ポケモンになった者
Added 2021-12-17 01:00:00 +0000 UTCまたまた長くなってしまったので前編後編分けさせていただきます。 前編には性的シーンはありません。 --------------------------------------------------------- 人間はいないポケモンたちだけが暮らすこの大きな地域ではポケモン達が独自の文化で村や町を作り上げていた。ある地域では救助隊と呼ばれる組織が組まれ、こまったポケモンたちを助ける仕事を生業としていたり。ある地域では探検隊と呼ばれる組織が他の地域にまで探検に出かけたりしている。 人間は基本ポケモンと会話などできないが、何かの偶然で人と住むポケモン達にその地域である謎の大陸のことを聞けたとしても、そこは断域だとしか皆言わず、それ以上は口をつぐむだろう。 そんなおとぎのような未知の場所であるからか、人間たちがポケモンしか住んでいないという大陸のことをパラダイスだの神域だのとはやし立てられる。だが大陸のことを知る人間もポケモンもこれだけは口をそろえて言う。人間ならば決して大陸を探そうとしてはならないと。 1000年に7日しか起きないといわれた伝説のポケモンジラーチの起きている姿に偶然にも遭遇し、ポケモンしかいない大陸の話を聞いてしまったポケモン好きの若者が探そうとしてはならないといわれながらも、船一つで目指してしまったのは彼の悪癖故だったのだろう。 「ポケモンしかいない大陸地域、そんな場所があるなんて。きっと見たこともないポケモンがいる。あらゆるポケモンと仲良くなりたいんだ。ごめんジラーチ。」 一人用の船にしては少し大きいが、何日かかるかもわからない、釣りで食料を得られるかもわからない彼には必要な物がすべてそろった船だった。 そんな船がかえるほどの財力があるからか、ポケモン好きか悪化してあらゆるポケモンと触れ合いたいと願うようになり、ジラーチを探し出してしまった。だがそれをほかの人に言うつもりなどなく、一人ジラーチと触れ合えたことだけを満足していたのだ。 心根の底が腐っていたわけではない。人々に広めていいことだけを広めてもいた。だからこそ彼はいつしか優秀な新星のポケモン博士として認知されていた。だがこの船での旅は世間では突然の失踪となってしまった。 まだ何も見えない海のど真ん中。だが風も弱く太陽がまぶしい丁度昼過ぎ。穏やかな船の旅を楽しんでいた若者だったが、突如頭上からゴロゴロと稲妻の音が聞こえて船を止めてしまった。 「なんだあれ、ついさっきまであんな快晴で、雲なんて白いのが少し浮いてただけなのに。」 唖然と見つめる空は真っ黒な雲に包まれ太陽などどこにも見えない。いつの間に空が見えなくなったのかも彼には分らなかったが、ビシャーン!と激しい音を立てて落雷が海にと落ちてきたのを見て、慌てて船を動かし始めた。 「くっ!GPSがいかれてる!まっすぐ進めば進んでた方向だろうけど、波が荒れ始めてる。ちゃんと進めるのか?」 衛星情報で船の現在位置を見れるはずのGPSがいかれまっすぐ進んでいるつもりでも波が荒れてもはや進んでいる方向がわからなくなっていた。そしてビシャーン!と激しい音を立て、いくつもの雷が無情にも船を貫き彼の船はボロボロに燃え尽きていった。 何者かにゆすられているのを感じて彼はすこし意識を取り戻す。雷が船に落ちてきた記憶が鮮明によみがえり、自分がまだ生きていることに深く安堵してゆっくりと覚醒していく。 「ねぇ?大丈夫?生きてる?」 「うぅ、なんとか、だいじょう、ぶ・・・?」 波が打ち付ける浜辺で仰向けに寝ていた彼が眼を開くと、揺さぶっていた人物、いや揺さぶっていたポケモンを目の当たりにする。彼を揺さぶり声をかけていたのはラッコポケモンのミジュマルだった。 「生きてはいるみたいだね、でもどうしたの?」 「み、ミジュマルが、しゃべっている?」 「ポケモン同士だから喋れても不思議じゃないでしょ?何言ってるの?」 「ポ、ポケモン同士?でも自分は、人間で、あれ、この手は?え?」 喋るミジュマルに意識が行きすぎていたが、視界の中に自分の手が見えると、明らかに人間の手ではない小さく黄色い手。