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最近のシェーバーはすごい 後編

「ただいまー……さて」 家に帰ってきたはいいが。目の前のこいつはただのシェーバーではない。中身が女子大生となると、あんまり雑に扱うこともできない。 お好きなように、モノとしてお使いくださいと言われたが、あんまりにあんまりなことはできない。というか、普通の感性じゃ不可能だ。 「ただ、せっかく買ったものを使わないってのも、俺の選択肢にはないけど……」 「……」 シェーバは何も答えない。当然といえば当然か。 「そもそも発声機能はついてないのが普通だしなあ。……悪いけど、使うぞ?」 汗臭いのは嫌だったみたいだから、今回はキチンと手を洗って準備は万端。 握りしめた瞬間に、ビクッと一瞬だけ震えるも、観念したようにおとなしくなる。 「なるほどなあ。喘ぎながらしか声が出ないのか。面倒な仕掛けしてくれるな」 (んひゃああああっ⁈ い、いきなり電源入れないでっ、んああああっ!) 「あ、ごめん。でもこうしないと意思疎通できないし」 電源を入れる必要はあったし、なにより、 (はあっ、はあっ……買ってくれたのはうれしいけど、な、なるべく優しく・・・・・って、ちょっと、待って、それ、待って、いったんその手を置いて、ね?) 俺が何をしているのか分かった彼女は、本気でおびえたように俺を説得にかかるが、仕方がない。 「とりあえず新品を買ったら、充電するだろ……まあ、ちょっと我慢してくれ」 (え、うそ! ま、待って、や、あ、あああああああああっ! はしってるっ、わたしのなかにでんき、はしってるっ、だめっ、や、やめてえっ、おしりから電気きて、変になるから、や、やめへええっ! んやあああああっ!) 「……まあ、そうだろうな」 想像したくもない。せめて近くで見守ってやろうとして、結局一時間ほど、ビクンビクン震える彼女を見つめ続けた。 (ぐずっ、あ、ああっ、はあっ、お、おわったっ、も、もう、むりぃっ……) 「ん、お疲れさま。ええと、さすがに今から使うのは無理か?」 (、だ、大丈夫っ、どうせなら、ひ、一思いにっ!) 「そ、そうか……」 まあ、散々電気流されて、散々喘がされたのだ、頭が変になっていてもしょうがない。 ならば、その心意気にこたえてこそ男というもの。 「そこまで言うなら遠慮しないぞ。しばらくの共同生活だが、とりあえずこれができなきゃ話にならないからな」 (わ、わかってるっ、ふぁあっあっ、だ、だめっ、そんなふうにごういんにおしつけないでっ、だめえっ) 言い方が卑猥だが、押し付けねばひげなんてそれやしない。 しっかり深剃りするために、もっと強くしたかったのだが、 (だ、大丈夫よっ、私、新製品になってるからっ、軽く押し当てるだけで、十分だから、んあっ、あんっ、やあああんっ、だ、だめえっ、体中で感じちゃうっ、ああっ!) 「おお、こりゃすごい。さすがは新型モデル」 何がすごいって、軽く押し付けただけで、向こうのほうからひげをそりに動いてくれる。それにとっても滑らかだ。滑るようにつるりとひげをそり、触ってみるとしっかりつるつるだ。 そして、沿った端から彼女の喘ぎ声が聞こえてくるのだから、後味としても最高だ。気分がいい。 (んっつ、早く終わってようっ、ああっ、わ、わたしもう、もうだめになるからっ、あああっ!) 必死に悶えてくれるので、こちらも何か会話を振ってやりたくなる。 ええと、あ、これだ。 「そういえば、髭剃りってことは、今君の体内に、俺のひげが蓄積されて行ってるんだよなあ」 (ううっ、かんがえないようにしてたのにっ、いま、そんなこと言わないでっ!) 「ご、ごめん……」 おっと、怒らせてしまった。というか、泣かせてしまった。事が済んだらきちんとあらってやらないとな。 「もうすぐ終わるから、もうちょっとがんばれ」 (んあっ、んああんっ、あんっ、あっ、ああっ、も、もうだめっ、わたしっもう、もうっ) キュイイン、と、機械特有の音が響く、それも、先ほどよりも大きな音だ。どうやら、本当に限界が近いらしい。 「あと三秒でいいから、もうちょっと待て、な?」 と、俺が懸命に声をかけるも、遅かった。 (ああっ、わたしっ、や、イッちゃう……もう、だめぇえっ……んあああああっ!) ギリギリ、俺が最後のひげをそり終えたところで、新品の電気シェーバーは、突如として、ドクンドクンと、脈打つように痙攣したのだった。 (んああっ……え? ここ……あっ) 「ん、起きたか。ちょっと待ってろ、今洗浄中だ」 無事ひげをそり終えて、水道水でいろいろ洗い流していると、小さな吐息とともに、彼女の声が聞こえてきた。 やっぱり中身が女の子だと認識すると、若干触り方もいやらしくなってしまう。うん、ダメだ。紳士的に優しく、優しく…… 「痛いとことかあるか? まだ不快感あったりするか?」 (んッ……だ、大丈夫、っ、このまま、お願い……) 小さな喘ぎ声を漏らしながらも、どうやら嫌がってはいないらしい。 「……まあ、これが終わったら、自己紹介からだな。半年間、髭剃りとしては頑張ってもらうわけだし、お互い楽しく暮らせるように……」 (……うん……あっ) 聞き分けのいい電気シェーバーは、同意とともに、小さな吐息を漏らした。


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