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【無料小説】巨大都市上京物語①~50倍女性の洗礼~

高校3年生も終盤に差し掛かったころ。俺は、この国で一番の都会にある大学に合格することができた。 この大学はかなり難関で、合格倍率は100倍を超える。そんな大学に合格できたのだから、俺の将来は安泰と言っても良かった。大学を無事卒業出来れば、間違いなく良い会社に入れるだろう。 しかし、都内の大学へ進学することをためらう友達も多かった。その一番の理由は、女性のいる街で生活をしなければならない、という点だ。 この世界における、女と男の性差。どこに大きな差があると言われれば、圧倒的にその体格が違っていた。 その差、約50倍。男からすれば、世の女性は高層ビルのように大きい。対して女性から見れば、男など指先程度の大きさに過ぎなかった。…そんな絶望的な体格差があるため、女性と同じ空間で男が普通に生活するのは難しい。必然的に都会からは男がどんどんいなくなり、田舎には男ばかりが集まっていた。 逆にほとんどの女性が都会に住み、この国の経済を回していた。良い大学に入るのも、良い企業に就職してバリバリ働くのも、ほとんどが女性。世界は、完全に女性を中心に回っていた。 …しかし、そんな都会であっても、夢を追って飛び込む男がいないわけでもなかった。田舎と都会では、稼げる額が違う。学べる勉強の質も違う。大きな女性が行き交う危険な街ではあるが、そこに勇気をもって飛び込んでいく若者は少なからず存在した。 そのうちの一人が、まさに俺だった。せっかく掴んだ、都会の大学への合格。このチャンスを活かさないわけにはいかない。俺は田舎を離れ、都会に引っ越すことになった。 ウーーーンッ…… 「………」 今、俺は男性用の新幹線に乗って上京するところだった。引っ越しの荷物を抱えながら、大都会に向かってぐんぐん進んでいく。新しい世界の到来に、胸は高まっていた。 …男が都会に出るにあたって、絶対に守らなければならないことがいくつか注意喚起されていた。 まず、むやみに外を歩かないこと。都会は大きな女性のサイズに合わせて作られた街。軽々しくその辺の道を歩こうものなら、ビル並みに大きな女性にすぐ踏みつぶされてしまうだろう。男性専用の歩行帯が用意されているため、絶対にそこから出てはいけないと教えられていた。 また、むやみに女性の存在を意識しないこと。都会に出た男性の8割は、2年以内に鬱になって田舎に帰ってくるとも言われている。その鬱の原因のほとんどが、都会で巨大すぎる女性たちを見上げすぎたために自分の存在の価値が分からなくなってしまい、自己効力感がみるみる失われてしまうということだった。特に接触が無くとも、女性の巨大さ、圧倒的な存在感を意識しすぎると精神衛生上よくないらしい。 そんな注意喚起を受けながらも、俺はワクワク感の方が勝っていた。なにせ、人生で一度も女性を見たことが無いのだ。自分より何十倍も大きな存在がいるなんて、にわかには信じられない。想像すらまともに出来ない。そんな存在を数十分後には目の当たりにできるなんて、正直楽しみな気持ちの方が大きかった。 …そんな楽観的な気持ちのまま、俺を乗せた新幹線は都心の駅に付いた。その駅は男性用に作られており、新幹線から降りるとすぐに建物の中だった。窓もない駅の建物の中の通路を、ひたすらキャリーバッグを引いて歩いていく。果てしなく続く通路を歩き、駅の出口を目指した。 これが、都会のスケール感なのだ。あくまで50倍の女性のサイズを前提とした街。その中で小さな男が移動するのだから、移動距離は半端ではない。 「はあっ、はあっ…」 息を切らしながら、通路を進んでいく。"出口まで500m"の文字が見え、最後のひと踏ん張りだと気を奮い立たせる。 そのあたりで、気づいた。 グラッ…グラッ…… 建物が、定期的に僅かに振動している。最初はちょっとした地震かと思ったが、そうではない。何度も何度も、グラッ、グラッ、と僅かながらも揺れ続けている。 最初は揺れる程度だった振動は、歩を進めるごとにどんどん強くなり。 