに一度自慰行為を行ってしまうのだった。 「はあっ…はあっ……あ……」 ドンッ!!ドンッ!! 自分の股間をまさぐり始めた俺の視界に、肌色の巨木が踏み下ろされる。むっちり柔らかそうな脚が台所の前に立ち、簡単な朝ごはんを作り始めたのだ。…今嗅いでいる甘酸っぱい匂いと、窓の外に見える巨人の脚。それが脳内で結びつき、強烈な興奮を生み出す。 「くっ……うっ……」 あっという間に、俺は果てていた。女子大生が朝ごはんを作り終える前に。…向こうは俺の存在すら認識していないのに、俺は生活の全ての時間であの巨体を意識し、支配され、自慰を余儀なくされている。強烈な立場の差がそこにはあった。 (…ゴミを出しに行かないと…) このアパートでは週2回、ゴミ収集の日が決められていた。住人の男たちはゴミを纏めてアパート一階のゴミ置き場に捨てる必要がある。そしてそれを巨大な女子大生が摘まみ上げ、巨人が排出した大量のゴミの中に合流させるのだ。 トン、トン、トン… 俺はまとめたゴミを持ちながら、アパート外の階段を下りていく。そして1階にたどり着き、ゴミ捨て場にゴミ袋を投げ捨てた。その際、ゴミ捨て場の脇に置いてある掲示板をふと見やる。掲示板には、アパートの住人全体に向けたアナウンスや注意事項が度々掲載されていた。 『注意:下記の時間帯は共住女性の外出及び帰宅時間のため、むやみにアパートの敷地外へ出るのはやめましょう』 『清掃ボランティアのお知らせ:今週末、アパート周辺に落ちた巨大ゴミの清掃を行います。可能な限り参加してください。(大きな体毛や汗の水滴などが対象となるため、適切な掃除道具を各自持参してください)』 『夕方に洗濯物を干すことは非推奨です。帰宅直後の共住女性が放つ汗の蒸気が染み込む恐れがあります』 (………) 掲示板に書かれているのは、どれも巨大女性に関する情報や注意喚起ばかり。いかに男たちの生活が一人の女性の生活を中心に回っているか、これを見て毎回実感する。このアパートに住む小さい男たちは、嫌でもあの女子大生の私生活を把握し、それに合わせて生活をしなければならないのだ。…そんな男たちの苦労を、巨大女子大生は全く気付いてもいないだろう。 俺は階段を上がってから部屋に戻る。そして、未だに片付いていない部屋の中を整理し始める。その最中も、定期的にドスンッ!!ドスンッ!!と巨人の歩行に邪魔をされた。女子大生が廊下を通る度、部屋の中の何かが倒れたり位置がズレたりして、全く整理出来やしない。 パサッ…… 急に、窓に何かがあったような音がした。音に反応してベランダの方を見ると。…ベランダの床に、1mほどの長さの黒い縮れ毛が落ちていた。 「っ…!!」ドクンッ、ドクンッ…… それを見た瞬間、心臓が跳ね始める。俺は窓を開け、ベランダに落ちている太くて長い巨大な毛を手に持つ。 「はあっ…はあっ……」 ダメだ。今日もまた、こんなことを…。そう思っていても、身体は止められなかった。俺はその巨大な毛を部屋の中に持ちこむと…ぶっとい毛に抱き着いて、放たれる匂いを嗅ぎ始める。そのまま、猿のように股間をまさぐり始める。 ベランダに落ちてきた毛は、紛れもなく巨大女子大生の陰毛だった。あの女子大生が生活する中でたびたび、ショートパンツの裾から無意識に陰毛が落ちてくる。人間の生活としてそれは普通のことではあるが、小さなアパートの住人からすれば、定期的に若い女性の巨大な陰毛が、しかもさっきまで女性の股間部に生えていた陰毛が落ちてくるのだ。それはそこそこ高い確率で俺の部屋のベランダに落ちてくることがあって。 「はあっ、はあっ、…くうっ……」 その陰毛を見つけるたび、俺はあのエッチで巨大な下半身と目の前の巨大な陰毛を結び付けて異常な興奮を感じてしまうのだ。やらなければいけないことがあるのに、天災のように降ってくる陰毛を見つけた途端、我慢できなくなってしまう。 …こんなことを入居から1週間続け、俺の部屋は全く片付いていなかった。いや、それどころか、入居してから俺は一歩も女性用アパートの外に出ていなかった。 早く外に出て、新生活を準備するための道具や家具など揃えなければいけないのに。ただ…毎日窓の外に見える女性の圧倒的な身体、部屋の中にまで流れ込んでくる女性の体臭、時折落ちてくる巨大な陰毛に、いちいち気を取られ、いちいち興奮して。