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X'mas Daddy~パパの贈りもの~

【あらすじ】

 体育教師の熊田雄悟(43)は息子の海斗(6)からクリスマスに欲しいものを何とか聞き出すが、それは「パパ」だと言う。訳のわからないままクリスマス当日を迎えるが、雄悟が目を覚ますと、自分の姿は「海斗」になっていて──。


***


 俺、熊田雄悟は高校で体育教師をしている。学生時代から続けていた野球をいつまでもやりたくて、野球部の顧問になれる教師の道を選んだくらい野球が好きだ。もちろん、生徒たちにも深い愛情を注いでいる。彼らと向き合い、スポーツで一致団結することの素晴らしさを教えるのは、教師冥利に尽きると思っている。


「ねえ、あなた。そろそろじゃない?」


 そんな俺の日々の癒しは、愛する妻と息子とのひとときだ。その晩、ベッドですやすやと眠る海斗を挟むように、隣で横になる久美が小声で言った。12月。我が家はもう、クリスマスツリーやイルミネーション……などなど、ややこしい装飾で埋め尽くされている。海斗の頬を指で突いてみると、まだまだ幼児らしくやわらかい。


「ああ、そうだな。明日、こっそり聞いてみるよ」


 そう言って、俺はいつものように久美とやわらかいキスをして、消灯した。


*


「なあ、海斗。今年はサンタさんに、何を頼みたいんだ?」


 翌朝、食パンにいちごジャムをたっぷり塗りつける海斗の隣で、何気なく俺は聞いてみた。


「えー、おしえない!」


「お、なんだ? ほら、パパにだけこーっそり、教えてくれよ」


「絶対ないしょ!!」


 もう6才になる海斗は最近、「ないしょ」がマイブームだ。何かにつけて、親に隠し事をしようとする。でも、このままではクリスマスプレゼントを用意することができない……。代わりに、今年はサンタクロース宛に手紙を書いてもらうことになった。もちろん、こっそり。その手紙に目を通せば、きっと海斗が欲しいものが書かれているだろう。


『サンタさんへ。ことしのプレゼント、ぼくがほしいのは──』


「……ん?」


 一瞬、俺は目を疑った。「ほしいのは、パパです」……なんだ、どういう意味だ? 何かそういう流行りのキャラクターがいるのか、久美に聞いてもわからないと言う。結局、そのまま何が欲しいのか聞き出せないまま、クリスマスの前日を迎えてしまった。


「まったく……。なんなんだ、『パパ』ってのは」


「そうねえ。でもまあ、おうちでクリスマスパーティーするし。それだけできっと、喜んでくれるんじゃないかしら?」


「それもそうだな……それじゃ、おやすみ」


 そう言って、俺は今日もすやすや眠る海斗を挟みながら、久美のやわらかい口元にチューをして、深い眠りについた。


*


「海斗〜、もう起きなさい。海斗〜!」


 んん……。俺は久美の声で目を覚ました。久美はもうベッドから起きて朝の支度をしているようだ。……ん? 海斗はもういないぞ。朝から久美は何を言ってるんだ?


「海斗! ちょっと、今何時だと思ってるの」


 駆け足とともに、エプロンをした久美が目の前に現れる。久美は俺の手を取り、そのまま俺を抱きかかえた。久美のやわらかくて大きな胸の膨らみが俺の頬にそっと触れる。──ん、抱きかかえた?


「んもう、今日はクリスマスよ。一番楽しみにしてたじゃない〜!」


 久美に抱っこされた俺は、鏡を横切ったときに言葉を失った。そこにはいつもの、俺の姿はなく、抱きかかえられていたのは、俺の息子・海斗だった。


「な?! ど、どういうことだ!?」


 俺の喉元から、幼児らしい甲高い声が発せられた。これは夢か、夢がまだ続いているのか? しかしさらに驚くべき光景がリビングに着くと待っていた。


「あなた、海斗やっと起きたわよ」


「あ、やっとおきた? おそいなあ、もう」


 リビングで椅子に座っていたのは、ジャージに着替えを済ませた、俺だった。熊田雄悟がそこにいた。ツーブロックの黒髪短髪、口髭や顎髭があって、野球漬けのガッチリした身体に、最近少しでてきた腹のたるみ──


「ねえ、すごくない!? ほんとにサンタさん、おねがいかなえてくれたんだ!」


 俺の姿をしたヤツが40過ぎのオッサンの低い声を出して、ガキのような喋り方で目を輝かせながら言った。片手にはいちごジャムがたっぷりと塗られた食パンが。俺は慌てて、久美から飛び降りた。


「お前、もしかして、海斗……なのか?!」


「うん、もともとね。サンタさんにおねがいしたんだ! ぼく、ずーっとパパみたいになりたくて。パパみたいながちむち? にあこがれてて。それでパパをくださいっておねがいしたら、ホントにパパになれちゃった!」


 そう言って、俺の姿をした海斗は立ち上がり、デレッと俺らしくないスケベな表情を浮かべ、その大胸筋や腕周りをベタベタと触り始めた。


「おい、さっきから何言ってん──」


「だからもうぼくは『海斗』はいらないから、そのからだはパパにあげるね。……あーでも、せっかくパパを手にいれたのに、しゃべりかたとか、ちょっと“パパ”っぽくなくて変だよな……な。ま、こんな感じか? すっかり記憶も読み取れたんだが、今日はこれから部活の試合に引率しなきゃいけねえみてえだな。帰ったらちゃんとクリスマス会しような、海斗」


 そう言って、俺になったジャージ姿の海斗は、俺の頭の上にポンと大きな手を置いた。玄関越しで久美といつものチューをして、家を出ていってしまった。そして家に取り残された俺は──いや、だんだん”おれ”じゃなくて“ぼく”っていったほうがしっくりくるんだけど──あたまのパパの手のぬくもりがうれしくてうれしくて、おしっこもらしそうになってくる。ああ、はやくパパかえってこないかな? こんやのクリスマスパーティがたのしみでたのしみで、しかたなくなってきた!



<X'mas Daddy~パパの贈りもの~:終>



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素敵なクリスマスをお過ごしください。

X'mas Daddy~パパの贈りもの~

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