ズンッ!!ズンッ!! 「っ………」 気づけば、足を踏ん張らないと振動で転倒してしまいそうなほど、強烈な振動が通路を襲っていた。 初めて都会に来たとはいえ、この振動が何なのかはすぐに察せられた。ただ、その現実を信じられなかった。まさか、同じ人間であるはずの女性の歩行が、ここまで強烈な振動を引き起こしているなんて。 ズンッ!!…ズンッ!!ズンッ!! 不規則な振動が通路を襲い続ける。俺は左右に身体を振られながら、何とか通路の出口へ向かっていく。 未だ揺れ続ける通路の最果てに辿り着いた。"男性用駅舎出入口"と書かれた簡素な扉を目の前に、一つ息を吐く。 「………ふぅ」 意を決して、俺はその扉を開いた。 ギイッ……… すると。 「っ……!……す…ご…」 扉の向こうに広がる世界に、まさしく言葉を失った。そこは、圧倒的なスケール感で広がる巨人の世界だった。果てしなく広がる歩道、そびえ立つベンチや電柱が目に入ってくる。何もかもが、50倍のスケールで。自分の身体の大きさは変わっていないのに、まるで虫のようなサイズまで縮められてしまったかのような錯覚に陥る。…それほど、この世界は当たり前のように巨大だった。 ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!! 「ひぃっ!!!…あ………」 突如、数十メートル先に巨大なスニーカーが落下する。ズンッ!!と激しい歩行音と振動を響かせ、かなり離れているはずの俺にぶわっ!!と風圧を浴びせてくる。俺は悲鳴を上げながら、思わず上空を見上げる。 ズンッ!!ズンッ!! 「「………」」 そこには。高層ビルのように巨大で太い、女性の生足が鎮座していた。初めて見る女性の姿に、再び言葉を失う。いや、正確に言えば、女性の下半身しか見れていない。自動車のような大きさのスニーカー、そこから上空へ果てしなく伸びる肌色の脚。むっちりした太ももからさらに上へ目線を移動すると、紺色のホットパンツがそびえていた。 (で…デカすぎだろ……) 女性の大きさについては散々知っているつもりだった。しかし、実際に目の当たりにすると、…何という圧迫感なんだろうか。数十メートルは離れているはずなのに、顔も見えない女性の下半身からのプレッシャーは尋常ではなかった。それもそのはず、この女性が軽く一歩踏み出せば、俺が立っている場所まで簡単に届いてしまうのだから。 ズンッ!!ズンッ!! ぶわあっ!! 「ひあっ!!??」 少し立ち止まっていた女性のスニーカーが再び持ち上がり、激しく音を立てながら移動していく。俺は巨人が去っていく姿を見送りながら、しばし呆然としていた。 「……っ…なんで…」 自分の身体が、勝手に震え出していた。…自分よりも圧倒的に大きな生物を目の当たりにした恐怖。この街にいることの危険さを、本能が訴えかけている気がした。 (いやいや…まだ駅を出たばかりだろ) 頭を振って、不安を消し去る。こんなところでナイーブになっている場合ではない。 冷静になって周りを見渡す。俺が立っている場所は、男性用の歩行帯であるようだ。女性用の広い歩道の端っこに、緑色に塗られた細いゾーンが区切られている。小さな男性は、ここを歩けということだった。…逆に言えば、ここを出れば縦横無尽に行き交う50倍女性の巨大な足の爆撃にさらされるということだ。 ズンッ!!ズンッ!! 俺が立ち止まっている間にも、巨大な足が地響きを立てながらどんどん行き交っていく。巨大なローファー、巨大なヒール、巨大なパンプス。様々な年齢、立場の女性たちが頭上を行き交うが、誰一人として足元の俺に気づくことはない。皆それぞれの目的地に向かって、俺の歩行速度とは比べ物にならないスピードで歩を進めている。そんな光景を見ると、俺という存在がちっぽけに思えてくる。…こんな街で、俺はちゃんと勉強して就職して、お金を稼げるようになるのだろうか? 「……とりあえず、下宿先に向かわないと」 すでに契約してある、一人暮らし用の家。今日はそこまでたどり着かなければならない。俺は巨人たちの歩行に揺らされながら、男性用スマホで家までの道のりを調べる。 