※ちょっと可哀想なので苦手な方はご注意を。 ~~~~~~ 「は、裸でステージに乗る……?」 私の元にそんなあり得ないオファーが来たのは、春先のことだった。 「ど、どういうことですか!?そんなメチャクチャな話、受ける訳が……!」 「……君の親御さんの借金がそれで綺麗さっぱり無くなる、と言ったらどうかね?」 アイドル事務所の社長さんの言葉に、私は喉まで出掛かっていた「辞めます」の言葉を飲み込んだ。 「それどころか、借金の額がそのままプラスになるような金額のオファーなんだよ。……普通の子ならば、こんな話は門前払いだ。だけど、三浦くん、君の場合は……。」 そう。私の家には、莫大な額の借金があった。死んだ父が遺した唯一のものだった。裏の世界から借りたものらしく、法的に清算することは出来ないそうだ。母はその借金を返すため、そして私を学校に行かせるために、毎日働き詰めだ。 「……。」 アイドルとしての仕事はもうほとんど来ない。いわゆる売れ残りだ。だから勉強を頑張って、安定した仕事に就きたかった。母のおかげで、私は何時間も勉強して、勉強して、勉強する毎日を送れている。だから、恩返しをしたかった。 「……詳しい話を聞かせてほしいです。」 ゴチャゴチャした頭を整理する前に、私の口からは勝手に言葉が漏れていた。 ~~~~~~ 「みなさん、今日は私のステージに来てくれてありがとうございます!!」 会場は、満員だった。 アイドルとしても、普通の女の子としても、こんなに大勢の観客の前に出たことは無い。 何台ものカメラが私を追っている。 「今から着替えるから、みんなよーく見ててね♪」 台本通りに、満面の笑みを浮かべながら、私はそう言った。 今から私はハダカになる。 この大勢の前で。カメラの前で。 一枚。 歓声が上がる。 一枚。 少し歓声が小さくなる。 ……一枚。 会場はまるで誰もいないかのような静けさに包まれた。 最後の一枚。 脱いだ瞬間に、私は走り出した。同時に、スピーカーからは爆音が響き渡る。 「みんな、行くよ!今日は楽しんでいってね!!」
カンナ
2022-11-05 20:42:25 +0000 UTC