よく感じ取れば体の感覚もおかしいが、雷に打たれた影響だと思い込んでいた彼は慌てて起き上がり、海にと振り返る。そこに立っているのはまさしくねずみポケモンのピカチュウだった。 「どう見ても君はピカチュウでしょ?人間って、おとぎ話じゃあるまいに。」 「に、人間が、おとぎ話?」 「そう、この地域っていうか、この大陸の外では人間っていう生き物がいて、ポケモンと一緒に生きているって話。」 「っ!こ、この場所ではポケモンしかいないのか!?」 「え?まぁ、そうだけど?常識だと思うけど、ほんと変なの。」 「そうか!求めていた場所にたどり着けたんだ!」 変なのと言われたことすら耳に入っていないほどに彼は興奮していた。おとぎ話じみた場所がジラーチから本当にあると知ることができて、今まさにたどり着いたのだから。 「そ、そう、目的が果たせたんだ。よかったね。で、君は名前がある?ない?」 「え?なぜそんなことを?」 「そんなことも知らないの?この辺で名前があるなら町のポケモン。ないのなら野生のポケモンだよ。まぁもっと大陸の遠いところだとそうとも言えないだろうけど。」 「町のポケモンと野生のポケモン。なるほど、名前があるかないかで決まるのか。自分の名前は・・・あれ?」 すんなりと名前を言うつもりであった。だが彼は自分の名前をすんなりと言えなかった。周りからその名前を付けて博士と呼ばれていたはずなのにその部分にもやがかかる。それだけじゃない、話しかけてくれていた人間たちの顔にももやがかかっていた。 「大丈夫?頭でもいたいの?」 「っ、無意識に頭を抱えていた?大丈夫、たぶん、記憶が一部飛んでるだけだ。海で強い雷に当たってしまったせいかな。」 「海で強い雷?ふーん。それでこんなところで倒れてたんだね。」 記憶の混濁に頭を使っていた彼は、海で強い雷という言葉を返す瞬間のミジュマルの雰囲気が少し変わったことにも気づかなかった。 「今無理に思い出そうとしても無駄化。記憶が戻るまでは安静にしたいんだが・・・」 「いいよ、町に案内してあげても。でも名前がないとちょっと不便だね。ピカチュウって呼ぶわけにもいかないし。」 「ならば暫定的に博士と呼んでくれないか?そう呼ばれていたからそれなら反応しやすい。」 「ハカセ?それは名前とは違うんだ。まぁハカセって呼べばいいんだね。僕はマルドっていうんだ。とりあえずよろしく。」 「あぁ、よろしくマルド。」 「それじゃあついて来て。」 暫定的に自身をハカセと名を付けたピカチュウはマルドという名のミジュマルに連れられ海にと続く川の横の道を上っていく。すぐにミジュマルが言っていたように建物が乱立する町と呼んでそん色ない場所にとたどり着く。 「へぇ、町はこうなってるのか。建物はみんなで建てたのかい?」 「僕は建てたことないけど、ビビさんとかリリさんとかヤーンさんはあるはずだよ。ほら、あそこにいるのがリリさん。」 マルドが手を振ると優しく微笑んで手を振り返すリリさんと呼ばれたマリルリ。彼女の周りにはマリルとルリリがたくさんいて話を聞きたいところだったが、マルドに案内されてるのもあってハカセは軽く会釈だけをして過ぎ去る。 ハカセにとってはポケモンがしっかりとした建物を作るなどあまり聞いたことがなかった。一部のビッパやビーダルがダムを作ったという話くらいだ。だが人間がいないからこそポケモンたちが創意工夫して住む場所を作ったのではないかと考察していた。 町並みの建物は二階建ての建物はなくあまり大きくないのは道具不足感を感じていたが、どうしてかすべて青色を基調としている建物ばかり。そして見回るうちに理解する。 マリルリ一家だけでなく、ゼニガメ、コダック、ニョロモ、クラブ、シャワーズ、ワニノコ、ヘイガニ、ポッチャマ、ブイゼル、ケロマツ、アシマリ、メッソンと種類こそ豊富だがすべて陸で生活できるような水タイプ、それもほとんどが水単一のポケモンばかりなのだ。 「ここは、水ポケモンが集まった町なのか?」 「そうだよ。電気タイプのポケモンもいまはハカセだけになるね。ちょっと不安?」 「い、いや、受け入れてくれてるようで感謝するよ。」 