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手なずけ狼:前編

この世界において深いダンジョンに潜り調査をして遺品や素材、アーティファクトなどの収集、場合によってはモンスターとの戦闘を行う者たちを冒険者と呼んだ。そして冒険者には大きく分けて二種類いる。得るものと、失うものだ。 獣人にもさまざまな種類がいるが魔物にも多彩な種類がいる。豚型や鹿型の魔物も当然いるわけで食肉として有名ですらある。だが獣人たちはたとえ豚獣人や鹿獣人でも元が何の魔物の肉だったかなど気にせずに食してしまう。 それは魔物肉が美味だからであるためだ。当然世界的に禁止されてはいるが、獣人の肉など硬くてまずい。たとえ豚獣人であったとしても食肉としては一切向いていない。だから獣人が獣人を食べるというケースは極悪非道な殺人でも滅多に見られない。 だが魔物は違う。特に虎や狼などといった肉食系の魔物はどんな硬い肉だろうと噛みちぎる強靭な歯を持ち合わせ、食肉に向かない同じ魔物だろうが獣人だろうが関係なくただ食らう。 危険であるため村や町の近くに群が現れたりでもすれば即座にギルドから冒険者たちが駆り出される。ダンジョン探索以外でもこうした活動に寄って冒険者たちは資金を得るのだ。 灰色狼の獣人であるイルブはダンジョン探索よりも村周りの魔物討伐で資金を稼ぐ冒険者であり、特に狼の魔物でよく村周りに現れるプレーリーウルフの群をいくつも討伐している。 今回もプレーリーウルフが大量に発生した地域があり、村周辺にまで群をなす可能性があるため調査と場合によっては討伐を目的としてイルブはその地域にある小さな村にと向かった。 プレーリーウルフの大量発生する地域にはきちんと法則がある。以前この地域での大量発生が起きたのは3年ほど前。その時もいる部ではないが狼獣人のある冒険者が派遣されたが、村への影響なしということで帰還したことになっているのをイルブは調べ済みである。 だがそれはそれでおかしいのだ。イルブの頭に中で今までの経験から大量発生する地域を円で囲っていけばすっぽりと小さな村は収まっているだろう。今までの村もそうだったから魔物狼が近くに群を作り、それを退治したのだ。 なにともいえない憶測でしかない不安を胸にしながら簡易的な木柵の囲いしかない村にと入っていく。プレーリーウルフでなくても破壊できてしまいそうなものである。比較的羊獣人の多い村で黒、白、灰色、茶色といった様々な毛並みを持った羊獣人達。他の種族は山羊と鹿ですべてが少食系獣人。そんなかれらがイルブのことを見つめる中、ギルドから聞いていた村長の家にとまっすぐ向かう。 村長の家だけが大きく作られておりイルブでもすぐに見分けはつく。家の前には門番なのだろう黒い毛並みの羊獣人が二人ドアの前で少しばかり警戒気味にイルブを見つめていた。 「冒険者の方かと思いますが、村長の館へどのようなご用件でしょうか。」 「事前に知らせは届いているだろう?プレーリーウルフの大量発生がこの地域に起こっている。村への被害状況や、以前の大量発生時のことについて話を聞くだけだ。」 「その件でしたか。どうぞ、お入りください。」 安心した様子でイルブを通す門番役の二人が、イルブが通った後にはひそめながらも軽く笑っていたことにイルブは気づくこともなく村長の館にと入る。入ってすぐに大部屋でここでいつも村会議でもしているのだろう。その部屋の奥に村長はいた。 村であった羊獣人とはまるで違う夕暮れを思い出すかのような赤みを帯びたオレンジ色の毛並み。村長とは言うが老いているというわけでもなくむしろイルブよりも年下なのではないかという若さだ。イルブはもちろん村長も雄であるにもかかわらずイルブはその姿に目を奪われていた。それに加えて何か甘いいい匂いが漂ってきていた。 「いらっしゃい、冒険者さん。僕がこの村の村長トライトだ。ギルドからの書状は届いている。プレーリーウルフのことでいいかな。」 「っ!あぁそうだ。たしかこの地域の大量発生は3年前だったはずだ。被害がなかったそうだが、詳しい話を聞けるだろうか?」 「大丈夫、これでも7年も前から村長の座なんだ。成人したのは去年だけどね。前回きたギルドの人が話してくれた通り、この村にはプレーリーウルフどころかここ6年ほどは魔物の襲撃もないよ。僕が村長になって1年で魔物への対策を作り上げたからね。」 「その若さで村長となったのもその発想力のおかげということか。他の村でも使える内容かもしれないのだが、ギルドには伝えたのか?」 イルブの予想通りかなり若かったわけだが、魔物の襲撃から村を守る発想は素晴らしいものだ。7年も前から実施していたのであれば最低でも2回は冒険者がこの村に来て大量発生の話をイルブと同様にしたはずである。だがイルブは他の村で見たのは魔物におびえる村民たちばかり。この村の対策が伝えられてるとは到底思えなかった。 「勘違いしないでほしいけど、きちんと来ていただいた冒険者の方には教えたよ。伝えられていないのであればその冒険者の方が話していないか、ギルドのほうでほかの村では実施できるものではないと考慮されたためかな。よければあなたも見ていきます?」 「そうだな、俺も自分の目で見てみたいものだ。そういえば名乗り忘れていたな、俺はイルブだ。名で呼んでくれると助かる。」 「おっと、失礼。イルブさんだね。こっちにその対策の場所があるからついて来てくれるかな?」 「あぁ。」 トライトが大部屋の横にと行くと横開きにとが開く。その瞬間にムワっと甘ったるいむせかえるような匂いがトライトのすぐ後ろにいたイルブを襲う。イルブには片膝をついて崩れ落ちるような今日辣な臭いなのにトライトはなんてことないように立っている。 「あぁ、もしかしてきつすぎましたかね?」 「なんだ、この匂いは・・・」 「睡眠ガスだよ。僕は特異体質なんで効かないんだけどね。眠っていただいたら本当の魔物対策してる場所に連れてってあげるよ。」 「ぐっ・・・」 イルブの憶測でしかない不安は当たっていたことになる。村ぐるみで何か起こしているのだと。もっと頻繁にダンジョンに潜っていればもう少し催眠トラップへの警戒と耐性も強かっただろう。倒れいく自分を見つめる村長のトワイトを最後の抵抗でギッとにらみつけたがイルブはそのままばたりと倒れ込んで眠りについた。 「やっぱり村周りしてる連中は耐性がないんだね。まぁ村の連中よりは耐えてるか。さっさと切って運んでもらわないと。」 まるでイルブに吐き捨てるような言葉をぶつけるが、深く眠ったイルブには聞こえてすらいない。トワイトはまるで何事もないかのように甘ったるい催眠ガスにまみれた部屋にと入っていき、ガスを充満させていた自作の魔具を停止させた。


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