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澄川ティー
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『幽冥のアステール』の世界観に関する補足、制作話

『幽冥のアステール』を公開してから半年、多くの方に作品を応援・遊んでくださっているのを感じています。この作品世界・登場人物たちを好きになってくださるととても嬉しいです。


さて、今更となるかもしれませんが、『幽冥のアステール』の世界観に関する補足などを記したいと思います。

私がどのような考えでこのシナリオを作成したのか、その考えの一部を記しているので、何かしらの参考になれば幸いです。


※ネタバレをガッツリ含むので、未通過の方はご注意ください。

「ミセツの地」とはなにか

此の世と彼の世の狭間の地、生者と死者を繋ぐ地、しかし今は死者しか存在しなくなった地――それが「ミセツの地」と呼ばれる場所。心象世界拡散装置が流月知世の願いを歪な形で叶え、一部再構築が行われたが、その地の本質は遙か昔から変わっていない。天国に最も近いとされて、その地でなら天国へ至る門を開くことができると信じられていた。

未だ現世と接触してないことから「ミセツ」の名が入っているが、外界から途絶された場所にあり、通常はその地に立ち入ることも、外から認識することもできない。


開拓当初から暮らしていた僅かながらの人々と、後から侵略しそこを支配するようになった星辰門派の人々の痕跡が、その地の各所に見られる。主人公たちはそれらの場所を調査することで、この地の秘密と、かつてこの場所で行われようとしていた企てを明らかにしていく。

クローズドな舞台・異界

上記がミセツの地の大まかな概要です。

『幽冥のアステール』はシティシナリオの形式を取っていながらも、考え方によってはその舞台はクローズドだと捉えることもできます。


閉じられた空間を舞台としたシナリオは「クローズドシナリオ」と呼ばれ、CoCが流行り始めた当初では盛んに作られていました。一番初めに本作の企画を立ち上げた時も、草案では館を中心とした村を調査する話で、クローズドな世界をイメージしていました。

けれど閉鎖的な世界では物語に広がりを持たせることが難しいと考えて、一度その草案を破棄し、閉じられていながらも広がりを持つ世界、ミセツの地という「異界」を考案しました。

日常とは切り離された世界でありながらも、思想や思惑を持った登場人物たちがそこで生きていて、主人公たちは様々な場所に訪れ、そこで見聞することで、世界の秘密が紐解かれていきながら物語が展開される。ミセツの地はそれを可能とする世界となりました。


ちなみに、異界という舞台設定は私が好んでよくやるもので、公開済みのシナリオの中では『真っ逆さまの空中飛行』がそれに当たります。(タイトルだけ表に出しているシナリオだと『幽契ノ少女』や『アナザーワールド・ラプソディー』にも異界の要素を全面に出しています)

肯定も否定もできない世界

異界は非日常そのもので、日常に回帰するためには脱出しなければならないという共通認識があります。

「元の世界に帰らなければならない」、そう思わせるために、異界は通常不気味で危険な場所として描かれます。有名なものだと「キサラギ駅」などが挙げられるでしょうか。とにかく、異界というのはホラー作品においては否定的なものとして描かれます。


しかし、ミセツの地は異界ではありながらも、従来のホラー作品で演出されるような世界とは全く別の様相を提示しています。

幻想的などこか美しい場所として印象付けるような描写が要所要所で差し込まれます。それは、ススキの原野でルナがはしゃぐシーンや、浜辺に訪れたシーン、旧星守邸に訪れたシーン、ルミナフローラの花畑にステラが主人公を連れ出すシーンなどです。


シナリオ本文のp.43にも、以下のような補足を記載をしています。

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ミセツの地は黒化した異霊体が存在する呪われた土地であるが、しかしその一方で、ススキの原野や浜辺、聖域などの幻想的な場所も多く存在する。荒廃的で、けれど幻想的などこか美しい舞台を演出することが、作品全体の雰囲気を印象付けるために重要であるため、KP は背景やBGM などを駆使しして演出面を重視してほしい。

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ミセツの地を幻想性が最も強く演出されるのは、9月19日の心象世界での出来事、「可能性としての世界」のシーンです。ステラとルナと主人公のみなが、幸せに、一緒にずっと暮らすことができる、ミセツの地ではそれが可能になるかもしれないと提示するシーンとなります。


主人公が、この世界に留まることを選択する、天国を望むことは実際にはできませんが、それでも迷う余地が生まれなくてはなりません。

迷う余地があるからこそ、現実の世界にルナと共に戻ることを選択する主人公の決意に価値が生まれるからです。ステラから託された願いを、彼女との約束を守ることが、この物語において非常に重要な意味を持ちます。


また、流月と刈夜の願っている世界もまた価値のあるものだと示す必要がありました。彼らの行動はただの狂言ではなくて、彼らにとっての正しさであったことを示すため。けれど主人公たちの選んだ選択も、一つの正しい選択なのだと示すため。