「…あのバスに、乗るのか…」 どうやら、数百メートルほど先に見えるバス停から、市内バスに乗る必要があるようだった。女性からすればすぐそこのバス停だが、俺は男性用歩行帯を果てしなく歩かなければならない。 「はあ……」 正直、この移動量の多さには心が折れそうになっていた。新幹線を降りてから、既に何千歩も歩いている気がする。そして移動量そのものよりも、俺が必死で移動した距離を巨大な女性たちが数歩で軽々と移動するのを見せつけられることがキツかった。俺はなんでこんな大変な思いをして移動をしているんだろう、と思わされてしまう。 とにかく、立ち止まっていては始まらない。俺はだだっ広い歩道の端っこをひたすら歩き、バス停の方へ向かっていった。時折、男性用歩行帯のすぐ傍に足を踏み下ろす学生がいるのが怖かった。ダンッ!!と強烈な爆音が鳴り響いたかと思うと、茶色く光る巨大ローファーがすぐそこに鎮座しているのだ。学生は当然足元の俺に気づいておらず、スカートの中身を無意識に見せつけながら、ドンッ!!ドンッ!!と去っていく。…この歩行帯を出たら死ぬ。冗談でなく、そう思った。 そして、やっとバス停のふもとに到着した。 「"男性の方はここでお待ちください"…か」 俺は空に向かって伸びるバス停の看板の根元で、案内に従ってバスを待つ。ふと周りを見れば、巨大な女たちがバスを待つために並んでいる。圧倒的な脚が何本も立ち並び、かなりの威圧感を覚える。 ふと、気づく。俺はどうやってバスに乗れば良いのだろうか。…前から聞いていたが、この街に男性用のサイズの電車やバスは存在しない。あくまで女性のサイズに合わせた交通機関があり、男性はそれを使って移動する必要があるのだ。 「…何か、書いてある…」 女性向けの案内板には、こう書かれていた。 『男性の乗降車にご協力ください。男性の乗車または降車を手伝った方には、運賃を10円引きさせていただきます』 「これ…どういう……」 一人ではバスに乗れない男性を、女性が乗せてあげたり降ろしてあげたりすると、運賃が安くなるという。女性のボランティア精神によって、男性のバス利用が支えられているというのか。…というより、バスを利用する女性がたまたま助けてくれないと、俺は自由に乗ることすら出来ないのか。男性用の乗車口とかは用意してくれてないのか…。 小さな男性に対するバス側のサービスは皆無と言って良かった。乗りたい男は頑張って助けてもらってね、というレベルの話なのだから。 バスのシステムに困惑していると、大きな音を立てて巨大なバスが到着した。 プシュゥゥ……ガコンッ… ズンッ!!ズンッ!!ドンッ、ドンッ!! 「ぎゃあっ!!??」 バスのドアが開くなり、女性たちが俺のすぐ横の地面に足を踏み下ろしながら、次々とバスに乗り込んでいく。俺の身長では絶対に届かない段差を軽々と上がって乗っていく。…誰一人、足元の俺に気づく女性はいない。 「あのっ!!すみませんっ!!」 俺は巨人達に向かい、必死に叫んでアピールする。同じバスに乗る女性に助けてもらわないと、俺は一生このバスに乗れないのだ。 ズンッ!!ドンッ!!ドンッ!! 「あのっ……」 俺の叫びは歩行音にかき消され、途中から叫ぶ気力も無くなってしまった。顔も見えないほどのローアングルで女性を見上げながら、気づいてもらえないのに声を出して叫ぶことの辛さ。自分がひどく矮小でしょうもない存在に思えてくる。 と、次の瞬間、 ズンッ…… 巨大な白色のスニーカーが目の前で止まったかと思うと。 「ああああっっ!!??」 俺に大きな影を落としながら、巨人がしゃがみ込んできた。そして巨人の顔を視認する暇もないまま、 ぎゅうぅっ!! 「ひぎっ!!??」 巨大な手のひらが乱雑に俺の身体を包み込んだのだった。 (痛いっ、苦しいっ!!) 突然、ワンルームほどの広さがある巨大手のひらに掴まれて。一瞬何が起こったか分からず、ただ自分の身体に与えられる強烈な圧迫感に悶えるしかなかった。柔らかな手のひらの肉がむぎゅうぅぅ…♡と全身を圧迫し、手のひらの熱が全て注ぎ込まれ、俺の小さな身体を強烈に蒸していく。じっとり汗ばんだ手のひらの匂いが充満し、思わず咳き込む。 (はあっ、はあっ…) 名も知らない女性が、俺をバスの中に運んでくれようとしたのは分かった。しかし、なんて雑な扱いなのだろうか。赤の他人の男に対する遠慮も特になく、いきなり無言で掴んで運び出すなんて。もちろん、こっちが運んでもらってる立場なんだけど…。 ズンッ!!ズンッ!! (ひっ…揺れっ…るっ…!!) 俺を掴んだまま、巨人がバスに乗り込む。その揺れがダイレクトに手の中にも伝わり、ジェットコースターなんて目じゃないくらい激しく揺さぶられる。見知らぬ女性の手の中で、手のひらの肉や指の付け根に散々ぶつかって転げまわった。 あと少しで胃の中のものが出そうになったところで、 (…っ…あ……) 手のひらが開き、外界の光が差し込んでくる。出してくれるのか。そう思った瞬間に、 ぐらっ…!! 「うわあっ!!?待っ……」 手のひらは無慈悲にも傾けられ、その上に乗っていた俺は簡単に転げ落ちていき。 ぼとっ…… 柔らかな赤い座席の表面に、乱雑に落とされたのだった。 「げほっ、げほっ……」 蒸し蒸しの手の中から解放され、座席の上で何度も咳き込む。しかし、小さな男が女性用の座席の上で咳き込んでいる暇などなかった。 「げほっ……っ…ちょ、待ってっ…!!」 今しがた俺を座席に落とした女が、同じ座席にお尻を向け、座ろうとしていた。チェックのスカートに、健康的でふくよかな太もも。視界を埋め尽くすほどの下半身が俺に影を落とし、そのまま腰を下ろし始める。 「うわあああっっっ…!!!」 潰される。俺は断末魔を上げながら、頭を抱えてしゃがみ込む。その1秒後、 ばふっ!!! 「ぎゃあっ!??」 天変地異かと思えるくらい激しい、巨人の着席。巨大なお尻が俺のすぐ横に思い切り降ろされ、座席のクッション部分をおおきく凹ませる。その反動で、近くにいた俺は数メートルほど上空まで吹き飛ばされる。 「がふっ……」 再び座席の表面に叩きつけられ、俺は呻くしかなかった。…想像できたことだが、バスの中にも当然男専用の居場所なんて用意されていなかった。巨大な女性が過ごす空間の中で、何とか居場所を見つけなければならないのだ。 「………」 恐る恐る、目の前にそびえ立つ女性の上半身を見上げる。ちょうど女性の太ももの横に位置していた俺は、真横からその上半身を観察することになった。なんて、大きさなのだろうか。腰から上の部位だけで、マンションのように高くてデカい。恐らく高校生だろうか、チェックのスカートに白い半そでシャツ、赤いネクタイを締めている。 …その上には、巨大な女の子の顔が見えた。額に汗を浮かべながら、手で首元を熱そうに仰いでいる。 (すご……) 女の子の顔を、初めてはっきり見たかもしれない。異常な大きさに言葉をなくしてしまう。同じ人間であるはずの女子の顔が、一軒家くらい大きいのだ。あの大きな瞳にすら、身長で負けているかもしれない。耳や鼻、そして唇にだって。張りのある桜色の唇は、今は距離が遠いため普通サイズに見える。でも実際は、俺の身長を軽く超す大きさなのだ。男を簡単に口の中に入れてしまえる体格差。その現実を目の当たりにし、身震いする。 「「あつ……」」 女の子は独り言を言いながら、カバンから何かを取り出そうとしている。…それにしても、迫力がありすぎる。目の前に鎮座する太ももはあまりに巨大でぶっとく、むちむちっ♡とその柔らかさを主張してくる。そこから香る、太ももの甘い匂いと汗の酸っぱい匂い。色っぽく可愛らしい匂いに包まれ、少し変な気持ちになってしまう。 (…高3くらいだろうか) 太ももの存在感を根拠に、俺とそう歳は離れていないんだろう、と予想する。しかし、 ガサガサッ…… 「「………」」 その女の子が取り出した参考書らしき本の表紙には、『中一数学』と書かれていた。 (は……ちゅ、中一…!?この子が…!?) にわかに信じられなかった。圧倒的にデカくてむっちりとした太ももに、女の子らしい匂い。そして張りのある胸。この子がつい最近まで小学生だったなんて到底思えなかった。 (…いや…俺が小さいからそう思うのか……) 俺の大きさから見れば、中一の子の太ももでも見上げるほどおっきくて肉厚なのだ。