先生はペットボトル ②
Added 2022-10-22 02:30:00 +0000 UTC翌日の放課後。 「白石君、今日も秋山先生いないんだけど」 「いや、俺に言われても困るんだが」 「まあ、そうだね。でもあれだね。最近先生、授業終わるとすぐ帰っちゃうね。彼氏でもできたのかな?」 「しらねー」 「てか、白石君今日も一人でティータイム? ペットボトルのお茶じゃなくて、あたしとカフェ行かない?」 「えー? お金ないしなー」 クラスメイトからの誘いを華麗にスルーする白石君。その手には、今日も同じくお茶のペットボトルが握られています。 そして、昨日と同じようにクラスメイトと別れ、昨日と同じように変える支度をしたところで、 「……喉乾いたし、ちょっとくらいはいいよな。ほら、おびえないで、大丈夫だから」 誰もいない教室で、だれかに言い訳するでもなく、ペットボトルの蓋を開けて、そのままごくごくと飲み始めます。 それに合わせてペットボトルもビクンビクンと痙攣していて。もう隠す気すらないといわんばかりです。 ええ。もう隠す意味はありません。 そのペットボトルの秘密、否、正体は……秋山先生です。 (ん、あっ……! し、白石君っ、そんなところ口つけたらあ……っ、そ、それ、や、やだっ、やめ、やめて……っ、ん、んあっ、や、ちが、やめっ、んっ!) 白石君の脳内にだけは、彼女の恥じらいと絶叫が聞こえていました。 女性の喘ぎ声。それも自分の先生の喘ぎ声を聞けば、普通の生徒ならまず平常心を保てないでしょう。 が、そこはモテ男。そんな様子に取り乱すことも、ましてや周囲に違和感を感じさせることもなく。 (も、もうやめてえっ、元に、元に戻してええっ……) 「先生、おねだりする声は結構かわいいよな」 誰にも気づかれることなく、怪しませることもなく、白石君は、平気な顔をして先生をお持ち帰りするのです。 秋山先生は、生徒の人気も高い、かわいらしい先生です。元気で明るくて、みんなのことを考えている、とてもいい先生です。 そんな先生ですが、最近一つ悩みがありました。 それは、こんな噂です。 ……クラスの人気者、白木君は、魔法使いの家系である、と。 「興味本位で探ってきたのかもしれないですけど、こっちはばれるわけにもいかないんですよ、まあ、よくもまあ、そんなドストレートに、『白石君は魔法使いなの?』って……」 そして、しぶしぶ白石君は自分の正体を明かし、もうすぐ一週間がたとうとしています。 「まあ、男子高校生の痛々しい発言と思われても嫌ですし? 一応こうして力の一端を見せたり見せなかったりしてるけどさ」 白石君の魔法は、多種多様にありますが、その中でも一番得意といわれているのが、変死魔法。 それも、人の姿を変える、変身させる魔法を得意としていました。 (だ、だれにも言ってないからっ、だからっ……んあああああっ!) ふいにキャップをきつく締められ、声にならない声を上げる先生。 白石君はといえば、また別の女子に声をかけていました。 「よう佐藤、先生見つかったか?」 「あ、白石君、全然ダメ。まあ、下校時刻過ぎてるし、帰っちゃったのかなあ。ひょっとして、デートだったりして」 「ははは、そうかもな。今頃はいい男と、楽しく遊んでるかもしれないぞ?」 そんなことを言いながら、白石君は右手でペットボトルをさわさわと触ります。 (やっ、やあっ・・・・・・やめてっ、佐藤さんが見てるっ、み、みられちゃうから、だ、ダメ……っ) 白石君の手は止まりません。佐藤さんは何も言わずに、その場を去っていきました。 「しっかしまあ、分からないもんですね。こんだけいろんな目にあって、どうして俺のことを嫌いにならないんですか。普通に授業して、普通に学校来て、俺にビビりもしないで」 そして、家に一直線。帰宅部もかくやというような、それはそれは見事な帰宅。途中のコンビニで雑誌とドリンクを買って、 「あれ、お茶が二つだ。先生はどっちだったかなー?」 (い、意地悪言わないでよ……もう……) 「冗談冗談。先生を間違えたりしないってば」 昨日もうっかり家で持ち帰ってしまいましたが、まあ、はじめてではありません。 そして、その問いかけも、もう何度目のやり取りだったりします。 (だ、だってっ、白石君は私の生徒だから……っ、あっ、やめ、そこ触らないでっ) 「こうして頻繁に適当なものにされて、俺にもてあそばれて、恥ずかしい思いたくさんしてるのになあ」 不思議な気分になっても、まあ、仕方ないかもしれません。 見た目は、どこからどう見ても、普通のお茶のペットボトル。コンビニに売られているものと、何一つ変わりません。 それでも、こうして指でつついてみるだけで。 (……っ、あっ……) 「俺に触られて、うれしい?」 (そ、そんなこと……っ、ぎゅってしないで、や、やだっ……あっ) まんざらでもない答えが返ってくるのですから、白石君としても楽しいことこの上ありません。