XaiJu
さとる
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スポーツショップの秘密①

とある冬の日、まだ余裕で日が昇っているくらいの時間帯に、俺と翔斗の二人で、最近できたばかりの大型スポーツショップにやってきた。

普段はまだ野球部の練習の時間。

だが、今日は、昨日からの大雪でグラウンドは使えず、今は止んでいるとけども、今晩また降るという予報であるがために、グラウンドの整備をするのも微妙、ということで、校内の廊下を使ってトレーニングをすることになった。

それでも、冷えた廊下でのトレーニングは汗を掻いても、スペースの関係で、そう長時間行うことも難しく、普段よりも一時間ほど早く部活から上がることになったのだ。

そこで、暇を持て余した俺と同じ路線で通学している一学年下の翔斗は、その路線のとある駅近くにできたばかりのスポーツショップに偵察がてら、行ってみようという話になったのだ。

翔斗はバッティンググローブに穴が空き掛けで、俺も練習着やらスラパンが少しヨレてきている気がしていたので、新商品を見たりと、下見にちょうど良い気がしている。


「いやー、本当に広いお店ですね。色々な競技の商品置いてありますし。」

「そうだよな。サッカーやテニスとか、通年で置いてあるのは当然、この時期売り場が小さくなる水泳関連のものもあるし、この手のショップじゃほとんどない、剣道とか、空手とかの武道系のコーナーもしっかり取ってある。」

「ですよね。なんか、こう引き締まった体のマネキンが着ていると、あのブーメラン型の水着も履いてみたくなっちゃいます。」


店内に入り、野球用品が置いてある場所を探しながら、ぶらぶら歩く。

本当に色々なスポーツのコーナーがあり、その都度、その競技の代表的なユニフォームを着たマネキンが飾られ、しかも、競技によっては、スパッツだけのマネキンとかもあり、ユニフォームの下がどうなっているのかもわかりやすいような感じになっている。


「それにしても、マネキン多いな。」

「そうですね。しかも、背が高いマネキンもいたら、低いのもいるし、さっき柔道コーナーのマネキンは、マネキンにしては妙にゴツいっていうか、柔道体型っぽいていうか、そんな感じのマネキンでしたよね。」

「まあ、そっちの方が、自分が買う商品を着たら、どうなるかわかりやすくていいのかも。」

「うーん、でも変ですよ、なんか。なんというか、マネキンが着ている服が、物によっては汚れていたり、破れていたり、このサッカーコーナーのマネキンとか、Y高校のユニフォームで、しかも、背番号8っていう微妙な数字だし。普通、こんなの飾らないですよ。」

「確かに。でも、使用感ある方が、買いやすいのかもね。マネキンのは商品じゃなくて、あくまで見本ってことでさ。ま、いいじゃん。とりあえず、野球コーナーをやっと発見したんだから、お目当てを探そうぜ。」


この駅の近くの高校の野球部のユニフォームを着たマネキンがお出迎えする野球コーナーを発見する。

野球部員らしく、お尻がデカく、腕が良く発達したマネキンに、県大会ベスト8という、成績としては悪くないが、宣伝に使うには微妙じゃないかと思う高校のユニフォームが着せられている。

しかも、背番号も17とかいう数字だし、マネキン自体の身長は170cmくらいと、ちょっと低めだ。

ふと、今年の秋の大会のことを思い出す。

実は俺の通う学校は、このユニフォームを着た高校と対戦している。

同点の中迎えた試合の終盤、セカンドを守る俺の元に、途中交代で入ってきた背番号17の球児が、盗塁してきた。

その次のバッターに2塁打を打たれたことで、相手チームに一点取られ、試合の決着となったのだが、自分の中では、その盗塁を阻止できなかった自分のせいで、試合に負けたことになっている。

