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復活の時(全年齢版)

僕は村井力(むらい ちから)、さえない大学生。人と違う点といえば、社長の一人息子であるぐらい。これだけ聞いた人は「どこがさえないのか」と思うだろうけど、とんでもない。僕の人生は親のせいでメチャクチャだ。 父はあまりに時代錯誤な人だった。勝手に「男らしく力強く」と名付けた挙句、僕の低身長・女顔を「裏切られた」と吐き捨て暴力を働いた。母も父のお金目当てで、僕は夫婦関係を繋ぎ止める道具でしかなかったのだろう。とうとう一度も手を差し伸べてはくれなかった。育ててもらった恩で「両親」と呼んではいるが、本当は目の前で「クソ野郎」と罵ってやりたかった。でも虐待で弱腰になった僕に出来るわけがなかった。でもそんな日々も終わる。実は先日、両親が旅行先の事故で両方地獄へ落ちていった。ざまあみろ!これで莫大な遺産は僕のものだ。 僕はその日から近所のスポーツカーの販売情報を集め、駆け回った。車はか弱い僕を美しい外装で包み込み、百数十キロもの速度を意のままに操る力を与えてくれる。子供の頃からそんな魔法を与えてくれる相棒が欲しかった。でもどんな車も買える大金をいきなり得ると、自分でも何が欲しいのかわからなくなる。 もう日も暮れるし帰るか...ぼんやり考えていると、道端に捨てられていた一台の車に心を奪われた。新車のように真っ赤な塗装に流れるような流線型のボディ。間違いない、オハコ・2000Sだ。1960年代に400にも満たない数が生産された伝説のスポーツカー。スパイ映画「777・二度目の人生」にも出演した名車は夕焼けに美しく照らされていた。 もし「恋」が存在するのなら、この車のことをいうのだろう。気付いた時には、最早手に入れる気満々でチェックしていた。きっとこの車はエンジンが壊れて捨てられたのだろう。エンジンに大きく風穴があいている。新しいものに載せ替えないといけない。オハコ・2000Sは数千万は下らないが、エンジン以外無事ならお金は足りるだろう。そう考えつつ、僕は持ち主になった気分で車の中に乗り込んだ。 落ち着いた頭で考えたことが二つ。一つは何故オハコ・2000Sが捨てられていたのかということ。中に座って確信したが、この車はエンジン以外の状態が完璧すぎる。載せ替えれば億は下らないはずだ。もう一つは鍵がかかっていなかったこと。どこにあるかと思えば、助手席のシートに無造作に捨てられていたのだ。この車、かなりの訳アリなんじゃ... そう考えていた時、僕はガラス越しに見える景色が暗闇であることに気が付いた。慌ててドアを開けようとするが、全く開く様子がない。 「クソ、なんだよこれ!」 思わず悪態をついたその時、 「女の子にそんな口ぶりはダメよ。」 不意に女性の声が響いた。 「ご、ごめんなさい。というか、誰ですか?」 誰もいないはずの車内でとんちんかんなことを言ってしまったと思いきや、 「ひどいわね、一目惚れした女の子に。」 助手席にぼんやりと女性の幽霊が現れた。 「こんにちは、私クリスティーナ。幽霊じゃなくて、れっきとした魔女よ。今は精神生命体になっているけどね。」 「ぼ、僕の思考を魔法で読んでいるんですか!?」 「理解が早くて助かるわ。何で壊れた車の中にいるのかって?その話は少し長いわよ。私は元々男を女に変えるのが趣味なの。でもその考えが危険視されたのでしょうね。私は封印され、器は魂を留めておく力だけ残して破壊された。それからは大変。復活のためにはわずかに残った魔力で人をおびき寄せて、エナジーを奪い取るしかないもの。長い時間がかかったわ。でも復活まであと一人。」 「じゃあエンジン以外が完璧だったのも...」 「そう、エナジーで修復したから。後はあなたの分で、私は完全に復活するのよ!」 「嫌だ!僕はまだ死にたくない!やっと親が消えたばかりなのに!」 「色々大変なのね。でも安心して、あなたは殺さないわ。私の肉体はとっくに滅んじゃったから誰かの肉体を借りないと外に出られない。だからこそ最後の一人は慎重に選んでいたのよ。あなた可愛いから素質あるわ。車にも詳しいから本体も大切にしてくれそうだし。」 「可愛い言うな!最期にトラウマを抉るな!」 「あら、強くもなれるわよ。私は最強の魔女なんですから。これ以上の長話も何だし、その体頂くわよ。」 そういうと魔女は僕の口の中に無理矢理侵入を始めた。 「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 最初こそ苦痛で叫び声を上げたが、すぐに快楽に変わった。 「ひぃぃぃぃぃ!!!!」 自分か魔女かもわからない叫びとともに、僕の体は大きく変化していく。胸はささやかなAカップの美乳に膨らむ。肌はもちもちと健康的ながら美術価値のありそうなほど美しい白色。エストは人形のように細くなり、ヒップもささやかに膨らんでいた。 このような異常な変化が起こっても、体からは快楽しか感じられない。むしろ体の奥からは全能感にも思える力が湧いてくる。 「あぁ...」 僕は湧く力の熱さと快楽に、くらくらして気を失ってしまった。 「さあ、最後の仕上げよ。」 真っ暗な夢の世界から誰かが語りかける。その言葉通り、黒い髪は薄いブロンドのミディアムカットに変わった。服は一度色づきながらドロドロに溶けると、体を包む青いサテン生地のレース下着になり変化は終わった。 「お疲れ様。これであなたは最強の魔女に生まれ変わったわ。ついでにあなたの経歴も元々女性だったことにしたから安心して。じゃあこれからよろしく、「栗原千華(くりはら ちか)」ちゃん。」 夢の声がそう語ったのを最後に、「私」は真の暗闇に堕ちていった... ここは栗原家のガレージ。そこに佇んでいたのは真紅のオハコ・2000Sだった。その中で下着姿の少女、栗原千華がゆっくりと目覚める。ハーフ特有の彫が深い顔に、寝ぼけた瞳がダイヤモンドのように輝いている。華奢な体も相まって、その姿は人形のような美しさと若干の不気味さを内包していた。 「ふぁぁ、寝ちゃったか...」 彼女は両親と死別した後、人が変わったかのように車にのめり込むようになった。しかし、まさか本当に悪辣な魔女に性格を歪められてしまったとは誰も思わないだろう。 「どう、今の気分は?」 「もう一人の彼女」が目覚めの気分を問いかける。 「なんかとてもスッキリしてるよ。あぁ、この力を試してみたいかな。」 そう答えると、下着姿のまま車を発進させる彼女。とある公園に立ち止まると、ランニング中の男性に目を付ける。 「へえ、あの人はプログラマーなんだ。彼の技術力は役に立つかもしれない。イケメンで変化させがいもありそうだしね。」 魔女に目をつけられたかわいそうな男「たち」の人生は、ここから大きく狂い出す。


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