XaiJu
さとる
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黄金の果実①

スキー合宿。

俺の高校の恒例行事だ。

毎年、2年生の生徒が、3年生のセンター試験が終わったあたりで行われている。

先輩の代わりに滑り、自分たちも来年の分を先に滑っておくという一種の願掛けみたいなものだ。

ついでに、昼間は純粋にスキーを楽しませてもらえるが、夜は先生たちによる冬季講習のような授業が行われる。

これもまた、俺たちの頭の切り替えのため。自分たちの受験が終わるまでは、遊びはこれで最後にして、徐々に徐々に受験に頭を切り替えていけよというメッセージである。

そんなありがた迷惑な思いが込められた合宿に、俺は今参加している。

3泊4日の日程で、今日すでに3日目だ。

中学まで、雪国と言ってもいいような環境で育ったため、俺は、特別運動神経が良いわけでもなく、運動部に所属しているわけでもないのに上級者コースに参加し、リフトで頂上付近まで登って、同じ上級者コースの、大半が運動部所属で普段あまり接点のない仲間たちと滑走する。

都心部の高校に通っている俺たちは、普通にスキー初心者も多いし、一応滑れる程度の中級者も多い。

だから、上級者コースで滑れるような生徒は、全体の1割にも満たず、クラスの垣根を超えて、編成されているのだ。

3日も一緒にいれば、同じ高校生。しかも、全員が男子となれば、それなりに仲良くなるし、軽い下ネタくらいは言える仲になっている。

山頂から滑走を始め、5分くらい経った頃、コースから少し離れた位置に、昨日までは気が付かなったキラキラとした妙な輝きを発見した。

なんだろうと思いながら、その輝きが見える方向へ逸れてみる。

なんだかんだ言って、一番スキーが上手なのは俺。だから、先導しているような感じになっているため、俺が進む方向にみんな着いてきた。

コースの脇ギリギリくらいのちょっと平坦な場所まで進み、停止する。


「どうしたんだ?西脇。こんな淵っこに来て。」


今話しかけてきたのは、藤堂という野球部員。去年同じクラスで、俺がこの上級者コースで、唯一合宿前から知っていた男子だ。


「あ、いや、なんか変なキラキラしたのが見えたから、気になって。」

「ふーん、どれどれ・・・」


俺が指差す林の方向に、藤堂が視線を送る。

後から、来たメンバーも、同じように注視している。


「あ、本当だ。なんだあれ。木が光ってる?てか、お前よくあんなの、あの速さで見つけれたな。」

「まあ、しょっちゅう滑ってたしね。というか、あっちの運動部の奴らとかは、もっとスピード出すから、俺でも遅い方だよ。」

「すげえな、そりゃあ。で、どうする?行ってみるか?」

「うーん、でもコース外れちゃうから、危ないかもよ。」

「まあなんとかなるんじゃないか?な、みんな?」


そう言って、後続のメンバーの方を振り向いた藤堂に、みんな同意する。

俺以外みんな運動部に所属しているから、なんか意味のわからない自信があるのだろう。

まあ俺も、雪道ということで、歩いていくことに関する自信はある。

念の為、スキー板を全員外し、歩いて向かうことを提案する。

万一、迷子になったり、クレバスがあって落ちたりしても、ここでコースから外れたと分かれば、後から探しやすいし、林の中でスキー板を履いたまま動くのは、正直難しい。

雪国育ちの経験があるおかげで、俺の提案はすんなりと受け入れられ、スキー板を雪にぶっ刺し、コースから少し外れた道をみんなで歩き出す。

なんだかんだ上級者コース全員が着いてきたので、総勢15人。

目的地がキラキラと光り続けてくれるおかげで、迷うことなく進める。

徐々に近づいていくと、その光が、木にぶら下がっていることに気が付く。

さらに、それが、金色のもので、太陽の光を反射させて、キラキラ見せていることも理解した。

そして、とうとうその光を生やす木の元にまで辿り着くと、その光の正体が、黄金のリンゴだと発見するのだった。


「なんなんだ、これ?黄金のリンゴ?」

「こんなのあるんだ。」

「誰かが吊るしたいたずら?」

「とりあえず、取ってみようぜ。」


黄金のリンゴなんて聞いたことがない。王林のような黄緑寄りのリンゴはあるけど、こんな風に光を反射することなんてあり得ない。

だから、間違いなく黄金なのだ。

その存在を口々に不思議がるが、バスケ部の南部に肩車されたバレー部の北条が、黄金のリンゴに手を伸ばす。


「嘘だろ、これ・・・」

「どうしたんだ?」


リンゴを触って驚く北条に、藤堂が質問する。


「触った感じが金属って感じじゃなくて、なんというか、果実っぽい柔らかさがあるというか、なんというか。ほらっ」


質問に答えた北条が、手に取っていたリンゴを藤堂に放り投げる。


「うわ、本当だ。リンゴみたいな手触り。でも、なんか見た目はどう見ても、食品サンプルなんだよな。」


北条は、肩車されたまま、他の黄金のリンゴに手を伸ばし、取っては、足元にいる他の男子生徒に投げている。

だから、俺の手元にも、黄金のリンゴがやってきた。

確かに、手触りは、本物のリンゴだ。ツルツルしているようで、若干生鮮食品のようなザラつきが感じられたりする。

とは言っても、食べる気になるかと言ったら別問題だ。不気味としか言いようがないからだ。


シャリッ


俺の隣から、リンゴを齧るような音が聞こえる。

見ると、藤堂が、黄金のリンゴにかぶりついていた。


「ウッマ、なにこれ。やば。」


一度齧り付くと止まらないようだ。

何度も黄金のリンゴに齧り付いている。

手元を見て、その中身をみると、リンゴの黄色味のある身と比べると、同じ黄色寄りだが、明らかに黄金と言っていい光沢がある。

それに、藤堂が口元から垂らす果汁すらも、金色なのだ。なんか体に悪そう。


「藤堂、体大丈夫?なんか、すごい不気味というか、なんというか」

「ん?全然大丈夫だよ。というか、美味すぎて、止まらない。みんなも食ってみろよ。」


心配になって声をかけたが、むしろ食べるように勧められてしまった。

俺は、迷う。周囲から、黄金のリンゴに齧り付く良い音が響いてくる。そして、味に満足するコメントが聞こえてくる。

俺も手元のリンゴを見る。が、踏ん切りがつかない。お腹を壊しそうだから。

迷っている間に、みんな食べ終わり、「食べないならくれ」と言われたので、渡してしまった。

南部も、俺と同じように食べず、北条や他の男子を担いで、黄金のリンゴを回収する手伝いを続ける。

途中、交代して食べるように進められていたが、彼は、果物が苦手だから要らないという返答で、肩車をする側にずっといた。

そして、あっという間に木に生える黄金のリンゴを、俺と南部以外のメンバーで食べ尽くしてしまったのだ。



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