だから、その背番号17の選手のことをよく覚えている。

盗塁をされた相手を、隙あらば刺そうと思い、2塁上にいるその選手を睨んでいた。

その彼に、このマネキンが、どこか似ている気がしてきた。

背丈も似ているし、筋肉の付き方というかもそっくり。

ベルトの位置や、シャツのダボ付き具合というか、着こなしもよく似ている。

そう、それは、背番号17番の彼を模して作られたマネキンに、本人のユニフォームを着せたかのよう。

そんなことを思いながらも、まずは翔斗のお目当て、バッティンググローブを見る。

かっこいいデザインのそれを、翔斗が手に嵌め、値段を確認しながら、候補を考えていく。

バッティンググローブのエリアにもマネキンがいる。

バットを持って、構えるポーズのマネキン。

さっきと同じ高校のユニフォーム。

こちらは、背が高いが、妙に股間がもっこりしていて、そちらに目がいく。

そう言えば、このマネキンと同じ背番号の選手ももっこりが凄かったような・・・


「先輩、見終わりました。やっぱり、いい値段なので、お年玉で買うことにしました。年明けまで残ってたらいいんですけど。」

「そっか。今のは、ギリギリ穴空いてないんだっけ?」

「はい、ギリギリ。だいぶ薄くなってますけどね。もしかしたら、年明けまで保たないかもしれないですが。」

「ま、そしたら、俺の貸してやるよ。予備というか、先代のバッティンググローブがまだ使えるから。」

「ありがとうございます。それで、先輩は、練習着とスラパンでしたっけ。あっちにありそうなので、行きましょう。」


翔斗の案内に従い進むと、様々なメーカーの練習着を着たマネキンがたくさん置かれていた。

こう見ると、そのロゴの位置やかっこよさの違いがよくわかるが、背丈や体付きを揃えてくれた方がわかりやすい気がする。

何体も何体もマネキンを見ていると、次第に、その違いが、どんどん生きた人間による差に思えてくる。

身長も筋肉のつき方もそうだが、何気に、帽子を被った頭の骨格も異なる。

細い頭のマネキンもいたら、楕円に近い頭のマネキンもいる。いわゆる小顔タイプのものもいる。

わざわざ違う規格のマネキンを作る意味がわからない。

しかも、マネキンの表面の色合いも違うように見える。

やけに、白かったり、黒かったり、首から上と下で、白さが異なっているマネキンすらある。

なぜわざわざそんな面倒なことをするのか?

そう考えると、このマネキン達は元は人間なんじゃないかと、ありえない妄想をしてしまった。


「ねえ、先輩?聞いてます?」


そんな妄想に耽っていると、一緒に商品を見て回っている翔斗に声をかけられる。

クリっとした坊主頭、小顔で背も165cmと、可愛い後輩だ。

やや下側に視線を向けると、せっかく付き合ってやってんだからという目で睨む翔斗が視界に入る。


「ああ、悪い。考え事してた。それで、どうした?」

「あれです、あのマネキンが着ているスラパン。新商品らしんです。クッション性抜群なのに、走りやすく、動きやすいって売り文句で。マネキンが着ているのもカッコ良くないですか?」

「ああ、確かに。どこのメーカーだ?えっと・・・、ブラックカンパニー?聞いたことないな。それだと、やっぱ、耐久性とかに不安だな。」

「値段も安いですし、確かにちょっと不安ですね。せっかくカッコいいクッションのつき方だから、俺ももう一枚買ってみようかなって思ったんですけどね。」

「そうだなあ、まあ、正直無難にいつものやつにしようかと思ってたけど、確かにかっこよさは、こっちの方が上だな。でも、すぐ穴空いたりしても嫌だし・・・、ネットで調べてもまだほとんどレヴューないからな。どうすっかな。」

「お客様、それでしたら、新商品の被験者登録をしてみたらどうでしょうか?」


マネキンが履いている新商品のスラパンの前でどうするか考えていると、後ろから店員に声をかけられた。

被験者登録というのんが何かわからず、とりあえず話だけ聞いてみようと思い、話を促す。


「はい、被験者登録というのは、新商品を試し、レヴューを会社のHPや商品ページに書いてもらうことを条件に、無料で、その商品を提供してもらうというサービスです。

このブラックカンパニーの営業の方より、商品販促のために、協力してくれる方を探すように頼まれていて、できれば、現役の高校球児が望ましいということです。

お二人とも、学ランを着ているようなので、現役高校生なので、条件に合致しますので、もしよろしければ、無料で商品の登録をさせていただきますよ。

その代わり、後日レヴューの方を書いていただくことと、レヴューの一部としての着用している写真だけはこの場で撮らせていただきたいと思っております。

どうでしょうか。」


条件を聞く限り、無料でスラパンを貰えるということだろう。

ついでに、さらに詳細を聞いたところ、どうやら着用者の名前も顔も出さず、イニシャルと学年の表記だけ求められるようだ。

使用も、使ってみて合わなければ、その旨を素直にレヴューに書いて、使用を止めればいいらしいので、かなりお得な内容に思えてきた。

翔斗と相談した結果、俺も翔斗も、その被験者登録というやつをやってみることになった。


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