電気タイプであるピカチュウになってしまったハカセだが、マルドが一緒にいるからか顔があっても誰も不審な目で見たりせず、愛想よく手を振ってくれた。いつの間にか体にも慣れていてマルドについていけるくらい普通の速度で二足で歩けていた。 川の上流に登っていき小さな湖になっている場所につく。湖の真ん中からは常に水があふれ出しす湧き水的なスポットなのだとすぐにハカセは見当をつける。そして湖の横に一番立派な青の二階建ての建物の前でビーダルとヤドキングが何やら話し合っていた。 「あ、ビビさんとヤーンさんだよ。町長の家の前ってことは、きっと建築の話してるんだろうね。」 「なるほど、ここは町長の家なのか。自分を町に入れるよう話してくれるということか?」 「そういうこと。やっぱそういうのは村長が一番だからね。おーい!ビビさん!ヤーンさん!」 マルドが二人を大きな声で呼ぶとハカセにも気が付いて、今までのポケモンたちとは違い、少しぎょっとした表情をした後、軽く手を振った。むしろその反応のほうが普通だろうと博士も思いながら近づいていく。 「マルドよ、外のものをこんなところまで入れたのか?それも電気タイプとは。」 「ううん、海辺に遊びに行ったら倒れてたんだよ。なんでも海に出たらしいんだけど、ちょっと記憶がないんだって。」 「水タイプでもないのに海に出たのかい?なかなか無茶だねぇ。だが外の者だからねぇ。受け入れるにしろ滞在させるにしろ、町長に話を聞かなきゃいけない。マルドはよく判断したねぇ。」 二人の言葉にハカセは無断で入ってきていいような場所ではなかったのではと思い、恐る恐るマルドをかばう気持ちも込めて聞いてみる。 「あ、あの、町の方たちは驚かなかったんですが、よかったんでしょうか?」 「町のものは儂らよりも若いものが多いからの。最近は外の町と物流もあるから気には止めなかったのだろう。すべては町長にはなしなさい。儂らは今はこれ以上は言わぬ。」 ヤドキングのヤーンがそういうと、催促するように町長の家にとマルドが招き入れる。ビーダルのビビはヤーンの後ろでうなずき続けるだけで、マルドとハカセだけで町長の家にと入る。 室内には真珠がいくつも飾ってあって豪華に見えた。ベットなどはないがおそらく二回だろうとハカセは見当をつける。そして部屋の奥に鎮座するアバゴーラが町長なのだろうと。 「マルドよ。外のものを我のところまで連れてきたのか?何者なのだ。」 「町長、彼は浜辺で打ちあがっていたピカチュウなのです。話を聞いてあげてくれませんか?」 「む、わかった。そちらの話を聞こう。」 ハカセはマルドが座ったのを見て、その隣にと座り込む。じっと町長であるアバゴーラに見つめられると、嘘を見透かされているかのような気分になり、自然と口が動き始めた。 「実は・・・」 ハカセは彼が船でこの大陸を目指した人間であること、雷に打たれ気が付いたらピカチュウとなっていたこと、名前も含め一部の人間だったころの記憶があいまいなこと。そして問いただされてジラーチとの出会いでこの大陸を知ったことも話した。 「ふーむ、にわかには信じられないが、嘘を言っているわけでもなさそうだ。マルドよ、どうする?其方が面倒を見るのか?」 「まぁ、連れてきちゃったわけだからね。でもゴーラ町長が嘘じゃないっていうんなら、ほんとにハカセはもともと人間なんだ・・・」 「信じられはしないのはしょうがない。今も自分がピカチュウであるのに動きに違和感がないのが不思議なくらいだ。」 「動きに違和感がなくても、其方はポケモンとしての力の出し方を知らぬだろ?町の外には野生もいて襲われる可能性もあるのだ。ゆめゆめ忘れるでないぞ。」 「そういえば、そうですね。気を付けます。」 今のところわざわざピカチュウとして技を繰り出そうともしていないのでわからなかったが、ポケモンの戦いは見てきても、ポケモンとしての戦い方など知りもしないことなのは確かだった。 「それじゃあとりあえず僕のうちに行こうか。どうするか決まるくらいまでは泊めてあげるよ。」 「あぁ、感謝するよマルド。」 先に立ち上がりミジュマルの手を差し伸べてくれたマルドの手を握って立ち上がる。彼のポケモンとしての生活はこれから始まるのだ。