気づけば俺は部屋の中で常に女性の動向を気にしながら、巨大な脚が廊下を横切る度に興奮し、ひたすら自慰行為を行うだけの毎日を送っていた。 「………はあ……」 巨大な陰毛に股を擦り付けながら絶頂してしまった俺は、あまりに堕ちた生活を送っている自分が恥ずかしくなり、ため息を漏らした。こんなこと、してる場合じゃない。俺は良い大学に合格したんだから、しっかり準備してしっかり勉強して、良い会社に入らなければいけないんだ。 そんなことを考えていたら、 ドンッ!!ドンッ!! 女子大生の脚がアパートの外に現れて、止まった。 「………?」 その脚がいつもと逆の方向を向いていることに気づいた。いつもは台所の方、すなわちアパートとは反対の方を足先が向いているのだが。今、女子大生の足先はこちらのアパート側を向いていた。 (確か、このアパートの上あたりの壁にカレンダーがかけられてたような…) アパートの外に出たときの光景を思い出す。女性はこの男性用アパートに干渉してくることは全くない。このアパートを存在しないものとして、自然に生活を送っている。そのため、今アパート側に足先が向いている状態というのは、恐らく上の壁に貼られているカレンダーを見ているのだと予測した。…そして、その予測は当たっていた。 突然のことだった。 ギィッ…ミシミシミシッ!!! ぶわぁっっ!!! 「うわわああっっ!!??」 突然窓の外の景色が異常な速さで動き始め。その動きが止まった時には、刺激的な光景が広がっていた。 (すご……すぎる……) 窓の外に、しゃがんだ女子大生の股の部分が大パノラマで広がっていた。ピンク色のショートパンツに、剥き出しになった生脚。その状態でしゃがまれたことで、ショートパンツの生地がパツパツになって巨大な股間に張り付いていた。みちぃ…♡と張り付いたショートパンツの奥の、巨大なパンツのシルエットが浮かんでしまっている。それどころか、股の中央部にあると思われる巨大な女性の性器の形がこんもりと形を表している。あまりに刺激的で、無防備すぎる光景。 それだけでなく、ショートパンツから伸びる生の太ももとふくらはぎがみっちり合わさり、ふくよかな肉がむにぃ…♡と変形して伸びている。むちむちエッチな生脚は巨大すぎて、女性の基準から見たときに太いのか細いのか全く分からない。ただ確かなのは、このアパートを簡単に圧し潰してしまえるほどの絶対的な質量を持った生脚であるということだった。 (っ…窓……が…) 女子大生の巨大な股間や太ももから放出される熱で、窓が曇り始める。なんという熱気の量なのだろうか。ただ部屋着の女の子がしゃがんだだけなのに、俺たちの居住空間は簡単にその熱に支配され、脅かされる。また後で窓を拭かなければいけないだろう。 ミシミシミシッ…… むにぃぃ…♡むぎゅっ…♡ 女子大生はしゃがんだ体勢のままカレンダーに何か書いているようで、身じろぎする度に廊下のフローリングが恐ろしい音を立てて軋み、巨大な下半身の豊満な肉が擦り合わされてふにっ…ぷるんっ…♡といやらしく揺れる。そんな無意識で無防備な下半身を見せつけられ、我慢できるはずもなく。先ほど女子大生の巨大陰毛で自慰を行ったばかりの俺は、再び元気になった股間をまさぐり始めた。 「はあっ…!!はあっ…!!」 ミシミシッ!! ぎゅむっ…むにっ…♡ 窓の際からこっそりと女子大生の下半身を観察しながら、必死で自慰を続ける。時折部屋を襲う振動すら全て興奮の種に変わり、何度も何度も射精を余儀なくされた。 そして女性がカレンダーを書き終わり、巨大な下半身がリビングの方にズンッ!!ズンッ!!と遠ざかってからも。脳裏に焼き付いた景色の余韻と、窓に付いた女性の熱気の水滴を見ながら、しばらく自慰は止まらなかった。 そして。散々みっともない絶頂を迎えた後。 「今日は…もう、いいか……」 疲れ切った俺は、今日も外出を断念してしまうのだった。 それからも、外出できない日々が続いた。いくら意識しないように努めても、巨大女子大生の存在が視覚、聴覚、嗅覚に強制的に入ってくるのだ。こちらを全く意識していないにも関わらず、50倍女性の私生活は天災のように空から降り続けてくる。それにいちいち反応してしまう俺は、もはや外出を試みる精神状態ではなくなっていた。 ある時は、帰宅直後の女子大生が脚にかいた汗の蒸気がアパートを取り囲み、窓を曇らせるどころか部屋の中にまで異常な熱気が入り込んできた。