XaiJu
さとる
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勇者の間(冒頭)

あー、やっと帰れるよ。

異世界召喚されて、およそ一年。

勇者である僕大輝は、仲間の武闘家ショー、盗賊ユーキ、魔法使いソーマ、僧侶タックたちと旅を続け、とうとう魔王を打ち倒すことができた。

ちなみに、仲間たちの名前が日本人に似ているのは、歴代勇者の名前に肖ってってことらしい。

魔王を倒した僕たちは、王都に帰還し、傷を癒やし、魔王軍の残党の動きにも問題ないことが確認され、そして、元の世界に帰るためのゲートを開ける準備もできたため、今晩、ようやく帰ることができる。

準備ができたのならすぐにでも開けて貰いたいところだが、月の力が必要らしく、夜を待たなければならない。

だから、太陽が昇っている今はこれまでの僕たちの活躍への感謝の意を込めて、慰労会を開催してくれている。

ご飯は美味しいし、僕の世界で着るにはちょっと恥ずかしい感じだけど、綺麗なタキシードを着て、ドレス姿の可愛い女性と踊るのは楽しい。

しかもそんなパーティーの主役なんだから、さらにテンションが上がる。

元の世界の僕は、平凡な高校生。

水泳部に所属して、それなりにいい体だと思っていたけど、女の子にモテることはなかった。

こっちの世界に来て、危険な冒険をしながら、剣を振り、魔法を身につけた僕は、以前と比べて、いい男になったと思っている。

だからと言って、元の世界に戻っても、こんな風に持て囃されることはないだろうから、今のうちに、主役気分を楽しんでおこうと思っている。

そんな楽しい時間はすぐに過ぎ、日も落ちかける。

楽しいパーティーも終盤、王様が僕に声をかけてきた。


「大輝様、どうでしょうか。パーティーを楽しんでいただけていますか?」

「はい、とても楽しいです。最後にこんな素晴らしいパーティーを開いて頂いて、ありがとうございます。」

「そうですか。そう言っていただけて、嬉しく思います。実は、勇者である大輝様にお頼みしたいことがあるのですが。」

「なんでしょうか?」

「はい、実は王城には、通常王家のものと勇者しか入ることのできない、勇者の間という部屋があり、歴代の勇者の記録が保管されています。そこに、大輝様の冒険の記録も残させていただけないかと思いまして。」

「僕の記録ですか?」

「その部屋にある魔道具に、大輝様の魔力を送っていただくだけで良いのです。それで大輝様の冒険を記録できます。我々王家は、その記録を保管し、当代の勇者がその冒険で迷っている場合、その記録を元に助言し、魔王討伐のお手伝いをさせていただくことになっているのです。」


ああそういえば、僕がどこに行けばいいか迷っている時とか、強敵に勝てなくて強くなるためのヒントを探している時とか、王様から色々手助けがあったな。

なんで冒険の経験がないはずの王様があんなに的確なフォローができるのか不思議に思っていたけど、そういう秘密があったのか。

まあ、魔道具に魔力を込めるだけなら、そんなに手間はかからないし、ちょっと恥ずかしいけど、次にもし誰かが勇者として呼ばれた時の手助けになれるのなら、やった方が良さそうだな。


「わかりました。では、勇者の間に案内をお願いします。」


了承の意を伝えると、王様は満足げに頷き、僕を案内し始めた。

途中、仲間たちがそれぞれ楽しそうに踊ったり、料理を食べたり、おしゃべりしたりしているのが見えた。

誰一人かけることなくこの冒険を終えることができて本当によかった。

一緒にいられる時間はあとわずかだけど、最後にちゃんとお別れの言葉を言いたいな。

本当はずっと一緒にいたいと思うけど、元の世界にだって、大事な友達はいるし、家族もいる。

お別れの時は、きっと泣いちゃうだろうけど。


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