6歳も年下だとか、最近まで小学生だったとか、関係ない。女であるというだけで、身体の部位の何もかもが男を圧迫し、プレッシャーを与えてくる。恐らく華奢な太ももなのだろうが、それでも俺の身体を簡単にむにぃ…♡と圧し潰して捉えてしまうほど強いはずだ。小ぶりであるはずの胸も、矮小な俺が見上げればおっきくてえっちな、男を惑わせる胸に見えてしまう。中一女子の飾り気のない汗の匂いも、小さな男にはフェロモンとなって濃厚に立ち込めてしまうのだ。 (………) ほぼ小学生の女の子の身体に圧倒され、恐怖し、わずかながら欲情してしまった自分。女との格の違いを、思い知らされる。必死で勉強して合格を勝ち取った秀才であるはずの俺は、まだあどけない中一女子に生物として完全に負けていた。どれだけ頭が良くても、この子の指先一つで俺は捕らえられ、気まぐれで潰されてしまうほどの体格差なのだから。 俺が今までやってきたことは、意味があったのだろうか。 ブゥゥン……ガタッ…ガタッ… バスは巨大な都市を走り続ける。俺は中一女子の太ももの傍でリラックスすることもできず、甘酸っぱい匂いと熱に包まれながらひたすら時が過ぎるのを待った。視界の半分がむっちり太ももの肌色で埋め尽くされ、目のやり場に困ってしまう。しかし俺がどこを見ていようが巨大な中学生女子は無関心で、相手にされていない現実が自分を惨めにさせる。そして定期的に、 ぎゅっ……ずりっ…… (ひぃっ……) 中一女子が巨大なお尻を浮かせては、座席に座りなおす。ぎゅむっ、ぎゅっ…と座席の布が擦れる音がすさまじく、それだけで恐怖を感じてしまう。こちらを気にしてもいない女の子のお尻の動きで、事故的に座り潰されてしまわないだろうかと心配になる。 (早く、目的地に着いてくれ…) バス前方のディスプレイを目を凝らして眺めると、俺の下宿先の最寄り駅はどうやら次らしい。そろそろ降りる準備をしなくては、と思ったが、ここでバス停に書かれていた案内を思い出す。 (女の人に協力してもらわないと、降りられないのか…) 俺の大きさでは、自力で座席を降りてバスの外に出るなど不可能。バスに乗った時と同様、大きな女性に連れ出してもらわないといけない。 …隣に座る女子中学生を見上げる。この子が同じバス停で降りる保証はない、というか違う確率の方が圧倒的に高いだろう。じゃあ、どうすればいいんだ…? まごついていては何も始まらないので、俺は意を決して、この女の子に話しかけることにした。 「あのっ……」 ブゥゥン……ガタッ…ガタッ… 出した声は、バスの走行音に容易にかき消される。女の子はこちらに一切目もくれず、参考書を読み続けている。…声で気づいてもらえる自信が全くない。少し怖いけど…この女の子に触れることで気づいてもらうしかない。 「「………」」 無言で参考書を読む女子中学生の巨大なふとももに、俺はゆっくりと近づいていく。この瞬間に女の子が脚を動かせば、俺は太ももの肉にプレスされて助からないだろう。異常な緊張感が走る。 そして、太もものすぐそばまでたどり着いた俺は、ベルリンの壁のようにそびえ立つ肌色の壁を目の当たりにして、生唾を飲み込む。何という迫力、そして生々しい匂いなんだろう。…意を決して、肌色の壁に向かって手をぽん、ぽん、と当てる。 「「………」」 しかし、女の子は気づく様子がない。それなりの強さで叩いているはずなのに、何の感触も無いのだろうか。小さい虫にたかられて気づかないのと同じように、俺との接触など大きな女性からすれば取るに足らないものなのか。 俺は、思い切り力を入れて、ぺちんっ!とむちむちの太ももを叩いた。 「「わっ、びっくりした」」 女子中学生の驚いた声が、上空から鳴り響いた。さすがに太ももに当たる感触に気づいたようで、よく見るとあどけない顔がこちらを見下ろしている。初めて女の子と目が合い、それだけで威圧感を覚える。 「「なに?」」 特に表情を変えることなく呼びかけてくる女子中学生。見知らぬ小さな男に突然太ももを触られたにも関わらず、全く動じていない。他人の男に気負いすることなく、余裕たっぷりな態度だった。 「あのっ、次のバス停で降りたいんですけど!」 