その両方を成り立たせるために、天国にもっとも近いミセツの地という世界は、肯定も否定も簡単にすることができない場所とする必要がありました。



背景もBGMも各自で用意しなければならず、シナリオ本の文面だけで雰囲気やメッセージを解釈しなければならないTRPGにおいて、物語をうまく演出することは難しいとは分かっていますが、上記内容が助けとなれば幸いです。


※余談ですが、私が回したセッションでは、旧星守邸を発見した際にPLが終始強く警戒してしまい、セッションが一時中断となったことがあります。確かに、「そこに本来は在るはずのないもので、誰かにとって想い出深いもの」はホラー作品ではデストラップがたくさん潜んでいるのが定番ではあるので、そういった印象に引っ張られる人がいるだろうなと思いました。アニメとかであれば映像やBGMの演出で受け手の印象を誘導しやすいのですが、TRPGではコントロールが難しいと痛感した場面となりました。シナリオにおける重要なシーンなので大きな修正は予定していませんが、KPの方は回す際に演出に気を付けて貰えたらと思います。


制作裏話・実際のセッションにて気を付けたこと

『幽冥のアステール』の制作期間は約3カ月でしたが、舞台設定が一番頭を悩ませました。この部分は普段なら数日、長くても一週間程度で済むのですが、このシナリオでは2~3週間くらい使った記憶があります。『魂の境界』シリーズの舞台設定にも多少苦労しましたが、『幽冥のアステール』は過去作の中で最も鬼門でした。(シナリオ作成期間は約3~4週間で、原稿執筆期間は約1か月でした。残りの期間は資料作成など。いつも通りですが軽い地獄を見ました)


「ススキの原野が広がる、なだらかな丘が続く場所。廃墟やいくつかの建物が点在しているが、決して怖い雰囲気ではなく幻想的な場所」というのが原初のイメージとしてありました。

ただ、頭の中のイメージを具体的に示してくれるような実際の場所は当時の自分は知りませんでした。そのため、セッションに使う背景探し、制作関係者に渡す資料作成を兼ねて、現実世界、アニメに拘らず資料となるものはないか徹底的に調べました。


「廃墟のある幻想的な背景」で印象が強かったのは新海誠作品の『雲のむこう、約束の場所』や『すずめの戸締まり』だったので、美術画集を購入して拝読しました。また『終のステラ』からも何か参考になるものはないかと考え、資料を漁りました。

ただ、色使いや全体的な雰囲気は参考になりつつも、いずれもミセツの地のイメージとは少し離れていたのと、セッションの使用に適した写真がほしかったので資料探しの旅は終わりませんでした。

観光地を含めた日本の集落だけでなく、海外の田園風景なども調べてみましたが、それらの中にもイメージに合うものはなく、画像や動画を調査してしばらく経った頃に、曽爾高原の写真を目にしました。

「曽爾高原 ススキ」で調べれば出てきますが、沈む夕日と共に撮影したその場所の風景が、ミセツの地のイメージに最も近いと感じ、実際のセッションでも、写真ACからダウンロードした写真を加工して使用しました。


一番重要な場所のイメージが確定してからはトントン拍子でイメージは固まっていき、最終的に関係者向けに用意した資料が以下となります。


※著作権の問題で画像は隠したりぼかしたりしてます。

(世界観のイメージが完成したまではいいものの、次に頭を悩ませたのは情報の配置でした。ただ、これについて説明するとえらく長くなるのと、シナリオ作成の方法論的な話になってしまい今回の記事の趣旨とは脱線するのでカットで)


私は部屋作りにはあまり拘らない方だと思いますが、背景とBGMの用意にはそれなりに時間をかけます。この二つを上手く使うことが、シーン毎の情景やキャラクターの心理描写に必要不可欠だと考えているからです。

背景として最も重要だと考えていたススキの原野については上記で記した通りで、後は各KPの方がそれぞれのイメージに則って用意すればいいと思います。

ただできれば、ミセツの地は「荒廃的で幻想的な美しい世界」なのでそれが伝わるように、また、その世界を「怖くしすぎないように」演出することを意識すればセッションはより楽しめると思います。

登場人物たちについて

シティシナリオでは10人を超えるネームドを出して「登場人物が多い」とよく言われる私のシナリオですが(いずれもその物語に適した人数・キャラクターとなるように細心の注意を払ってますが)、今回の登場人物は主人公を除けば4人のみとなります。


閉じられた世界であり多くの登場人物を入れ込むと窮屈になるというのもありますが、ステラとルナという2人の少女に最大の焦点を当てたかったのと、直接関わることは少ないが、それでも物語において、主人公にとって重要な人物となる流月と刈夜についても丁寧に掘り下げる必要がありました。

また主人公を含めた5人で完結した関係となっていたので、これ以上の要素は余計だと考えました。


ただ、過去に掲載した記事では、各キャラクターについての設定や背景を詳細に記載していましたが、今回の記事では彼女たちについて詳しく語ることはしません。

書きたいことはたくさんありますが、それは然るべきときが来たらと思っています。


というわけで、彼女たちに関する掘り下げはまたいつかの機会に。

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