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カナンのタイツ

「くっ、離せっ!」 地仁田はボロボロの体で必死に暴れるが、丸太のように太いカナンの指ががっしりと体を固定してしまいピクリとも動かない。 「おいおい地仁田。勝負に負けておいてその言い草はないんじゃないか? と言っても虫けらみたいなお前が、あたしに勝てるわけなんかないんだけどな」 カナンは地仁田を眼前へと運ぶとあざ笑うように揺さぶる。 「こんなちっこいくせにあたしに勝負を挑むなんて、本当に馬鹿だよなお前。まあそういう男は嫌いでもねぇけどな」 「……っ」 自分の百倍も大きさが違う少女が発する声量のデカさに地仁田は気が遠くなりそうになる。 グラグラと揺れる視界をなんとか立て直すと、地仁田は再びカナンの指から抜け出そうと藻掻いた。 「まったくせっかちな男だな。ちゃんと離してやるからよ、ほら」 「ま、まて! こんな高いところから落とされ――」 地仁田の言葉が終わる前に、地仁田の体は重力に引かれ自由落下を始める。 学ランが風を切ってパタパタと揺れる。 衝突に備え死を覚悟した地仁田だったが、地仁田が着地した場所は硬い床の上ではなくダークチャコールの柔らかい生地の上だった。 「助かったのか……? それにしても、ここは」 「おーい、生きてるか? っと、まあそりゃ生きてるか。あの地仁田だもんな」 「カナン! ここは一体どこなんだ!」 「見てわからねぇのか? あたしのタイツの上だよ。ちょうど寒くなってきたからな。今から穿こうと思ってよ」 地仁田は自分の置かれている状況にひやりとした汗が流れる。 タイツの上……? それにいま、穿くって…… 地仁田が行動しようとしたときにはすでに遅くタイツの入り口はカナンの手に捕まれはるか上空へと持ち上がってしまう。それと引き換えに、上空に見える大きなタイツの入口からカナンの巨大な足がゆっくりと押し迫ってきた。 「ば、ばかな! カナンのやつ俺ごとタイツを穿くつもりか!」 どうにかして逃げ出そうとタイツに攻撃を加えるがびくともしない。 迫りくる巨大な足はそこに何もなかったかのように収まってしまう。 「お、小せぇけど少しだけ感触があるな。これが地仁田か? ま、あたしらに楯突いたんだから生かしておくわけにはいかねぇよな」 カナンは何事もなかったかのように上履きを履き直すとその場をあとにした。

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