かなり頑張って叫んで、何とか上空の女の子の耳に声を届けようとする。喉が痛いくらいに声を張ったつもりだった。しかし、 「「ごめん、聞こえないかも」」 そう言った女子中学生は、巨大な手のひらを再び俺の方に近づけてきた。 むぎゅっ… 「ひいぃぃっ!!!??」 今度は丸太のような親指と人差し指で胴体を摘ままれ、その不安定な状態のまま空高く連れられて行く。女の子の指先だけで支えられた状態で、7,8階のマンションくらいの高さまで命綱無しで持ち上げられたのだ。あまりの恐怖に大きな悲鳴を上げてしまう。 「「なんだった?」」 女の子は摘まみ上げた俺を、自分の耳の目の前まで持ってくる。俺の身長よりも高い巨大な耳が視界を埋め尽くす。人の耳をこんな間近で見たのは初めてだ。この耳がいつも受け取っている音は、俺からすれば凄まじい爆音のはずだ。そんな強靭な耳に、矮小な男の叫び声など簡単には届かないだろう。そう実感した。 「つ、次のバス停で降りたいんですけど!!」 目の前の巨大耳に向かって叫ぶ。叫んだあとに、自然と敬語になっていることに気づく。中学生の女の子はタメ口なのに、大学生の俺は体格差に気圧され、フランクな口調を使うことができなかった。 「「あー」」 女の子は俺の言葉を理解したようで、軽く声を漏らす。摘まみ上げた俺を耳から離し、自分の顔の前に持ってくる。 (っ……でか……) 巨大な顔の前に持ってこられた俺は、女の子の顔の迫力に言葉を失う。人間の顔がここまで大きいと、本能的な恐怖を感じる。巨大な瞳がぐりんっ、と動いて圧倒的な視線を降らす。無意識に放出された鼻息の音が聞こえてくる。むっちり綺麗な唇は、俺の身体を簡単に口内に引きずり込んでしまえるほど大きい。 そして怖いと思うと同時に、尋常でない顔の近さにどぎまぎしてしまう。普通、他人とここまで顔を近づけることなんてない。女の子の顔から生える細かな産毛まで見えてしまう至近距離。彼女の顔はあどけないながらも整っていて、このサイズ差でも可愛らしく見えた。そんな子に思い切り顔を近づけられ、さらに唇や鼻から漏れる息を吹きかけられているのだから、少し変な気分にもなってくる。 綺麗な巨大唇がにちっ、と音を立てて開くと、 「「私はそのバス停で降りないから、ちょっと無理かも」」 生暖かい吐息と共にそんな台詞を放った女の子は、俺を摘まんでいる手を下げていき、自身の太ももの横に降ろしたのだった。 そのまま、参考書を再び読み始める。 「え、ちょっと……」 あまりに簡単に断られ、一瞬うろたえる。小さな男が自力でバスを降りられないことは分かっているはずだが、こんなにあっさりと断れれるとは。自分が降りなくても、俺だけ入り口のところまで連れて行ってくれたらいいのに…。 諦めきれず、俺は再び巨大な太ももに近づき、ぺちんっ!と強めに叩く。 すると、 ぐわっ…!! 「うわあっ!!??」 巨大な手が空から降ってきたと思ったら。 バンッ!!!! 「っっっ!!??……がほっ……」 まるで虫を払うかのように巨大な手が俺の身体をはたき、太ももから引き剥がした。自動車にぶつかられたような強烈な衝撃を与えられた俺は、低いうめき声を漏らしながら座席の生地の上をもんどりうって転がる。 「がほっ!!げほっ!!」 凶悪な質量の手で容赦なく叩かれた俺は、横たわりながら激しくせき込む。全身が痛い。一瞬、何が起きたか分からなかった。 「「………」」 上を見上げると信じられないことに、俺をはたいた張本人の女子中学生が無言で参考書を読み続けていた。赤の他人に暴力をふるってしまったという表情はどこにもなかった。本当に、ただ自分の太ももに群がる虫をはたき落としただけのような、そんな表情の無さだった。 (………) 恐怖で身体が震える。…この街における、女性の男に対する扱いの程度が見えてしまったような気がした。まだ中一の素直そうな女の子が、何の迷いもなく男の身体を手で払い落したのだ。少なくとも、同じ人間として見ているようには見えなかった。 ブーーッ、プシュゥゥ…… 凍り付く俺をよそに、バスは下宿先の最寄りのバス停に到着した。今降りるのを逃したら、路線が一周して戻ってくるまで乗り続けなければならない。