しかし俺はエアコンも付けず、生々しい汗の匂いに蒸されながら自慰を行った。 ある時は、女子大生が廊下を歩きながら行儀悪くクッキーをほおばっていた時。唇の端から零れ落ちたクッキーの破片が、俺の部屋のベランダにぐしゃっ!!と落下した。…一度あの巨大な唇に触れたクッキーの破片。そう考えただけでドキドキが納まらず、絶対にいけないと分かりつつも、俺はその食べカスを食べてしまう。時折、破片に付着した女子大生の唾液を発見し、その濃厚な匂いを嗅ぐという人として堕ちた行為をしてしまった。 そして、いよいよ大学の入学式の日。今日は8時頃にはこのアパートを出なければならない。7時きっかりに女子大生の起床で強制的に目覚めさせられた俺は、入学式の支度を行っていた。上京してから2週間、結局一度も外出することができなかった。50倍女子大生の私生活に気を取られ、全く自分らしい生活が出来なかった。しかし、今日からは切り替えなければいけない。俺は自分の頬を叩いて気合を入れ、必要なものを入れたリュックを背負って外出しようとした。 その時、 ドスンッ!!ドスンッ!! いつものように巨大な脚が窓の外に現れた。そしてやはりいつものように、グレーのショートパンツからぶっとい生脚を露出させた格好。俺は窓の外に広がるダイナミックな光景にやや気を取られつつも、玄関の方へ向かおうとする。…しかし、今日の女子大生の行動はいつもとやや違っていた。 「「あっつ~……」」 暑さに辟易するような呟き声。その声はアパートの俺の部屋の中に容易に響き渡る。そしてその直後、 「「よっと……」」 ドスンッ!!ドスンッ!! パサッ……!! (え……?) 窓の外で、肌色の巨木から大きなショートパンツがぱさっ…と落ちていくのが見えた。…俺は思わずリュックを玄関に起き、リビングの窓の方に駆け寄った。 「っ……やば……」 そこには。ショートパンツを脱ぎ捨てて、白色のレースの付いたパンツのみに包まれた女子大生の下半身が待ち受けていた。あまりの暑さでショートパンツを脱いでしまった女子大生は、少しダボついたTシャツとパンツのみという、自堕落で無防備かつ強烈に性的な恰好をアパートの住人に見せつけていたのだ。パンツから巨大で豊満なお尻の肉が一部はみ出しており、パンツのゴムでその肉がむにっ…♡と沈み込んでいるのが見える。太ももはきわどい付け根の部分まで露出され、股間の周辺まで綺麗に手入れされた肌が露わになっていた。 (っ……ダメだ……またっ……) そんなえっちな光景を見せつけられ、興奮を抑えられるはずもなく。入学式に向かうと決意したはずの俺は、いきり立つ股間を必死で手で押さえようとする。しかし、 ズンッ!!ズンッ!! 「「~~~♪」」 その恰好のまま台所に向かって朝ごはんを作り出した女子大生から、全く目が離せない。足が少し踏み出される度に、パンツからはみ出たお尻がぷるんっ…♡と揺れる。あのお尻がアパートに向かって降ろされたら、どうなってしまうのだろう。あのお尻の肉に全身埋もれたら、どれだけ気持ちいいのだろう。…刺激の強すぎる光景に釘付けになり、想像も止まらず、俺は自慰行為を始めてしまう。 ダメだ。確か昨日の夜微かに聞こえてきた女子大生の話し声からすると、今日は一日中家にいる予定らしいのだ。このまま女子大生の下半身に釘付けになっていたら、一日が終わってしまう。 分かっている、はずなのに。 俺はアパートの窓から巨大な下着姿の女子大生を見上げ続け、自慰をし続け。 気づけば、入学式の時間をとっくに過ぎていたのだ。 ------ 「「~~~♪」」 その日の夜。俺は、窓の外で鼻歌を歌いながら洗い物をする女子大生の下半身を見つめながら、呆然としていた。結局、今日も一歩も外に出れなかった。大事な入学式というイベントを、すっぽかしてしまった。…大学だからそこまで問題にもならないが、でもそういう問題じゃない。俺は、見ず知らずの女子大生の私生活に自分の生活が支配されている危機感を覚えていた。こんなことを続けていたら、大学の講義にも出ず、ひたすら家で自慰を行ってさぼるだけの学生に成り果ててしまう。その先に待っているのは留年、そして退学。 絶対にいけないと頭では分かっている俺は、それでもなお。 ドンッ!!ドンッ!! 「「~~~♪」」 窓の外で無意識に踏み下ろされる生脚から、目が離せないのだった。 ---続く---