…でも、もう目の前の巨大中学生に助けを求める気には全くならなかった。50倍もの体格を持った女の子の存在が、怖くて仕方ない。さっき巨大な太ももに触れたのは、俺が本当の意味で体格差を自覚出来ていなかったからだ。この残酷な力の強さの差を見せつけられた後では、そんな危険な行為が出来るわけが無かった。 俺は女子中学生の無言のプレッシャーを感じたまま、俯いてバスに乗り続けた。そのうち、 「「んしょっと」」 ギイィィ…!! 目的地に着いたのか、女子中学生の巨大なお尻が持ち上がった。座席の上にいる俺からは、むっちりした太ももと、スカートの中の純白のパンツが見え隠れする。しかし女の子はそんなことを気にもしていないようで、大パノラマで下着を見せつけながら、 ズンッ!!ズンッ!! 地響きを立ててバスから降りて行った。 「はあ……」 女の子の巨大な身体のプレッシャーから解放された俺は、少しため息をつく。しかし次の瞬間、 ドンッ、ドンッ、… ドサァッッ!!! 「ぎゃあぁぁっ!!」 俺の目の前に、新たな巨尻が降ってきたのだ。 「「あっつ~……」」 黒いスーツスカートを履いた女性が、俺が乗っている座席に座ってきた。俺の存在に気づいているかどうかすら分からない。OLらしき女性はワイシャツを摘まんでパタパタと扇ぎながら、 むぎゅうぅぅ…… 右足を左の太ももの上に乗せ、脚を組んだ。 (すご……) スーツスカートから伸びるぶっとい生足が、お互いに擦り付けられて豊満な肉をむにぃぃ…♡と変形させる。恐らく年上の女性のそんな姿を見せつけられ、目を奪われる。 (いや、声をかけないと…!) 巨大な脚組みに気を取られている場合じゃない。この女性に、助けを求めなければ。 しかし、自分の足は動かなかった。巨大なOLの身体に近づこうとすると、自然と足が震えだしてしまう。…怖い。赤の他人の巨大な女性に、近づけるはずがない。何をされるかも分からないのだ。この妖艶な太ももが少し動いたら潰されて終わり。気づいてもらえても、OLの機嫌を損ねればまた暴力を振るわれるかもしれない。…俺は女性に声をかけることすらできない精神状態に陥ってしまった。 そこからは、同じことの繰り返しだった。 OLの女性がバス停で降りれば、また別の大学生らしき女の子のホットパンツがドサッ!!むぎゅぅぅ……と座席に着地する。俺は巨大な女子大生に目を奪われつつも、やはり恐怖で動けない。声をかけられないまま、女子大生はバスを降りていく。またしばらくすれば別の女の子が来て…。 ドスンッ!!ぎゅうぅぅ… ドサッ!!むぎゅぅぅ… 何度も巨大なお尻が降ってきては座席を軋ませ、俺に恐怖を与える。そして圧倒的な体格でプレッシャーを無意識にかけ続けた後、下半身を見せつけながらバスを降りていくのだ。 (もういやだ…早く降りたい……) 女性と同じバスに乗ることが、こんなにも危険で過酷だとは思いもしなかった。もはや女性が座席に座る音がトラウマになってしまい、巨大なお尻を見るだけで身体が震えてしまう。俺を視認しないまま振り下ろされる巨大ヒップが、怖くて仕方なかった。 ------ 結局3時間ほどバスに乗り続けていた俺は、最終的に気が付いた運転手のお姉さんの手のひらに包まれ、目的のバス停の所で降ろしてもらった。 「はあっ…はあっ…はあっ……」 3時間ぶりに外に降り立った俺は、度重なる緊張から解放されて息も絶え絶えになっていた。本当は昼過ぎには下宿先に着いているはずなのに、もう辺りは暗くなり始めている。 (もう、最悪だ……) 都会に来てからこんなに早く洗礼を受けるとは思わなかった。ただバスに乗るだけの行為で、男はここまで消耗しなければいけないのか。俺はこの街で生きていけるのか。あまりに不安だった。 俺は重い荷物を持ちながら、ふらふらと歩き始める。広い広い歩道を、また何時間もかけて移動しなければならない。 (………) 上京早々に絶望的な気分になりながら、俺は一人暮らしの入居先に向かって移動し始めたのだった。 ---続く---

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